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JAL、中高生向けワークショップ「空育 空の仕事を知ろう!」実施。航空会社を目指す参加者が現役社員にインタビュー

2018年8月20日 実施

JALが中高生を対象に「空育 空の仕事を知ろう!」ワークショップを開催。講師役からあいさつ

 JAL(日本航空)は、将来航空会社で働きたい中高生を対象に、「空育 空の仕事を知ろう!」を本社ビル2階のウイングホールにて実施。約150名が参加した。

「空育 空の仕事を知ろう!」は、現役の社員に仕事を選んだきっかけややりがいなど、参加者が自由に質問できるワークショップで、2013年度から現在まで10回以上開催されている。

パイロット、整備士、グランドスタッフ、客室乗務員に直接「空の仕事」を聞ける機会

 JAL コミュニケーション本部 コーポレートブランド推進部の佐藤礼奈氏の司会で進行。「空育」や「折り紙ヒコーキ」を担当するコミュニケーション本部 コーポレートブランド推進部の小倉真吾氏とともにワークショップが進められた。

 実施の流れやグループごとの移動の仕方などの説明したあと、パイロット、整備士、グランドスタッフ、CA(客室乗務員)の各職種の講師役を紹介。パイロットはJAL 787乗員部 副操縦士の池田剛氏が参加し、「今日は空の仕事の素晴らしさを皆さんに少しでも伝えられたらと思います」とあいさつした。整備士はJALエンジニアリング 羽田空港機整備センター 整備技術グループの徳永大輔氏が参加。「短い時間ではありますが、少しでも私たちの仕事を知ってもらえるようにがんばります。どんどん質問してください」とあいさつした。

 さらに、グランドスタッフとしてJALスカイ 羽田事業所空港オペレーション第2部 国内パッセンジャーサービス第1グループ第2ユニット 小椋麻里氏が参加。「皆さんに少しでも空港で働くことの楽しさを知っていただきたいと思います。将来一緒に働ける仲間を増やしたいです」と明るくコメントした。CAはJAL 成田客室乗員部 第1客室乗員室1Cの杉山彩乃氏が参加し、「限られた時間ですので積極的に質問してください。将来空の上で一緒に働いていただける方が少しでも増えたらなと思っています」とコメントした。

 各社員は4つに分けられた会場に分かれ、それぞれブースで参加者からの質疑応答に順次答えていった。

会場となった日本航空本社ビルのウイングホール
パイロットを代表して参加した日本航空株式会社 787乗員部 副操縦士 池田剛氏
整備士を代表して参加した株式会社JALエンジニアリング 羽田空港機整備センター 整備技術グループ 徳永大輔氏
グランドスタッフを代表して参加した株式会社 JALスカイ 羽田事業所空港オペレーション第2部 国内パッセンジャーサービス 第1グループ第2ユニット 小椋麻里氏
CAを代表して参加した日本航空株式会社 成田客室乗員部 第1客室乗員室1C 杉山彩乃氏

参加者は4つのグループに分かれて全職種すべてにインタビュー

 今回のワークショップは、当初最大100名の募集だったが、190名の応募があったため急遽150名まで枠を増やしたとのこと。参加者は受付時にそれぞれ違う色のストラップを渡され、4グループに分かれた。そのグループごとに「パイロット」「整備士」「グランドスタッフ」「キャビンアテンダント」の各社員のブースを順番に移動。25分間のインタビューと5分間の休憩を繰り返し、すべてのグループが4つの職種の社員から、空の仕事に関する現場の話を聞いた。

 参加した約150名の中高生たちは、将来、航空関係の仕事に就くことを意識しているだけあって終始真剣。質問も具体的な内容や専門的な内容が多く、積極的に手を挙げたり、メモを取ったりしながら聞いていた

会場を4分割して各ブースで社員へのインタビューを実施
25分間のインタビュー後にグループごと移動し、全員が4職種の社員から話を聞いた
将来、航空関係の仕事を意識する中高生だけに終始真剣。メモを取りながら聞いていた

「パイロット」のブースではパイロットを目指す学生から具体的な質問が飛び交う

 パイロットを代表して講師を務めた池田氏は、国内線、アジア路線でボーイング 787型機の副操縦士を担当している。

 パイロットになったきっかけは「父がJALの整備士だったので、もともと整備士かパイロットになりたいと思っていたが、小学校6年生のときに出会ったパイロットの方が仕事も趣味も充実していてとてもかっこよかった。目がわるかったのでややあきらめていたが、眼鏡をかけても受験できるようになり、チャレンジできた」と話した。

「一番やりがいを感じるときは?」という質問には「飛行機の操縦自体がおもしろいし、風や滑走路など条件がいつも違うので、毎回やりがいを感じている。トラブルが起きて機長やCA、地上のスタッフと相談しながら飛行機を無事に目的地に降ろして、お客さんが何事もなかったかのように降りていくのを見ると特にやりがいを感じる」と回答した。

