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JTB、2024年の旅行動向見通し。訪日旅行は過去最高、国内・海外旅行はコロナ前まで回復せず
2023年12月21日 16:13
- 2023年12月20日 発表
2023年末までの新型コロナの状況と旅行の動き
国連世界観光機関(UNWTO)が11月に発表した「World Tourism Barometer」によると、1~9月の海外旅行者数は新型コロナ前の87%まで回復した。ただし欧米などに対して、日本を含むアジア太平洋の回復は遅れ気味という。
また国内では、2023年4月に水際対策が終了し、5月には新型コロナの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類に移行した。これによって旅行の制度面における制約はなくなり、地域によっては全国旅行支援や自治体独自の旅行支援策を講じている影響から、インバウンドの回復と相まって全国的に賑わいが戻ってきている。一方でサービス業従事者の人手不足、宿泊料金高騰、オーバーツーリズムなどの問題が懸念される。
旅行を取り巻く経済環境と暮らし向き
IMF(国際通貨基金)が2023年10月に公表した「世界経済見通し」では、日本の成長率は2.0%で、2022年の1.0%を上回る予想となっているものの、2024年は1.0%と厳しい予測。
消費者物価指数を見ると交通・通信は着実に上昇しており、ガソリン代は補助金の影響で価格は抑えられているものの、170円前後が常態化している。
また、日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」の「現在の暮らし向き」は「ゆとりがなくなってきた」の割合が2021年9月から一貫して増加傾向にあり、2023年9月には57.4%と2021年9月時点から21.1ポイント高くなった。
旅行者の現状
国内旅行について、新型コロナによる行動制限が発出されなかったことに加え、5類への移行、全国旅行支援の実施などによって、宿泊者数は新型コロナ前と同程度まで回復。2023年の延べ宿泊者数は1~10月の累計が3億9876万5000人泊で、2022年同期比で113.7%、2019年同期比は99.3%となった。
海外旅行について、4月29日に日本の水際対策が終了したものの、物価高や円安、一部地域での情勢不安の継続などによって、海外旅行者数の回復は遅れている。1~10月の累計は764万9000人で、2022年同期比で390.2%、2019年同期比は45.7%となった。
訪日旅行について、日本の水際対策が終了したことや、世界各地での新型コロナ対策の終了・緩和などにより、回復の勢いが増している。1~10月の累計は1989万1000人で、2022年同期比で1302.3%、2019年同期比は73.9%。国・地域別にみると、2023年1~10月の累計は多い順に韓国(552万6000人、対2019年同期107.7%)、台湾(339万9000人、同81.9%)、中国(185万4000人、同22.8%)となった。
2024年のカレンダーと主なイベント
2024年は3連休以上が11回あり、2023年(7回)よりも大幅な増加となる。GWは前半(4月27日~29日)と後半(5月3日~6日)に分かれるが、その間を休めば10連休に、夏休みはお盆期間を休むと8月10日~18日の9連休になる。
フランスでは、第33回オリンピック競技大会が7月26日~8月11日に、パリ2024パラリンピック競技大会が8月28日~9月8日に予定されており、パリを中心とした複数の都市やタヒチで開催する。
国内では、北陸新幹線の金沢駅~敦賀駅間が3月16日に開業、富山県・黒部峡谷では、6月30日に黒部ダムと黒部峡谷鉄道欅平駅を結ぶ黒部宇奈月キャニオンルートが一般開放される。
テーマパークについて、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは春に「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のスペースを1.7倍に拡張した「ドンキーコング・カントリー」が開業予定。また東京ディズニーシーでは、「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」をテーマとする3つのエリアと新たなディズニーホテル「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」で構成される新テーマポート「ファンタジースプリングス」が開業する。
商業施設においては、大阪駅周辺で行われている再開発「グラングリーン大阪」の一部が9月に先行開業予定。愛知県名古屋市では、老朽化のため2019年に閉館し再建されていた「中日ビル」が春にグランドオープンするほか、愛媛県松山市では、道後温泉本館が7月中旬より5年ぶりに全館で営業を再開する。
宿泊施設においては、大和リゾートが既存のダイワロイヤルホテル12軒を日本初の「グランドメルキュール」ブランド、11軒を「メルキュール」ブランドとして、4月1日に全国一斉開業する。ほかにも、京都市では春に「バンヤンツリー・東山京都」が、大阪市では7月開業予定のKITTE大阪内に「大阪ステーションホテル」が開業予定。
国内旅行の動向(訪日旅行は除く)
2024年の国内旅行人数は2億7300万人、平均消費額は物価の高値傾向が継続すると予想し4万3200円、国内旅行消費額は11兆7900億円と推計する。2023年5月に新型コロナが5類へ移行したものの、高止まりする旅行費用や旅行意欲の落ち着き(リベンジ消費の一巡)などが影響し、旅行者数は伸び悩むと考えられる。
同社が実施した「年末年始(2023年12月23日~2024年1月3日)の旅行動向」調査のなかで、「すぐに行きたい」という回答が多いのは「自然が多い場所」や「公共交通機関やマイカー、レンタカーなどを利用して行く近隣の都道府県」となっており、日本人のライフスタイルや価値観の変化が国内旅行や国内観光地にも影響を及ぼしている。
また、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した旅行・観光事業者が増えており、観光庁では、2020年6月「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」の策定以降、持続可能な観光地マネジメントを促進している。
そのほか、一部の観光地では旅行需要の回復によるオーバーツーリズムが問題となっており、政府は「オーバーツーリズム対策パッケージ」として観光地の混雑状況の配信による分散化、乗り合いタクシーの導入などの支援を想定している。
一方、京都では、拝観時間を拡大することで分散化を図っているほか、混雑状況をアプリに表示したり、リアルタイムで現場映像を伝えたりするなど、すでに対策を取っている観光地もみられる。
海外旅行の動向
2024年の海外旅行者数は1450万人、平均消費額は円安や海外物価高などの影響から2000年以降で最高額の34万2100円、海外旅行消費額は4兆9600億円と推計。日本の水際対策は終了したものの、経済的要因に加えて不安定な国際情勢などから海外旅行者数の回復は緩やかになり、新型コロナ前の人数にまで戻るのは2025年以降と予想する。
前述の調査において、今後の海外旅行で「すぐに行きたい」という回答はハワイが最も多く、次いでヨーロッパ、オーストラリア・ニュージーランド、台湾、米国本土、韓国、グアム・サイパンとなった。遠方と近隣に分かれる傾向があり、前向きな反応がみられる一方で、経済的な要因などが妨げとなっている様子もうかがえる。
訪日外国人客数
2024年の訪日外国人客数は3310万人と推計。水際対策が終了したことや、欧米などよりも相対的に安い物価と円安というお得感もあり、急速に回復すると考えられる。
韓国、台湾、アメリカ、香港などはすでに新型コロナ前を上回るかそれに近いレベルにあり、訪日外国人客数は過去最高になると予想。回復が大幅に遅れている中国も個人旅行を中心に回復が進むと想定している。
2023年10月に日本政策投資銀行と日本交通公社が発表した「DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査 2023年度版」では、「次にあなたが観光旅行したい国・地域」は日本が前年に続いて1位となった。また地方への訪問意向も高く、国が進める地方への分散化への期待が高まる。