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北陸新幹線、全駅を見てきた。どこで待つ・乗り換える・遊ぶ?

福井駅に入場する上り方面・東京行き「かがやき」一番列車

敦賀、福井、加賀温泉……新しい新幹線駅、どう使いこなす?

 3月16日、北陸新幹線・金沢駅~敦賀駅間の延伸によって、新しい新幹線の停車駅が石川県・福井県に6駅も誕生した。

 内訳を見ると、もともと地域の中心駅としてにぎわいを見せていた敦賀駅・福井駅。また特急の停車駅として観光やビジネスなどに活用されてきた芦原温泉駅・加賀温泉駅・小松駅、そしてまったくの新駅である越前たけふ駅。各駅とも新幹線開業を境に、駅機能や観光施設のオープンなど、駅としての使い勝手が激変している。

 本稿では、それぞれの新駅を訪れたうえで、以下の項目について実際に確かめてみた。

・乗り換える: 第3セクター鉄道・私鉄・路線バスへの乗り換え
・待つ: 乗車待ち環境
・遊ぶ: 駅周辺での時間つぶし
・買う・食べる: 物販・グルメ

 まずは利用者の多い「敦賀駅」「福井駅」を紹介、ほか途中駅を順々に言及していく(※記事内容は2024年3月16日時点のもの)。

【敦賀駅】巨大な新幹線駅を攻略。乗り換え不便? なら駅を出て遊ぼう!

敦賀駅ホームに停車する「つるぎ」

 新幹線から特急「サンダーバード」(大阪方面)や「しらさぎ」(名古屋方面)への乗り換えは、スーツケースを引いてスタスタと歩ける方なら、何の苦もなく3分少々で済む(筆者5回計測:平均3分20秒程度)。

 新幹線側の駅ホームは広く、改札フロア・コンコースの幅は30mもあり、19台の改札機を通り抜け、26基のエスカレーターで上下移動。改札を出れば、足元の太い線に沿って乗り換え先のホームに向かえばいい。

 ただ開業後の状況を見ると、エスカレーターではスーツケースやリュックなどの荷物に阻まれ、乗り換え先のホームに急ぎたい乗客が団子のように後ろに固まっている場面も(もちろんエスカレーターは歩くべきではないが)。また普通に距離が長過ぎて、お年寄りや子供は、自分の足では移動がつらいかも?という印象を持った。乗り換え時間は最短8分、早めに移動した方がよさそうだ。

敦賀駅乗り換え経路上の設備。在来線乗り換えは動く歩道を通る

 乗り換えの移動経路には売店・土産店(セブン-イレブン)、在来線特急のホームには駅弁とドリンクの自販機がある。ただし売店のレジが少なく、何も買えずに店をあとにする方がそうとうな数いらっしゃったようだ(セルフレジを導入してほしい……)。

 また注意したいのが、北陸本線(米原方面)、小浜線(若狭・小浜方面)や市街地側の出口(西口)に出るまでの移動だ。動く歩道は20mほどしかなく、距離も長いため、スタスタと歩いて3分以上は見ておいた方がよいかもしれない。

 なお、西口改札の外には駅併設の交流施設「オルパーク」があり、1~2階に休憩所、駅そば(気比そばあまの)、駅弁販売店(塩荘)、売店(セブン-イレブン)がある。さらに駅前にはスターバックス コーヒーと喫茶店、数軒の食堂も。列車を待つ環境としては十分、冬場でも暖かく過ごせるだろう。ただ、パッと見た限り、待合室にも各店舗にもコンセントがなさそうなので注意したい。

敦賀駅西口
敦賀市内の名所。気比神宮、旧敦賀港駅、赤レンガ倉庫、ヨーロッパ軒のパリ丼

 敦賀駅西口からは、敦賀市コミュニティバス、福井鉄道バス(新日本海フェリーへの連絡バス含む)などが出ている。南西側の市営駐車場にはカーシェアやレンタサイクルを完備しているので、駅からおおよそ1km内にある氣比神宮や、ヨーロッパ・ロシアからの旅客船と接続する「欧亜国際連絡列車」が発着していた敦賀港、赤レンガ倉庫や、洋食店「敦賀ヨーロッパ軒」(福井市のヨーロッパ軒よりソースがやや甘め、コクあり?)などを訪ね歩くのもよいだろう。

 どの方向にも乗り換えが不便なら、いっそ乗り換えを1~2本遅らせて、観光を楽しみ倒すのも手だ。

【福井駅】新幹線ホームは1面2線? でも改札外の施設が充実

福井駅ホームと駅名看板

 北陸新幹線・福井駅は、建設当時の諸事情があって1面2線(上下の線路に、細長くホームが挟まっている)。通常の新幹線駅と比べてホームがかなり狭く、多客時はすぐに人があふれる。開業日も改札内が全体的に混み合い、人混みが解消されるまでエスカレーターを止め、客をエスカレーター上で待たせるという対応も何度か見られた。

