車中泊の拠点 RVパークを訪ねる

海まで3m!?の岸壁で車中泊してみた。沼津・大瀬崎で駿河湾と富士山の見える絶景RVパーク!

「RVパークちどりマリンサービス」

大瀬崎(おせざき)にあるRVパークちどりマリンサービスに行ってみた

 JRVA(日本RV協会)がオートキャンプや車中泊を楽しむ人に向けて、安心して快適に利用できる施設として全国に展開を進める「RVパーク」。

 今はまだキャンプ場ほど存在が知れわたっていないものだけど、観光+車中泊という旅のスタイルは定着してきているし、車中泊をやってみたいと思っている人も多いだけに、今後はもっと注目されてくるはずだ。

 そんなRVパークに興味を感じて、実際に利用してみるというこの企画。前回は千葉県君津市にある「RVパーク七里川」を紹介した。千葉の山間部にあって、テントを張れたり、条件付きで焚き火OKだったりと、オートキャンプ場のように過ごせるいいところだった。

 さて、今回に行ってきたのは沼津市西浦江梨(西伊豆エリア)にある「RVパークちどりマリンサービス」(静岡県沼津市西浦江梨323-2)。運営するのは沼津市内浦三津にある千鳥観光汽船。沼津、内浦、大瀬崎の3か所でクルージング、マリンレジャーなどの施設を保有していて、RVパークは大瀬崎にある「ちどりマリンサービス」の駐車場を利用したものだが、ここの特徴はなんと言ってもロケーションのよさ。

 写真で分かるように岸壁からかなり近いところにクルマを駐められて、さらにきれいな海越しに富士山が見えるという風景が楽しめるのだ。

 営業日は通年だが、施設の都合により休業もあるので利用したいときは事前に問い合わせた方がいいだろう。なお、記事が掲載されるころから施設を一部改装する予定なので、工事が終わる2023年7月ごろまでRVパークちどりマリンサービスは臨時休業になる。この間は施設に人がいないので、予約や問い合わせは内浦にある千鳥観光汽船本社宛てにしてほしい。

RVパークちどりマリンサービスを運営する株式会社千鳥観光汽の運行部門取締役部長の大川さん(右)とRVパークちどりマリンサービスのスタッフさん
駿河湾と富士山を背景に車中泊できるのがRVパークちどりマリンサービスの特徴。区画は5台分、海沿いに3区画、手前に2区画。色が変わっているところが区画。料金は1泊4500円(2023年5月時点)で、改定の予定あり
伊豆半島の西側の付け根あたりが大瀬崎。北側に駿河湾と富士山が見える場所だ
大瀬崎は有名なダイビングスポットで、日本でも有数の透明度が高い海だそうだ。写真でもそのキレイさは分かる。海底までクッキリ見えていた
夏は海水浴の名所。浜沿いのお店は取材に行った5月の平日でも営業していた。海水浴シーズンでなくても11時から14時ごろまで昼食を取ることはできるという
岬の先端にあるのが「大瀬神社」。こちらは漁業を営む人から海の守り神として崇められているそうだ。正式には引手力命神社という。このように徒歩でまわれるエリアに見どころが詰まっていることもこの地の特徴
境内には伊豆の七不思議と言われる「大瀬の神池」がある。注ぎ込む川などない海に突き出た場所であり、荒天時はしぶきも多く飛んでくる場所ながら、長年に渡り淡水の状態を保ち、鯉をはじめ約3万匹の淡水魚が棲んでいるという不思議な池
池の周辺を回る遊歩道を歩くと見られるのが樹齢1500年以上と言われるご神木。池を含めた岬の先端エリアに行くには100円の入場料が必要。岬で見られる風景がとてもいいので現地に行ったら池にも足を運んでほしい
岬にある灯台。神池から脇道に入るとこの場所に出られる。駿河湾の向こうに富士山が見える。岬の先端エリアにはこのように海沿いに出られる小道が何本かあった

きれいな海と富士山が見える絶景RVパーク

 では、改めてRVパークちどりマリンサービスを紹介しよう。東京からだと新東名高速道路の沼津長泉ICから伊豆縦貫道に入り、江間ICで降りて県道134号を沼津方面へ。トンネルを抜けて「口野放水路」という交差点を伊豆半島方面(左折)へ曲がって、海沿いの道を約1時間ほど走ると到着する。

 有料道路を降りてからの距離はそこそこあるのだけど、海に沿って走る道路は景色がいいだけではなく、通過する街並みも趣があったりとドライブ好きな人であれば「走っていて飽きない道」だと思うので、距離はあまり気にならないのではないだろうか。

 そして「大瀬崎」の案内板がある二股を右へ行くと大瀬崎の海水浴場へ出るが、海水浴用の駐車場入口の手前にRVパークへの入口があるので、そこを入って海沿いまで行くと到着する。

