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JR東海×JR東日本×新幹線アイス=なぜ「ずんだ」? 初コラボの味が決まった理由

2023年6月26日 発表

さまざまな候補のなかから選定されたフレーバーは、宮城県でおなじみの「ずんだ」であった。7月1日に発売する

 JR東日本サービスクリエーション(JRESC)とジェイアール東海パッセンジャーズ(JRCP)は6月26日、初のコラボレーションとして「ずんだアイスクリーム」を発表した。発売は7月1日、予定販売期間は4か月程度としている。

コラボ商品は「ずんだアイスクリーム」

 これは、JRESCとJRCPが組んで、新幹線の車内で新たに、オリジナルの「スジャータ・アイスクリーム」を発売する計画を立ち上げたことで実現したもの。このアイスクリームは生乳、北海道産の生クリームがベースで、さらに滋賀県産滋賀羽二重糯米を用いた小粒のお餅が入れられている。

 東北地方の方なら説明はいらないかもしれないが、「ずんだ」とは、未成熟な大豆(いわゆる枝豆)、あるいはそら豆をすりつぶして作る、緑色のペーストのこと。すでに「ずんだ餅」など、お菓子の素材に用いられた事例もある。それを今回、アイスクリームのフレーバーとして展開することになった。

 このほか、関連グッズとして、新幹線電車をあしらったスプーンが登場する。こちらもJR東日本・JR東海の双方が登場しており、JR東日本の新幹線電車からはE5系、E6系、E7系の3系列、JR東海の新幹線電車からはN700Sとドクターイエローこと923形、そして超電導リニアのL0系というラインアップだ。

関連グッズとして、JR東日本とJR東海の新幹線電車などをあしらったスプーンが登場する

コラボ企画の背景事情

 今回のコラボレーションが実現したきっかけは、2022年の秋に行なわれた交流会。その席で、JRESCならびにJRCPの関係者の間で「アイスクリームの共同開発はどうだろう?」という話が出たのだという。

 新幹線の車内販売で扱っている、スジャータの「プレミアムアイスクリーム」は、その硬さゆえに「#シンカンセンスゴイカタイアイス」として有名だ。レギュラー商品は定番のバニラだが、そこに期間限定品を加えることで新たな楽しみを生み出している。

「#シンカンセンスゴイカタイアイス」決めのポーズ(?)。誰が最初に考え出したのか、スプーンを立てるのがお約束である

 一時は新型コロナが原因で、都道府県間をまたぐ移動の自粛が呼びかけられたため、新幹線の車内は閑古鳥が鳴いていた。しかし最近は、客足がすっかり戻ってきている。そうなれば車内販売の利用も増える。そして車内販売では、コーヒーとアイスクリームが定番だ。

 そこから、「では、そのアイスクリームの新商品を共同で」という話が出たのだという。2社が組むことで販路が広がり、生産数が増えれば、広くアピールできるうえに価格面のメリットにもつながる。

 また、鉄道事業者の立場からすると、「沿線の活性化」は欠かせない課題となっている。その視点に立てば、自社エリアにある特産品をフィーチャーするのは自然な展開となる。「○○県名物の△△をアイスクリームのフレーバーにしました」といった図式だ。

 そして今回は、「東日本をイメージできる」「夏の季節感」というテーマが掲げられた。

 もちろん、いきなり1つの候補だけが出てきて話が進んだわけではなく、さまざまな候補が挙げられた。例えば、福島県の「桃」は美味しいことで知られているし、山形県といえば「サクランボ」、青森県といえば「りんご」である。ただ、このように各県に名物の果物があっても、それがほかの地域と重複すると、インパクトが下がってしまう。

 そこで、さまざまな候補のなかから選び出されたのが「ずんだ」だった。

フレーバーの候補はいろいろ考えられるが、決定にいたるまでには、考慮しなければならない要因がいろいろある
そして「ずんだ」で行こうという結論が出たわけだ
第1回目の選定会では、「ずんだ」を用いたお菓子も持ち込まれていた

新商品を世に出すのは簡単ではない

 しかし、事業として商品化して販路に乗せる以上、クリアしなければならない課題はいろいろある。おもしろそうなフレーバーだから、美味しそうなフレーバーだからこれで行こう、という単純な話ではすまない。

 期間限定商品では、レギュラー商品とはテイストが異なる、ユニークな商品が求められる。だからといって、一部の人にだけ受け入れられるものでは具合がよくない。ユニークでありながらも、多くの人に受け入れられるものでなければならない。

JRCPによる期間限定商品の一例、「キャラメルアーモンドプラリネ」。「ほろ苦いキャラメルアイスクリームにアーモンドプラリネを加え、濃厚な味わいに仕上げました」との説明である

 また、既存の工場設備で製造が可能、かつ安定した品質を維持できること、という要件もある。そしてもちろん、原材料の安定供給は不可欠な条件だ。その点、スジャータめいらくグループは、原材料の調達~製造~販売まで、自社グループ内で完結できる体制を構築している点に強みがあるという。

 そういう観点も交えて、「ずんだアイスクリーム」に決まった。そして今回のコラボレーションでは、JRESCとJRCPから実際に車内販売の現場に立っている乗務員が参加して、商品の選定や販売に関する活発な意見交換が行なわれた。

いきなり内容が決まったわけではなく、試食・評価・検討を重ねたうえで発売にいたっている
パッケージデザインについても、さまざまな案が出て試作が行なわれた

関連グッズとしてスプーンが登場

 なお、今回のコラボレーションでは、アイスクリームだけでなく、関連グッズとして新デザインのスプーンを発売する。

 JRCPではすでに、「アルミアイスクリームスプーン」を販売している。実際、アイスを頼むと「スプーンも一緒にいかがですか」とお勧めされる。このスプーン、アルミニウムの熱伝導性のよさを活かして、硬いアイスでも手から伝わる体温で適度に溶かして食べやすくなるという触れ込みだ。

 つまり、すでに「アイスクリームとスプーンのセット」という土台はあるので、関連グッズの展開としては自然な流れといえる。ところがこれも、どのようなものを作り、どのように販売するかを決めていかなければならない。

JR東海からは3車種が登場する。そこにJR東日本のE5系も加えたのが上の4本セット。「のぞみ」「ひかり」車内とオンラインショップで販売する(画像提供:JRCP)
JRESCでは、「E5系とドクターイエローのセット」と3系列それぞれの単品販売があり、東北・秋田・山形・上越・北陸の各新幹線車内で販売する(画像提供:JRCP)
E5系バージョン(画像提供:JRCP)
E6系バージョン(画像提供:JRCP)
E7系バージョン(画像提供:JRCP)

 トラベル Watchでは、この「ずんだアイスクリーム」が世に出るまでの過程を追っていた。それについて、別項で詳しくお伝えする。