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NEXCO東日本、コンクリート防護柵をジッパーのように移動するマシンを公開
工事車線規制を安全に変更可能、4月から常磐道工事に試験導入
(2016/3/29 20:40)
- 2016年3月29日 公開
- 2016年4月上旬 試行導入
NEXCO東日本(東日本高速道路)関東支社は3月28日、規制を伴う高速道路本線工事において侵入事故防止や規制作業の効率化のため、移動式防護柵「Road Zipper System」(以下、ロードジッパーシステム)を日本で初めて導入する。それに先駆けてロードジッパーシステムの概要説明とデモンストレーションを行なった。
LINDSAY社の実績あるシステムを導入
まず最初にNEXCO東日本から、ロードジッパーシステムの概要説明があった。現在は人力でラバーコーンを1個ずつ置いて車線規制を行なっているが、時間帯によって規制車線数を変更する場合も同様の作業が必要。朝夕の混雑時は規制車線数を減らし、交通量の少ない深夜帯に規制車線数を増やす場合は、その都度ラバーコーンを移動させることが必要だった。
また、ラバーコーンの合間から規制していた車線に車両が誤進入することも実際に起こっており、作業員の安全確保のためには連続する固体での車線規制方法が必要だったことから、欧米で実績のあるアメリカのLINDSAY社のシステムの導入を検討していたとのこと。
ロードジッパーシステムは、1つの重さが700kgあるコンクリート製防護ブロックを専用の防護柵切替用車両(Barrier Transfer Machine、以下BTM)に装備した緩やかなS字のレールを用いて浮かし、車両が進むことでS字のレールにより防護柵を移動させることができるシステム。道路の混雑状況に合わせて、工事車線規制範囲を自在に変えることが可能。また、コンクリート製防護柵にてガードされたなかでの工事施工により、作業の安全性が向上すると説明があった。
今回、システムの有用性などについて確認・検証を行なう工事は、4月上旬から実施する常磐自動車道の柏IC(インターチェンジ)~流山IC間の「初石BOXはく落対策工事」。一般車両の侵入事故防止等の安全対策のほか、1日9万台の走行がある重交通路線における工事規制渋滞を軽減するために、交通量が減少する夜間の時間帯において、交通量に応じて片側3車線の通行帯を2車線または1車線へ、安全で効率的に規制を行なう目的でシステムを試行するとのこと。
この工事対象区間は、住宅地を切り通してトンネル状とした半地下状態が続いている。コンクリート製の防護柵をクレーンを使って1日に3回も移動させるのは無理があることからも、システム有用性の確認に適した工事であるようだ。
まさにジッパーのように防護柵を動かす
ロードジッパーシステムによる防護柵の移動は、防護柵切替用車両のBTMに装備したレールによって動く。中央部の地上高を高くして、緩やかなS字状に曲がった全長20メートルのレールに取り付けられた108個のローラー(片側54個)が、防護ブロックを挟みながら持ち上げ、BTMが進むことで防護柵を浮かして移動させることができる。
実際の作業については動画を参照してもらうと分かりやすいと思う。作業中の走行速度は約10km/hで、回送時などは30km/hで自走することもできるようだが、現在の日本の道交法では自動車としての区分に当てはまらないことから、運転免許も該当する種類はなくナンバーも取得していないとのことだった。
また運転席はBTMの前後にあり、どちらの方向にも進むことができ、変更した規制車線数を戻す際には逆方向に進めばよい仕組みになっている。さらに前後のキャビンで独立したステアリング舵角を与えることが可能となっており、BTMを道路と斜め向きにしたまま動かせば、1車線分以上の防護柵移動を行なうことができる。また前後で独立した車高コントロールが可能なので、段差のある部分などへの設置作業も行なえるとのことだ。