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「ウォルト・ディズニー・アーカイブス展」が横浜で開催。貴重なアートワークや「美女と野獣」の衣装の秘密を聞いてきた

2018年12月19日~2019年1月20日 開催

横浜赤レンガ倉庫1号館のエントランスもミッキーマウスの90周年をお祝い中(C)Disney

 2018年2月に舞浜で開催した「D23 Expo Japan 2018」にて3日間限定で公開され、話題となった「ウォルト・ディズニー・アーカイブス展~ミッキーマウスから続く、未来への物語~」。その後東京、大阪を巡回し、2018年12月19日から2019年1月20日までは横浜・赤レンガ倉庫1号館で開催している(関連記事「東京ディズニーリゾート35周年展示など目白押しの『D23 Expo Japan 2018』レポート」)。

 ミッキーマウスのスクリーンデビュー90周年を記念して開催する本展では、世界初公開となるスクラップブック「ミッキーマウス」をはじめ、ディズニー映画「美女と野獣」で使用された衣装、そしてアトラクションで活躍していたオーディオアニマトロニクスにプロップスなど、約420点が一同に介している。

精巧に作られたコスチュームを間近に! ミッキーマウススクリーンデビュー90周年の特別展示も追加

 エントランスには90周年をお祝いするスペシャルなデコレーション。そして広場にはホリデーシーズンならではのツリーとオーナメントも登場し、フォトスポットとして人気だ。

ヒッチハイク・ゴーストたちも本展覧会のため特別に来場(C)Disney
特大のツリーの正面にはフォトスポットも(12月25日までの限定展示)(C)Disney
よく見るとオーナメントがジンジャーブレッドマン風のミッキーマウス。ツリーに90個飾られている(C)Disney

 今回はウォルト・ディズニー・アーカイブス アーキビストのリック・ロレンツ氏のスペシャルツアーに参加。まるでウォルト・ディズニー・アーカイブスを訪れたような雰囲気のなか解説を聞くことができた。

 ウォルト・ディズニー・アーカイブスは1970年にデイヴ・スミス氏により設立。ウォルト・ディズニー、ウォルト・ディズニー・カンパニーに関する資料の収集や保存、資料調査などを行ない、ディズニーの歴史全般をカバーしている。1万箱を超える書類やアイテム、約400万点にのぼる写真に約1万2000冊の書籍、数千の衣装やプロップスを保管しており、ディズニーのクリエイターに社員、キャストに外部研究者らが学ぶ場として活用されている。

「『メリー・ポピンズ』ホームビデオ・アート」とともに笑顔のウォルト・ディズニー・アーカイブス アーキビストのリック・ロレンツ氏(C)Disney

 会場のエントランスをくぐると目の前に現われるのが「アーカイブス・ショーケース」。ウォルト・ディズニー・スタジオ、フランク・ウェルズ・ビルディングのロビーを訪れる人々は必ず目にする光景そのままとのこと。ディズニーの歴史に沿った展示が行なわれているエリアで、毎年1回テーマを変えるという。

 ロレンツ氏によると「ショーケースは、スクリーンデビュー90周年を迎えたミッキーマウスに関する展示となっています。何年にも渡るミッキーマウスのグッズなどを見て楽しむことができるでしょう。特に注目していただきたいのがミッキーマウスの肖像画です。1953年のアニバーサリーに合わせポートレートを描く伝統が始まり、本展では25周年、50周年、75周年、80周年と4枚の肖像画を見ることができます。また、1929年に一番始めに作られたメモ帳(リプロダクション)や、1930年代のオリジナルの腕時計、ハンドカーなども見どころです」と教えてくれた。

現地そのままのクオリティで再現された「アーカイブス・ショーケース」(C)Disney
キャラクター商品の第一号として発売された「ミッキーマウスのノートパッド」(C)Disney
ライオネル製の「ミッキーマウスとミニーマウス ハンドカー」(C)Disney

 続いては世界初公開となるスクラップブック「ミッキーマウス」を見学。映像でも流れているが、テレビ番組「ディズニーランド」で実際にウォルト・ディズニーが使っていたものだ。ウォルト・ディズニーが製作した初のテレビ番組であり、「いつだって忘れないでほしい。すべては1匹のねずみから始まったということを」のフレーズを生んだ、まさに伝説の1冊だ。

 実は、数年前に手に入れたばかりの品で、中にはミッキーマウスのアートワークや写真などが。本来ならば開いて展示をしたいとのことだが、現在は内側のコンデションが万全ではないため、閉じたままの状態。いつか中身を見る日が来ることを願いたいところ。

世界初公開の展示となったスクラップブック「ミッキーマウス」(C)Disney
実際にテレビ番組内でウォルト・ディズニーが本を開き、“あのフレーズ”が聞けるシーンを放映(C)Disney