ドラレコの画像から。帰り道に撮ったので向きは逆だが、途中にはこんな感じの道が多く、全般的にも道幅は細く見通しはよくないので、道中は安全運転を心がけてほしい
現地までの道のりに大きなスーパーマーケットはないので、買い物が必要なときは沼津市内まで行くことになる。口野放水路の交差点を曲がらず沼津方面に15分ほど走ったところにあったのがこちら。奥まった場所にあったのでカーナビでは名称検索をした方がいいかも。今回はここで買い物をした
県道17号線から大瀬崎への分岐。二股の真んなかに案内板がある
二股を右へ行くと下り坂になり、大瀬海水浴場の駐車場の入口手前にRVパークの看板が見える。看板の手前を右へ曲がるとちどりマリンサービスだが、そこまでの道も細く脇の駐車場とは高低差がありつつ、道路脇に保護策などないので走行は注意すること

 RVパークちどりマリンサービスは、マリンレジャー施設用有料駐車場内にあり、RVパークとして用意されている区画は5台分。うち3台分が海沿いとなる。

 区画は一般的な駐車枠の2台分を1つの区画としているので特に横幅に余裕があり、メジャーの実測では約5×6.5m(縦×横)。これだけの区画があればクルマの横にテーブルを展開するのも余裕だろう。

 なお、こちらはテーブルやイスを出すのはOKだが、テントを張るのはNG。また、焚き火は直火はもちろん焚き火台利用でもNGだ。ただ、テーブルでのカセットガスコンロの使用はOKなので、カセットガスコンロを使った簡単な調理はできそうだが、状況は変わることもあるので予約時に確認してほしい。

 電源は4台分あって利用は無料。延長コードも貸してもらえるが、区画によっては長さがギリギリになりそうなので、継ぎ足し用としてコードを持参しておいた方がいいように感じた。

RVパークの駐車区画は通常の2台分で1区画が基本。メジャーの実測値は約5×6.5m。大型のキャンピングカーでも横は広々と使えそうだ
海と逆側は山となる。夏場は蚊も多いそうなので対策はしておきたい
電源は4台分用意されている。1台ぶんは10Aなので電子レンジやクーラーなど、大きな電気を使う機材を動かすときはブレーカー上がりに注意
電源からクルマまでの延長コードは貸してもらえる。どの区画も長さは足りそうだが、余裕があるかと言うとそうでもないので、念のため延長コードは用意しておいてもいいだろう

 そのほかの施設について。トイレは建屋内にあるが施設の営業時間(8時~17時)までが利用可能時間で、そのほかの時間帯は約200m先にある公衆トイレを利用することになる。この公衆トイレは清掃もちゃんとされていて気持ちよく利用できそうだが、区画から少々離れているので不便さは感じるのは確かだ。

 そうしたことから夏のシーズンまでに建屋内トイレを24時間使えるよう、建屋に夜間用入口を増やすなど改装を行なう予定だという。

 入浴設備については、温水が出るシャワー室が屋外に設けられている。ただ、こちらは屋根やブースごとの仕切りはあるが、簡易的な作りとなっていた。とはいえ海沿いの施設だけにシャワーが使えるのはありがたい。ちなみに約13kmほど走ったところにある「道の駅くるら戸田(へだ)」までいけば、道の駅内に「戸田温泉 美肌の湯」という温泉施設がある。

ちどりマリンサービスの建屋。受付はここで行なう。改装にため6月中はクローズするとのこと
建屋内にトイレがある。夏のシーズンは軽食もできるようだ
テラス区画ではBBQもできる。今後はRVパークとBBQのセットプランを設定することも検討中とのこと
縦や横に飲料水の自動販売機がある。24時間利用可能
徒歩2~3分(約200m先)にある公衆トイレ。これまでは夜間、早朝はこちらを利用していたが、建屋内のトイレを24時間利用できるよう改装予定なので便利になるはず
こちらがシャワー。利用料は300円。シャワーブースは多いので満車の状態でも順番待ちはあまりなさそう。ただ、ブースは屋外にあって屋根や仕切りはあるが簡易的な作りだ
こちらは炊事場。屋根付きで夜間は照明も点くが、水栓は1つなので混んでいるときは譲り合いを

夏前の静かな海でぼ~っとして、そして眠る贅沢な時間

 筆者がおじゃましたときは利用者が1人だけだったので、とても静かな環境で過ごすことができた。

 区画はもちろん海寄りを選択したが、区画の端から海までは通路を挟んで3~4mほどの距離とまさに海沿い。全国に300以上のRVパークがあるけど、ここまで海に近い場所に泊まれるRVパークはここ以外ないだろう。

 また、目の前の大瀬湾は魚影が濃いようで海釣りのスポットでもある。RVパークに駐めたクルマから竿を伸ばして……というのは厳しいけど、すぐそばに桟橋があるので、釣りが好きな方であればなおさらここは気に入るだろう。

