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期間限定ファーストクラスやCES向けラスベガス直行便で挑戦を続けるアメリカン航空
アジア太平洋地区 副社長のシェーン・ホッジス氏に背景を聞く
2019年7月26日 15:44
- 2019年7月26日 インタビュー
アメリカン航空は、10月26日までの期間限定で羽田~ロサンゼルス線にファーストクラスを搭載した機材を導入したり、2019年もCES向けにラスベガス直行便を飛ばすことを発表したりと、日本においてさまざまな実験的な取り組みを行なっている。
こうした取り組みを行なう背景について、アメリカン航空 アジア太平洋地区 副社長のシェーン・ホッジス氏に伺った。
――まずはアジア太平洋地区での直近の動向について教えてください。
ホッジス氏:日本でもエキサイティングなニュースが発表されたところでご存知かもしれませんが、私たちは日本路線に参入してから32年が経過していまして、最近の羽田枠追加ということで、羽田~ロサンゼルス、羽田~ダラスを就航予定であることを発表したところです。もう一つ、日本関連では、1月にラスベガスで行なわれるCESに向けて来年もボーイング 777-200型機に大型化して飛ばすこともアナウンスしました。
JAL(日本航空)とのパートナーシップも8年が経過していますが、日米間の私たちのジョイントのビジネスも最大規模になっています。ジョイントでビジネスを行なっていますから、JALにとってエキサイティングな動きは我々にとっても同じように楽しみです。JALによるシアトル便の発表もあったということで、当社としても日本におけるネットワークが拡大したという位置づけで喜んでいます。
アジアでもたくさんニュースがありますが、なかでも2つ大きなニュースだと思うものがあります。オーストラリア、ニュージーランドでは、ちょうど今週、カンタス航空とのジョイントビジネスを発表したところです。カンタス航空からサンフランシスコとシカゴに飛ばすというアナウンスがありました。両方ともブリスベンからです。
まだ詳しくお話しできる段階にはありませんが、当社としても間もなく発表予定ということで、今回のカンタス航空とのジョイントビジネスの結果として、オーストラリア、ニュージーランド向けの当社としてのネットワークも拡大します。
もう一つは中国南方航空とのコードシェアについてです。中国の第2、第3の都市から北京、上海経由で米国につなぐという路線を拡大できていますし、南米とのつながりでもネットワークを拡大しており、米国経由で中国と行き来するフライトでネットワークを拡大しているところで、お客さまにとってはよりよい体験を提供できるようになっています。例えば、ラウンジなどの施設を共有できますし、マイレージプログラムなどについても協力が拡大しています。
ハイエンド需要にしっかり応えるFlagshipファースト、米中貿易摩擦も追い風に
――6月6日~10月26日の期間限定で羽田~ロサンゼルス線にファーストクラス搭載便を飛ばしていますが、その背景について教えていただけますか。
ホッジス氏:おっしゃるとおり10月まで飛ばすのですが、777-300型機でファーストがあるだけでなく、たくさんのメリットがあるファーストクラスです。そもそも8席しかないという意味でとても特別感があります。非常にプライバシーに配慮された空間で、それだけでも誇りに思っていますが、ビジネスクラスやプレミアムエコノミークラスの座席も、貨物も増やしました。なぜこういうことをしているかというと、そのようなハイエンドの需要が日本でしっかりとあるからです。
――日本での需要ということですが、それは純粋に日本人なのか、中国をはじめとするアジアも含めての需要ということでしょうか。
ホッジス氏:大事な点を質問していただきましたが、日本人もアジアの方もすべて需要があるということです。米国からアジア方面に行きたいという需要ももちろんしっかりありますし、日本人が米国に行きたいという需要もありますし、東南アジアの人たちが東京経由で米国に行きたいという需要もあります。アメリカン航空としてはオフラインのマーケットはアジアに7か所ありまして、フィリピン、マレーシア、ベトナム、台湾など、そこに我々がフライトを飛ばしているわけではありませんが、JALと協力することで、そのような地域の人たちが日本経由で米国に移動するというのは非常に大きな部分です。詳しい数字は申し上げられませんが、これは元々大きなビジネスで、しかもプレミアム、より高い席に対する需要がどんどん成長しています。
あえてここまで言ってしまっていいと思いますが、米中の貿易摩擦がプラスの影響を及ぼしていると思います。つまり、中国から東南アジアにビジネスが移るなかで、それに伴ってよりグレードが高い座席に対する需要、東京経由でという需要が明らかに増えると思います。元々貿易摩擦がなくてもこの需要が増えていたところに、米中の貿易摩擦の後押しがあって、ベトナム、マレーシア、フィリピンからの需要が大きくなっているということを実感しています。
――実際、「Flagshipファースト」と呼ばれるファーストクラスはどんな感じなのでしょうか?
