ニュース
知らないと門前払いもあり得る今年の富士登山。ゲートが設置された吉田口からの入山を詳しく解説します
軽装者の強行突破はスタッフが制止
2024年6月20日 17:49
- 2024年6月20日 実施
富士山の登山ルートの一つである山梨県側の「吉田ルート」から登る際は、7月1日から通行料の支払いが義務化される。
これに先立ち、山梨県が通行料金の徴収などデモンストレーションを行なったので、その模様を含めてここでは、今年から変わる吉田口からの富士登山についてお伝えする。
オーバーツーリズムを改善するための登山規制
富士山は2013年に世界遺産(文化遺産)として登録されたが、ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)より「人が多いので来訪者のコントロールが必要」と言及されていた。その後も登山人口が増えることによって悪質なマナー違反や安全を軽視した夜間の弾丸登山者などが多く見られるようになり、環境負荷の軽減や事故を防ぐためにも登山規制を行なうにいたっている。
4000人までなので混雑が予想される日は事前予約が重要に
吉田口から登れる人数は1日最大4000人までで、これには山小屋の宿泊者は含まれない。通行料は1人1回につき2000円で、以前から実施されている富士山保全協力金の1000円は任意となっている。通行するためには合計で1人あたり最大3000円を支払うわけだ。山小屋に宿泊する人も支払う必要がある。徴収された通行料は、規制関係の経費や安全対策の運営費、登山道の維持費などに使われる。
通行料は現地で支払う方法と事前にWebから予約して支払う方法の二通りがある。現地払いの当日分は1000人以上の枠を設けているが、予約枠の方が割り当ては多いので、事前に予約しておく方が安心できる。事前予約は前日の23時59分まで可能だ。ただし、事前予約で支払った場合は、自己都合によるキャンセルは返金されない。
県の説明では、登山道が崩れたり富士スバルラインが雨量規制で通行不可になった場合は県の都合によるキャンセルとなり、ほかの電子決済サービスと同様に自動で返金されるとのこと。
現在の通行人数については、残り800人くらいからふもとのバス停や五合目でアナウンスを実施するとし、富士登山の公式X(@fujisanclimb)でも伝えていく予定だ。ちなみに開山期間中に4000人を超えた日は(六合目カウント)、2017年が17日、2018年が12日、2019年が10日、2023年が5日となっている。
通行するにはリストバンドを受け取って警備員に見せる
通行料の支払いや事前予約による受付は五合目総合管理センターの受付カウンターで行なう。誘導案内係が付近に常駐しているので、場所が分からないといったこともないだろう。カウンターは、電子決済専用、現金専用、予約者専用の3つの窓口に分かれている。予約者は発行されたQRコードをスタッフに提示する。通行料を支払った人にはリストバンドが渡されるので、手首や外れにくい場所に見えるように取り付ける。このリストバンドをゲートにいる警備員に見せて、通過するといった流れだ。
取材当日はイレギュラーに対するデモンストレーションも行なわれたので、いくつかのシーンを紹介しよう。
デモ4:軽装登山者が通過しようとした場合
明らかに装備不足で登ろうとしている登山者に対しては危険であることを告げ、引き返すかレンタルショップで装備を整えるか引き留めてアドバイスをする。せっかく来たという思いがあるからか強行突破することも想定しているので、スタッフ総出で制止する場合もあるとのこと。
オーバーツーリズム問題が各地で叫ばれるなか、富士山においても自治体が対策に動き始めた。お伝えしたように山梨県側では通行料の徴収と人数規制が行なわれ、静岡県側でもWebからの事前登録とeラーニングによる学習を呼びかけている(事前登録していない場合は現地で講習を受ける必要がある)。
とはいえ、富士山の魅力は語りつくせぬものがあり、誰もが一度は登ってみたいと思うはずだ。オフィシャルサイトで最新情報を確認し、この夏の富士山を楽しみたい。