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明治の監獄建築をホテルへ転換した「星のや奈良監獄」を見てきた。独居房が現代的スイートルーム48室に
2026年6月23日 18:19
- 2026年6月25日 開業
星野リゾートは、国の重要文化財「旧奈良監獄」を保存・再生したラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」(奈良県奈良市般若寺町18)を6月25日に開業する。開業に先立ち、6月23日には客室やラウンジ、ダイニングなど館内を報道公開した。
保存活用事業では、4月27日に「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」が先行開館している。ミュージアムは、旧奈良監獄の歴史や建築、行刑の歩みなどを紹介する施設。今回のホテル開業により、日帰りで見学するミュージアムに、宿泊滞在の機能が加わる。
星のや奈良監獄は、施設ごとの独創的なテーマで圧倒的非日常を提供する「星のや」の新施設。星のやは国内外8施設に展開しており、2026年の星のや奈良監獄に続き、2027年には「星のや飛鳥」の開業も予定している。
建物は1908年に竣工した近代監獄建築。明治政府が司法制度の近代化を進めるなかで建設した「明治五大監獄」の一つで、中央看守所から5棟の舎房が放射状に伸びるハヴィランド・システムや、赤レンガの外観を今に残している。1946年からは奈良少年刑務所として使われ、2017年に閉庁。同年、国の重要文化財に指定された。
設計を手がけたのは山下啓次郎。辰野金吾に師事し、欧米の監獄建築を調査したうえで、日本の近代監獄建築に取り組んだ。明治五大監獄のうち、竣工当時の全貌をほぼ残すのは奈良監獄のみとされている。
星のや奈良監獄のコンセプトは「明けの重要文化財」。旧監獄の空間を単に体験する施設ではなく、明治期の近代化を象徴する歴史的建造物の魅力を未来へつなぐラグジュアリーホテルとして再生した。重厚な赤レンガ建築に、現代の滞在機能と星のやならではの非日常の演出を重ねた施設となる。
メディアレセプションでは、星のや奈良監獄 総支配人の掛川暢矢(かけがわまさや)氏が施設概要を説明した。掛川氏はこの場所について、「日本が世界に近代化をアピールするためのきわめて重要な象徴だった」と説明。文化財は指定されることがゴールではなく、維持修繕しながら未来へ受け継ぐ仕組みが必要だとし、ホテル運営で生まれる価値を文化財の維持や修繕へ還元していく考えを示した。
保存活用事業は、法務省が建物の所有権を持ちながら、運営権を民間側に委ねるコンセッション方式のPFI事業として進められている。星のや奈良監獄はそのホテル運営を担う施設として、文化財活用を滞在型へ広げる役割を持つ。
客室は全48室で、すべてスイートルーム。かつての舎房9~11室分を連結し、寝室、リビング、ダイニング、バスルームを備える客室へと再生した。代表的な客室タイプ「The 10-Cell」は、独居房10房分をつなげた造り。漆喰の下から現われた赤レンガ壁、高さ約3.5mのヴォールト天井、耐震補強の鉄柱、ウッドパネルを組み合わせている。
室内は、旧監獄の閉じた印象をそのまま残すのではなく、細長い舎房の寸法感や高窓、レンガ壁の質感を活かしながら、複数の空間をつなげることで滞在に必要な広がりを持たせた。リビング、ダイニング、寝室がそれぞれ分かれ、機能的な構造が客室の個性として活かされている。
客室前の廊下には、かつて舎房の扉として使われていた木製扉を残した。扉が整然と並ぶ景観は当時の面影を伝える一方、床にはカーペットを敷き、文化財の保護とホテルとしての過ごしやすさを両立させている。掛川氏はこの廊下を「個人的に一番好きなポイント」と紹介した。
パブリックスペースでは、旧講堂を活用したメインラウンジが目を引く。天井を高く抜いた空間に梁が連なり、窓から続くアーチが奥行きをつくる。館内には家具や書籍、アートを配し、客室とは別に過ごせる「もう一つのリビング」とした。かつて講話などが行なわれた場所が、宿泊者が滞在中にくつろぐ空間へと変わっている。
