ニュース
大井川鐵道でSLのリアルな出発準備と整備を見学してきた
間近で蒸気をあげるSLや投炭作業に感動
(2015/5/26 00:00)
- 2015年4月29日、5月2日~5日 開催
- 時間:9時~11時
- 参加費:500円(4歳以上)
大井川鐵道は、4月29日、5月2日~5日に新金谷駅構内にある「新金谷車両区」にてSLの出発準備や整備風景が見られるイベント「転車台・車両区整備工場見」を開催した。この様子をレポートする。
大井川鐵道といえば、日本のSL保存運転のパイオニア的存在だ。1976年よりSLの動態保存活動に取り組んでおり、冬季など一部の期間を除きほぼ毎日定期列車に近い形で新金谷駅~千頭駅間でSLの運行が行なわれている。全国のSL列車の多くは土日祝日に臨時列車として運行されるが、毎日SLが走るのは全国でもこの大井川鐵道のみだ。また、大井川鐵道ではSLだけではなく、SLがけん引した旧型客車や私鉄から譲渡された旧型の電車など、歴史的価値の高い車両が多く現役として運用されており、まるで路線全体が鉄道博物館と言っても過言ではない。新金谷駅のホームや側にある見学広場からSLや旧型客車を眺めていると、まるで昭和にタイムスリップしたかのような錯覚を起こす。大井川鐵道のSLはすべて新金谷駅構内にある「新金谷車両区」にて整備が行なわれており、今回のイベントは、普段は関係者以外は立ち入ることができない内部を見られる貴重な体験といえる。
見学では主に、「SLなどの向きを変える転車」「SLが出発準備を行なう始業作業」「整備工場内に設けられた専用通路から見る『SLの全般検査』」の3つエリアがある。新金谷駅から5分ほどの場所にある転車台の横に設けられた受付で参加費を支払い、缶バッジとパンフレットをもらい、ヘルメットを装着すれば、あとは所定のエリア内であれば自由に見学ができる。ガイドによる説明や順路などは設けられていないが、むしろ自由に見学できるこの雰囲気こそリアルな現場を見ているという実感があり、SL好きにはたまらないものがある。実際に、記者が見学した4月29日は、新金谷駅発10時38分のSL急行「川根路13号」と同11時52分発のSL急行「川根路1号」が運行される日であり、「川根路13号」をけん引する「C11 227」と「川根路1号」を担当する「C10 8」の始業作業が行なわれていた。
転車台の下に降りてSLを仰ぎ見る
SLの方向を変える「転車台」。普段は「SL広場」からその外観を見るだけだが、今回のイベントでは特別に転車台の底面に降りてSLを間近から仰ぎ見ることができた。なかなか見ることができない角度で「C12 164」の動輪やピストンを動かすシリンダー部分などのディテールを細かく見られるのは、非常に興味深い体験だった。
蒸気を上げリアルな投炭作業に感動
本イベントの最大の見所はSLの「始業作業」だ。ちょうど、新金谷駅発10時38分のSL急行「川根路13号」をけん引する「C11 227」が始業作業を行なっており、水の補給や、機関室内で石炭をボイラーにくべる「投炭作業」などを間近で見ることができた。SLはその日の運行をできるようになるまで、数時間掛けてボイラーで石炭を燃焼させ、その熱で水を沸騰させて高温高圧の水蒸気を作る必要がある。このため、出発の直前まで蒸気圧を維持するための作業が行なわれていた。蒸気を吹き上げる音やボイラーから伝わってくる熱、作業員たちの無駄のない動きなど、リアルな現場の雰囲気が味わえる貴重な体験だった。なにより、デモンストレーションではない、実際にこの後に列車をけん引するSLの始業作業を見られたのには感動すら覚えた。
工場内でSLの貴重な姿を間近に見た
本イベントで見逃せないのが「整備工場内に設けられた専用通路から見る『SLの全般検査』」だ。この日は天皇陛下が乗るお召列車をけん引したこともある「C11 190」が整備工場内で整備を受けており、煙室扉が開かれボイラー内部を見ることができたほか、蒸気だめのカバーやピストンが外され、普段は見ることができない状態を見学することができた。また、整備工場内にはSLに関する貴重な部品類やナンバープレート、ヘッドマークも展示されており、SL好きにはたまらない逸品の数々を見ることができた。
燃料の煉炭なども見られる
本イベントではほかにもいろいろな注目ポイントがある。SLと言えば「石炭」で動いているというのが一般的なイメージだが、大井川鐵道ではSLの燃料として「ピッチ煉炭(れんたん)」という石炭を砕いて油で固めた練炭が使われている。SLが国鉄で使われていた時代は、煙突から火の粉が出て火災が起きるといった事故が発生していたが、この「ピッチ煉炭」を使うことで燃えやすく火の粉が出にくいという特徴がある。実際に使われている「ピッチ煉炭」を間近で見たり、踏切のデモ装置を操作したりと、SLの他にも様々なものを見ることができた。
記者はこの後、新金谷駅発10時38分の「川根路13号」で千頭駅を目指した。それについては別の記事に譲ることにするが、この日の「川根路13号」は、先ほどまで始業を見た「C11 227」がけん引し「オハフ33 215」「オハ35 559」「オハ35 459」「オハフ33 469」「オハ35 149」、補助機関車としてE101という編成だった。客車が全てぶどう色1号のオハ35系でしかも珍しいノーヘッダー車(窓の上に梁がない)の「オハ35 149」が入るという統一感がありつつも珍しい客車が入るという編成を目にすることができたのが幸運だった。
大井川鐵道では、このようなイベントを定期的に行なっており、整備工場に関しては「大井川鐵道きかんしゃトーマス号とSL整備工場見学」ツアー(6月13日~9月30日開催)にて見学することができる(詳細はhttp://www.oigawa-railway.co.jp/pdf/20150830kanko_thomas.pdfを参照)。