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としまえん、94年の歴史に幕。機械遺産カルーセルエルドラドが回転を止めた日

依田代表「解体・メンテナンスしていつかどこかでお披露目したい」

2020年8月31日 閉園

日没直後のブルーモーメントに幻想的に浮かび上がるカルーセルエルドラド

 としまえん(東京都練馬区)は8月31日、94年の歴史に幕を下ろした。

 当日は世界最古級の回転木馬とされる「カルーセルエルドラド」前でファイナルセレモニーが行なわれ、「機械遺産」にも認定されている歴史的な回転木馬の最終運転を見ようと、名残を惜しむ多くの人々が詰めかけた。

西武線豊島園駅のホームには感謝の気持ちを込めたさまざまな展示が
改札を出るとすぐ目の前が正門
園内をまっすぐ進むと見えてきた「機械遺産カルーセルエルドラド」。記念撮影する人や、最終日に乗車したいと願う人々の長い列ができていた
1907年にドイツのミュンヘンで名工の手によって作られたという移動式の回転木馬
作られてからヨーロッパ各地を巡ったあとアメリカの遊園地に渡り、1971年にとしまえんにやってきたという
美術品としての価値も高いきらびやかな装飾

 セレモニー開始前の20時頃には最後の打上げ花火が上がり、多くの人たちがスマートフォンを片手に夜空を見上げた。続いてエルドラド前にはシンガーソングライターの田内洵也さんが登場し、楽曲「ELDRADO」をギターで弾き語り。ラストで「としまえんさん、ありがとうございました~!」と叫び、場を盛り上げた。

シンガーソングライターの田内洵也さんによるギター弾き語りも
としまえんのスタッフがエルドラドの両脇から登場
大きな拍手で迎えられたとしまえんのスタッフ
カルーセルエルドラド、ブレイクダンス、フライングパイレーツ、トロイカ、最後の打上花火、田内洵也さんの弾き語り

 20時半からスタートしたファイナルセレモニーは、カルーセルエルドラド前に特設会場を設け、練馬区長らも参列するなか行なわれた。

 まずは豊島園 代表取締役の依田龍也氏が、「としまえんは1926年9月15日に東京市民の体育の奨励と園芸普及を図ることが目的でこの地に開園しました。当時は遊園地というよりは運動場といちご狩りやぶどう狩りなどの農園が中心の園でした」と、としまえんの歴史について語り、「皆さまがご心配してくださるエルドラドですが、110年を越えて大変老朽化しています。これを機に一旦解体をし、しっかりメンテナンスを施して、いつかどこかでキレイな姿になったエルドラドをお披露目したいと思います」と述べると、会場内からは大きな拍手が沸き起こった。

 依田氏はさらに「としまえんはなくなりますが、このあとは練馬城址公園として、また一部ハリーポッターのスタジオツアー東京として生まれ変わります。としまえんがあったこの地で、再び皆さまの笑顔が輝き、新たな思い出ができることを願っております」と続けた。

「子供のころ乗ったサイクロンがあまりに怖くて顔が真っ青になった写真が今でも残っている」と自身の思い出を語った株式会社豊島園 代表取締役 依田龍也氏

 そしてついにカルーセルエルドラドの最終運転。遊園地42年勤務という事業運営部副部長 渡辺孝一氏の「カルーセルエルドラド、最終運転スタートします」という声が響くと、会場は一瞬静まり返り、音楽とともに回転がはじまった。1分15秒ほどをその場にいた全員が静かに見守った。

カルーセルエルドラド、無観客での最終運転と消灯
スタッフ一同が見守るなか最後の運転をするカルーセルエルドラド

 最終運転を見届けた依田氏が再びマイクを持ち、「エルドラド、ありがとう!」と一言。そして「エルドラドは永遠に輝き続けると思います。本当に皆さんありがとうございました」とファイナルセレモニーを締めくくった。

「エルドラドは永遠に輝き続けると思います」と依田氏
すべてのライトが消えたエルドラドとスタッフ一同に大きな拍手が送られた
ファイナルセレモニー後。広場には別れを名残惜しむ人々が多く詰めかけた
ゲートへの道ではスタッフが笑顔でお見送り
94年の長い歴史に幕を下ろしたとしまえん