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JAL、乗務員の飲酒による事業改善命令に対して報告書提出。「企業風土改革のため『社内検証委員会』を発足」と赤坂社長

2019年1月18日 発表

日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏

 JAL(日本航空)は1月18日、2018年後半に発生した乗務員の飲酒に起因する事案により、国土交通省 航空局から受けた事業改善命令・業務改善勧告について、報告書の提出を行なった。同日、都内で会見を開き、その内容を説明した。登壇したのはJAL 代表取締役社長の赤坂祐二氏と、取締役専務執行役員 運航本部長の進俊則氏。

 事案の詳細については過去の記事を参照していただきたいが、1件は2018年10月28日のロンドン・ヒースロー発JL44便に乗務予定だった副操縦士の呼気から基準を超えるアルコール濃度が検出され、当局に拘束・起訴、その後実刑判決を受けて拘置されたというもの。もう1件は、12月17日の成田発JL786便に乗務中のCA(客室乗務員)が機内で飲酒を行なったというもの。また、11月28日にはグループ会社JAC(日本エアコミューター)の機長がアルコール検査で陽性となり、計4便の出発遅延が発生している(関連記事「JAL、乗務中のCAが『機内で飲酒』と結論。本人は現在も否定」「JAL、飲酒した副操縦士の逮捕で再発防止策。『顔認証などで検査の厳格化を検討』と赤坂社長」)。

会見に臨む日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏(左)、取締役専務執行役員 運航本部長 進俊則氏(右)

 会見の冒頭、赤坂氏は安全運航を最優先に掲げながらも社内の安全管理が十分に機能していなかったことを振り返り、「認識の甘さが浮き彫りになった」と述べた。前述の事案ほどでないにしろ、過去にも飲酒にまつわる(出発遅延などの)問題は起きていたが、「これまでの過去の事例を活かしてこなかった。活かそうとしてこなかった」として、「厳格に対応することで都合がわるくなる」と考える空気が社内にあったことを指摘。運航に支障が出る、仲間に影響が出るという面を優先して、「本来の価値観と逆転していた。これまで放置してきた経営の大きな責任」と話した。

 報告書に記載した今後の改善点や対策の概要などは以下のとおり。

飲酒問題に係る要因と対策の概要

・飲酒対策を組織的に管理する体制の構築
・アルコール検査と運航乗務員への処分の強化
・飲酒に関する不適切事案を未然に防止する仕組みの構築
・運航乗務員に対する意識改革の早急な実施
・全社員(JALグループ全社員)に対する飲酒に関する安全意識の再徹底ならびに法令および規程などの遵守に係る教育

乗員編成の変更の判断が適切に行なわれていない要因と対策の概要

・予定された乗員編成の変更禁止
・乗務割(乗員編成含む)変更の判断に係る規程の明確化
・安全最優先の意識の再徹底

 アルコール検査と処分の強化についてはすでに実施しているものもあるが、乗務前の検査で呼気中のアルコール濃度が0.00mg/Lを超えた場合は乗務停止とする。また、すでに国内外すべてのアルコール検知器を吹き込み式に更新しており(2018年11月26日付け)、検査は第三者の立ち会いのもとで実施、記録は保管して運用する(2018年12月11日付)。さらに、アルコール検査の規定を明確化し(2018年12月27日付け)、乗務後にも(機内で)アルコール検査を実施する(2019年3月以降)。就業規則も改訂し、これまでは出勤停止からけん責としてきたものを、最も重い処分で懲戒解雇まであることを明記する。

 事業改善命令を受けての社内処分についても発表しており、以下のとおりとした。

代表取締役会長 植木義晴氏:月額報酬20%の減額を2か月
代表取締役社長 赤坂祐二氏:月額報酬40%の減額を3か月
代表取締役副社長 藤田直志氏:月額報酬20%の減額を2か月
取締役専務執行役員 運航本部長 進俊則氏:月額報酬20%の減額を2か月
執行役員 日本エアコミューター社長 加藤洋樹氏:月額報酬20%の減額を1か月
執行役員 客室本部長 安部映里氏:月額報酬20%の減額を1か月
※処分は2019年2月分から実施

 加えて、赤坂氏は一連の事案をとおして社内で対策を進めるなか、「容易には解決できない問題や解決することで都合がわるくなるような問題」に対して、「範囲が限定的」「まれな例」などと過小評価して真剣に向き合わない傾向があることを認識したという。

 赤坂氏は「都合のわるいことに向き合ってこなかった。事なかれ主義で、現場尊重といいながら現場に丸投げしていた。身内をかばうような風土があり、前例踏襲や横並び主義に陥っていた」と続け、その改革のため、「社内検証委員会」を発足したと説明した。赤坂氏が委員長を務め、幅広い意見・客観性のある意見を聞くべく、メンバーには関連会社の社長や外部の人間、パイロットも含まれているという。委員会はすでに発足しており、週1回程度の頻度で実施、今回のような飲酒事案はもちろん、さまざまな課題に取り組んでいくとした。