ニュース

ヒルトン・アジア太平洋地域ラグジュアリー&ライフスタイル部門副社長ダニエル・ウェルク氏に聞く。「ラグジュアリーな旅では独占的な体験を求める人が増えている」

2018年10月22日 実施

ヒルトン アジア太平洋地域 ラグジュアリー&ライフスタイル部門 副社長 ダニエル・ウェルク(Daniel Welk)氏

 全世界109の国と地域で5500軒以上のホテルを運営し、2019年に創業100年を迎えるヒルトン。日本国内でも、大都市圏やリゾートにおいて「ヒルトン」や「ダブルツリーbyヒルトン」などのブランドを展開している。積極的な新規出店も行なっており、2018年は旧軽井沢ホテルをリブランドした「KYUKARUIZAWA KIKYO, Curio Collection by Hilton」を4月に、リゾートタイプのダブルツリーとしては日本初進出の「ダブルツリーbyヒルトン沖縄北谷リゾート」を6月にそれぞれ開業。また、進行中のプロジェクトも多く、2020年開業予定の「ヒルトン広島」や「ヒルトン沖縄瀬底リゾート(仮)」などは本誌でもお伝えしている。

 そんなヒルトングループにあって、最上位を形成するのが「ウォルドーフ・アストリア」「コンラッド」「キャノピーbyヒルトン」のラグジュアリー&ライフスタイルブランドだ。特に創業者コンラッド・ヒルトンの名を冠したコンラッドブランドは、2005年にコンラッド東京、2017年にコンラッド大阪を開業しており、日本でもよく知られた存在といえる。

 今回、ヒルトンでアジア太平洋地域のラグジュアリーブランドとライフスタイルブランドを担当する副社長のダニエル・ウェルク(Daniel Welk)氏に話を伺った。

世界的に見ても日本はホットなデスティネーション

――ウォルドーフ・アストリア、コンラッド、キャノピーbyヒルトンの違いを教えてください。

ウェルク氏:ヒルトンのラグジュアリーブランドは、実は4つあります。ウォルドーフ・アストリア、コンラッド、LXR、キャノピーbyヒルトンで、LXRは立ち上がったばかりの新しいブランドです。キャノピーbyヒルトンは過ごしやすさを重視したライフスタイルブランドでもあります。

 世界中にヒルトンのラグジュアリーブランドは69軒あり、さらに73軒が現在開業準備中です。アジア太平洋地域に限って言えば23軒で、23軒を建設/準備中です(2018年10月24日現在)。

 ウォルドーフ・アストリアには87年の歴史があり、1軒目のウォルドーフ・アストリア・ニューヨークに代表されるように、非常にアイコニック(象徴的)なホテルで、世界各地のランドマークとなる地域で開業しています。

 コンラッドは、起業家やグローバルに旅をしてプライベートとビジネスの時間が混在するようなビジネスマンに愛されているブランドです。そしてLXRは、それぞれがアイコニックな独立したホテルでありながら、ヒルトンの強力な販売網を利用し、ロイヤリティプログラム「ヒルトン・オナーズ」の特典を受けることもできます。

 キャノピーbyヒルトンは我々がイチから開発したブランドです。米国にある「イノベーションギャラリー」で、将来のヒルトンのホスピタリティの在り方を模索しているのですが、そこで生まれたブランドです。長期間の研究を経て、2014年に立ち上がりました。

 ホテルには地元の環境を反映したスペースを設けています。ミレニアル世代にしてもベビーブーマーにしても、ガイドブックにあるような観光ではなく、地元の人たちのように旅をしたいというニーズが強くあります。キャノピーbyヒルトンはそうした要望に応えるもので、先進的な取り組みも行なっています。

 キャノピーbyヒルトンは現在5軒稼働中で、35軒が開業準備中です。アジア太平洋地域では、12月に中国の成都で「キャノピーbyヒルトン・成都シティセンター」を開業します。

 まだパートナーを探す段階ですが、日本での展開も検討しています。日本にはヒルトングループのホテルが16軒ありますが、世界的に見ても日本はホットなデスティネーションで、インバウンドも国内旅行も見通しが明るい状況です。キャノピーbyヒルトンもぜひ日本で展開できればと考えています。

ラグジュアリーな旅をする人たちは独占的で自分たちしか得られないような経験、“VIP”的な待遇を求めている

――「先進的な取り組み」を具体的に教えてください。

ウェルク氏:ヒルトンの先進的な取り組みの例としては、スマートフォンのアプリ(ヒルトン・オナーズ・アプリ)への対応が挙げられます。アプリ上でチェックインしたり、スマートフォン自体をデジタルキーとして部屋の解錠に使ったりできるのです。ヒルトン・ビレッジのような大きなホテルだとフロントが大変混んでいることがありますが、アプリを使えば直接部屋に向かうことができます。部屋の予約にしても、飛行機のシートマップから席を選ぶように、空いている好きな部屋を選択できるようになっています。デジタルキーは、日本では16軒中6軒に導入済みです(編注:日本国内では登録のためチェックイン時にフロントに立ち寄る必要がある)。

 世界では全体で約5500あるホテルのうち、約3000軒に導入済みで、拡大中です。(ヒルトンが展開するのは)109か国あるので多少時間はかかるかもしれません。現在、世界中に「ヒルトン・オナーズ」の会員は約8200万人で、アジア太平洋地域では約700万人です。ホテルの稼働のうち40%が会員によるもので、メンバーには付加価値のある滞在を提供できていると考えています。

