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ドイツ観光局、ベルリンの壁崩壊30周年イベント。レーペル大使「観光はドイツと日本の結び目」

2019年11月14日 実施

 ドイツ観光局は11月14日、ベルリンの壁崩壊30年を記念したイベントをドイツ大使公邸で実施した。

 ベルリンの壁は1989年11月9日に崩壊。ドイツを東(ドイツ民主共和国)と西(ドイツ連邦共和国)に分断した東西冷戦の象徴的な存在であり、ベルリン市内を物理的に分け、崩壊後30年で改善したとはいえ、東西の経済格差を拡大する原因にもなった。

 イベントの冒頭、次期駐日ドイツ大使のイーナ・レーペル(Ina Lepel)氏は観光は「ドイツと日本の結び目」と紹介した。壁の崩壊は分断されたヨーロッパをつなぎ直す象徴で、ドイツ観光のポテンシャルを示すものでもある。ドイツには日本人にまだ知られていない見どころがたくさんあり、紹介しきれていない、という。レーペル氏は「旅をするというのは、未知の発見だけでなく、友達を増やすことや、帰国したあともその国について勉強するきっかけになる」と述べ、ドイツ観光を促した。

次期駐日ドイツ大使のイーナ・レーペル(Ina Lepel)氏

 ドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長の西山晃氏は、観光局が毎年イヤーテーマを設定していることを紹介。2019年は「バウハウス設立100周年」、2020年は「ベートーベン生誕250周年」で、同時に2019年はベルリンの壁崩壊30年、2020年はドイツ統一30年という節目が続いている(関連記事「ドイツ観光局、ドイツ旅行展でセミナー実施。ベートーベン生誕250周年で『#音楽の国ドイツ』をアピール」)。

 ドイツへの外国人旅行者(インバウンド)の宿泊数は2010年から2018年まで9年連続で記録を更新しており、2017年は8390万泊、2018年は8770万泊と高い成長を示している(人数ではない)。2019年は1月~6月で2.9%増で推移しており、10年連続の記録更新も視野に入っている。

 1993年から2018年までの25年間に期間を広げると、外国人旅行者の宿泊数は5300万泊増加している。内訳は旧東ドイツ地域(新連邦州)が1710万泊増、旧西ドイツ地域が3590万泊増とほぼ倍近い開きがある。これはノイシュヴァンシュタイン城やロマンチック街道、ミュンヘンのオクトーバーフェストなど、いわゆる「ドイツ観光の定番」が西側のバイエルン州に集中していること、大きな国際空港が西側地域にあることなどが要因だが、25年間の成長率だけを見れば東側は500%増(西側は115%増)と圧倒的であり、東西格差が埋まりつつあることの証明にもなっている。

 その東側では、やはり首都ベルリンに外国人旅行者が集中しており、シェアは約8割。2018年の宿泊数2050万泊(東側のみ)のうち、1510万泊はベルリン、残り500万泊をザクセンなど4州で分け合う形になっているという。

 一方、日本人旅行者に焦点を絞ってみると、ドイツは欧州でイタリア、フランス、スペインに次ぐ4位に付けており、シェアは10%程度。2010年から2018年までの9年間では、2012年に136万泊をピークに下がり続けていたが、2017年からは上昇に転じている。とはいえ、日本人のパスポート所持率が25%未満、2018年の出国数が1895万人という現状があり、出国数は同一人物の複数回出国も累積でカウントするため、西山氏は「海外に行かない日本人の小さいパイを各国政府観光局が奪い合っている」と表現。ただ、F1層(20歳~34歳の女性)が政府間の関係悪化とは無関係に韓国を多く訪れている現状などもあり、ドイツや欧州の魅力をもっと発信していく必要があるとも指摘した。

ドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長 西山晃氏
西山氏が示したスライド

 当日はゲストとして、NHK解説員の二村伸氏も登壇。壁崩壊30周年の当日もベルリンで取材していたという二村氏は、これまでの取材経験から20年前はまだかなりの開きのあった東西の経済格差はだいぶ縮んでいて、街中の様子でもそれが感じられると話す。ベルリンには未だに大きな国際空港がなく、建設中のブランデンブルク国際空港も「2020年開港の見通し」と言われつつ時期が明確ではないが、観光の起爆剤として期待が高まっていることを紹介した。

NHK解説員 二村伸氏
二村氏が取材してきたベルリンの様子
現地で壁崩壊イベントを実施
電動キックボードのLimeをよく見かけたという