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JAL、伊丹でグランドスタッフの接客コンテスト。「気づきと英会話を磨いて外国人にアプローチを」
2019年10月4日 10:44
- 2019年9月27日 実施
JAL(日本航空)は9月27日、伊丹空港において「第7回 伊丹空港 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」を開催した。2012年から行なわれているこの大会は、グランドスタッフ(空港の地上職員)の接客スキル・サービス向上の一環として開催するもので、優勝者と準優勝者には11月に予定されている全国大会の出場権が与えられる。
当日は伊丹空港に在籍する270名のなかから選ばれた12名の精鋭が、アナウンス審査とロールプレイ審査に臨んだ。なお、2018年は搭乗システム変更のため開催されておらず、2年ぶりのコンテストになる。
開催に先立ち、JALスカイ大阪 空港オペレーション部 部長の岡田氏が「選ばれた12名の方は同僚の推薦によって選出されていますが、今回は票がばらけたこともあり、審査は難航するような気がします」と誰もが優勝候補であることをコメント。
また、緊張した面持ちの参加者に向かって「コンテストの場は普段の業務とは雰囲気が違いますので、その空気を楽しんでもらいたいと思います。いつもの笑顔が出ていないので心配なのですが、しっかり準備をして臨んでもらいたいと思います」といつもの平常心を思い出すようエールを送った。
コンテストの審査は国土交通省 大阪空港事務所長の河合良則氏をはじめ、伊丹空港に携わるJALグループ各社の役員や管理職が担当。アナウンス審査は、アナウンスの分かりやすさ、伝わりやすさなどをポイントに実施し、ロールプレイ審査はカウンター業務においての対応が利用客に寄り添ったものになっているのかどうかといった点がチェックされた。
審査員
国土交通省 大阪航空局 大阪空港事務所 大阪空港事務所長 河合良則氏
関西エアポート株式会社 常務執行役員 伊丹空港本部長 北山博氏
ホテル日航大阪 管理部 総務グループ 吉沢真澄氏
株式会社ジェイエア 執行役員 上原博信氏
株式会社JALスカイ大阪 代表取締役社長 園田武史氏
株式会社JALスカイ大阪 総務部 部長 甲斐田保典氏
株式会社JALスカイ大阪 空港オペレーション部 部長 岡田敬久氏
2分間の間に日本語と英語でイレギュラー対応をアナウンス
アナウンスはグランドスタッフの業務において欠かせないものであり、優先搭乗の案内や座席順の搭乗案内に加え、時には出発の遅れや欠航なども利用客に知らせる必要がある。
今回の審査では、台風の影響によって奄美大島から到着する機材が遅れ、成田への出発便が1時間以上遅れることを想定したアナウンスを日本語と英語で実演した。出発が大幅に遅れることに対するお詫び、そして現在の状況や今後の見通しなどを各自が分かりやすく丁寧に伝えていた。ただ、緊張のためか、人によっては何回か言い直すシーンが見られ、そうとうなプレッシャーのなかで実演しているというのも伝わってきた。
ロールプレイ審査は5分間で3人のチェックインに対応する
ロールプレイ審査では、利用客に扮した3人のスタッフを5分間でどのように対応するかがチェックされた。
1人目の設定はラグビーを観戦するためにユニフォーム姿で現われた男性客で、手荷物を受託する際に自然と会話ができるか。そして、搭乗するまでの空いた時間に伊丹空港ならではのオススメのお土産を提案できるかといったもの。
2人目は英語対応が必要な外国人の男性。これから仙台に飛ぶが、初めて訪れる場所なのでどのようなグルメやお土産、観光地があるか尋ねてくるので、それに対する受け答えをする。また、預けたスーツケースの一部が破損しているので、それに気づけるかも課題になっている。
3人目は乳幼児をベビーカーに乗せた女性客。2人目を対応している際に赤ちゃんがぐずるので、そこに気づくか。そして、ベビーカーを預けるのを渋られるので、それを上手に説得できるかをチェックされた。
審査基準の具体的な内容としては、「チェックインされる方の人数を確認しているか」「フルネームの確認を確実にしているか」「手荷物受託時に指さし確認を実施しているか」といった基本的なものに加え、「お客さまの身なり、持ち物、様子をみてプラスアルファの会話ができているか」「後ろに並ばれているお客さまへの配慮ができているか」「お客さまに寄り添った対応で、次回もJALを使いたいと思っていただけるか」といったものになっている。
