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星野リゾート「界 ポロト」に行ってみた! 美肌効果のあるモール温泉とアイヌ文化に着想を得た温泉旅館

2022年1月14日 開業

ポロト湖を敷地内に引き込み、全室がレイクビューになっている「界 ポロト」

 星野リゾートは1月14日、北海道の白老温泉に「界 ポロト」をオープンした。同社が手掛ける宿泊ブランド「界」は温泉旅館であり、界 ポロトは19施設目で北海道では初になる。コンセプトは「ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿 」で、ポロト湖を敷地内に引き込んだ設計が目を引き、すべての客室が湖に面しているのが特徴だ。

 新しい温泉旅館を目指す界ブランドは、「界 箱根」「界 伊東」「界 阿蘇」といったように日本有数の温泉地に展開しており、今後数年間で30施設の展開を目標にしている。直近では2021年7月に「界 別府」が登場しており、2022年は1月に界 ポロトがオープンしたあと、「界 由布院」も近々開業する予定だ。

 温泉は地域によって泉質がまったく異なり、その違いを求めて利用客は訪れるが、界 ポロトのある白老町は世界的にもめずらしい「モール温泉」が湧出する場所だ。モール温泉は天然植物由来の腐植質の有機物を含有し、茶褐色の色合いが特徴。皮膚の再生を促進させる働きがある「フミン酸」や、皮膚コンディショニング作用のある「フルボ酸」 を含み、それらの成分が化粧品にも配合されることから、モール温泉は「美肌の湯」と言われている。また、界 ポロトの泉質はアルカリ性のため、古い角質を落とし、肌の新陳代謝を高める働きもある。

泥炭(亜炭)などを由来とする腐植物を含有するモール温泉。茶褐色の湯は肌に効く

 そのモール温泉をじっくりと楽しめるのが宿泊棟とは別に建てられた三角屋根の「とんがり湯小屋」だ。「△湯(さんかくのゆ)」と名付けられた風呂には、内風呂と露天風呂が用意されている。内風呂は源泉かけ流しの「あつ湯」と心身を鎮静させる「ぬる湯」の2つがあり、それを抜けた先にはポロト湖を一望できる露天風呂が設置されており、四季折々の景色とともに大自然のなかで温泉を楽しめるようになっている。

 設計を担当したNAP建築設計事務所の中村拓志氏は、伝統的なアイヌの家屋における屋根を支える構造の1つである三脚(ケトゥンニ)を基本構造に取り入れ、「自然の恵みである温泉に感謝しながら、この場所にしかできない体験とともに自然と1つになれる感覚を楽しんでほしいです」とコメントしている。

「△湯」がある、とんがり湯小屋。ケトゥンニ構造を取り入れており、界 ポロトの象徴的な建物になっている
とんがり湯小屋内にある湯上がり処では、大きな三角窓からポロト湖を見ながら休憩できる
建物内はいたるところに三角形が使われているので、探してみるのもおもしろい
△湯の内風呂、あつ湯とぬる湯。内風呂の先は露天風呂になっている
露天風呂はインフィニティプールのようになっており、ポロト湖を間近に感じながら入浴できる。運がよければ飛来したタンチョウヅルを見ることができるそうだ。女湯の露天風呂は目隠しが設置されているとのこと

 界では現代のライフスタイルに合った入浴法「うるはし現代湯治」を全施設で展開しており、スタッフが「界の湯守り」としてオススメのストレッチや入浴法、疲労回復を促す滞在の提案を行なっている。界 ポロトでは16時から夜の部を、とんがり湯小屋の湯上がり処で開催している。

 内容は、周辺の木々や動物などの自然や、アイヌ文化とモール温泉の関係などを紹介し、五感を使ったリラックス入浴法を案内している。朝も行なわれ、サッと熱めのお湯に入る入浴法や1日を元気に過ごせるよう、タンチョウヅルの動きを取り入れた「タンチョウヅルの羽ばたき体操」も体験できる。

界の湯守りがオススメの入浴スタイルを教えてくれる
タンチョウヅルの羽ばたき体操

 もう一つ、宿泊棟には「〇湯(まるのゆ)」がある。こちらは開放的な△湯に対し、洞窟のなかや地中にいるかのような落ち着いた雰囲気が特徴で、大地から湧き出る茶褐色のモール温泉を実感できる作りになっている。

