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ANA、糖質/脂質/カロリー/塩分を控えた特別機内食。「しっかり咀嚼」がキーワードのメニューを食べてみた
10月1日から国際線で提供
2021年9月29日 07:00
- 2021年10月1日 開始
ANA(全日本空輸)は9月27日、糖質、脂質、カロリー、塩分を控えた新たな機内食を発表した。
10月1日から日本発の国際線全路線・全搭乗クラスに初導入するのは、「THE CONNOISSEURS(ザ・コノシュアーズ)」と呼ばれる国内外の著名なシェフや世界レベルのANAのシェフらにより構成されるメンバーとのコラボレーションメニューだ。
食の専門家の知識や意見を取り入れて構成されたコラボ機内食は、すべての利用者が対象。誰もが安心して美味しく味わえる体に優しいセットで、食のユニバーサル化の取り組みの1つとして「低糖質のお食事(DBML)」「低脂肪のお食事(LFML)」「低カロリーのお食事(LCML)」「低塩のお食事(LSML)」の全4種類を提供する。
申し込みは出発24時間前まで受け付ける。なお、2019年の国際線での特別機内食利用者は全体の約7%。2020年は5.3%という。
新たに空の上で味わえる特別機内食は、しっかり“咀嚼”がポイント
今回発表した特別機内食は、低糖質(DBML)、低脂肪(LFML)、低カロリー(LCML)が共通メニュー。低塩(LSML)とともに4メニューのキーワードは「しっかり咀嚼する」こと。
実際に共通メニューを試食したが、噛むことで旨みが広がり、満足感もアップ。素材の味や香りが口いっぱいに広がるとともに、弾力や食感で楽しく・美味しく味わえると実感した。食べ応えもあり、腹持ちもよい印象だった。
共通メニューの前菜は「紋甲イカと白こんにゃくレモングラス香るカリフラワーピューレ」「生野菜のガスパチョソース添え」、メインが「チキンのバプールとマッシュルームのピューレ 彩野菜とキヌアのサラダ仕立て」、デザートは「紅茶のゼリー」。
前菜「紋甲イカと白こんにゃくレモングラス香るカリフラワーピューレ」は、サラダ仕立ての紋甲イカ、刺身こんにゃくをカリフラワーのピューレでいただく一品。ピューレはレモングラスの風味が効いており、レモンライムのゼストのアクセントともにさっぱり&フルーティーな香りが口いっぱいに広がる。こんにゃくがイカのように味わえる組み合わせもポイント。「生野菜のガスパチョソース添え」は、トマトを出汁でマリネしたピリ辛でスパイシーなガスパチョソースをかけて味わうシャキシャキのロメインレタスの美味しさは格別。
メインは、「チキンのバプールとマッシュルームのピューレ 彩野菜とキヌアのサラダ仕立て」。チキンの胸肉にチキンのクネルを乗せることでお肉自体をしっとり&味わい深く仕上げており、ボリュームも満点。素材の味がしっかり前に出たマッシュルームのデュクセルは黒胡椒、エシャロットとニンニクのペースト、出し汁を使用。食感と風味がアクセントに。しっかりとした弾力と味わいで食べ応えも抜群。また、適度に酸味を感じるキヌアサラダはスパイシー仕上げ、異国情緒を感じる味わいだ。
デザートはぷるんとした口当たりの「紅茶ゼリー」。中央はアールグレー、周囲はバニラ風味の2層のジュレ仕立て。ふわりと芳る紅茶と低糖マーマレードで少し甘さを足すことで満足感をきちんと感じさせてくれる。
続いては、「低塩のお食事(LSML)」。前菜は「トマトのジュレとアスパラガス カリフラワーとともに」「ブロッコリーのピューレとスナップエンドウ 蓮根を添えて」、メインが「チキンのロースト蜂蜜ビネガーとオニオンコンフィー雑穀物を添えて」。デザートは「紅茶のゼリー」。
前菜「トマトのジュレとアスパラガス カリフラワーとともに」「ブロッコリーのピューレとスナップエンドウ 蓮根を添えて」は、野菜の食感を楽しみながら味わえるサラダ。ほどよい酸味のトマトのジュレがポイント。「ブロッコリーのピューレとスナップエンドウ蓮根を添えて」は、オリーブオイルで風味豊かに仕上げたピューレを付けることで蓮根などの本来の野菜の味わいが楽しめる。
メインは、「チキンのロースト蜂蜜ビネガーとオニオンコンフィー 雑穀物を添えて」。蜂蜜と赤ワインビネガーで旨味と酸味を加えたローストチキンを、柑橘系スパイスで仕上げた一品。チキンの下の幾重にも重ねたオニオンコンフィーをソースがわりに甘みと酸味をプラスしながら味わえる。穀物をふんだんに使った付け合わせはセップパウダーで味付け。しっかり咀嚼することで、その旨みがじんわりと口に広がる。なお、デザートはほかの3種のミールと同様の「紅茶のゼリー」。