 ほかにも「学生のうちにやっておくべきことは?」という質問には、「英語は必ずやっておいた方がよい。スポーツでは、チームスポーツの経験があるとチームメイトが何を求めているのか察するようになるので、訓練過程でも役立った。宿題でも何でもよいので、毎日コツコツ勉強したり、最後まできっちりやったりするクセを付けると、パイロットの仕事にも役立つ。そして何より健康でいること」と回答。

 航空大学校に関する質問に対しては、「指定病院で航空身体検査を受けることができるので、模擬試験として事前に受けておいた方がよい。どんな試験が行なわれるのか分かるので対策になる」といった具体的なアドバイスも行なわれた。このほか自身が経験した自社養成パイロットの過程なども解説。パイロットを目指す参加者たちからの質問が終始絶えなかった。

 ほかにも、「操縦しているとき機長とどんな話をしているのか?」「操縦する飛行機は自分で選べるのか?」「これまで操縦してきた飛行機ごとの特徴は?」「駐機するときには、どううまく止めるのか?」など専門的な質問が多く、一つ一つ丁寧に回答していた。

パイロットに関するさまざまな質問に回答
パイロットになりたい中高生からの質問に具体的に回答していった
普段使うタブレットなどを使って分かりやすく説明した

「整備士」のブースでは機体整備の苦労と魅力を分かりやすく解説

 整備士の講師を務めた徳永氏は入社6年目で、エンジン系の整備作業を中心にハンガー重整備、ライン点検整備作業、機体のシステムを担当している。

 整備士を目指したきっかけは、「父の仕事の都合で転勤が多く、小さい頃から飛行機に乗る機会が多かった。ある年に、飛行機の窓側の席からなにげなく外を見ていたらエンジンを点検している人がいて、それを見て“かっこいいな”と。自分も同じような仕事をしたいと思った」と話した。

「整備士の仕事の魅力は?」との質問には、「飛行機のことをよく知れること」と回答。「自分の担当するボーイング 737型機だとリーダー1人に対して20~30人ぐらいのグループで作業します。基本的には朝から始めて夕方ぐらいに退社するスケジュール。整備というのはおもしろいもので、まったく不具合のない日もあれば、多くてばたばたすることもあります」と回答。失敗談としては、「内視鏡を使って行なう整備があり、その穴のフタを固定するワイヤをかけるのに苦戦して、朝までかかったことがある」と苦笑しながら語った。

「学生のときにやっておいた方がよい勉強は?」の回答には「英語です。メールでメーカーに問い合わせることもあるので、日常的に使います」と回答。入社後に勉強する内容も多く、「自分の場合は、大学受験よりも入社してからの資格試験の勉強の方が猛烈に勉強した」と苦労を語った。

 どうすれば整備士になれるのかという質問も多く、一つ一つの質問に具体的に回答していた。例えば徳永氏は宮城県にある東日本航空専門学校を卒業後にJALへ入社したそうだが、同期には一般の大学を卒業して入社した人もいるとのこと。整備士1500名のうち400名が女性だといい、最近特に、新人に女性が増えたと話した。「入社試験の対策を教えてほしい」という質問には「よい印象を与えようとだけ思わずに、純粋に自分が今までどんな勉強をしてきて、その仕事をどれだけやりたいと思っているかを言えればよいと思う。あまり気負わずに熱意が伝わるようにした方がよい」とアドバイスした。

 整備士という普段接することがない仕事のため、参加者が具体的にどんな質問をしたらよいか迷う様子もあったが、「ボーイング 737型機のどの部分が好きか?」という質問には「ウイングレットという、主翼の先端にある部分で……」とマニアックな質問にも補足しながら分かりやすく説明していた。

非常に詳しい参加者から初めて整備について聞く参加者までさまざま
女性の参加者も積極的に質問していた
身振り手振りを交えつつ知られざる整備の仕事を説明

「グランドスタッフ」のブースでは空港を支える仕事内容に対する具体的な質問が多数

 グランドスタッフの代表として講師役を務めた小椋氏は、羽田空港国内線でチェックイン業務、ゲートハンドリング業務を担当している。「サービスアドバイザー」の資格の証であるアルメリアの花をデザインしたバッジを付ける小椋氏は、“おもてなし”の技を競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」に羽田空港代表として本選出場した経験を持つ人物。

 グランドスタッフになったきっかけは「高校の修学旅行のときに初めて飛行機に乗り、空港って楽しいところだなと思ったのがきっかけ。飛行機そのものよりは空港の雰囲気の方が私は好きで、こういうところでかわいい制服を着て働けたらよいだろうな、と漠然と思っていた」と話した。

「グランドスタッフの仕事の魅力は?」との質問には「いろいろな方とお話ができること。赤ちゃんからお年寄りまでいろんな方がいらっしゃいますし、この仕事についていなかったら話せなかったような社会的地位のある方とお話しする機会もある。毎日新鮮な気持ちで取り組める」と回答した。また、「一番よかったなと思ったこと、うれしかったことは?」との質問に「制服を着ていて同じ髪型をしていると、お客さまに顔を覚えてもらえることは案外少ないもの。でも、搭乗口の仕事についていたある日、空港内で窓際にいた小さな女の子と楽しく会話したあと、1時間後ぐらいにまったく違う場所で搭乗作業をしていたら、偶然その子が搭乗する便の担当でした。その女の子が“さっきのお姉ちゃんだよね、さっきはありがとう”と言ってくれて、仕事中にも関わらず泣きそうになった」と経験談を話した。

