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JAL赤坂社長「22年度末はなんとしても黒字化・復配を目指す」。第73期株主総会

2022年6月21日 実施

JALが第73期定時株主総会を開催した

 JALが6月21日、第73期定時株主総会を東京ガーデンシアター(江東区有明)で開催した。代表取締役社長の赤坂祐二氏が議長を務め、株主の出席者は530名。

 その冒頭、映像を使って2021年度の事業報告を行なった。グループの売上収益は6827億円、EBIT(利払前税引前利益。以前の指標でいう営業利益)は2394億の損失、純損益は1775億円の損失となっている。

議長を務めた日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏

対処すべき課題

 続いて議長が対処すべき課題について言及した。赤坂氏は、コロナ禍の長期化・不安定な世界情勢・原油高などが続くなか、旅客需要の変化が定着しつつあり、ウィズコロナの生活が当たり前になってきているとしたうえで、入国者数上限が1日2万人になり、国内でもさまざまな需要喚起策が実施されていることなどに触れ、コロナ前(2019年度)を100%とした需要の見通しでは、夏までに国内線はほぼ回復、国際年も年度末までに60%まで回復すると説明した。また、2019年度と同等のEBIT 800億円を目指すなか、コロナ禍においても反転攻勢に向けて人材を維持してきたと述べ、旅客需要は完全に戻ってはいないが、LCC・マイレージ・コマースなどの増収で2019年度並みの売上を達成するという見通しを示した。

 さらに、原油高を打ち返すべく事業構造改革を推進し、マイル・ライフ・インフラなど非航空事業を拡大、2025年度にはEBIT 1850億円という目標を説明。「特にマイレージ事業が核になる。マイルは特典航空券への交換が可能なため評価が高い」という。こうした背景から「22年度末はなんとしても黒字化・復配を目指す」と展望を述べた。

質疑応答抜粋

 総会に上程した議題は3つで、総会資料の電子提供制度に向けた定款の一部変更(第1号議案)、取締役9名の選任(第2号議案)と監査役1名の選任(第3号議案)。ここでは株主からの主な質疑を抜粋する。

 事前に募集した質疑でのうち、株主優待制度の存続・新たな選択肢(マイルの付与や航空以外の割引)について意見が多く寄せられたことについて、優待制度は変わらず維持し、JALファンを増やしていくという姿勢に変わりはないと説明した。

 今後の旅客事業については、国内線は回復基調にあり、夏場にはコロナ前水準の90%に達する見込みで、今後は省燃費機材のエアバス A350型機、DXを駆使したスマートエアポート、利便性を高めたモバイルアプリなどで快適な旅を追求すると紹介したほか、アニメーションツーリズムなどで新しい需要の創出・地方創生にも貢献するという。また、国際線も回復基調にあり、ハワイを中心に夏場の予約が増加していることや、2023年には国際線にもA350型機を投入し、北米~アジア間など海外発の需要を取り込むべく販売パートナーとの連携を強化する、成田をベースにするLCC 3社の連携を深めていくとした。

 非航空領域の拡大など事業構造の改革を進めるなかで、今後再び現在のコロナ禍のような事態に陥った際、赤字幅をどの程度抑えられるかと想定しているかという質問に対しては、具体的な数値の試算には至っていないものの、構造改革の一方、コスト効率を高める固定費の削減に務めることで対応していくとした。

 また、会場での質疑について、現在はインターネット中継が質疑応答の前に終了してしまうことに対しての指摘については、今回からプライバシーに配慮したうえで株主専用サイトに要旨を含めて掲載することを報告した。

 女性管理職・役員の比率をどのようにして上げていくのかという質問については、2021年度末の女性管理職比率は21.9%で、前期比で2.4pt向上しているという。役員・部長級はこの3年間で2倍以上、具体的には37名増、計78名となっている。今年度からは西日本地区・中部地区の支店長には女性が着任しており、現在の羽田・成田・大阪・福岡の空港支店長はすべて女性になっていることなども紹介した。

 スマートフォンアプリのストア評価が低い、使い勝手がわるいという指摘に対しては、会社の基幹システムのなかで運賃のまつわる改修が終了しており、アプリの改革に移りたいと説明。二次元バーコードを使った搭乗やWebチェックイン、多言語化、空港到着前のアップグレード、チャット機能の充実など、今年度中に整備する予定になっているとした。

 民間宇宙旅行の可能性については、航空事業での知見を活かして宇宙事業への取り組みを積極的に検討していること、ispace(アイスペース)の民間月面探査プロジェクト「HAKUTO-R」へ出資していることを紹介。民間人を対象にした宇宙旅行サービスが始まるなど宇宙ビジネスの拡大が始まっているなか、より地球に近い宇宙旅行(サブオービタル領域)に注目しているとした。

 なお、3つの議案はともに原案どおり可決され、総会は閉幕した。