ダイニングラウンジは、食前のアペリティフや夜のバータイムを楽しむ場所として設けた。夜には蓄音機の音色を楽しむ「響きのソワレ」を実施し、カクテルやウイスキーなどを用意する。中庭には白い散策路とプライベートデッキを配置し、夜は月明かりをモチーフにしたライトアップを行なう。
食事は、日本におけるフランス料理の歩みをたどるディナーコース「ガストロノミー・クロニクル」を提供する。「黎明期」「成熟期」「現代」「未来」をテーマにした全4皿で構成し、明治期に西洋料理が日本へ入ってきた時代から、現代、さらに未来へと続く食の時間軸を一つのコースに仕立てた。
朝食には、明治期の洋食文化を現代風にアレンジした「文明開化の朝食」を用意する。ウスターソースで味わうスコッチエッグや、カニクリームコロッケ、エビフライなど、現在の洋食にもつながるメニューを少しずつ盛り込む。このほか、和朝食、洋朝食、軽朝食も設定している。
滞在中のアクティビティも、明治という時代や建物の歴史に寄せた。到着時には、奈良県月ヶ瀬産の和紅茶を味わう「茜のティーサロン」をメインラウンジで実施する。夜には、香水文化に触れる調香体験「香りの宵支度」を用意。朝には、明治期に西洋からもたらされた体育の思想にちなみ、吉野杉で作ったオリジナルの亜鈴を使う「目覚めの亜鈴体操」も行なう。
宿泊者は、敷地内に併設する奈良監獄ミュージアム by 星野リゾートへ専用アプローチから入場できる。一般利用の営業時間は9時~17時だが、宿泊者は滞在中無料で利用でき、18時~23時、6時~8時30分は一部エリアを宿泊者限定で開放する。
保存エリアの第三寮や展示エリアを、通常とは異なる時間帯にも体験できるのは宿泊者ならでは。ホテルとミュージアムを行き来することで、建築としての価値と、刑務所という特殊な社会の歴史をあわせて知る構成だ。
トークサロンにはホテルジャーナリストの山口由美氏が登壇し、世界のヘリテージホテルや歴史的建造物を活用した宿泊施設の事例を紹介した。山口氏は、歴史的建造物をホテルへ転用する流れが世界的に広がるなか、客室の内部まで旧監獄建築の構造を活かしている例は多くないと説明。旧監獄の空間を客室としてラグジュアリーに再生した点について、世界的にもめずらしい事例と評価した。
奈良県の山下真知事は祝辞で、星のや奈良監獄の開業を奈良観光にとっての大きな転換点と位置づけた。奈良観光は日帰りで移動する旅行者も多く、宿泊環境の充実が課題となっている。山下氏は、ここに泊まるためだけに奈良を訪れる人がいても不思議ではない施設だと述べ、奈良をゆっくり楽しむ滞在拠点としての役割に期待を示した。
周辺地域との連携について、掛川氏は、施設が位置する奈良きたまちエリアには魅力的な観光資源が集まっている一方、まだ活用しきれていない部分があると説明した。近隣の般若寺などと連携し、人力車を使った周遊体験も検討しているという。
重要文化財として保存されてきた建物は、ミュージアムで公開される歴史的建造物であると同時に、星のや奈良監獄として宿泊者を迎える場所へと役割を広げる。
星のや奈良監獄
所在地: 奈良県奈良市般若寺町18
開業日: 2026年6月25日
客室数: 48室
チェックイン: 15時
チェックアウト: 12時
料金: 1室1泊14万7000円~(税・サービス料込み、食事別)
食事: ディナーコース「ガストロノミー・クロニクル」2万2000円、文明開化の朝食6380円、和朝食・洋朝食4800円ほか
主な施設: 客室、レセプション、メインラウンジ、ダイニング、ダイニングラウンジ、中庭、奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート
アクセス: 近鉄奈良駅からクルマで約6分、JR奈良駅からクルマで約10分。バス利用の場合は、近鉄奈良駅またはJR奈良駅から「般若寺」または「奈良監獄ミュージアム前」下車




















