 また、「グランドスタッフの仕事にコミュニケーション能力はどの程度必要か?」という印象的な質問に、「私たちの仕事は、“コミュニケーション”そのもの。コミュニケーション能力が欠如してしまっていると、正直グランドスタッフは難しいと思う。私たちがいる意味は、人でないとできないことを提供するため。グランドスタッフに声をかけなくても飛行機に乗れる今、わざわざ私たちに声をかけてくださるお客さまが何を求めているのか理解して、会話のなかでおもてなしの気持ちを感じてもらい、JALを選んでよかったと思ってもらえるサービスを提供するのが私たちの仕事」と回答していた。

 質問内容にはグランドスタッフの日々の仕事内容についてが多く、「羽田空港国内線の場合は早番勤務と遅番勤務があり、早番だと朝5時に出社してお昼14時には仕事が終わる」「搭乗手続きでは大きな荷物を預け入れ、搭乗口では走り回るなど体力が必要な仕事」「学生時代に勉強しておいた方がよいのは気象の知識」など、短い感想も添えながら多くのやり取りを行なっていた。

笑顔があふれる明るい雰囲気のグランドスタッフのブース
普段空港で接する機会も多い職種だけに質問は絶えなかった
一人一人に話しかけ、参加者が引き込まれていた

「客室乗務員」のブースでは他社経験もある社員から経験談を披露、テキパキと回答が進む

 CAの講師を務めた杉山氏は、2008年にJALに入社し、今年で10年目。中途採用でほかの航空会社から転職した経験を持つ。

 CAになろうと思ったきっかけは「幼いころから、住んでいた札幌と母の実家がある東京の間を飛行機で行き来していて、CAと触れ合うなかでいつの間にかなりたくなっていた」と話した。

 CAを目指す参加者からの真剣な質問が多く、「高校や大学でやっておいた方がよいことや、取得しておいた方がよい資格は?」という質問には、「TOEIC 600点以上という応募条件があるので、高いスコアを目指して英語力は身につけておいた方がよい。あとは、社会人になってからだと時間がないので、大学では勉強でもスポーツでも、何か自分が一生懸命になれることに取り組んでほしい。その結果得られるものは、きっと社会人になってから、がんばる力につながる」とアドバイス。「乗務員に多いのはどんな人か?」という質問には「食いしん坊で好奇心旺盛な人が多い。どこの国に行っても、どの人とでも楽しめる人が向いている」と笑顔で答えた。

「勤務中のエピソードは?」との質問には「急病人が出て機内でドクターコールをしたら、何人ものドクターに名乗り出ていただいて、本人も到着後無事に自身で歩いて帰られた」という話から、「運航中の飛行機の機内は、地上でお酒を飲むよりも5倍ぐらい酔いやすいと言われてて、ホノルル線やグアム線は、休みだからとお酒を飲み過ぎて化粧室の前で倒れてしまう方もいらっしゃいます」という話までさまざまあり、参加者が聞き入っていた。

 また、他社を経験しているとあって、その違いについての質問も数多く出た。「JALのよいところは?」との質問には「JALは長く働くという意味でとても働きやすい会社。子供を育てながらも乗務員を続けられる環境もあり、健康であれば65歳までCAを続けることができる。自分の親世代の乗務員もたくさんいて、とても頼りになる」と回答。「特に最近、職場がとてもキレイになって、カフェテリアスペースなど乗務前にCAがリラックスできる場所も作られたので、おだやかな雰囲気になっている」と現場の社員ならではの返答だった。

 CAを目指す男性参加者からの質問には、「CAは女性社会だとよく言われるが、今は男性も積極的に採用されている。これから男性のCAはどんどん採用されやすくなると思う」とエールを送った。参加者からの質問にテキパキと回答して進行。CAを目指す参加者は、熱心にメモを取っていた。

CAに関する質問に丁寧ながらテキパキ回答されるスピード感があるブースだった
真剣にCAを目指す参加者からの具体的な質問が多かった
言葉を選びながらもしっかり現場の雰囲気が語られた

充実のインタビュー4本。学生にとっては「空の仕事」を広く知る機会に

 終了後、講師役を務めた社員4名と一緒に写真が撮れるよう、会場前方に写真撮影ブースが設けられ、長い列ができていた。参加者は今回のイベントに対する感想などのアンケートに回答。ノートなどの文具などの記念品とともに、最初に配布されたネックストラップもプレゼントされた。

「空育 空の仕事を知ろう!」は、次回は2019年2月~3月ごろの開催を予定。今回と同じくJALのWebサイトなどで発表される。空の仕事に興味を持つ中高生は、現場の職員に直接質問できるこの貴重な機会をぜひ活かしたい。

インタビュー終了後は講師役4名と一緒に写真が撮れるブースが設けられた
終了後、使用したストラップと記念品が手渡された
今回参加した講師役の社員4名。トータル2時間、4回にわたるインタビューに丁寧に答え続けた