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ANAの夏休み企画、子供たちがパイロットにインタビュー

職場見学としてフライトオペレーションセンターも見学

2015年7月28日 実施

 ANA(全日本空輸)は7月28日、子供たちがレポーターとなって普段聞けない仕事の疑問をパイロットに直接インタビューする「キッズレポーター」を開催した。3日間にわたり客室乗務員、パイロット、整備士にそれぞれ4名の子供たちがインタビューを行なった。

 「キッズレポーター」は、ANAの夏休み子供向け企画「ANA SNS サマープログラム」の1つで、ほかに「ANA キッズらくのりサービス」を使って一人旅に挑戦する「はじめての空のひとり旅」、空港バックオフィスや夜間の機体整備工場を見学する「ナイトツアー@羽田空港」、パイロットやCA業務が体験できる「キッザニア招待」の4つのイベントから構成される。応募は6月にFacebookで行なわれ、すでに募集は締め切られている。ANAがFacebookを通じて子供向けの夏休み企画を催したのは今回が初めて。

 キッズレポーターの応募数は、3職種の中でパイロットが一番人気があり、約100通の応募の中から今回参加する4名が選ばれた。当日は、朝8時に羽田空港第2ターミナルに集合。子供用制服に着替えて、運航本部であるフライトオペレーションセンターに移動した。

会場となった羽田空港第2ターミナル
ANA エントランスに集合する参加者たち
子供用制服に着替え、フライトオペレーションセンターに移動
今回、インタビューに答えてくれるボーイング787を操縦する久保慎治機長
緊張気味の子供たちに今日の説明をする久保機長
報道陣のカメラに囲まれ、硬くなっている子供たちと記念撮影
第2ターミナル内のバックヤードを通ってインタビュールームへ移動
広い窓から駐機しているANA機がよく見えるインタビュールーム。大好きな飛行機を間近に見て、興奮も最高潮のキッズレポーターたち

 フライトオペレーションセンターでは、久保慎治機長が4名のキッズレポーターを出迎えた。久保機長はパイロットになって16年目、飛行時間9200時間の45歳。国内線、国際線ともにボーイング787を操縦する。緊張するキッズレポーターと共に記念写真を撮影し、インタビュールームへ移動した。

 第2ターミナル内の通路やバックヤードを移動中も、普段見られない光景として興奮気味のキッズレポーターたち。たどり着いたインタビュールームは、広い窓から駐機場のANA機がよく見える絶景で、興奮も最高潮。一通り落ち着いたところでインタビューはスタートとなった。

 まずは、改めて久保機長が「学校を卒業してアメリカで訓練をしました。最初はエアバス320、その後ボーイング777に乗り、現在は787に乗っています」と自己紹介をした。キッズレポーターは、二ノ宮淳平くん(7歳)、内田亮平くん(10歳)、杉田聡哉くん(9歳)、都築叶多くん(7歳)の4名がそれぞれ挨拶をし、事前に考えた疑問や質問を久保機長にインタビューした。

Q:飛行機の操縦で、一番難しいことは何ですか?(都築叶多くん)

A:難しいことはたくさんあります。中でも、離陸と着陸は緊張します。上空では、高度も高く、速度も十分余裕があるので自動操縦に切り替え、運航乗務員2人で常に確認していますが、離着陸の合計で約10分間は事故の可能性があるので、特に集中しなければなりません。離陸して自動操縦に切り替えるまでと、着陸時に自動操縦から切り替えたあとが緊張する瞬間です。

Q:パイロットも慌てたり、驚いたりしますか?(二ノ宮淳平くん)

A:パイロットも慌てたり、驚いたりしますよ!  運航の中で予期せぬこともたくさんあります。今日は天気がよいので見えませんが、例えば、入ってはいけない危険な雲(積乱雲など)もあります。飛行機で近づいたり入ったりすると揺れたり、機体が壊れてしまったりする可能性もあるので避けるようにしています。また、飛行機に不具合や故障が起きたときは驚いたり焦ったりしますが、普段、そういった緊急時を想定して訓練をしているのを思い出し、2人の運航乗務員、必要なときは客室乗務員、また、連絡して整備からアドバイスをもらったりして、みんなで協力しながら落ち着いて対応するようにしています。

Q:パイロットになって、一番大変なことは何ですか?(杉田聡哉くん)

