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Visaクレカで改札を通過。南海電鉄のタッチ決済/QRコード入出場の実証実験を見てきた

2021年4月3日~12月12日 実施

難波駅に設置したVisaのタッチ決済とQRコードに対応した専用自動改札機

 南海電鉄(南海電気鉄道)、三井住友カード、QUADRAC、ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、4月3日から南海電鉄の一部の駅で、「Visaのタッチ決済」「QRコード」による入出場の実証実験を開始した。その前日、難波駅において専用自動改札機や入出場の様子を報道公開した。

専用自動改札機にVisaのタッチ決済に対応するクレジットカードなどをタッチするだけで入出場が可能
あらかじめ購入したデジタルチケットのQRコードを読み取らせることでも入出場が行なえる
専用自動改札機は、難波駅や関西空港駅、和歌山市駅、高野山駅など16駅に設置

 実証実験は、4月3日から12月12日までの約8か月間で実施予定(終了時期は変更する場合がある)。南海電鉄の一部の駅に、Visaのタッチ決済およびQRコードの読み取りに対応した専用自動改札機を設置し、対応するクレジットカードで触れたり、デジタルチケットのQRコードを読み取らせたりすることで入出場が行なえる。

 専用自動改札機を設置するのは、以下の16駅・32改札。

実証実験を行なう南海電鉄の駅・改札

・難波(2階 中央改札口、3階 北改札口)
・新今宮(4階)
・天下茶屋
・堺(東口)
・泉大津
・和歌山市
・りんくうタウン
・関西空港
・堺東(西出口)
・三国ヶ丘
・金剛
・河内長野
・橋本
・九度山
・高野下
・高野山

 実証実験を行なう駅は、主に乗降客の多い駅や観光地に近い駅を選定している。また、データ通信に携帯電話網を利用するため、通信環境があまりよくない駅も加えられている。そのうえで、Visaのタッチ決済やQRコードを利用した入出場について、実運用が可能かどうかを今回の実証実験をとおして見きわめたいという。

Visaタッチ対応カード/スマホ所有者なら事前登録不要で使える

 今回の実証実験におけるVisaのタッチ決済での入出場は、Visaのタッチ決済対応クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードのほか、スマートフォン、ウェアラブルデバイスを持っていれば、事前登録不要で誰でも利用できる。

 利用形態は都度利用。入場駅でタッチするとサーバーに入場の情報を記録し、出場駅でタッチすると自動的に運賃を精算。そして、1日分の利用料金をまとめて、その日の夜に利用したクレジットカードなどへ料金が計上されることになる。収受する運賃の設定は大人運賃のみ。

 また、Visaのタッチ決済で入出場した場合には、QUADRACが提供するWebサイト「Q-move」に利用したカード番号を登録することで、利用履歴が確認できる。

Visaのタッチ決済に対応したカードを持っていれば、事前登録不要で利用できる
Visaのタッチ決済対応カードを登録したスマートフォンやウェアラブルデバイスも利用可能
QUADRACの「Q-move」で利用履歴が確認できる

 一方、QRコードでの入出場は、スマートフォンの「南海アプリ」で「南海デジタルチケット」を購入すると表示されるQRコードを読み取らせて行なう。

 実証実験期間中には複数の南海デジタルチケットを販売予定で、第1弾として5月~7月に利用できる「時差通勤応援きっぷ」を4月15日に発売する。時差通勤応援きっぷは、乗車駅を9時以降に入場することを条件に、料金が最大3割引きになるもの。

スマートフォンの南海アプリで購入できる「南海デジタルチケット」のQRコードを読み取らせることでも入出場が可能
南海デジタルチケットの第1弾として、5月~7月に利用できる「時差通勤応援きっぷ」を4月15日に発売

対応する改札機は2種類

 Visaのタッチ決済および南海デジタルチケットに対応する専用自動改札機は、2種類用意する。

 1つは、主にビルの入館ゲートなどで利用されている高見沢サイバネティックス製のセキュリティゲートで、鉄道事業者が自動改札機として利用するのは今回が初めて。

 この改札機は、Visaのタッチ決済のリーダーとQRコードリーダーを搭載するものの、交通系ICカードには対応していない。そのため、専用自動改札機の手前の床には、Visaのタッチ決済と南海デジタルチケットに対応することを示す案内サインが貼り出される。

高見沢サイバネティックス製のセキュリティゲートを活用した専用自動改札機
奥にVisaのタッチ決済のリーダー、手前に南海デジタルチケット用のQRコードリーダーを設置している
専用自動改札機の手前床には、Visaのタッチ決済と南海デジタルチケットに対応することを示す案内サインを貼り出す
出場時のタッチと同時に、画面に運賃が表示される

 もう1つは、既存の自動改札機を活用し、手前に柱状の読み取り機を設置して双方を連動させたもの。こちらは既存の交通系ICカードも利用できる。

既存の自動改札機手前にVisaのタッチ決済用カードリーダーとQRコードリーダーを備えるポールを設置したもの
ポールにVisaのタッチ決済用カードリーダーと南海デジタルチケット用QRコードリーダーを設
こちらのタイプでも、出場時には画面に運賃が表示される

 なお、これら専用自動改札機は、本運用に向けた最終仕様ではない。カードリーダーとQRコードリーダーを一体化するのは技術的には可能としつつも、今回の実証実験では、一体化するか個別に搭載するかどうか、自動改札機の形状なども含めて検証するため、あえて分けているという。

 また、Visaのタッチ決済(EMVコンタクトレス)の読み取り速度は、現状では交通系ICカードと比べて若干遅い。具体的には、交通系ICカードが0.2秒で処理が完了するのに対し、EMVコンタクトレスは暗号化などセキュリティ処理が加わるので、0.3~0.5秒ほどかっているそうだ。そのため、今回の実証実験をとおして、朝のラッシュ時間帯も含めて実用に耐えうるか見きわめたいと説明した。

実証実験の概要を説明する、南海電気鉄道株式会社 鉄道営業本部 統括部 藤原隆行氏

 南海電鉄 鉄道営業本部 統括部の藤原隆行氏によると、今回の実証実験は、もともとは関西空港を利用する訪日外国人観光客をメインのターゲットとして考えていたという。

 現在はコロナ禍により訪日外国人観光客はほとんど見られなくなっているが、「将来コロナ禍が回復したときを想定するとともに、新しいことに積極的な取り組む姿勢を見せる」ために予定どおり実証実験を行なうことにしたと説明。合わせて、Visaのタッチ決済における交通事業者の利用ルールが整備されたということも、実証実験がこの時期になった理由の1つだとし、「国内の交通系ICカード同等のサービスを訪日外国人観光客に提供したい」と意気込みを語った。