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ブンケンブルク支社長に聞くスイス インターナショナル エアラインズの関空~チューリッヒ線。「プレエコは2021年春に改修して搭載」

2020年3月1日 就航

ルフトハンザグループ 日本・韓国支社長のドナルド・ブンケンブルク氏

 ルフトハンザグループのスイス インターナショナル エアラインズは、2020年3月1日に関空(大阪)~スイス・チューリッヒ線を就航する。機材はエアバス A340-300型機で、ファーストクラス8席、ビジネスクラス47席、エコノミークラス168席の計223席で週5日の直行便運航を行なう。

 また、これに先駆けて、新たに納入される2機のボーイング 777-300ER型機を既存の成田~チューリッヒ線に投入。2020年2月から座席数を1.5倍に拡張するという。

 この新路線と新機材について、ルフトハンザグループ 日本・韓国支社長のドナルド・ブンケンブルク氏に話を伺った。

スイス インターナショナル エアラインズの関空~チューリッヒ線(2020年3月1日~)

LX163便: 関空(11時00分)発~チューリッヒ(16時00分)着、月・火・木・土・日曜運航
LX162便: チューリッヒ(13時00分)発~関空(翌08時45分)着、月・水・金・土・日曜運航

――関空~チューリッヒ線について紹介してください。

ブンケンブルク氏:大阪からはルフトハンザ(ルフトハンザ ドイツ航空)が欧州への路線を開設していますが、現在はエアバス A350-900型機を投入しており、以前より100席ほど少なくなっています。

※編注:ルフトハンザ ドイツ航空はボーイング 747-400型機(371席)で運航していた関空~フランクフルト線を、3月31日からA350-900型機(293席)による関空~ミュンヘン線へ変更している。

 とはいえ、大阪発の欧州路線は拡大する方向で検討を続けていて、座席数を減らしたのは適切ではありませんでした。ベストなソリューションは、スイス インターナショナル エアラインズによる週5便を就航することで、グループ全体のキャパシティを上げることだという結論に至ったのです。

 日本から欧州への旅行者は多いですし、最近は欧州からの訪日観光客が増えているという背景もあります。しかし、便数を増やすには機材が足りませんでした。そんななか、2機の新しいボーイング 777-300ER型機の導入が決まり、成田~チューリッヒ線に投入できることになりました。成田線で使っていたエアバス A340-300型機を転用して開設するのが関空~チューリッヒ線というわけです。

 もちろん日本からスイスだけでなく、イタリア、スペイン、ドイツ、東欧などにアクセスできますし、この就航で大阪発のキャパシティは約2倍に拡大することになります。

 開設の理由はもう一つあります。多くの欧州からの訪日旅客は、東京を訪れたあと京都・大阪に寄って関空から帰国する、あるいはその逆のルートをたどるという場合があり、必ずしも同じ発着地を利用するわけではありません。その意味でも、東京と大阪の座席数のバランスを取る必要がありました。

――成田線、関空線ともにファーストクラスを設定していますね。

ブンケンブルク氏:さまざまな顧客がいますが、一つには大手企業のCEOなどトップレベルのコーポレートカスタマーです。ANA(全日本空輸)とはとてもよい提携関係にあり、そうした大手企業に対して(ルフトハンザグループと)ANAが共同契約を結んでいることもあります。

 もちろんプライベートで利用する方もいます。そうした顧客は、プレミアム感を味わうためにファーストクラスやビジネスクラスの料金を支払うことをいとわない人たちです。我々もハイエンドな旅行会社に(ファーストクラスを利用する)ツアーの企画を作ってもらうよう提携しています。

 もともとビジネスクラスを購入していた方がマイルを利用してファーストクラスにアップグレードする、という場合もあります。ANAのマイルでもアップグレードできるので、ビジネスユーザーには人気のある使い方ですね。ANAのマイルはルフトハンザグループのマイレージプログラム(マイルズ&モア)と同じように使うことができます。