ホッジス氏:実は、飛行機に乗っているときだけが素晴らしい体験というわけではなく、地上においてもとてもスペシャル感があるサービスを提供しています。チェックイン、ラウンジ、ダイニングなど、それぞれファーストクラスの方だけが使える施設があります。基本的にはCEOやセレブの方だけが使えるということになりますが、ほかの方と違うプライベートなチェックインの施設があるとか、ニューヨークやロサンゼルスではヘリコプター会社と連携して、ダウンタウンに直行できるようなサービスもあります。
そもそも米国系航空会社のなかで米国行きの便でファーストクラスを提供しているのが当社だけですから、それだけでも巨大なアドバンテージだと思いますが、それは自分たちのなかでも頑張っていますし、納得感もあります。ただ、投資を大規模に行なっているというのは、単に飛行機のなかのシートにお金をかけましたということではありません。機内でも地上でも大規模な投資をして、本当の意味での絶対的なファーストクラスの体験をしていただこうということをお客さまにコミットして、大々的にお金をかけてきたということです。
椅子の幅も広く、こちらを向いたらオフィスのような机があって、あちらを向いたら大きなスクリーンがあって、ディナーも日本の著名なシェフが監修した5つのコースから選べ、そのコースの中身も素晴らしい内容です。機内のエンターテインメントについても、ライブのテレビでニュースも見られますし、オリンピックの真っ最中にも生で見られます。まるで自分の居間にいるような感覚です。
眠るとなれば、キャスパーのとてもいいマットレスがあり、フルフラットのベッドの上で、枕、パジャマ、スリッパ、B&Oのヘッドフォンとか、ほかに何か言い忘れたことはないかな、というぐらいすべて素晴らしいものを揃えています。寝具についてはすべてキャスパーのもので揃えていて、機内で快適に過ごせるように当社のためにデザインされたものです。
――地上でのサービスという面では、羽田ではどうなのでしょう。
ホッジス氏:たしかに先ほど申し上げた地上での施設やサービスはあくまで米国側での話です。羽田にはそれがありません。そこでJALのファーストクラスの設備をお借りしているわけですが、それはそれで立派なものです。質として何か問題があるわけではありませんが、厳密にいうと我々のFlagshipファーストではありません。
――10月26日までの期間限定になっていますが、その後はどうなるのでしょうか。
ホッジス氏:期間限定としているのは、基本的に航空機を大型化するとなると、どこかほかで飛んでいたものを取ってきた、ということになりますから、この時期、日本で使うほうがいいという決定があったからです。それはネットワークプランニングチームが決定します。稼働率や業績を見て、続けるかどうかを判断します。今のところ、貨物の仕事も増えていますし、プレミアムエコノミーもビジネスも座席を増やして、それでも日本線については好調です。ただ、あくまでもネットワークプランニングチームが評価をして、当社のすべての機材をどの時点でどの地域に配置するかを決めていきます。ですから、その先はまだ決まっていません。
分かりやすい例もあります。1月にトライしたCESの時期のラスベガス直行便ですが、これがあまりにも絶好調だったので、さっそく来年もやりましょう、しかも777-200にしましょうということでアナウンスしました。この期間限定についても、10月まで状況を見て、考えていくことになります。
もう1枠もらえるなら、やっぱりラスベガス
――ラスベガス直行便の乗客の内訳はどんな状況だったのでしょうか。
ホッジス氏:数字そのものはお答えできませんが、ざっくり言うと、とにかく日本人の比率が圧倒的に大きく、実は東南アジアの人たちの需要もあったのですが、単に座席が足りず、ご搭乗いただけなかったという状況で、今年トライした直行便のなかでは特筆すべき大成功ということで、来年もやる、しかも大きくしてやる、ということを発表してしまったぐらいです。日本の需要もとても大きいですが、東南アジアの需要もとても大きい。来年も日本人の比率が大きいと思いますが、777-200にしたとしても、両方の市場から大きな需要が期待できます。
――CES以外で同じように需要が大きいイベントはありそうですか?