 そしてその海は冒頭でも書いたように透明度が高くきれいだ。ちどりマリンサービスではシーズンになるとダイビング体験なども行なうそうなので、RVパーク利用時にはそうしたレジャーを楽しむのもいいだろう。

 ちなみに取材に行った時期は海から陸への風が吹くそうなので、海の匂いが強いかなと思いきや、かすかに潮の匂いがする程度。「あれ?」と思って千鳥観光汽船の大川さんに伺ってみると、強めに感じる海の匂いは海藻が腐ったり赤潮などが出るなど海が汚れたときに感じるもので、きれいな海ではそのような匂いはないそうだ。そうした話を聞いたあとに大瀬湾を見ると、改めてきれいさを感じた。

海側からRVパークを見る。撮影時は引き潮の状態で、夜にかけて満潮になった。満潮時は奥に見える段になっているところの上まで潮が上がってくる
すぐそばに桟橋がある。多くの魚がいるので海釣りのスポットでもあるようだ。釣り好きな方であれば車中泊と釣りが楽しめるということ
満潮時は桟橋の脚の部分が見えなくなるくらいまで海面が上がる
これほどきれいな海が東京からそう遠くないところで見られる。なお、駿河湾は日本で一番深い湾で、もっとも深いところの水深は2500mあるそうだ
車中泊モードにしたN-VANの車内。大人1人であれば荷物を車内に置いてもムリせず泊まれる
車内から海を見る。この絵も最高である
日のあるうちに施設の取材をすませ、周辺は翌日午前にまわるという段取りだったので、夕方はこの景色を眺めながらゆっくりできた
日暮れの海をゆっくり見た経験もあまりなかったので、日没までの時間は新鮮なものだった
車外での簡単な調理(カセットガスコンロ使用)は許可されていたので今回は外で。といってもソーセージをボイルして、茹であがったら表面を軽く焼いただけ
メインは来る途中にスーパーマーケットで買っておいたお弁当だが、1品でも温かいものがあると美味しさが増す
夕食が終わればもうやることはないので、車外に出て星空撮影をした。月齢的に明るさがある夜だったので肉眼ではそれほど星は見えなかったが、カメラで撮るとこのとおり。ぜひ拡大してみてほしい。新月のころならたくさんの星が見られるかも
N-VANを入れて撮ってみた。これも肉眼よりかなり多くの星が写った
沼津港の方角を撮影。港や街の灯りがきれいだった
実際の暗さはこんな感じなので、夜に車外に出るとき用に携帯できる照明を持っていった方がいいだろう

 取材に行った日は波が穏やかで、ドアを閉めてしまえば物音1つない静かな環境だったので、ぐっすり寝ることができた。そして窓からこぼれる明るさで早朝に目が覚めてドアを開けて外を見ると、桟橋にはもう釣り人が来ていた。

 そういえば夜も遅くまで釣りをしている人がいたけど、今回のようにほかに誰もいない状況では、釣りの人がいることは安心感につながっていた気がするので、静かなことはいいけど適度に人はいた方がいいということも感じた。そういう面でもこの場所は過ごしやすいといえるかもしれない。

朝の風景。今回は2日とも晴天に恵まれたので、RVパークちどりマリンサービスの特徴である景色のよさを堪能することができた

 ということで、RVパークちどりマリンサービスの紹介を終えて、最後に1つ。

 千鳥観光汽船では7月23日~8月21日の期間、大瀬崎~沼津港の間に定期船を航行しているので、RVパークに泊まりつつ、海路で沼津港に行って、沼津港周辺の観光をすることも可能だ。

 ちなみに大瀬崎から沼津港へクルマ移動をすると、渋滞がない状況でも約90分ほど掛かるし、沼津港は海の幸を求める人の人気スポットなので平日でも駐車場は結構埋まっている。

 しかし、大瀬崎からの海路での所要時間は約30分、下船したら即買い物ができるとなかなかに魅力的なので、定期船の運航がある時期にRVパークに泊まるなら船の移動も体験してみてはどうだろう。

7月23日~8月21日は大瀬崎~沼津港に定期船を運航。約30分で移動できる。夏のシーズンは道路も混むので船の移動は圧倒的に早い
沼津港には海の幸を販売する店や食事処も多い。また、大型展望水門「びゅうお」などの観光スポットもある。びゅうおはRVパークからも海ごしにシルエットを見ることができた
ちどりマリンサービスにある桟橋。ここから出港する。RVパークからもすぐそばだ
千鳥観光汽船の船。ここは沼津港だ。船は大きさ違いで3隻あって、当日の利用客にあわせてどの船を使う決めるという
アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」で主要キャラクターの1人が海に飛び込むときに使ったのが、内浦にあるこの桟橋。すぐ横の砂浜や道を挟んだところにある旅館もアニメの聖地になっている
深田昌之