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ANAの豚肉を使わない「罪悪感のない」かつ丼を食べてみた。国際線ビジネスクラスで3月提供開始
2022年2月22日 16:07
- 2022年3月1日 提供開始
ANAは2月22日、「食のユニバーサル化」の第2弾として、国際線機内食向けに2つの新メニューを発表した。ともに3月1日から提供を開始する。
特別機内食(スペシャルミール)と聞くと、宗教上・信条・体質などの理由で口にできない食材がある人向け、といった印象を抱きがちだが、同社は「すべてのお客さまに多くの選択肢からお選びいただけるように」と、健康志向や食習慣からのニーズにも応えるべくメニュー開発に取り組んでいる。
第1弾は「低糖質のお食事(DBML)」「低脂肪のお食事(LFML)」「低カロリーのお食事(LCML)」「低塩のお食事(LSML)」の全4種で、2021年10月1日から提供を始めている(関連記事「ANA、糖質/脂質/カロリー/塩分を控えた特別機内食。『しっかり咀嚼』がキーワードのメニューを食べてみた」)。
第2弾として用意したのは国際線ビジネスクラス提供する軽食の「かつ丼」で、カツには豚肉ではなく「Deats(ディーツ)」を使っている。Deatsはディーツフードプランニングが開発した新食材で、大豆おからとこんにゃくを主原材料にしており、脂質とカロリーをカットしつつ食物繊維が豊富という特徴を持つ。
ANA 和食料理長 森誠剛氏によると、今回のかつ丼の開発にあたりディーツフードプランニングと試作を繰り返し、カツの肉部分の大きさや厚さ、パン粉の付け方にこだわって現在の形にたどり着いたという。Deatsの選定にあたっては、いわゆる代替肉と呼ばれるもののいくつかの候補から、大豆由来のニオイがしないことや、森氏の味付けをしっかり反映できるといった点が決め手になったとのこと。
衣の付け方にしても、バッター液(溶き卵、薄力粉、水を混ぜたもの)が多すぎると衣が厚ぼったくなるため、パン粉がはがれ落ちない絶妙な薄付けを狙ったそうだ。また、ご飯部分にも秘密があり、ディーツのこんにゃく米を半分混ぜることでさらなるカロリー・脂質カットを実現している。
かつ丼は一般的にどんぶり一杯で900kcal程度とされているが、今回提供を開始するかつ丼はやや小さい器を使っており、カロリーはこのどんぶり換算で通常の約4割カットの350kcal。さらに脂質を約5割カットする一方、食物繊維は約5倍多く含まれている。
本取り組みについて説明したANA 上席執行役員の矢澤潤子氏は、「満足感が変わらず、罪悪感はまったくない」と完成度を評したが、実際に試食してみたところ、おそらく言われなければ豚肉を使ったカツと違いが分からないのでは、と感じた。しっかりと肉っぽさがあり、衣を含めた噛み応えもカツそのもの。
ご飯部分については、米半分・こんにゃく米半分なので噛んだときの旨味・甘みの増す感じが少ないが、これも事前に説明を受けているから認識できるのだろうというレベル。また、米の旨味・甘みを補うためにタマゴとタマネギ、タレなどの味付けを工夫しているそうで、個別の食材ではなくかつ丼全体を普通に食べれば、違和感はないはず。
このかつ丼は、3月1日から日本発の北米・欧州・インド・オセアニア路線のビジネスクラスで通年提供する(ホノルル・ウラジオストク除く)。また、春以降に羽田と成田の国際線ANA SUITE LOUNGEでもDeatsを採用したメニューの提供を行なう予定があるという。
エコノミークラス向けサラダもユニバーサル化
かつ丼は食のユニバーサル化のうち、「人に優しい」という視点で開発したものだが、「環境の優しい」という視点で用意したのがエコノミークラス向けのミックスサラダに使う「ソフトケール」だ。
ANAの機内食を製造するANAケータリングサービスでは、機内食製造時の調理残渣が年間約248トン、油が約28トン発生している(2019年実績)。これらは堆肥や飼料として100%再利用しているが、成田工場の調理残滓でできた堆肥で育てたソフトケールを、新たにエコノミークラスのサラダとして提供する。対象は3月1日以降の日本発国際線全路線(中国大陸・香港・台北・マニラ・ソウル除く)。