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タッチ決済乗車、大阪・関西万博に伴い対応エリア拡大。“ソフ鉄”村井美樹「買い物に使うクレカで電車にも乗れる」

大阪メトロ/近鉄/阪神/阪急が新たに導入

2024年10月29日 導入

大阪メトロ/近鉄/阪神/阪急が新たにタッチ決済乗車サービスを導入

 Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)、近鉄、阪神電車、阪急電鉄ら鉄道4社は、三井住友カードが提供する公共交通機関向けソリューション「stera transit(ステラトランジット)」を10月29日に導入する。

 三井住友カードは10月28日、大阪で発表会を実施し、stera transitを導入済みの南海電鉄、今回導入する鉄道4社(大阪メトロ/近鉄/阪神/阪急)の代表者が出席した。

発表会には、ゲストとして中川家の剛さん・礼二さん、村井美樹さんが登場

 stera transitは、タッチ決済対応のクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードのほか、各カードを設定したスマホやウェアラブルデバイスなどを、改札機の専用リーダーにかざすことで乗車できるサービス。

 事前登録は不要で、海外からの観光客や交通系ICカードを持っていない人も、事前にきっぷを購入することなく、普段買い物などに使っているカードでそのまま乗車できる。

 対応ブランドは、Visa、JCB、アメリカン・エキスプレス、Diners Club、Discover、銀聯。10月28日時点でMastercardは利用できないものの、2025年の大阪・関西万博開幕時までに対応する見込み。利用履歴は、QUADRACが提供するWebサイト「Q-move」に会員登録することで確認できる。

乗車方法
決済手段と利用履歴

 今回導入するのは、関西・東海エリアの548駅。東は近鉄 名古屋駅、西は神戸高速線 高速長田駅まで対応する。

 三井住友カードは、2025年春に開幕する大阪・関西万博に向けて、タッチ決済乗車の利用拡大を目指している。2025年3月には、北大阪急行電鉄や山陽電気鉄道を含む780駅で利用可能となる見込み。現時点で導入予定のないJR西日本や京阪電車にもアプローチしていくとのこと。

 なおstera transitによるタッチ決済乗車は、各鉄道事業者をまたがる相互直通利用にも対応しているが、サービスを導入していない駅では出場できない。

タッチ決済乗車に対応する駅(2024年10月29日~)

大阪メトロ: 全駅
近鉄: 全駅(柏原駅および生駒鋼索線の各駅を除く)
阪急電鉄: 全駅
阪神電車: 全駅(西代駅を除く)

関西エリアですでにタッチ決済乗車が可能な鉄道事業者(2024年10月10日時点)

・南海電気鉄道
・大阪モノレール
・京都丹後鉄道
・神戸市営地下鉄
・神戸新交通
・神戸電鉄
・神戸六甲鉄道(六甲ケーブル)
・泉北高速鉄道

関西の対象路線

 Visaの調査によると、クレジットカードのタッチ決済が世界で急速に普及しており、アメリカの対面決済においてはタッチ決済の比率が80%。日本でも2023年春には10%強となっていたところ、直近では40%まで増えているとのこと。

 タッチ決済の交通利用について、三井住友カード 代表取締役社長 兼 最高執行役員の大西幸彦氏は「世界では交通利用は急拡大しており、830以上の公共交通機関で導入されている。ロンドンでは、鉄道・地下鉄・バスなど9割がタッチ決済乗車に対応する」と紹介した。

 また同社は新しいMaaSアプリの開発を進めており、stera transit共通のクラウドデータを活用して、複数の公共交通機関や交通以外の消費活動をつなぐサービスの提供を検討している。第1弾として、2025年3月から企画券を販売するとのこと。

三井住友カード株式会社 代表取締役社長 兼 最高執行役員 大西幸彦氏
世界では830以上の公共交通機関でタッチ決済を導入している
国内の普及見込み

 三井住友カード Transit事業推進部長の石塚雅敏氏は、サービス導入に伴う利用者のメリットについて「外国人観光客が電車に乗る場合、日本円に両替のうえ、さらに駅の窓口へ並ぶのは手間がかかるし、券売機の操作も難しい。タッチ決済乗車は、窓口や券売機の混雑を減らし、オーバーツーリズム解消にもつながる。

 国内の利用者にとっても、事前チャージが不要で、残高不足を防止できるほか、カード会社によっては乗車ポイント付与もある。また上限割引や片道割引、オフピークや地域ごとの割引など、日常的に利用する人にもより柔軟なサービスを提供できる」と説明。