現在、ラグビーワールドカップの真っ最中ということもあり、1人目に対してはラグビーの話題で盛り上がる姿が多く見られた。また、ラグビー男子日本代表のオフィシャルエアラインとして、特別塗装機が現在就航していることを紹介しているスタッフもいた。伊丹空港のお土産については、肉まんやみたらし団子など、それぞれがオススメを熱心に紹介していた。
2人目の外国人役に対しては、英語が得意な人は流暢に答え、若干不得手な人も一生懸命に説明する姿が見られた。仙台名物については牛タンやずんだ餅など、オススメのグルメを笑顔で伝えていた。少数ではあったが、スーツケースの破損に気づき、タグにその旨を記載してもらうよう伝えている人もいた。
3人目の乳幼児を連れた女性は制限時間ギリギリということもあり、ほとんどの人があいさつを交わしたまでとなった。一部のスタッフは2人目を対応している際にぐずる赤子をあやす女性に対して、もう少しであることを告げるなど、丁寧な対応をしている姿も見られた。
伊丹大会を制したのは小田さんと三浦さん
審査が終わり、結果発表の前に4人の審査員が講評を述べた。関西エアポート 常務執行役員 伊丹空港本部長の北山博氏は、「どの方も笑顔が素敵で、さすがJALさんのなかで選抜されてきた方たちだと思いました。空港は旅の始まりであり、旅の終わりであります。これからも安全で快適、楽しい空港をJALさんと目指していきたいと思います」と話した。
国土交通省 大阪空港事務所長の河合氏は安全第一であることに加えて、「政府は2020年に訪日外国人の目標を4000万人、2030年には6000万人という目標を掲げています。そのなかでおもてなしの心は、目標を達成するには非常に大切な要素であります。普段の行ないをこのようなコンテストで披露するということは、災害時にもおもてなしにもつながっていくと思います。今後もこのような活動を続けてもらえればと思います」と今後もコンテストが継続することをお願いした。
ホテル日航大阪 総務グループの吉沢真澄氏は、緊張のなかでの素晴らしい実演を評価。自身も研修に携わる立場から「1点だけ気になったのは、緊張のせいもありますがスタンバイ時に真顔だったこと。お客さまも緊張して訪れている方もいらっしゃいますので、常日頃から笑顔を心掛けるようにするともっとよい対応につながると思います」とアドバイスを送っていた。
ジェイエア 執行役員の上原博信氏は、業務に携わっていた経験から「課題には“ここに気づいてほしい”という部分が散りばめられています。そこに気づける人、気づけない人でも評価は分かれました」とし、「ロールプレイ審査のダメージバゲージなどもそうですが、安全の確認、業務の基礎的なことや立ち振る舞いは基本品質です。そのなかで、いかに気づいて会話に結び付けていくかが重要になります」と基本の大切さとプラスアルファが必要であると話した。
それに加えて、「海外からの評価はSKYTRAXの5つ星を獲得するなど高いですが、外国人に対するアプローチ力が弱いという点も指摘されています。今後は会話力を磨いて、基本的な事項をきちんと伝えられるようになればさらによくなると思います。そして優勝も狙えると思います」とさらなる向上に期待を寄せた。
2時間におよぶ熱戦が終わり、2名の優秀者が発表された。優勝はVIPグループの小田さんで、準優勝は第3グループの三浦さんが選ばれた。小田さんは「普段の業務がラウンジ関連でカウンター業務やアナウンスは久しぶりでして、皆さんの素晴らしい接客に驚いていたので“ありえない”という思いです。これからも皆さんの接客を参考に上司からのアドバイスをよく聞き、次も頑張りたいと思います」とコメント。三浦さんは「勉強をしに行こうと思っていたので、このような賞が取れてビックリしています。ここで学んだことを忘れずに、明日からも頑張っていきたいと思います」と話した。
グランドスタッフコンテストの予選は伊丹のほか、成田、羽田、千歳、福岡で行なわれ、勝ち抜いたエリア代表者が11月の後半に予定されている全国大会に参戦し、2019年のJALナンバーワンを決定する。
【お詫びと訂正】初出時、優勝者と準優勝者の名前に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。