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エールフランスの羽田線ファーストクラス復活、ビジネスクラス刷新。KLMはプレエコを新規投入。両社が夏ダイヤの増便を説明

2023年3月16日 実施

夏スケジュールを説明するエールフランス航空/KLMオランダ航空 長距離事業部シニアバイスプレジデント ゾラン・ジェルキク氏(写真右)と日本・韓国・ニューカレドニア支社長 ボリス・ダルソー氏(写真左)

 エールフランス航空/KLMオランダ航空は3月16日、日本路線の夏ダイヤと新しいサービス拡充などについて説明した。担当したのは長距離事業部シニアバイスプレジデントのゾラン・ジェルキク氏。

 最初にエールフランス航空/KLMオランダ航空の現在の状況について。厳しい情勢のなかでも柔軟に対応したことから、2022年の座席供給数は2019年比で85%まで回復し、グループの売上高も264億ユーロと2019年比で97%まで回復している。そのなかでは第3四半期決算が2019年の同期を上回るなどしており、純利益は7億ユーロを計上した。

 2022年当初はウクライナとロシアの紛争、オミクロン株の流行、市場のインフレ、燃油の高騰など、見通しは決して楽観的ではなかったが、業績が回復してきたこともあり、「国から貸与されていた資金をほぼすべて完済」と説明した。今後の目標としては、2023年には座席供給数を2019年比で95~100%まで、2024年には100%まで戻すとしている。

 そのような目標を達成するためにエールフランスとKLMの持つ強みをグループ内で活かすことが重要であり、よりよいシナジーが生まれるとしている。KLMは1919年に創業し、エールフランスは1933年からと、長期間にわたってヨーロッパを代表するエアラインとして運営されてきたノウハウがある。パリとアムステルダムという2つの大きなハブ空港を拠点とし、就航先は300都市を数えることから、ネットワークをバランスよく構築することで幅広い需要に対応できるのも強みだ。また、コロナによる減収で財政状態は厳しい立場に置かれているが、最新機材への更新も継続的に続けていくとしている。

KLMは新クラスを導入し、エールフランスはビジネスを刷新してファーストを復活

 今回はプロダクトサービスを日本線に3つ導入したことも説明した。KLMは「プレミアム・コンフォート」クラスを新しく導入し、エールフランスはコロナ禍で休止していたファーストクラス「ラ・プルミエール」を羽田~パリ線に復活させ、ビジネスクラスも新しい仕様に変更した。

 KLMのプレミアム・コンフォートはビジネスクラスとエコノミークラスの中間に位置付けられるもので、出張などのビジネス需要、余裕のある旅を楽しみたい人をターゲット層に想定している。

 足元のスペースは99cmとかなりの広さがあり、リクライニングも20cmほど後ろに下げることが可能だ。座席スクリーンにはより大型の13.3型液晶を採用し、テーブルも作業しやすいように大型化している。また、食事などもプレミアムコンフォート独自のケータリングサービスを提供する。2022年からキャビンの改装を開始しており、今年中には所有するボーイング 787型機のすべてに導入し、2024年の第1四半期までには、すべてのボーイング 777型機にも導入する予定だ。

KLMオランダ航空は新クラスであるプレミアム・コンフォートを導入
シートピッチは約97cmと広く、フットレストを備える。液晶ディスプレイは13.3型を搭載
ノイズキャンセリングヘッドフォンも備え付けている
メインディッシュは3種類から選べる

 エールフランスの新しいビジネスクラスに導入したシートは3つの「F」がコンセプトになっており、2mのベッドになるフルフラット仕様、通路に出やすい1-2-1配列のフルアクセス仕様、顔の高さまで遮ることができるスライドドアによるフルプライバシー仕様が大きな特徴になっている。

 2022年から長距離路線のボーイング 777-300型機に導入を始めており、2023年末までにはすべての路線に投入する予定で、日本では羽田~パリ線にサマースケジュールから導入する。