――日本のヒルトングループのホテル利用者からの反応と、改善を考えているポイントを教えてください。

ウェルク氏:今、世界的に旅行の黄金期に入っていると言えると思います。中国やインドなど東南アジアでも空港をはじめとしたインフラが整ってきています。一方で日本の市場は成熟していて、日本人はさまざまな旅を経験しており、ホテルに求める品質も継続的な高水準を求める傾向にあります。食事や客室、移動、文化ツアーなど、どんなことにも高い品質を求めていますが、それは我々にとっては素晴らしいことだと思っています。

 つまり、ラグジュアリー業界にとっては、サービスや食事、経験などに対する期待が大きいほど水準を高められますし、実際に今までそうしてきました。これからはアジア太平洋地域全体で水準が上がっていくでしょう。

 例えば中国は1億人が海外旅行を経験しており、成熟してきています。大きな国なので、当然国内旅行も頻繁に起こりますし、さらなる成熟の余地があるとみています。インドも戦略的な国と捉えていますが、インフラが整えば世界的なデスティネーションになるでしょうし、期待もしています。ラグジュアリーな旅を求めるのはどの国でも同じで、今はInstagramなどSNSを通じて自分たちの経験をシェアするのが当たり前になっています。ですから、ラグジュアリーな旅をしたいと考える人たちは、独占的な、自分たちしか得られないような経験、プライバシー、珍しいものなど、“VIP”的な待遇を求めているのです。こうした点は、日本だけでなくほかの国でも同じでしょう。

――今後の日本でのラグジュアリーブランドの展開を教えてください。

ウェルク氏:日本では、10月22日に「ヒルトン広島」の開業に向けて運営受託契約を結んだばかりです(関連記事「『ヒルトン広島』が2022年度開業。富士見町の広島東署跡地に」)。

 ラグジュアリーブランドについて言えば、2017年に「コンラッド大阪」を開業しています(関連記事「コンラッド・ホテル&リゾーツ、6月9日開業の『コンラッド大阪』を事前公開」)。ウォルドーフ・アストリアについては重要な要素が2点あり、「ウォルドーフ・アストリアのビジョンやスピリットを共有できるパートナーがいること」、そして「はっきりとしたランドマークの存在する立地」です。ウォルドーフ・アストリアでの滞在は、正真正銘オーセンティックな旅を提供する必要があります。デザインにしても立地にしても、アイコニックな場所が見つかるかどうかが大変重要です。

――京都はどうですか。日本人はそうした立地に京都を思い浮かべることが多いと思います。

ウェルク氏:もちろん京都はインバウンドでも大変人気のある地域です。沖縄や北海道もそうですね。日本は文化も環境もよいですし、自然の景観もあり、料理が美味しく、そして温泉があるなど、数え切れないくらいよいところがたくさんあります。

 ヒルトンが日本に来て55年になりますが、日本は戦略的に重要な国です。こうしたブランドを立ち上げるには、ビジネスやレジャー、特別なイベントがあるときの利用など、あらゆるニーズを集約できる場所である必要があります。

11月に「コンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランド」で海中レジデンス「ザ・ムラカ」がオープン

――イベントという言葉が出ましたが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックはどう捉えていますか。

ウェルク氏:オリンピックは特別な時期で、すでに旅行業界や自治体とも話はしています。オリンピックはかなり早い時期に開催地が決まるうえ、我々は北京やロンドンでもいろいろな経験をしています。ですので、開催時期の状況についてはよく理解していると思っています。日本にとって素晴らしい時期になるはずですし、国が一つにまとまるのではないかと思います。ヒルトングループは日本に16軒ありますが、インバウンド需要だけでなく、国内の利用者にも対応するよう準備をしています。

――アジア太平洋地域での今後の展開について教えてください。

ウェルク氏:現在ラグジュアリーブランドは25軒あり、23軒が開業準備中です。8月30日には東南アジアで初めて「ウォルドーフ・アストリア・バンコク」を開業しました。アジア太平洋地域のウォルドーフ・アストリアは中国に3軒(上海、北京、成都)あるのですが、このバンコクの新しいホテルは、ロイヤル・ターフクラブのあった大変素晴らしい景色に立地しています。設計は香港の建築家アンドレ・フーと彼のスタジオ(AFSO)が手掛けており、55階から57階の飲料施設に関してはニューヨークのデザイン会社AvroKOが担当してくれました。

 ウォルドーフ・アストリアは7軒が開業準備中で、2019年の第1四半期にはモルディブに「ウォルドーフ・アストリア・モルディブ・イターフシ」を開業します。マレ・ヴェラナ国際空港から船で25分くらいの場所にあり、ツリーハウスのような飲食スペースがあったり、水上ヴィラがあったりと、素晴らしいロケーションです。

 同じモルディブだと、ヒルトンのインターナショナルブランドとして最初に開業したのが「コンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランド」です。13年前(2005年)には水中レストランもオープンしています。モルディブではパイオニアとして市場をリードしてきた自負があります。11月には海中レジデンス「ザ・ムラカ」が開業しますが、これは5mの完全な海中に沈んだ部屋になっていて、180度の海中パノラマが楽しめます(編注:11月に開業、現在営業中)。

 ザ・ムラカはレジデンスなので、ベッドルームだけでなくキッチンやバー、バスルーム、さらにプールや上層階があり、エクスクルーシブで使える特別な経験ができる施設になっています。

コンラッド大阪
ウォルドーフ・アストリア・バンコク
コンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランド「ザ・ムラカ」