今回の健康に配慮した新たな特別機内食について、ANAケータリングサービス 総料理長の清水誠氏は「1品1品に隠れたこだわりが詰まっており、鶏肉のしっとり加減を保つためのクネルをはじめ、細かい工夫が味わいをさらによくしています。
どのメニューもとても美味しく、酸味や辛味、そして香りが楽しめ、たくさん噛んでいただけばとグッと旨みが広がってくる。多くの制約があるなかでの髙山シェフのこだわりが特別機内食の美味しさを押し上げ、我々もシェフの思いを再現できたと思います。今まで以上に多くのお客さまに味わっていただきたいです」と述べた。
また、同席した洋食開発担当の大竹弘治シェフも、「全体でバランスを取るメニューであるのが特徴です。ダイエットを実践中の方や、摂取カロリーが気になる方にもお勧め。ビジネスクラスもエコノミークラスも提供内容は同じですので、ぜひ一度味わっていただき、その美味しさを実感していただきたいです」とした。
なお、ANAケータリングサービスでは、ハラール認証のハラールキッチンを拡大。「ヒンズー教対応のお食事」ならびに「イスラム教対応のお食事」がさらにハイクオリティに。特にカレーに関しては現地のシェフ伝授のレシピをアレンジし、本格的な味わいとなっているとのこと。
多くの利用者が味わえる開かれた特別機内食に進化
本発表会は「ANAケータリングサービス 川崎工場」で実施した。その冒頭、ANA CX推進室 商品企画部部長の眞野知彦氏がコラボメニュー導入の背景を説明。現在全24種類の特別機内食を提供中だが、今回のコラボメニューの登場で、より幅広い層への利用を推し進めたいとのこと。
「今までは食事制限のある方向けに提供していましたが、すべてのお客さまに楽しく空の旅をしていただくための取り組みを推進するなかで、一般の健康志向の強い方にも味わっていただきたいと、よりユニバーサルな考えでリニューアルしました。通常の食事と同じように、選択肢の1つとして幅広くご利用いただきたい」と話した。
続いて、コラボレーションを行なった「ランディス台北 Paris 1930 de Hideki Takayama」カリナリーディレクター髙山英紀氏シェフがあいさつ。同氏はANAの国際線ビジネスクラスの機内食を手がけており、成田・羽田発のタイやシンガポール、インドネシア便などで「日本人だから表現できるフランス料理」を提供してきた。
今回のコラボ機内食参加については約7年間に渡り嚥下・摂食障害を含む介護食などを手がけてきた経験があったからこそとのこと。食材が限定され、糖質を減らすなかでどう旨み部分を補うか、そして塩や油を使わず、美味しく味わうためにはどうすべきなのかを考え、辿り着いたのは、咀嚼と酸味、そしてユニバーサルな視点だったという。
「酸味と食材の組み合わせ、そして香り。色彩も単色を組み合わせ白に対して緑など脳裏に焼き付く色合いを意識しました。そして、しっかり噛むことで旨みを引き上げ、1プレート味わって美味しいと感じていただけるようにしました。機内食は空でのワクワクとドキドキを提供する時間。ユニバーサルな観点でメニューを考えたら、結果満足いく味わいになりました」と話す。
また、「全体的に繊細な味付け、直接素材の味が感じやすいメニューとなっています。ぜひ健康志向の方もご注文いただけたら。ここまでカロリーを気にせずに美味しく味わえるメニューもなかなかないと思います」と太鼓判を押した。
今回、「低糖質のお食事(DBML)」を監修した日本糖尿病協会・関西電力病院疾患栄養センター部長 北谷直美氏は「病院で管理栄養士として糖尿病患者さんと関わっていますが、高齢化のなか旅行を楽しみたい患者さんも多くいます。空の旅を楽しくワクワクさせてくれるスペシャルミールの見直しは私だけでなく、業界全体としてもうれしいことです」と導入を歓迎した。
なお、ANA CX推進室 商品企画部部長 眞野知彦氏は、現在人気を博している機内食の通信販売ついても言及。時期や詳細は未定であくまで検討段階としながらも「より広いお客さまにお楽しみいただきたいという考えですので、販売に関しても考えております」とのこと。宗教に配慮した機内食や今回発表のコラボ特別機内食の販売も期待できそうだ。