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スターフライヤー、業界志望の学生らに経営/ブランド戦略などを講義した2日間。「ほかにはない体験になる」と松石社長

2019年3月26日~27日 実施

北九州空港敷地内にあるスターフライヤー本社アネックス棟やトレーニングセンターで「スターフライヤー エアライン講座」を実施した

 スターフライヤーは、航空業界に興味のある学生などを対象とした「スターフライヤー エアライン講座」を3月26日~27日の2日間実施した。

 現役社員による航空業界事情や、スターフライヤーブランドの戦略、CA(客室乗務員)やグランドスタッフといった職種の説明など、時間を区切って講義形式でカリキュラムを展開。2018年に稼働を開始したアネックス棟やフライトセンター、さらにトレーニングセンターと、北九州空港にあるほぼすべての施設を利用して行なわれた。

 開講にあたり、スターフライヤー 代表取締役 社長執行役員の松石禎己氏は、「スターフライヤーが一番強調したいのは『安全』と『CS(顧客満足度)』です。今回の講座はCAを養成する講座ではなく、『エアライン』の講座です。ほかの職種と航空会社との違い、特にスターフライヤーがどのような取り組みをしているのか。講師陣は実際に現場で働いている方ばかりです。このあとに経営戦略やブランド戦略といったカリキュラムが組まれていますが、ほかではなかなか知ることができないと思います。

『CS推進部おもてなしセンター』という新たにできあがった部署が、来年度より新入社員研修を行なうことになりました。今回の講座は2日間にわたり、また有料ということで皆さまからお代をいただいており、ほかにはない体験になると思います。

 エアラインの業務は、パイロットやCA、グランドハンドリング、整備士、ディスパッチなどなど、多岐に渡ります。また会社によって、自社でその機能を持たず関連会社に委託していたりと、仕組みも複雑です」と説明。午前中はアネックス棟の会議室にて3回の講義、午後は北九州空港のチェックインカウンター内のバックヤードやトレーニングセンターに移動し、実際の業務を見学。

 ここでは初日(26日)の模様をお伝えするが、2日間で異なるカリキュラムが用意されており、2日目(27日)はトレーニングセンターで、プレゼンテーションやグループディスカッション、実際にCAを体験するロールプレイなど充実の講義内容となっていた。

エアライン講座の初日はアネックス棟の会議室で行なわれた
講師陣
参加者にはカリキュラムテキストが配布された
講座の開始にあたり、株式会社スターフライヤー CS推進部 おもてなしセンター長 渕けい子氏があいさつ
株式会社スターフライヤー 代表取締役 社長執行役員 松石禎己氏

 松石氏のオープニングセッションが終わり、まずは「経営戦略」について。航空業の歴史から現在、日本の航空業界が置かれている状況や環境、そして今後の経営戦略について、経営戦略部の中村俊也氏が講師を務めた。

 講義は、1903年のライト兄弟の有人動力における初飛行の歴史から、日本の航空会社の成り立ちという旅客輸送の歴史まで遡る内容となっていた。LCCの登場やインバウンドの増加についての説明に続き、スターフライヤーが行なってきた戦略について説明。2013年に経営が落ち込んだタイミングから業績が上向いてきたときの社内での取り組みや海外路線の復活など、市況とともに企業が成長していくという講義内容となっていた。

株式会社スターフライヤー 経営戦略部 中村俊也氏
航空業界を取り巻く市場やマーケティングについて説明があった

 続いての講義は「ブランド戦略」。営業本部 マーケティング部 企画課の辻安希子氏より、「ブランドとは?」から「スターフライヤーブランドについて」の基礎、さらに社内向けに啓蒙する「インナーブランディング」、外向けのプロモーション「アウターブランディング」の手法といった内容になっていた。

 講義では、例として「黒い炭酸飲料で思い出すものは?」と問いかけ、参加者たちとコミュニケーションをとりながら、ブランドコンセプトやブランドリングというイラストを使った説明、また広告ポスターの変遷などについても紹介した。