 振り向くとドアの向こうにウォルト・ディズニーの姿が。「私たちが毎日使っているオフィスと同じ扉を再現しています。私たちの友人であるウォルト・ディズニーを紹介しましょう!」とロレンツ氏にエスコートされ中に入ると、横に「アニメーターズ・デスク」を発見した。

 この部屋には歴史的資料と資産が展示してあり、工業デザイナーのケム・ウェーバーがデザインした特注の「アニメーターズ・デスク」をはじめ、映画「ファンタジア」の「魔法使いの弟子」のコンセプトアートなどを展示。デスクの上にはヒヤシンス・ヒッポのマケット(資料用模型)や描きかけのアートも。

ドアをくぐり、ウォルト・ディズニーにごあいさつ(C)Disney
左側には「アニメーターズ・デスク」。今にもアニメーターが席に戻ってきそうな臨場感(C)Disney

 そのまま進み「初期のアーカイブス・コレクション」のエリアへ。ここでは「初期のディズニースタジオ」「ウォルト・ディズニーとロイ・ディズニー」「創設期のアーカイブス」の3つのブースが並んでいる。中央にはロレンツ氏オススメの展示も。「このケースの中には、今回個人的に一番気に入っている品があります。実際にウォルト・ディズニーが使っていたインクペンやメガネ。そしてパスポートなど。ぜひ来場される方にも見ていただきたいです」とレコメンド。

「初期のアーカイブス・コレクション」のエリアへ(C)Disney
「ウォルトのインクペン」や「ウォルトの読書用メガネ」などの品々も並んでいる(C)Disney
「スタジオの食堂メニュー」には「CARTOON SPECIALS」などのセットも記載されていた(C)Disney

 そのまま「リーディング・ルームとリサーチ・ルーム」へ。ここでクリエイターたちは資料を閲覧し、仕事に活かすことができるのだ。ロレンツ氏は「ウォルト・ディズニー・アーカイブスの存在意義の大きな一つが書籍や台本の執筆、映像特典制作時のリサーチ資料を提供することです。ライブラリには約1万2000冊もの書籍や約400万点の写真などを保管しています。今回はオリジナルのネガや参考文献。また『蒸気船ウィリー』に関する調査で使われた資料なども展示しています」と解説。

「ウォルト・ディズニー・アーカイブス・フォトライブラリー」とデジタル化に関する解説とネガや「ミッキーマウス フォトバインダー」など(C)Disney
数千のアートワークの保管や活用に関して(C)Disney
「蒸気船ウィリー」の台本や「ブレイブリトルテイラー」「カーニバル・キッド」に関するメモも(C)Disney

 今回解説を担当してくれたロレンツ氏が日々携わる部署(映画に関する衣装やプロップスの収蔵・保存)が関係する「映画とパークの宝箱」エリアへ。

「美女と野獣」の「ボールルームでのベルのドレス」では、特別にロレンツ氏がドレスを手に取りこまやかなこだわりについて話してくれた。「コスチュームのエリアには非常に特別なものが展示されています。映像では見ることができない細かいディテールやこだわりを本物を目の前にすることで知ることができると思います。『美女と野獣』のベルのドレスはゴールドで細部まで飾りつけられています。さらに美しく仕上げるために映画ではCGなどマジカルなピクシーダストでキラキラと輝かせています」と解説。

「ベルのセレブレーション・ドレス」は手書きの花をデジタル化し、布地にプリントして使用しているとのこと。なお、足元の靴も手作り&手書きで装飾されているという。床に若干近付く形となるが、ぜひチェックしてほしいと話してくれた。

「美女と野獣」のコスチュームの展示もぜひじっくり見てほしいとロレンツ氏(C)Disney
ドレスの装飾の一部についても解説。ピクシーダストでさらに映画では美しくなるとのこと(C)Disney
足元のこだわりも実物だからこそ見ることができる(C)Disney

 コスチュームに関してはもう1部屋用意。こちらは映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「ジャングル・ブック」「アリス・イン・ワンダーランド」関連のコスチュームやプロップスを展示。なお、こちらでは解説時に「102」のクルエラ・ド・ヴィルがファッションショーを訪れた際に着用している「クルエラ・ド・ヴィルのドレス」が、なぜ「ドラゴンドレス」と呼ばれるのかの謎を解明した。

「アリス・イン・ワンダーランド」「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」のエリア(C)Disney
「美女と野獣」のトレメイン夫人のドレスなどが並ぶ(C)Disney
「クルエラ・ド・ヴィルのドレス」の背面の豪華なドラゴンの刺繍。そのため「ドラゴンドレス」とも呼ばれている(C)Disney

