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全室スイートの客船「MITSUI OCEAN FUJI(三井オーシャンフジ)」、12月デビュークルーズに向けて引き渡し完了

シーボーン オデッセイとして最後の寄港

2024年9月25日 実施

最後の航海を終えたシーボーン オデッセイ。今後改修を行ない、この12月にはMITSUI OCEAN FUJIとしてデビューする

 商船三井クルーズは9月25日、横浜ハンマーヘッド内新港ふ頭客船ターミナル(神奈川県横浜市)において、「MITSUI OCEAN FUJI(三井オーシャンフジ)引き渡しセレモニー」を実施した。

 同船は2023年に米シーボーンクルーズ「Seabourn Odyssey(シーボーン オデッセイ)」(総トン数3万2000t)を購入したもので、今回の横浜港への寄港を最後に船名を変更するとともにドライドック入りし、船内のサイン変更など小規模な改装を実施。全客室28m3以上かつベランダを備える日本初の全客室スイートキャビンのクルーズ船として2024年12月から運航を開始する。

 商船三井クルーズは貨物や旅客の海上輸送を手がける商船三井のグループ会社で、「MITSUI OCEAN CRUISES(三井オーシャンクルーズ)」のブランドでクルーズ事業を行なっている。

 これまで「にっぽん丸」1隻で国内外へのツアーなどを実施するとともに、事業拡大を目指し2022年に600名定員規模のクルーズ船の新造を発表しているが、本船の追加により早期のサービス拡充を実現した。

本船概要

総トン数: 32477t
全長: 198.15m
全幅: 25.6m
客室数: 229室
船客定員: 458名
レストラン数: 4施設

 就航後は日本を中心とした海域での運航を想定しており、すでにツアーの募集は始まっている。12月1日発の「MITSUI OCEAN FUJI Debut Cruise ~釜山・九州~」など、横浜や名古屋、神戸発などの各種クルーズを発表している。

両船長らが出席した引き渡しセレモニー

 船内で行なわれた引き渡しセレモニーでは、MCが「2009年の就航以来、この15年の間にシーボーン オデッセイは18万454人のゲストを迎え、426の異なる港を巡り、85万9554海里を航行しました。これは地球の赤道を39.7周する距離に相当いたします」とこれまでの航海を振り返った。

 そして、「船が正式に引き渡される際に、所有者の旗が次の所有者に引き継がれるという海運業界の伝統的な儀式」であるこのセレモニーによって、同船の歴史に新たなページが刻まれるとした。

 ステージにはまず、2009年の初航海シーズンにも乗船していたクルーズディレクターのジョン・バロン氏が登壇。バロン氏はこの場所に立つのは15年前のスタート地点に戻ったようだと述べるとともに、この場所でオデッセイに別れを告げるのは「さまざまな感情が入り交じった気持ち」とコメント。

「15年以上に渡りオデッセイは何千人ものトップクラスのエンターテイナー、講師、有名シェフを迎えただけでなく、素晴らしいプロダクションショーをお届けしてきました。私は数えきれないほどのスタンディングオベーションや感動で涙を流すゲストの姿を目にし、多くの場面で大きな誇りと感謝の気持ちを感じてきました」と振り返りつつ、「本日、このように皆さまにごあいさつすることができ、この美しい船が新しいオーナーの素晴らしい手に委ねられることを知って私は安心しています。シーボーン オデッセイ、たくさんの思い出をありがとう」と締めくくった。

クルーズディレクター ジョン・バロン氏

 続いてシーボーン オデッセイの船長を務めたクラシミール・ラデフ氏が登壇。氏は30年以上前に3等航海士として船の仕事に就き、2005年にシーボーンクルーズの一員として副船長に就任。その後も同社のクルーズ船に乗船してきた。

「本日、私がシーボーン オデッセイの船長として皆さまを公式に歓迎するのはこれが最後となります。この愛されるクルーズ船の船長を務めることができたことは、私の人生における誇りであり喜びでした」と話す。「私はこの船に乗船するなかで、たくさんの特別な瞬間を経験してきました。船長になったものもこの船です。ですので、この船を本当に恋しく思うことでしょう」

