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インドネシア共和国観光省 地域責任者インタビュー。「2018年は日本人旅行者60万人を目指す」

9月15日にラブハン・バジョーにアヤナリゾートがオープン

2018年4月6日 実施

インドネシア共和国観光省の地域責任者、ビンセンシウス・ジェマドゥ(Vinsensius Jemadu)氏にインタビューを行なった

 インドネシア共和国観光省は、池袋サンシャインシティ コンベンションセンターで4月6日から8日にかけて開催された「マリンダイビングフェア 2018」に出展した。

 そのブース内で、インドネシア共和国観光省で日本を含む地域の責任者であるビンセンシウス・ジェマドゥ(Vinsensius Jemadu)氏に、インドネシア観光の現状について聞くことができた。

 2016年に就任した現大統領のジョコ・ウィドド(Joko Widodo)氏は、「観光が最優先」という施策を打ち出しており、こうした施策はインドネシアの過去に例がないと語る。インドネシアでは原油、ガス、CPO(パームオイル)、木材などの天然資源が産業として大きな割合を占めているが、価格の下落に伴って観光の占めるウェートが大きくなってきたという。その結果、現在の国家の収入としてはCPOが1位、観光は2位につけている。インドネシア政府は、2020年までに観光は1位になるだろうとみている。

 インドネシアの主要デスティネーションはバリ島、ジャカルタ、リアウ(中央スマトラ)が知られており、この3カ所でインドネシア訪問者の99%を占めるという。そこで2017年、今後バリ島のような人気デスティネーションに育ってほしいという意味を込めて、まだ知名度の低いエリアをアピールする「10の新たなバリ」という方針を打ち出した(関連記事「インドネシア観光省、ジャカルタやバリ島に次ぐ10の新デスティネーションを説明」)。

 10とは「トバ湖」「タンジュン・クラヤン」「タンジュン・ルスン」「ブロウ・スリブ」「ボロブドゥール」「ブロモ テンゲル スメル」「マンダリカ」「ラブハン・バジョー」「ワカトビ」「モロタイ」のことで、このうちの7カ所は、ダイビングなどマリンレジャーを楽しめるデスティネーションになっている。

2018年のインバウンド目標は1700万人だというジェマドゥ氏

 2017年はインバウンド目標1500万人を掲げていたが、バリ島アグン山の噴火の影響で飛行機の運休などもあり、1400万人にとどまっている。しかし、実際に危険地域に指定されたのはアグン山周辺6~10kmであり、ほとんどの観光地には問題はなかったにも関わらず、伸び悩んでしまった。これには報道やSNSの影響が大きいと考えており、2018年はインバウンド目標1700万人を掲げている。ジェマドゥ氏は「1700万人は大きなチャレンジ」だと述べて、達成のために3つの施策を紹介した。1つは観光情報などの「デジタル化」、2つ目は離島間を結ぶ「エアコネクティビティ」、最後は「ノーマディックツーリズム(Nomadic Tourism)」だ。

 特に1万7000の島を抱えるインドネシアは、航空機によるネットワークの充実が欠かせない。そこで、旅行会社や航空会社とコラボレーションを積極的に行なっており、セミナーやイベントの開催時に航空会社を巻き込んだり、直行便就航時にはFAMトリップ(視察旅行)や就航セレモニーを観光省がサポートしたりするほか、チャーター便でインドネシアを訪れる旅行者には現金を支給するという思い切った策を打っている。

 3つ目に挙げた「ノーマディックツーリズム(遊牧民をイメージした観光)」はユニークな取り組みで、新しい10のデスティネーションを掲げたものの、ホテルなどの宿泊リソースを用意するには(建築などに)3~5年の期間がかかるため、モンゴルの遊牧民が暮らす「ゲル」のような組み立て式宿泊施設「ホームポッド」を投入することで、キャパシティ不足に対応するという。ホームポッドは衛生面などに配慮しており、ホテルなどの建設が終われば容易に撤去でき、再利用も可能とのこと。

 ホームポッドは観光大臣のアイデアによるものだが、観光大臣は新しい10のデスティネーションのうち、特に「トバ湖」「ボロブドゥール」「マンダリカ」「ラブハン・バジョー」に力を入れると明言しており、これらの地区はすでにインフラも整っているという。

「組み立て式ホームポッド(Knock-down Homepod)」の外観や内部
ホームポッドはインドネシア共和国観光省 観光大臣が主導した

2018年は日本からのインドネシア訪問者数目標を60万人に設定

 一方、日本の市場についてみると、過去3年間は成長が停滞していたが、2017年からは伸びており、5%成長しているという。2018年は60万人を目標としており、これは12%増にあたる。

 2017年にはインドネシア・エアアジアXによる成田~デンパサール線の新規就航があり、2018年も5月2日に同社が成田~ジャカルタ線の新規就航を行なうので、十分達成できる目標とみているが、日本人はラグジュアリーホテルやミドルレンジより上のホテルを好む傾向にあり、政府もよいホテルを作るための投資を呼び込んでいるという。

 実際、マンダリカとラブハン・バジョーでは3~4軒の最高級ホテルがオープンを控えており、ラブハン・バジョーでは9月15日にアヤナリゾートが200室のホテルをオープン予定で、マンダリカにはノボテル ホテル&リゾートが大きなホテルを作っている。

 また、日本人は和食や日本語ガイドの存在を重視する傾向が見られるため、政府は日本語ガイドの教育に力を入れていく予定だという。

コモドを指すビンセンシウス・ジェマドゥ氏。コモドにはダイビング向けのエリアがあり、ジェマドゥ氏の故郷とのこと