 そして、重要な路線のみ投入されているファーストクラスも3月26日パリ発(羽田発は27日)から羽田線に再就航すると説明した。機内サービスでは「フランスのエアラインなので、機内で提供する食事にも力を入れています」と話し、ビジネスクラスとファーストクラスで提供されるパリ発の機内食は、ミシュランに認定された17人のシェフが考案したものであり、レベルの高いフレンチが楽しめるのも特徴として挙げた。

エールフランス航空のビジネスクラスに導入される新しいシートはプライバシーをさらに配慮したものになっている。スライドドアは隣接する通路側シートの間にも設置されている
わずか4席しか設定されていないエールフランス航空のファーストクラス。防音機能のある厚地のカーテンを備えた個室仕様で優雅なひと時を過ごせる。パリ(CDG)空港には専用チェックインカウンター、アラン・デュカス監修専用ダイニング、シスレー監修の専用スパを備えるなど、すべてがプレミア仕様

環境に配慮したエアラインとしてCO2の排出量削減に積極的に取り組む

 エールフランスとKLMグループではサスティナビリティの観点からもいろいろな施策を進めていることも説明した。例えば、搭乗客に事前に機内食のメニューを選択してもらい、廃棄する量を減らす取り組みであったり、リサイクルされていないプラスチック製品の使用を今後は9割削減する取り組みを紹介した。

 CO2の排出量削減にも15年前から積極的に取り組んでおり、フライトによる直接的な部分であったり、企業活動による間接的な部分なども含めてプロジェクトを進めている。直接的な部分の大きな取り組みとしては、最新型機材の導入が大きな効果を上げることができるので、ボーイング 787型機やエアバス A350型機を今後も導入を続け、2028年までには保有機材の64%を入れ替える予定だ。

 フライトにおいても、燃料消費を考えた最適ルートの選択や地上走行時は片側エンジンのみ使用するなど環境負荷の少ない操縦方法を取り入れている。また、環境問題の解決策として注目されている持続可能な航空燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)の導入にも力を入れており、開発や製造を行なう企業を支援しているとのことで、KLMではSAFを100%使用したエンジンテストに成功していることも紹介した。グループでは2030年までにSAFの混合率を10%まで引き上げる目標を掲げており、Neste(フィンランド)、DG Fuels(アメリカ)と供給契約を締結したことにより、現在のところ3%分まで確保できているとのことだ。SAFを導入することで「CO2の排出量を8割抑制する効果が見込めます」と話し、SAFの導入は喫緊の課題であることも説明した。

夏ダイヤはエールフランスは増便し、KLMは現状ダイヤを維持

 3月26日から適用される日本路線の夏ダイヤについては日本・韓国・ニューカレドニア支社長のボリス・ダルソー氏が説明した。エールフランスは現在、日本~パリ間を羽田が週5便、成田は週3便、関空は週3便でそれぞれ運航している。サマースケジュールでは、羽田~パリ線では定期便の運航数を増やし、1週間に10便を運航する計画だ。夜便はデイリー運航となる。関空~パリ線は週5便に増やし、成田~パリ線は週3便を維持する。

 KLMは、日本~アムステルダム間を成田からの直行便が週2便、ソウル(仁川)経由が週3便の計5便で、関空~アムステルダムへはソウル経由の週2便体制を継続する。ただし、成田線に関しては、9月から直行便を週5便に増やし、ソウル経由と合わせてデイリー化する予定であるとしている。新しいプレミアム・コンフォートについては、日本路線では5月から導入する予定であることも説明した。

 日本就航70周年をKLMが2021年、エールフランスが2022年に迎えており、回復の兆しを見せるアジアにおいても日本マーケットは重要な位置づけであるとし、「新しいプロダクトを導入するというのは、日本からの本格的な旅行者の増加を見込んでのことです。エールフランスとKLMにとって日本は戦略的な位置付けのマーケットであることに変わりはありません」と話した。

エールフランス航空の夏ダイヤ
KLMオランダ航空の夏ダイヤ