新幹線改札の周辺。観光交流センター1階、2階カフェ、通路の「フクイラプトル」、3階展望スぺースからの眺め

 こういった状態なので、改札内の待合室はホーム上の小さい建屋のみだ。しかし、新幹線B改札を出れば、すぐ横に「福井市観光交流センター」があり、鉄道車両型のベビーカステラが人気のカフェ「さんじのおやつ」が2階に、観光案内所と休憩スペースが1階にある。多くはないもののコンセントもある。新幹線の乗車前に早く駅に着いたら、ひとまずはここで時間をつぶしたい。

 なお、この建物の3階展望スペースに上がれば、新幹線を真横から、「えちぜん鉄道福井駅」を正面から眺めることができる(エレベーターあり)。北陸随一のトレインビュースポットとして、子連れのお出かけスポットに、ぜひともお勧めだ。

福井鉄道・えちぜん鉄道の車両
「くるふ福井駅」限定販売の羽二重餅
東尋坊
恐竜博物館のパフェ

 駅構内の通路には、「はぴラインふくい」(旧・北陸本線)福井駅の改札、お土産物や駅弁などが揃う「くるふ福井駅」、立ち食いの「今庄そば」やイベントスペースなどがギュっと凝縮されている。特に「くるふ福井駅」は全44店の物販店が揃い、福井名物の「羽二重餅」関連商品だけでも、複数のお店で数十種類も買えるのだから驚きだ。

 開業日にはこの通路に人が殺到し、「くるふ福井駅」は大行列で入店規制。今庄そばですら大行列で警備員出動という、普段ではまずあり得ない光景も見られた。

 路線バスは福井駅の西口と東口に分散(西口の方が発着が多い)している。私鉄乗り換えは、福井鉄道(市街地方面への路面電車)は西口、えちぜん鉄道は東口を目指そう。

 週末で半日か1日余裕があり、「観光に行きたい!」という方は、とりあえず土日祝日限定の「えちぜん鉄道」フリーきっぷを買うのがお勧めだ。三国方面なら東尋坊、勝山方面なら「福井県立恐竜博物館」に行ける(いずれもバス乗り替えが必要)うえに、1200円という格安で販売しているため、1往復せずともモトが取れる。

【越前たけふ駅&芦原温泉駅】何もないけど駐車場完備&温泉ないけどグルメは完備!

越前たけふ駅
越前たけふ駅のホームと駅名看板

越前たけふ駅

 越前たけふ駅は、北陸新幹線・新駅のなかで唯一、在来線(はぴラインふくい)と接続していない単独駅だ。従来の越前市の中心駅である武生駅とは5km弱離れており、市街地とは路線バスでの接続となる。

 ただ、この駅の武器は「600台の無料駐車場」だ。全国屈指のクルマ社会である福井県は駅近くの駐車場までクルマで来る人がもともと多く、この一帯に多い精密工業メーカーの出張もクルマ+JR、もしくは飛行機(小松空港の駐車場サービスが充実している)の利用が根付いている。この駅は北陸道 武生ICが目の前にあり、うまくいけば広域から利用者を集めることができるだろう。

道の駅・越前たけふ

 もう一つの武器は、福井平野の南部には少ない「道の駅・越前たけふ」を併設していること。駐車場+商業施設で駅ににぎわいを呼んで認知度を上げ、たまに新幹線に乗ってもらおうという戦略なのだろう。ただ、この道の駅に入っている飲食店や物販コーナーは、18時までに閉まってしまうとのこと。朝晩に新幹線駅を利用する場合は、駅構内のあまり広くない待合室で待つしかなさそうだ。

 近くの観光スポットは「しきぶきぶんミュージアム(光る君へ 越前 大河ドラマ館)」(路線バスで約20分)があるが、2024年の大河ドラマ「光る君へ」終了とともに閉館する確率が高いと思われる。このほか、武生エリアのご当地グルメ「ボルガライス」(オムライスの上にカツが乗った一品)を食べ歩くのもよいだろう。

芦原温泉駅

北陸新幹線・芦原温泉駅と交流施設「アフレア」

 北陸新幹線・芦原温泉駅は乗り換え案内にかなり気を配ったようで、併設されているはぴラインふくい 芦原温泉駅への誘導看板もしっかり大きく、かつ周辺の観光地(芦原温泉・東尋坊・丸岡城など)へのバス時刻表を表示するモニターも、しっかり設置済み。京福バス・芦原温泉駅の案内所では、お得なバスのチケットも販売しているようだ。

 なお、この駅は「芦原温泉駅」とはいうものの、日帰り温泉などに入るには、バスでえちぜん鉄道・あわら湯のまち駅方面に移動する必要がある。

交流施設「アフレア」2階。温泉のように見えるプロジェクションマッピングもある

 新幹線への乗車待ち、お土産の購入は、新幹線開業に先立って開業した交流施設・アフレアで済ますことができる。1階には観光案内所「おしえる座ぁ」と、海鮮丼や「ふくいお揚げバーガー」(ふわふわの油揚げがバンズ替わり)などを出すフードコートなどがあり、2階はあわら市の自然・歴史・文化・食を案内する「ふくいミゅ~ジアム」(こういう綴りです)。なおミュージアム内に椅子と机があるので、ここなら冬場の列車待ちも寒くないはずだ(コンセントはない様子)。

【加賀温泉駅&小松駅】目の前に普通のスーパー&目の前に巨大重機!