 加えて、交通事業者・関西圏にもたらす効果として「鉄道やバスだけでなく、商業施設、観光施設、行政サービスなどとの連携によって、案内表示の言語や駅の広告内容など、どの駅にどのような需要があるのか、より詳しく分析できる」と案内した。

三井住友カード株式会社 Transit事業推進部長 石塚雅敏氏
訪日外国人に対するメリット
沿線利用者に対するメリット
専用アプリにより地域活性化を目指す

 このたびstera transitを導入する鉄道4社を代表して、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)常務取締役 交通事業総括担当 交通事業本部長の堀元治氏は、「タッチ決済乗車は、2025年1月19日に開業する中央線 夢洲駅の混雑対策としても非常に有効」とコメント。

 続けて「自動改札機は、1967年に初めて阪急電鉄の北千里駅で設置され、日本万国博覧会(1970年の大阪万博)をきっかけに普及した。タッチ決済乗車も2025年の大阪・関西万博をきっかけに、1つの乗車方法として定着してほしい」と期待を寄せた。

 ほかにも大阪メトロの取り組みとして、「QRコードを活用したデジタル乗車券サービスを6月から提供しているほか、顔認証改札機など、より高速で高性能な改札機の導入を進めている」とアピールした。

大阪市高速電気軌道 常務取締役 交通事業総括担当 交通事業本部長 堀元治氏

 南海電気鉄道では、2021年4月にstera transitを導入。当時は18駅で実証実験を行なっていたが、10月28日時点で42駅まで拡大した。2024年度中には、ほぼ全駅で利用できるよう準備を進めているという。

 利用率は国内が大半を占めているが、海外も欧米やアジアを中心に利用者が増えており、2023年の利用件数は、2021年に対して6倍以上になっているとのこと。

 同社の取締役 常務執行役員 公共交通グループ 鉄道事業本部長の梶谷知志氏は、「タッチ決済乗車が大阪メトロ・近鉄・阪神・阪急の4社でも導入されることで、関西エリアでの鉄道移動の利便性が大きく向上する。ほかの公共交通機関や商業施設との連携を広げ、それらの利用データをもとに、よりお客さまのニーズに合ったサービスを展開したい」と期待を寄せた。

南海電気鉄道株式会社 取締役 常務執行役員 公共交通グループ 鉄道事業本部長 梶谷知志氏
南海電気鉄道のstera transit利用実績

 発表会後半のトークセッションでは、鉄道好き代表として、中川家の剛さん・礼二さんのほか、旅行者になりきった村井美樹さんが改札機にカードをタッチして登場。

 タッチ決済の導入について、自称“ソフ鉄”(ソフト鉄道ファン)の村井さんは「普段買い物に使っているクレジットカードで電車にも乗れるのは本当に便利」と感想を述べた。

 礼二さんは「ずっと料金表見てるおっちゃんとかおらへんくなるんちゃうかな」とものまねを披露。「スムーズに乗れるならせっかちな関西人にぴったり」と話す剛さんに、すかさず「関西人はポイント貯まるとかお得も好きですからね」とコメントし、会場の笑いを誘った。

タッチ決済を実演する村井美樹さん
幼少期の礼二さんについて「線路沿いの金網にしがみついて1日中電車を見ていた」と話す剛さん(左)
「ずっと料金表見てるおっちゃん」を演じる礼二さん(中)

実際にタッチ決済で改札を通ってみた

 発表会の終了後には、南海電鉄 なんば駅 3階北改札に設置されているstera transit改札機で、記者も実際にタッチ決済乗車を体験した。

 タッチ決済に対応する改札機は、各社共通デザインのフロアシートで通路を示しているほか、読み取り部分で使用可能なブランドを案内している。

 入出場時は、「タッチ決済OK」と書かれたリーダーへ対応カードやスマホをかざすと「ピッ」と音が鳴り、上下にある青のランプが緑に変わると通過できる。

 反応速度は交通系ICカードに比べるとやや遅く(タッチ時間は0.25~0.35秒)、より正確な位置にかざす必要があると感じた。

stera transit改札機
入出場時は「タッチ決済OK」と書かれた奥のリーダーにかざす
タッチ決済が反応する前の状態
タッチ決済が完了した状態
stera transit改札機でタッチ決済乗車