洞窟をイメージした〇湯。落ち着いた雰囲気が疲れをいやしてくれそうだ

 館内の1階には、ロビーに銅板を貼り合わせて作られた暖炉があり、ポロト湖を眺めながら優雅なひと時を過ごすことができる。界ブランドのおもてなしの一つとして、地域の文化を体験する「ご当地学」があるが、界 ポロトではアイヌ民族が魔除けとして日常的に身に着けていた植物「イケマ」を使った魔除けのお守り「イケマと花香の魔除けづくり」を暖炉脇で体験できる。

 併設されているトラベルライブラリーにもアイヌ文化を学べる資料が多く展示されているので、自然と上手に共存してきたアイヌの文化を知ることができる。界 ポロトはアイヌ文化の復興と発展の拠点として2020年7月にオープンした「民族共生象徴空間 ウポポイ」に隣接しているので、そちらに訪れることでさらに理解を深めることも可能だ。

ロビーにある暖炉。ここから眺めるとんがり湯小屋やポロト湖も美しい
魔除けのお守り「イケマと花香の魔除けづくり」を体験できるのも界 ポロトならではのおもてなし
内装には白樺の木が大胆に使われている
トラベルライブラリー
ハーブティーなどを楽しめるドリンクバーもある

 客室はテラスと露天風呂が付いている特別室(定員2名)、露天風呂付き洋室(定員3名)、角部屋洋室(定員4名)、スタンダードタイプの洋室(定員3名)の4タイプを用意している。内覧会では特別室と洋室を公開した。

 どちらも共通しているのは、インテリアにご当地の要素を取り入れたご当地部屋として「□の間(しかくのま)」と名付けられていることだ。すべてのタイプの部屋の中心には四角い炉をイメージした天然石のテーブルが置かれている。これは、アイヌ民族が暮らすチセ(アイヌ民族の家)の中心にあった炉をイメージしたものであり、ここで団らんしてほしいという思いが込められている。ほか、地元の作家が手掛けた伝統作品やアイヌ文様を施したクッションなど、界 ポロトならではの空間になっている。

3部屋しかない特別室にはテラスとモール温泉の露天風呂が備わっている
特別室のベッドルーム
広々としたデスク
炉をイメージしたテーブル
洗面台とアメニティ
白老の自然を満喫しながらの露天風呂は格別だろう
テラスからの眺めも最高で、白銀のポロト湖が美しい
スタンダードタイプの洋室。こちらも美しいポロト湖を一望できる
「□の間」を象徴するテーブルは天然石でできている
窓際にはソファが置かれているので、くつろぎながら景色を楽しめる
オールをかたどった工芸品

 その地域の美食を楽しめるのも界ブランドのこだわりの一つ。界 ポロトでは、夕食に北海道の美食が味わえる会席料理を用意している。ジャガイモのすり流しにイクラを乗せた先付けに始まり、酢の物、八寸、お造りを一緒に盛り合わせた「宝楽盛り」を提供する。そして、特別会席では「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」がメインとして登場する。北海道ならではの毛ガニをふんだんに使った鍋だが、味付けは一風変わったトマトを使ったブイヤベース仕立てになっており、残ったスープにはチーズを加えてチーズリゾットとして最後に提供される。

 また、朝食の和食膳にも鍋が用意されており、こちらも北海道を感じられるサケとジャガイモを使ったものになっている。

北海道の美食を堪能できる夕食の特別会席。宝楽盛りはアイヌ民族が交易に使用していた丸木舟をモチーフとした舟形の器で提供される
特別会席で提供される毛蟹と帆立貝の醍醐鍋はブイヤベース仕立てになっている
朝食は「鮭とじゃがいものすり流し鍋」を中心とした和食膳が提供される
食事処の入口
半個室として多くのテーブルが用意されている
景色を見ながら食事ができるカウンターもある

 そのほか、館内には乾燥室も設けられており、ゲレンデ帰りの宿泊場所として活用することもできる。自然豊かなポロト湖とアイヌ文化を身近に感じることができ、北海道遺産にも認定されているモール温泉をたっぷりと楽しめる界 ポロト。季節を問わず訪れたくなる星野リゾートの施設がまた一つ誕生した。

界 ポロト

所在地: 北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
TEL: 0570-073-011(界予約センター)
客室数: 42室
チェックイン/アウト: 15時/12時