ホッジス氏:今のところ具体的にこれといったものはありませんが、検討中です。そもそも我々は伝統的にハブからハブへ飛ばすというビジネスで、ハブではないラスベガスに直行便ということはあまりやらないのですが、日本のフライトで試してみたら大成功してしまったので、今のところチームとしても日本以外でもどこか大きなイベントでこういうことができないか探しているところです。
ハブとスポークという言い方をしますが、通常、ラスベガスはハブではなくスポークです。だいたいラスベガスに飛ばすと、ラスベガスに向かう方向は満席だったとしても、ラスベガス発の方はそこまで満席ではないというのが普通です。ハブとスポーク型の飛ばし方で成功を収めるには、まずはラスベガス行きのフライトをいっぱいにしないといけない。そのうえでラスベガス発の方はそこまでいっぱいではなくても採算が取れるということにしておかなければなりません。その観点では、CESについては元々ラスベガス行きのフライトから大成功だったので成立しました。
――2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが、アメリカン航空として何か特別な取り組みを考えていますか。
ホッジス氏:JALとのジョイントビジネスがとても大きな意味を持ちますが、そもそも米国人でオリンピック・パラリンピックに参加する人数もとても多く、選手やその家族がたくさん来日します。法人需要もとても大きく、例えば、テレビ放映をするNBCは元々強力な関係がある法人ですから、我々のビジネスのメリットになると思っています。とくに開催の前と後については、かなり忙しくなると想定しています。
そもそも日米間のフライトは満席状態にあり、そこに上乗せしてオリンピック・パラリンピックが開催されることになります。元々日本というのは観光や出張でかなりいっぱいいっぱいな状態ですから、相当な稼働率になるのではないかと思います。
――ちなみに、羽田の発着枠をもう1枠獲得できるとしたら、どこに飛ばしたいですか?
ホッジス氏:ラスベガス、とにかくラスベガスですね。ラスベガスはリクエストしていますが、今のところ実現できていません。これはCESだけでなく、そもそもラスベガス行きの需要がとても大きいと思っているのでリクエストしているのですが、機材は当社のものになりますが、JALとも緊密に連携すれば日本の需要を取り込むことができると思います。ただ、それは実現できていません。これからも政府間の協議の機会があれば、ぜひラスベガスは真剣にほしいと思っています。
――近年、かなりの額の投資を行なっていますね。
ホッジス氏:この5年で280億ドルの投資を行ってきました。米国で国際路線を飛ばしている航空会社のなかでは最も新しい機材になっていますが、物理的なものにだけ投資しているわけではありません。ダイニングやラウンジなどの物理的な施設にもお金をかけていますが、それ以上に強調したいのは、人材にお金も時間もかけているということです。社風が長期的な優位性をもたらすと考えていますから、人材にも意識してお金をかけています。
アジアではJALをはじめとしたパートナーが、卓越したお客さまサービスを提要していますから、アジアからのお客さまは高い期待をお持ちです。その分も我々として意識して投資をして、多大なる期待にしっかりお応えできるようにしたいと思います。
アジア・太平洋地区だけでそれくらいの金額の投資を行なえればもっとよかったのですが(笑)、結局のところ、アジア・太平洋地区がその便益を享受できていると思います。結果として、一番性能が高く、若い機材がアジア・太平洋地区で飛んでいます。マーケティング予算の増分や人員の増加もほかの地域より大きかったですし、ハブにも投資をしています。つまり、この地域が一番大事で、フォーカスして投資したと言えます。
――ありがとうございました。