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ARグラスで旅行を楽しく快適に~Nreal Airの挑戦

Nreal 副社長 兼 日本Nreal 代表取締役 呂正民(Joshua Yeo)氏(右)とマーケティングマネージャーの下高原沙也佳氏(左)

 昨今、観光×デジタルトランスフォーメーション(DX)のさまざまな取り組みが行なわれているが、XR技術もその方向性の1つとして注目されている。

 コロナ禍においては、スマートフォンやVR(仮想現実)ゴーグルなどを使ったバーチャル旅行が話題になったが、満足感を高めれば高めるほど、現地に足を運ぶモチベーションが下がってしまうというジレンマもある。

 同じXR系と位置づけられる技術でも、AR(拡張現実)やMR(複合現実)は実際の空間の上に映像を重ねて表示することで新たな体験を提供できることから、現地に出向いて使用する必然性があり、VR以上に観光との親和性が高いと考えられる。

 今回は、そうしたARコンテンツを手軽に体験できるARグラス「Nreal Air」を開発・販売しているNreal 副社長 兼 日本Nreal 代表取締役 呂正民(Joshua Yeo)氏とマーケティングマネージャーの下高原沙也佳氏に、観光×ARの現状と課題を伺った。

Nreal Airの装着イメージ

――まずNreal Airという製品の概要を教えてください。

下高原氏
 弊社では先代でNreal Lightという比較的企業や開発者向けのARグラスも販売してきましたが、より一般のお客さまがプライベートな生活で使えるようにライフスタイルに溶け込むデザインにこだわり、誰しもが簡単に使えるように敢えて機能を絞り込んで作られたのがNreal Airになります。

 機能に関しては、通常のディスプレイにも劣らない高画質を保ちつつ、サングラス並の携帯性に優れたサイズ感と軽量化を実現しています。スマートフォンと一緒に使うことで、ここまでの軽量化を実現できています。

 利用シーンとして、一般の方が多く望まれているのが、大画面でコンテンツを楽しみたいということがありますので、動画や映画を寝ながらですとか、好きな姿勢で見られるというのが一番特徴的なところになります。自由な姿勢と言った点で、寝たきりの方や入院されている方にも需要があったりします。

 オフィスシーンにおいても、Nebulaという弊社のアプリを利用いただけるAndroidスマートフォンをお持ちであれば、複数の画面を同時に立ち上げることができるので、そこでマルチスクリーンで作業をこなすことができます。もちろんオフィスシーンに限らずとも、プライベートでSNSを立ち上げながら動画を見るといった使い方もできます。macOS向けのNebula(9月末リリース。Mシリーズチップを搭載でmacOSバージョン12.0以降がインストールされたMacBookをサポート。ベータ版のため、意図していない事象が発生する可能性あり)では、PCの画面を最大3画面まで拡張できるようになるので、モニター不要でマルチスクリーンでの利用が可能となります。

macOS向けのNebulaの利用イメージ

 このほか、現実に見ているものの上に情報を重ねて表示できるARということで、医療業界で手術のシミュレーションやスタジアムでのスポーツ観戦で、空間上に選手の情報や得点を表示するといった場面でも利用されています。

――使い方として、旅行で飛行機や列車などを利用する際にNreal Airを使ってさまざまなコンテンツを楽しむといったところはすぐに想像できるのですが、それ以上の応用の可能性についてはいかがでしょうか?

呂氏
 日本のB2Bのお客さまとして、さまざまな企業や自治体が観光を盛り上げるためにいろんなことを検討されています。実は、海外も含めると、観光に関連する事例が80%ほどを占めています。

 観光地に行ってARグラスをかけると、現実の風景の上に100年前や1000年前の様子を重ねて表示できますし、歴史上の服を着てみたり、古代の生活をしてみたり、今できないことを実現できます。こうしたことは、日本や韓国、ヨーロッパなどの観光地で行なわれています。

中国での活用事例

 日本ではキャラクターが登場して案内するビジュアルガイドのような活用事例もあり、とくに子どもに人気があります。昨年はキャリアさんを通して関西でAR観光ナビが実施されましたし、動物園や博物館、美術館で動く3Dコンテンツを展示しました。いつでもどこでも花火を見ることもできますし、コロナ禍で今できないことを体験できるという良さもあります。

 スマートトラベルやスマート観光といったキーワードもあり、デジタル技術と観光コンテンツを組み合わせて、もっと新しい体験が提供できることを目指しています。中国やヨーロッパでも研究が進んでおり、これからいろんなアプリやコンテンツが出てくることになります。

――私も個人的にNreal Airを購入して、近眼用のレンズを入れて使っているのですが、観光地で貸し出すとなると、矯正用のレンズをどうするのか、という課題もありそうです。

呂氏
 たしかにそれも課題の1つです。これまでの企業さんとのコラボでは視力にあわせて使えるようにするレンズキットを活用してきました。何年かして、みなさんがご自身のスマートグラスを使うようになれば、それを使ってコンテンツを楽しんでいただけるようになると思います。

 今はいろんな技術を組み合わせて矯正用のレンズが無くても見えるようにすることも大学などで研究されていますが、商用化にはまだ少し時間がかかるかもしれません。

――最近はテレワークも普及し、ワーケーションのような過ごし方も注目されています。旅先で仕事をするときにもマルチスクリーンで快適に操作できるようになるといいですね。

呂氏
 オフィスワーカー向けのソリューションについても、今後も力を入れていくつもりです。Nebulaに対応したスマートフォンとNreal Airを旅先に持っていけば、大画面で作業できますから、これは非常に便利です。

 移動中や旅先だけでなく、複数の画面を使いたいけど場所が狭いというコールセンターなどでは、Nreal Airがあれば、1台のMacで3画面を使えるということで、すごく便利になります。さらに、離れた場所にいながらも、同じ会議室で資料を共有しながら打ち合わせができるようなアプリの開発も進めています。こうしたものも徐々に出てくることになります。

グラスをかけることで広い画面空間が利用できる

――こんな使い方をすると面白い、ということがあれば教えてください。

下高原氏
 観光関連では、歩きながら情報が出たり、道案内してくれたりという要望がよく出てくるのですが、それ以外にもいろんなことが行なえます。ご当地キャラとコラボすることもできますし、今までは古い昔のものを見せるコンテンツが多かったのですが、逆に今後こうなります、という未来感を伝えることに使うのも面白いのではないかと考えています。

呂氏
 海外の事例になりますが、観光スポットに敵となるキャラクターが現れて、それを退治するとポイントがもらえ、ドリンクなどと交換できるというようなものもありました。

――いろんなコンテンツが登場すると楽しそうですね。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。