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ZMP、近距離用の1人乗り自動運転モビリティ「Robocar Walk」発表会。シートと音にこだわり
空港~都心の移動を快適にするバスと自動運転タクシーの連携も発表
2019年7月23日 20:55
- 2019年7月23日 発表
ZMPは7月23日、近距離の人の移動を目的とした自動運転モビリティ「RoboCar Walk」を発表した。高齢者や障害者をはじめ、歩行が困難な人に向けた1人乗りの電動小型車両で、空港などの商業施設への導入を見込む。
また、同時に空港リムジンバスと自動運転タクシーを組み合わせた交通インフラの実証実験開始や、EVバスを製造する中国企業ANKAIとの戦略的提携についても発表した。
車いすに代わる新たなモビリティ。シートや音にもこだわり
RoboCar Walkは、1人乗りのシートを備えた電動小型車両。専用アプリなどを用いて近くまで呼び出すことができ、車両に備え付けられたディスプレイから行き先を設定することで、周囲の状況を見きわめながら安全に自動走行し、目的の場所にたどり着ける。車両前面に取り付けられたLEDの“目”で人とコミュニケーションしたり、進行方向を合図したりする仕組みも取り入れられている。
すでに国内外の各所で運用実績のある同社製の宅配ロボット車両「CarriRo Deli」をベースに、大人1人が座れるシートと行き先指示用のディスプレイを取り付けるなどしたもの。最高時速は6km程度で、内蔵するカメラやレーザーなどのセンサーを用いて障害物や人を検出し、回避しながら最適な経路で走行できる。
想定している用途は、空港における出発ゲートや、そのほか空港内施設への移動の足。または、ショッピングモールなどの大規模商業施設内の移動用車両としても考えられている。走行中の操作は不要なため、年齢にかかわらず利用しやすく、車いすや電動カート代わりのモビリティとしての活用が期待される。
なお、RoboCar Walkのシートのクッション素材には、三井化学SKCポリウレタンが開発した植物由来のバイオプラスチックの1種「ニコニコール」を採用。インド原産のトウゴマから抽出したひまし油を原料にしており、生育段階で二酸化炭素を吸収することから、製造から廃棄までの総合的な二酸化炭素排出量が低く抑えられるなど、環境に優しい素材であるとした。
また、RoboCar Walkが走行する際に発する、ZMPのサービスを表わすサウンドロゴと、接近を周囲に知らせるサウンドについては、サイン音デザイナーとして知られる武者圭氏が担当。いずれも1~3秒未満の短いものながら、電子的なものや無機質に感じないもの、遠くまで響かずうるさく聞こえないもの、音のイメージは残るがメロディに聞こえないもの、といったコンセプトで作られた。
ZMP 代表取締役社長の谷口恒氏によると、RoboCar Walkのアイディアは、海外空港の地上スタッフが利用者の車いすを長時間にわたって押し続けるのに苦労していると聞いて思いついたとのこと。乗降時に回転するエコ素材を採用したシート、足のはみ出しを防止する開閉式ドア、誰でも簡単に操作できるディスプレイなど、UI/UXにこだわって開発したことをアピールするとともに、2020年の私有地での商用化、2021年の公道での商用化と量産を目指すとした。
空港~都心の移動を楽にする新たな実証実験
このほか、空港リムジンバスと、ZMPが提供する自動運転タクシーとを連携させた交通インフラの実証実験を、11月に開始することも発表した。これは、2018年8~9月に東京・六本木~大手町間で実施した自動運転タクシーの実証実験を拡大するもの。
新たな取り組みでは、丸の内パークビルディングと東京シティエアターミナルの約3kmの区間で自動運転タクシーを走らせ、これに東京シティエアターミナル(T-CAT)~成田/羽田空港間の空港リムジンバスによる移動を組み合わせる。スマートフォンなどから注文した1つのチケットでバスと自動運転タクシーの両方を予約・手配できる仕組みになる予定で、増加し続けるインバウンドの移動の効率化とタクシードライバー不足の解消に向けた取り組みと位置付ける(関連記事「スマホで一括予約。成田/羽田を結ぶ空港リムジンバスと東京都心の自動運転タクシーを連携するMaaS実証実験。旅行サービス商品化の検証も」)。
さらに、EVバスを製造する中国企業ANKAIとの戦略的提携についても発表した。ZMPはすでに3月にセントレア(中部国際空港)の制限区域内でANKAIのEVバスを用いた自動運転の実証実験を行なっており、その成功を受けて今回の戦略的提携につながった。今後は2019年内に新たな実証実験を実施し、2020年以降には法制度の改正・緩和を前提とした公道での走行も視野に入れ、自動運転バスのさらなる開発を継続するとしている。