加賀温泉の駅名看板
加賀温泉駅の全景

加賀温泉駅

 加賀温泉駅はもともと観光拠点として特急利用者も多く、開業当日の歓迎イベントも手慣れたもの。周辺一帯では陶器・漆器の販売やグルメイベント、高い日本酒や抹茶振舞いなど、安定したおもてなしを見せていた。

 この加賀温泉駅には、他駅のような交流施設や道の駅はない(建設計画中)が、目の前にあるスーパー・アビオシティには名産品や焼きもの、絵付けの体験コーナーまで揃った「加賀百選街」があり、十分に事足りる。また施設内にはスーパー(アルプラザ・平和堂)やケンタッキー・フライド・チキン、格安のフードコートなどもあり、暇つぶしには事欠かない。

 この駅も芦原温泉駅と同じく、近隣の温泉(山中温泉・片山津温泉)には路線バスに乗り換えていくことになる。

 駅構内には「Cafe&Bar 髙乃蔵」が新幹線開業と同時にオープン。地酒の呑み比べや「のどぐろ茶漬け」など、加賀の贅を尽くしたグルメを堪能できる。

 この店舗の経営にあたっている「高野商店」は加賀温泉駅の駅弁屋さんとして加賀の味覚を知り尽くしており、おそらくその味は間違いないと思われる。新幹線改札のすぐ前に店があるので、(荷物をまとめたうえで)発車3分前くらいまでなら、絶品料理を堪能しながら新幹線待ちをしてもいいだろう。

小松駅

小松駅西口。「こまつの杜」側にある
駅東口の「こまつの杜」(旧・小松工場跡地)奥は、旧・本社を復元した歴史館

 金沢駅から30km弱、IRいしかわ鉄道(北陸本線)の駅と併設の北陸新幹線 小松駅を擁する石川県小松市は、言わずと知れた建機メーカー・小松製作所(コマツ)の企業城下町。コマツ本体・関連会社ともに国内外への出張が多く、北陸新幹線の活用が期待されるところだ。

 駅東口には、同社の小松工場跡地を再活用した「こまつの杜」がある。世界最大級のダンプトラック「930E-2」(全高7.3m、積載重量297トン)の展示や、かつての本社屋を復元した歴史館「わくわくコマツ館」など、駅前ながら家族で楽しめる観光地・家族連れの行楽スポットとなっている。

 小松駅の構内には待合室やベンチがあるが、ゆっくりと列車を待つなら、小松駅の高架下にある交流施設「Komatsu9」をお勧めしたい。併設されているフードコート「小松KABULET(カブーレ)」は7~21時の営業、訪問先への差し入れに適したバラマキ土産の品ぞろえも良好。かつ、お手頃価格でドロップイン(一時利用)できるコワーキングスペースも併設するなど、ビジネスパーソンにはありがたい仕様となっている。

小松空港は国内4航路(羽田・新千歳・福岡・那覇)海外3航路(ソウル・上海・台北)に就航している

 小松駅は場所的に小松空港も近く、駅西口のバス乗り場から10分少々で到達できる。この空港は発着が多いだけでなく、併設されている航空自衛隊の戦闘機・ヘリなども合わせると、かなり多くの種類の飛行機を写真に収めることができる。かつごくまれにブルーインパルスもいたりするため(新幹線開業日。記念飛行の前にスタンバイしていた)、1日過ごしても飽きない。小松は土地柄そこまでの観光スポットがないこともあり、ここはぜひ空港探検をお勧めしたい。

行こう! 北陸新幹線・新駅巡りの旅

金沢駅の駅名看板。手前側の「こまつ」表記が加わった

 ネットワークが広がるにつれて、新幹線駅は「ただそこにあるだけ」から、「駐車場を揃えて、交流施設も作って」という、いまのユーザー・ビジネスパーソンの在り方に合わせた作りに変化を遂げている。いわば、北陸新幹線の駅は、現時点でもっともアップデートされた地方の鉄道駅、ともいえるだろう。

 新幹線で目的地に行って帰る、といった旅もいいが、たまには「新・新幹線駅めぐり」もお勧めしたい。JRや地元自治体の意図を観察しながら、交通拠点としての機能を(勝手に)評価しながら巡る旅も、ちょっと底意地がわるいが、おもしろい。