A:体調管理が大変なことの1つです。国内線でも、朝早かったり夜遅かったりしますし、国際線だと時差があるので、どうしても不規則になってしまいます。睡眠時間が短いときは昼寝などをしますが、仕事の前にしっかり睡眠をとって、いい状態で仕事に臨む体調管理をするのが大変です。

Q:勉強やスポーツのほか、何をすればパイロットになれますか?(内田亮平くん)

A:勉強やスポーツは大事です。ほかには、遊びでも構いませんが、何か興味があることに一生懸命になることが、将来の夢の実現につながる力になっていくと思います。

インタビューが行なわれ、1問ずつ丁寧に説明する久保機長

 インタビューの内容は応募時に送っていたもので、キッズレポーターには、事前に送られた質問が印刷された用紙が渡され、メモをして持って帰れるようになっている。1人4問ずつのインタビューだったが、それぞれの質問を終え、さらに質問を募ったところ、4名が勢いよく手を挙げ、久保機長が丁寧に1問1問答えていった。

 インタビューのあとは、パイロットが持ち歩いているキャリーケース(Captain's Bag)の中身を公開。久保機長が分厚い空港のマニュアルを取り出すと、子供達だけでなく、同伴している保護者からも驚きの声が上がった。ほかにはエンルートチャート、エアポートチャート、グローブやサングラスなど、それぞれを丁寧に説明した。

 持ち歩いている物の説明が終わり、飛行機を飛ばすゲームで楽しんだあと、久保機長から、シールのプレゼントがあった。ANAの各機種がプリントされたシールで、これは子供よりも保護者の方がほしがっていた。

人前での話が苦手で、色々なことに挑戦したいという都築叶多くん(7歳)
手を振ると振り返してくれるパイロットが格好いいという杉田聡哉くん(9歳)
パイロットは幼稚園のころからの夢で、夢に近づくきっかけにしたいという内田亮平くん(10歳)
ANAの飛行機が大好きで、飛んでいる機種も分かるという二ノ宮淳平くん(7歳)
パイロットの持ち物紹介で、分厚い空港マニュアルに会場から驚きの声が上がる
エンルートチャートを説明する久保機長。英語表記なので子供たちには少し難しい
エアポートチャートで、今、自分たちがいる場所を説明する久保機長。窓から見える駐機場番号を「ほら、64番って見える?」と、チャートと照らし合わせながら説明する
持ち物はほかにも、グローブやサングラス、インカムやiPadなど
フライングモデルプレーン「ANA 787」。ちなみにモデルとなっているJA829Aは、ボーイング 787-8の150機目の機体
フライングモデルプレーンを飛ばし、窓際のへりにうまく着陸することができるかを競った。なかなか思ったように飛ばず苦労する子供たち。終わったあとは、そのままプレゼントとして持ち帰った
久保機長からシールのプレゼント
子供よりも保護者がほしがっていた

 続いて、再びフライトオペレーションセンターに戻り、パイロットの職場見学ととして、運航支援カウンターやパイロットのスケジュール管理の部門などを回った。最後に記念品をもらい、キッズレポーターは解散となった。「普段見られない裏側が見られた」と子供たちはみんな満足した笑顔だった。

 久保機長は「今日は短い時間でしたが、パイロットは普段、直接お客様と触れ合う機会がないので、こういったイベントで関わりが持てたのはいい経験になった」と語った。キッズレポーター以外に、当日はFacebookとTwitterでも質問を受け付けていた。久保機長はキッズレポーターが帰ったあとも、資料を確認しながらSNSで寄せられたたくさんの質問に丁寧に答え続けていた。

再びフライトオペレーションセンターに戻り職場見学
最新の気象情報を確認するためのPC
さまざまな天候などの情報をチェックし、運航に備える
最新の情報は印刷されて張り出され、一覧できるようになっている。出発地と到着地、地上と上空など、たくさんの要素を把握しなければならない
キッズレポーターたちは、パイロットをサポートする運航支援カウンターでも話を聞いた。火山噴煙拡散予想チャートを例に、さまざまな事に注意しなければいけないということを学んだ
パイロットのスケジュール管理をする部門
通常、約1カ月前には搭乗する便が決定する
キッズレポーターの大役を終え、記念品をもらう子供たち
最後に全員で記念撮影。夏休みのいい思い出になったと子供たちも喜んでいた
キッズレポーターの解散後、FacebookとTwitterの質問に資料を確認しながら回答する久保機長
(政木 桂)