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JAL、国内初のワンストップ物流を成田で開始。朝獲り生鮮食品を当日輸出できる実力を見てきた

2023年2月27日 公開

JALカーゴサービスは市場においてコンテナへの積み付けまでを行なうワンストップ物流を開始

 JALカーゴサービスは2月27日、成田市公設地方卸売市場に入居した施設において、国内初となる“ワンストップ物流”の初出荷の様子をメディアに公開した。ワンストップ物流は空港内において行なわれていた検疫や通関、コンテナへの積み付けといった一連のプロセスを市場内にて行なうことで、納品にかかる時間を短縮するものだ。日本の生鮮食料品が海外においても高い評価を受けているなかで、さらなる輸出増加につながる物流サービスとして期待されている。

 JALは、JALグループ中期経営計画ローリングプラン2022のなかで「品質管理やリードタイム短縮を可能にする生産体制の構築による高単価な貨物需要の取り込み」を掲げており、ワンストップ物流はその経営戦略に沿ったものになる。

 下図の説明にあるとおり、これまでは各種作業や手続きを経て空輸し、香港なら水揚げ翌日の深夜到着だったものが、ワンストップ物流を利用することで水揚げの当日深夜に到着し、翌日には現地の市場に届けることが可能となる。コンテナに積み付けるまでの荷捌きを5回から3回へと減らすことができるため、輸送時間を大幅に短縮できるわけだ。

 JALカーゴサービスが保税蔵置場を設置した成田市公設地方卸売市場は2022年1月20日に開場した市場であり、成田空港のB滑走路に隣接する天神峰地区にあるため、空港への輸送が短時間で済む点も大きい。

ワンストップ物流と従来の行程を比較した図
B滑走路の近くに移転・開場した成田市公設地方卸売市場。水産棟、青果棟、高機能物流棟があり、従来の開放型施設から衛生管理が徹底された閉鎖型施設になっている

 当日は供用開始のセレモニーも行なわれ、JALカーゴサービスの代表取締役社長である森本義規氏があいさつをし、成田市長の小泉一成氏、千葉県農林水産部の生産流通戦略担当部長の越川浩樹氏、成田国際空港の取締役 営業部門長の田邉誠氏が祝辞を述べた。

 そのなかで森本社長は、千葉県が農産物・水産物ともに生産量が全国でも上位にランクインする土地であり、鮮度を保ったまま品質のよい商品を外国に届けられる地の利を紹介。また、政府が掲げている農林水産物・食品の輸出額を2030年までに5兆円にするという目標にも寄与できる、重要な市場と取り組みであることを話し、「成田市場は農水産物の輸出に加えて、海外からの輸入取り扱いの双方で、24時間365日、にぎわい、そして活性化することで、真の意味で空港に隣接する地の利を活かした生鮮市場です。言い換えると、成田国際生鮮市場として世界中を見渡しても唯一無二の存在となるよう、私どもJALカーゴはすべての関係者の皆さまと連携して、日本の農水産物の輸出拡大に貢献してまいります」と抱負を述べた。

株式会社JALカーゴサービス 代表取締役社長 森本義規氏
成田市長 小泉一成氏
千葉県農林水産部 生産流通戦略担当部長 越川浩樹氏
成田国際空港株式会社 取締役 営業部門長 田邉誠氏
テープカットの様子

 ワンストップ物流を活用した初荷(合計2665.7kg)は荷主7社からオーダーを受け、BKK(バンコク・スワンナプーム)、SIN(シンガポール・チャンギ)、SGN(ホーチミン・タンソンニャット)、HAN(ハノイ・ノイバイ)、HKG(香港)に向けて出荷された。取材時は、成田市で26日に収穫されたイチゴ、港から当日直送された鮮魚などが陳列されていた。

ワンストップ物流のステッカーが貼られた航空機用のコンテナ
JAL Agriportで収穫されたイチゴ
鴨川産のキンメダイ
銚子産のタイ
竹岡産のタチウオ
勝山産のヒラスズキ

実際にバンコク行きの積み荷の流れを見てみた

 ここからはバンコク行きのJL707便(18時10分発)に搭載するまでの流れを紹介しよう。まず、14時ごろに農林水産省の植物防疫官が来場し、検査を実施している様子が公開された。輸出するイチゴを前に書類をチェックし、開封して1箱ずつ目視で丁寧に商品を確認していた。検査後は問題がない旨を伝え、検疫は完了。

書類のチェック
梱包を解いて内容物を確認できるようにする
目視検査の様子
問題がなければ書類を返却

 15時ごろには鮮魚をコンテナに積み付けて出荷する様子を公開した。まず、仲卸業者が施設全体が低温管理されている水産棟で活き締めや各種処理を施して箱詰めし、ターレーに載せて搬入する。搬入された梱包物をJALカーゴサービスのスタッフが書類と照らし合わせて確認し、フォークリフトでコンテナに積み付けを行なう。積み付けが完了したら、建屋の外で待機しているトラックにコンテナを搭載し、成田空港にあるJALカーゴサービスの貨物ビルまで輸送する。

出荷商品をコンテナに積み付けて、トラックで輸送するまでの流れ

 保税トラックは17時ごろに成田空港内にあるJAL第5貨物ビルに到着。ここでは、コンテナを飛行機まで運ぶため、コンテナドーリーに載せ替える。加えて、ドーリーに載せたまま重さを計れる装置でコンテナの重量を計測する。第2ターミナルの駐機場にはバンコク行きのJL707便が待機しており、トーイングトラクターに牽引されてきたワンストップ物流のコンテナはほかの荷物とともに貨物室に格納され、18時19分に飛び立った。

到着したコンテナはトーイングトラクターに牽引されて、最終重量をチェック
出発前の準備を行なっているバンコク行きのJL707便。機材はボーイング 787-9型機
コンテナが駐機場に到着
貨物室に積み込まれるワンストップ物流のコンテナ