――関空線に投入するエアバス A340-300型機は、今後ボーイング 777-300ER型機に置き換えていくのでしょうか。

ブンケンブルク氏:今後数年間はA340-300型機を使う予定です。ファースト、ビジネス、エコノミーといったシートだけでなくキャビンを含めて全面的にリニューアルが終わったばかりなので、現時点では「いつ退役させる」といったタイムラインは設定していません。A340-300型機は非常によい機体だと思っています。

 A340-300型機の223席は、大阪の市場には適切だと捉えています。777-300ER型機だと340席にまで増えますが、例えばビジネスクラスで見るとA340-300型機は47席、777-300ER型機は62席という違いがあります。

 また、両者のシートはほぼ同じです。ほぼ、というのはそもそもキャビンの広さが異なるので、シートをいくつ搭載できるかという違いや、通路の幅などに差はあると思いますが、(リニューアルによって)同じ仕様のシートを導入しており、利用者の体験としては同じです。

――現在3クラスで運航していますが、プレミアムエコノミークラスについての考えを教えてください。

ブンケンブルク氏:2021年の春にスイス インターナショナル エアラインズでも導入する計画があります。ルフトハンザやオーストリア航空でもプレミアムエコノミーは大変に人気があり、最近導入することを決めました(英文ニュースリリース、PDF)。ルフトハンザとオーストリア航空のプレミアムエコノミーの販売は非常に好調で、ANAでの販売も同様です。

 プレミアムエコノミーは1つのクラスとして独立したものになり、エコノミークラスの延長にあるものではなく、料金設定も異なります。日本路線の機材にも導入するので、日本発でも欧州発でも、オンラインでも旅行会社経由でも予約していただけるようになります。

――成田線に投入する777-300ER型機は3クラスですが、今後4クラスの新機材が追加されるのでしょうか。

ブンケンブルク氏:プレミアムエコノミーは機材の改修で導入することになるでしょう。スイス インターナショナル エアラインズの長距離線はすべて3クラス制なので、プレミアムエコノミーを導入するとなれば、すべての機材が4クラスになるよう改修していくと思います。これは777-300ER型機だけでなく、A340-300型機にも言えることです。

プレミアムエコノミークラスのインフォグラフィック

――ANAとの提携の効果について教えてください。

ブンケンブルク氏:ANAとの提携は7年になります。ANAとは共同運航(ジョイントベンチャー)を行なっており、単なる協業を超えて非常に強固なパートナーシップを結んでいます。日本発の欧州便はすべてがANAとの共同運航便です。

 提携がうまくいっている、というのは3つの面があり、1つは国内の企業に対してANAと共同契約を結んでいて、この法人相手のビジネスは大変成功しています。旅行会社に対しても共同契約を行なっていて、こちらも順調です。最後は航空券の価格で、ANAと一貫性を持たせて協調して設定しています。

 また、柔軟性を持たせた価格設定を行なっており、例えば往路をスイス インターナショナル エアラインズ、復路をANAをいった使い分けが全線で可能です。直行便だけでなく乗り継ぎ便でもコードシェアを実施していることや、互換性のあるマイレージプログラムもメリットに挙げられます。ANAは日本が地元なので強いブランド力と市場のカバー力がありますし、我々は欧州が地場なので、そのカバレッジの恩恵がANAにもあると思います。

――日本市場向けの取り組みがあれば教えてください。

ブンケンブルク氏:かなりの割合が日本人顧客ということもあり、日本人に魅力のあるサービスを、と考えています。ルフトハンザグループすべての日本路線で日本人CA(客室乗務員)が乗務しており、洋食以外に和食を選択できるようにしています。和食を用意しているのはルフトハンザのファーストとビジネス、スイス インターナショナル エアラインズのファーストで、スイスに関してはビジネスクラスもプリオーダーで対応しています。和食で大切なのはお米だと理解していますが、顧客からのフィードバックを見る限り、我々のご飯は受け入れられているようですね。

 また、新規メニューを開発する際、担当シェフはファースト、ビジネス、エコノミーのすべてのクラスの料理を我々に提示することになっています。そのテイスティングには本社から担当者が来日して、味だけでなく盛り付けなどの見た目についても厳しいチェックを行なっています。例えばルフトハンザ便のファーストとビジネスではノリタケの食器を使っていますが、その採用に至るまでも長い検討のプロセスを経ています。