 ウォルト・ディズニー・アーカイブスでは映画やテレビ番組の衣装、プロップスとともに世界のディズニーパークのアイテムも収蔵している。今回はフロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートで活躍していた「ヒッチハイク・ゴーストのオーディオアニマトロニクス」や「墓石」を展示。

 なぜ今回の展示で「ホーンテッド・マンション」の住人である彼らが選ばれたのかをうかがったところ「彼らは非常にクールですし、『ホーンテッド・マンション』は世界中のディズニーパークで愛されている人気アトラクションです。また、ウォルト・ディズニー・アーカイブスがしっかりパーク関連も収蔵していることを伝えたかったため彼らを連れてきました。

 アトラクションで活躍するオーディオアニマトロニクスのフィギュアなどは数年経つとアップデートされるのですが、その際に今まで使ってきたアイテムが収蔵されます。とは言っても、まさか日本に来るとは彼らも思ってはいなかったので、本人たちも驚いているでしょうね」とコメントしてくれた。

「ヒッチハイク・ゴーストのオーディオアニマトロニクス」や「墓石」(C)Disney

「収蔵されるアイテムの基準は?」の問いに対しては、「毎日のように新しいアイテムが届きますので選定は容易なことではありません。コスチュームの場合もすべてを保管することはできませんので、作品のなかで重要な役割、例えば『美女と野獣』でしたら主人公のベルと野獣をまずは選び、次にガストンやル・フウの衣装などを少しずつ保存することになります。

 過去に同じコスチュームをボタンを付け替えたりパンツを変えたりして何度もリユースした時期があったため、使われるうちになくなり収蔵したくとも手に入らないこともありました。現在は、撮影が終了したタイミングでウィッシュ・リストを提示し、収蔵できるようにしています。

 アトラクションに関しては、クローズの際に連絡が来るためビークルやオーディオアニマトロニクスのフィギュアなどをリクエストします。設立当時は数名での運営でしたが、現在は人数も増え、多くの貴重な品々の収集・保存が可能になったと感じています」とのことだ。

 次に「『ウォルト・ディズニーの約束』で使用された接客用の部屋のセット」を鑑賞。1970年にデイヴ・スミス氏がウォルト・ディズニー・アーカイブスでまず行なったことは、ウォルト・ディズニーの部屋のペーパークリップから鉛筆の本数まですべて調べ記録することだった。その後2015年にバーバンク・スタジオの開設75周年を記念し、アニメーション・ビルディングの3H-1にウォルト・ディズニーの部屋が再現された。

 映画「ウォルト・ディズニーの約束」では本物をセットで使いたいと話が出たが、難しかったため精巧なレプリカを制作。そのセットを本展で見ることができる。

 デスクの後ろにたくさんのミニチュア・コレクションが飾られている部分にも注目。「ウォルト・ディズニーはミニチュアが大好きだっため、オフィスにもギフトで送られた品々などを飾っていました。レプリカだけではなく、本当に飾られていたアイテムも今回展示していますので、そちらもぜひチェックしてください」とロレンツ氏。

「『ウォルト・ディズニーの約束』で使用された接客用の部屋のセット」(C)Disney

 なお、後半にはディズニーのレガシーとして偉大な功績を残した個人を賛えるために設立された「ディズニー・レジェンド」についてや「ディズニーと日本」に関する展示も。また、スクリーンデビュー90周年をお祝いして描かれた「バースデーアート」が今回初展示と盛りだくさんの内容となっている。

 ロレンツ氏に同展を楽しみにしているファンに一言とお願いしたところ、「WELCOME TO THE WALT DISNEY ARCHIVES! 特別な展示と非常に美しいコスチュームの数々をご自身の目で見ることができます。ぜひ、足を運んでいただけると幸いです」とコメントしてくれた。

 通常では一般公開されていないウォルト・ディズニー・アーカイブスを間近に体験し、ディズニーのクリエイティビティとその世界に思う存分浸れる展示内容となっている。年末年始に足を運ぶことをお勧めしたい。

「ディズニー・レジェンド」に関するエリア。日本人レジェンドらも紹介されている(C)Disney
「ディズニーと日本」では和服姿のミッキーマウスたちも(C)Disney
スクリーンデビュー90周年をお祝いする横浜会場ならではのエリアも登場(C)Disney
2018年11月18日のスクリーンデビュー90周年を記念し描かれた「バースデーアート」を初展示(C)Disney
ミッキーマウス スクリーンデビュー90周年記念 ウォルト・ディズニー・アーカイブス展~ミッキーマウスから続く、未来への物語~

会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 2Fスペース
会期:2018年12月19日~2019年1月20日
開場時間:10時~20時
入場料:一般1500円、高大生1200円、中学生から3歳まで800円、2歳以下無料
主催:ウォルト・ディズニー・アーカイブス展 横浜会場実行委員会
協力:ウォルト・ディズニー・ジャパン