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世界遺産・三菱重工長崎造船所で護衛艦「しらぬい」引渡式。いざ! 青森へ「不知火」出陣!

2019年2月27日 実施

青森に向けて出港する護衛艦「しらぬい」

 長崎県の三菱重工業 長崎造船所 本工場 向島南岸壁で2月27日、護衛艦「しらぬい」の引渡式ならびに自衛艦旗授与式が行なわれた。

 長崎造船所は、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産である「小菅修船場跡」「第三船渠(せんきょ)」「ジャイアント・カンチレバークレーン」「旧木型場」「占勝閣」を含んでおり、同じ長崎エリアでは「端島炭坑」(いわゆる軍艦島)などもその一部だ。

長崎造船所にて引渡式。自衛艦旗を掲揚

 引渡式・自衛艦旗授与式とは、造船された艦艇の所有が造船会社から防衛省に引き渡されること。そして艦艇の所有が移管したことにより、艦艇尾に自衛艦旗を掲揚することだ。任務につく艦艇は船艇の尾に自衛艦旗が掲げられたタイミングで部隊新編となり、自衛艦として海上自衛隊の編成に加わる。

 引渡式では「受渡書授受」を実施。三菱重工業 執行役員 防衛・宇宙セグメント長の阿部直彦氏が「護衛艦しらぬいをお引渡いたします」と、引渡書を防衛装備庁 防衛技監 外園博一氏に手渡した。続いて、外園氏が「護衛艦しらぬいを受領しました」と、受領書を阿部氏に手渡す。

護衛艦「しらぬい」の引渡式ならびに自衛艦旗授与式が行なわれた
引渡書を防衛装備庁外園博一防衛技監へ
受領書を三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部直彦氏に同じく手渡した
護衛艦「しらぬい」に掲げられていた社旗が降ろされる

 護衛艦「しらぬい」に掲げられていた社旗が降ろされ引渡式が閉式すると、そのまま自衛艦旗授与式が開式。海上自衛隊の歌姫こと三宅由佳莉氏が儀礼曲「海のさきもり」を歌唱するなか、自衛艦旗が壇上に。そして厳かな雰囲気のなか乗組員のもとへ。海上自衛隊 佐世保音楽隊による行進曲「軍艦」が演奏されるなか、乗組員が自衛艦旗を先頭に乗艦した。

自衛艦旗授与式が開式し、自衛艦旗が壇上に運ばれる
乗組員が頭上に掲げながら乗組員と護衛艦のもとへ
整列した乗組員たち
そして任務を行なう乗組員とともに乗艦
自衛艦旗授与式では三宅由佳莉氏が「海のさきもり」を歌唱
海上自衛隊 佐世保音楽隊も行進曲「軍艦」などを生演奏

 乗組員が乗艦し、甲板での準備が整うと自衛艦旗掲揚へ。国歌「君が代」が美しく響くなか自衛艦旗が掲げられた。

 訓示では防衛省代表として海上幕僚長 海将の村川豊氏が造船関係者に感謝を伝えるとともに、「1つの船の伝統は初代乗組員によって築かれると言われる」と話し、「艦の歴史によき伝統を」と乗組員に伝えた。

 また「わが国周辺には、特に質、量に優れた軍事力を有する国家が集中していることを考えれば、我々はこれらの流れから取り残されることは許されない」と厳しい口調で語り、「領土の四方を海に囲まれた島国であるわが国の平和と独立を守るのは自分たちであるという自覚を持ち、艦長の指示・統率のもとで一致団結・訓練に精励を」と激励した。その後現状報告と艦内視察が行なわれ、栄誉礼後に自衛艦旗授与式が閉式した。

乗組員が乗艦。その後合図で艦尾の方へ
自衛艦旗がゆっくりと掲揚されていく
掲揚された自衛艦旗
海上幕僚長 海将 村川豊氏が乗組員に向け訓示を行なった
訓示後に敬礼

護衛艦「しらぬい」がついに出港。横断幕でエールと感謝を送り合う

 出港前には花束贈呈ならびに護衛艦「しらぬい」艦長 ぎ装員長 2等海佐の高須賀政信氏があいさつ。関係者らに感謝を伝え、「任務に対応すべく艦内体制を確立し乗組員一同邁進していく」と約束した。そして「任務のため出港いたします」と出港報告を行ない乗艦。

 出港ラッパが響き、再び行進曲「軍艦」が演奏されると三菱重工業 長崎造船所の社員らが向島南岸壁沿いに横断幕で乗組員らに向けてメッセージ。それに応えるように護衛艦「しらぬい」からも横断幕が掲げられた。汽笛が大きく鳴らされると楽曲は「蛍の光」に。周囲のあちこちから汽笛の音が響く。岸壁側でも関係者全員が脱帽し、大きく振って出港を見送った。

艦長らに花束が贈呈された
艦長があいさつ。そして出港報告を行なった
艦長が乗艦し出港へ
向島南岸壁沿いに社員らがスタンバイ
大きく横断幕を広げてメッセージを送った
応えるように護衛艦「しらぬい」からも横断幕が掲げられた
ヘルメットを外し全員で見送る
関係者らも脱帽し、出港を見守った

 護衛艦「しらぬい」の名前の由来は、5000トン型護衛艦(DD)の2番艦で「天象」の名のなかから選出するとされ、各海上自衛隊の部隊から募集し検討、防衛大臣が決定。漢字表記は「不知火」で、九州の八代海に古代より伝えられる神秘的な火光現象で、相手を幻惑し押し込むという意味がある。

 特徴はガスタービン推進と電力推進のハイブリッド方式を採用していること。また、RWS(Remote Weapon Station)を搭載。さらに対潜探知能力に優れた海洋護衛艦である。

護衛艦 不知火の旗も掲げられていた
搭載されたRWS(Remote Weapon Station)

 同船概要は以下のとおり。

艦名: しらぬい
艦種: 5000トン型護衛艦
番号: 120
基準排水量: 約5100トン
船体サイズ: 全長151m、最大幅18.3m、深さ10.9m
主機関: ガスタービン2基、推進電動機2基(2軸)
馬力: 6万2500PS
最大速力: 30ノット
乗組員数: 約220名(女性約20名)
配属先: 青森県むつ市 海上自衛隊大湊基地(第3護衛隊群 第7護衛隊)

出港する護衛艦「しらぬい」と横断幕で応える乗組員