 特にブランドリングの説明は、別名オニオンリングと呼ばれる玉ねぎの断面図を模したイラストの中心部から、スターフライヤーのアイデンティティとなる「Essence」、スターフライヤーの特徴を擬人化した「Personality」、顧客に提供する価値となる「Value」、顧客が実際に利用した際に得られる便利さや利益「Benefit」、商品やサービスである「Attribute」と、段階的に表現されており、ブランドが波及していく順序などを説明していた。

株式会社スターフライヤー 営業本部 マーケティング部 企画課 辻安希子氏
社員向けのインナーブランディング、顧客向けのアウターブランディングについて説明

 初日の午前中最後の講義は、「航空業の基本品質」について。当日のSFJ70便(北九州~羽田線)に乗務し、折り返しのSFJ73便で北九州空港に戻ってきたばかりの坪内キャプテンが登壇した。

 講義は、航空機の飛ぶ仕組みやパイロットの業務内容について。不規則な時間の勤務となることが多いが、3人の子供を持つ父親として、スターフライヤーの育休制度を取得したことなど、働きやすさについて説明があった。参加者からの質問にも応じ、担当する機材に乗り込む乗客を搭乗橋で確認し、どのような層が多いかを把握するように努めていると明かした。乳幼児が多い場合は、着陸に向けての降下を早いタイミングで開始し、緩やかに行なうなど効率とおもてなしの両立について、常に思考を張り巡らせているとのこと。

 こうして午前の部は終了し、昼食を挟み午後の部へ。国内線のチェックインカウンターとつながっているオペレーションルーム、アネックス棟の隣に位置するフライトセンター内にあるCA用のフロアなどを見学。実際に勤務しているCAや、モニターに映し出されている航空機の様子などを見学することができた。

当日の早朝便のフライトを担当し、北九州~羽田便の往復を終えたばかりだった坪内キャプテン
飛行機の飛ぶ仕組みからパイロットの就業形態にいたるまで、幅広い説明があった
午後からはオペレーションルームやフライトセンターの見学(写真はフライトセンター建屋)
2階のオペレーションルームにつながる階段スペースには夜空が表現されており、学生たちが写真撮影に興じていた
運航管理の責任者となるOD(オペレーションディレクター)より、オペレーションルームの役割について説明を受ける
学生にはオペレーションルームについて説明が記載された小冊子が配られた
オペレーションルームの配置図。ODの前にOC(オペレーションコントローラ)、その前にディスパッチと呼ばれる運航管理者が座る
フライトセンターの1階に移動し、CAの待機ルームを紹介
その日の運航便に乗務するスタッフの名前が記されているシート
体調不良により交代要員が必要な場合、待機しているCAが過ごす部屋の様子も見ることができた。ちょうどプッシュバックする航空機を見送る場面に遭遇
スタッフ同士で、お礼やほめるポイントを伝え合うファインプレーカード。複写式になっていて本人とデータを集約することができる
見学の最後はチェックインカウンター。国内線チェックインカウンターの業務内容について、一通り説明を受ける
チェックインカウンターの裏側も見学

 各棟やバックヤードの見学が終了し、初日最後の講義を受けるため一行はトレーニングセンターに移動開始。「コミュニケーションスキル向上」の講師は、運送客室本部 客室部 教官の西山淳氏が担当した。西山氏は、CS推進部 おもてなしセンターも兼務している。

 この講義はテキストやスライドを一切使わずに行なわれ、CAに必要な所作や立ち振る舞いについて、またそれらがおよぼす印象などについて、といった実践的な講義だった。

トレーニングセンターに移動し、男性CAである運送客室本部 客室部 教官 西山淳氏の講義が始まった
西山氏の講義
この講義では、CAの振る舞いや印象などについて説明
トレーニングセンターには実機と同サイズのモックがあり、実際の訓練に使用される