「本日、この素晴らしいクルーズ船を、これからの大海原へ新たなゲストと旅する商船三井クルーズに引き渡すことを光栄に思います」とエールを送った。

シーボーン オデッセイ 船長 クラシミール・ラデフ氏

 新たな船長として紹介され登壇したのがキム・ロジャー・カールソン氏。氏はノルウェージャンクルーズラインに24年以上勤務し2008年から船長に昇進。数々の船に乗船し安全かつ円滑な運航を担当してきている。

 カールソン船長は、「日本におけるもっとも歴史ある客船会社として、にっぽん丸に続き日本初の全客室スイート客船である三井オーシャンフジが、当社の客船ラインアップに加わりました」とコメント。この12月には「次世代のゲストをお迎えできることを楽しみにしています。船長として、この船の安全運航を誇りをもって指揮し、美しい日本、そしてその先の寄港地へ向けて航行できることを心より楽しみにしております」と述べた。

三井オーシャンフジ 船長 キム・ロジャー・カールソン氏

 関係者によるフォトセッションの後、新たに三井オーシャンクルーズの船旗が掲揚されセレモニーは終了。これによりシーボーン オデッセイの旅は終了となった。

関係者によるフォトセッション。右からシーボーン オデッセイ 機関長 カメン・ディミトロフ氏、同ホテルディレクター マルコ・デ・オリベイラ氏、同副船長 カタジナ・ソボレウスカ氏、同クラシミール・タラデフ氏、三井オーシャンフジ 船長 キム・ロジャー・カールソン氏、同副船長 サイモン・ウェストール氏、機関長 ディヤン・ショポフ氏、同ゼネラルマネージャー 川野恵一郎氏
船旗掲揚の様子は映像での紹介となった

 最後に三井オーシャンフジを運航する商船三井クルーズ 取締役 執行役員の山下晶一朗氏が登壇。「三井オーシャンクルーズは140年にわたる商船三井の歴史と、四季の自然や伝統文化に根ざした日本の美しさを表現する新しいクルーズブランド」であると紹介し、「たくさんのお客さまに愛されてきたこの美しい船で、引き継ぎ心躍るエンタテイメント、美味しい食事、そして厳選した寄港地、観光ツアーを通じて、日本の美しい船旅をお客さまに提供してまいります」とコメント。

 これまでの15年間、安全運航とサービスを提供してきたクルーらに敬意を表すとともに、「今年12月1日の横浜港出航から始まる三井オーシャンフジの就航によって、すべてのお客さまに唯一無二の船の旅をお届けしていく」と約束した。

商船三井クルーズ株式会社 取締役 執行役員 山下晶一朗氏
シーボーン オデッセイ 船長 クラシミール・ラデフ氏に記念品として双眼鏡が送られた
横浜市港湾局 局長 新保康裕氏。長い航海の歴史の最終地として横浜港を選んでいただいたことを光栄に思うと述べるとともに、三井オーシャンフジとして今後も寄港していただきたいと述べた
横浜市港湾局 局長 新保康裕氏により初入港を記念した盾の交換が行なわれた

改装前の船内をちょっとだけ紹介

 三井オーシャンフジは12月のデビューを前にドライドック入りし、改装作業が行なわれる。ただ、変更範囲は船内各所のサイン看板や消耗品類の交換など、わずかな部分に留まる見込みだという。セレモニー後に短時間ではあるものの船内を見学することができたので紹介する。

船体中央のデッキ8にはプールとともにレストランやバーが並ぶ
デッキから横浜の街を眺める。シーボーン オデッセイとしては最初で最後の横浜入港となった
船首
船首にはジャグジーがある
デッキ9後部にはスパ&ウェルネス 木霊(三井オーシャンフジでの名称)。奥にチラリと見える階段からは4部屋ある「ペントハウススパスイート」に直接アクセスすることが可能
スパ内部
エレベーターホール。彫刻や絵画などが引き継がれるかは今のところ未定とのこと
こういったサインが変更される
北斎 FINE DINING
デッキ7後部にある三井オーシャンスクエア。乗船した乗客が最初に訪れるフロントデスクのほかコンシェルジュやツアーデスクなどが設けられる
三井オーシャンスクエア内にはカフェも
カフェで提供されていたミール
メインダイニングとなるザ・レストラン 富士
デッキ4からデッキ9までをつなぐらせん階段