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ブリッジで海面30mのガラス床を体験!「ダイヤモンド・プリンセス」キッズ・ツアー実施
横浜市港湾局の企画に5歳児25人が参加
2017年11月13日 13:59
- 2017年11月10日 実施
横浜市港湾局は、11月10日に横浜港大さん橋において保育園児を対象にした客船見学会(以下、キッズ・ツアー)を実施した。キッズ・ツアーは、プリンセスクルーズの協力を得て、横浜港大さん橋国際客船ターミナルに停泊している客船「ダイヤモンド・プリンセス」(総トン数11万5875トン、英国船籍で母港はロンドン)を見学するもの。
横浜市港湾局では、横浜港を「市民が集い・憩う港」と位置付けており、寄港する客船や港そのものに接する機会を設けている。その一環として、市民を対象にした客船船内見学会を数多く実施しているが、将来の横浜を担う“若き人材”にも横浜港に関心を持ってもらうために、大学生から保育園児まで、学生や児童、園児を対象とした見学会も積極的に企画している。
今回のキッズ・ツアーでは、横浜市内の認可保育園を対象に参加を募り、応募した保育園から抽選で「小学館アカデミー なかやま保育園」(横浜市緑区)と「岩間保育園」(横浜市保土ヶ谷区)の5歳児クラス25名と引率の職員8名が参加した。
なお、キッズツアーで見学する「ダイヤモンド・プリンセス」は米企業プリンセスクルーズが運航する英国船籍の外国船なので、乗船する場合は寄港停船中であっても出国扱いとなる。旅行会社などが企画する通常の船内見学会では、未就学児(義務教育対象年齢前)であってもパスポートの提示と出国手続きが必要だが、キッズ・ツアーでは、引率職員が園児の保護者となることで、園児たちのパスポート提示は不要としている。
ダイヤモンド・プリンセスはプリンセスクルーズが運航する17隻のなかでは総トン数11万5875トンと大型の部類に入る。2014年から日本発着のクルーズ航路に就航し、以来2017年までいずれのクルーズプランもほぼ完売という順調な航海を重ねている。プリンセスクルーズはすでに2018年のクルーズプランを発表しているが、これまでの4月~11月に加えて、2019年の2月と3月にも日本発着クルーズを追加するなど、「乗りたいのに乗れない」という声に応えるべく、日本向けクルーズのシーズンを延長したと、同社PR/マーケティング係長の山根由佳氏は説明している。
なお、ダイヤモンド・プリンセスは11月のクルーズを終えたのち、12月と1月は東南アジアクルーズに配船するなど1年中稼働することになるが、整備などにかける時間はこれまでどおりとなるので、安全性に問題はないという。
今回のキッズ・ツアーは10月26日に横浜を出港して鹿児島からベトナム、香港、台湾、そして那覇を巡って11月10日朝に帰港した16日間の航海と、同日17時に出港して那覇から石垣島、台湾を巡る10日間の航海の間に実施している。
キッズ・ツアー参加者たちは、乗船パスを受け取り、出国手続き恒例の「X線による手荷物検査」を受けたのち、乗船ゲートからギャングウェイを通り、第5「プラザ」デッキに設けた船客乗船口でセキュリティ対策のための乗船バスチェックと顔写真撮影を終えてから船内に入る。そこは、3層吹き抜けの空間を擁する「グランド・プラザ」で、ステージではバイオリンとチェロの2重奏によるバロックが保育園児を出迎えた。
キッズ・ツアーのメンバーは階段を使って2層上の第7「プロムナード」デッキに上がり、右舷側の通路からエクスプローラーズラウンジや、日本発着クルーズ就航のために2014年の大改装で新設した寿司バー「Kai寿司」やイタリアンレストラン「サバティーニ」などのスペシャリティレストランといった、ダイヤモンド・プリンセスの“高級レストラン街”を船尾に向かって移動。さらに、後部エレベータを使って一気に第14「リド」デッキまで上がる。
第14デッキは、その名称が示すように、メインダイニングのビュッフェレストラン「ホライズンコート」に屋内プール「Calypso Reef & Pool」、大型スクリーンを備えた屋外プールエリア「Neputue's Reef & Pool」、そして、ピザバーの「プレーゴ」やアイスクリームバーなど、5つのバーを擁するダイヤモンド・プリンセスの“カジュアルなレジャーエリア”だ。
キッズ・ツアーのメンバーたちは、ホライズンコートに並ぶ美味しそうなデザートや、屋外プールから見える上層に当たる第15「サン」デッキに設置した屋外映画館「ムービーズ・アンダー・ザ・スターズ」の大型映像装置などに興味津々だが、彼らは左舷側の通路を船首に向かって移動する。
レジャーエリアの第14デッキだが、その最前方には公式デッキプランに書かれていない空間がある。ここがダイヤモンド・プリンセスの「ブリッジ」になっている。一昔前なら、船内見学会や航海中のアクティビティとしてブリッジ見学は人気の高いコースだったが、プリンセスクルーズの山根氏によると、今はセキュリティ対策のため外部者の入室はほとんどできないという。当然、寄港中の船内見学会で公開することもほとんどない。しかし、「横浜市港湾局には寄港時において大変お世話になっている」(山根氏)という縁もあって、キッズ・ツアーでは特別にブリッジの見学が許された。
それでも船を制御するブリッジ中央のエリアは立ち入りも撮影も禁止で、ダイヤモンド・プリンセスで外観の特徴ともなっている左舷右舷それぞれで船体からも大きくはみ出しているウィングエリアの見学となった。とはいえ、ここは入出港における操船や接岸離岸作業の指揮所となるところで、特にダイヤモンド・プリンセスは船体から外に突き出しているため、その“見晴らし”はすこぶるよい。そういう意味では、キッズ・ツアーのメンバーはこの客船で最も迫力のあるレアな展望エリアを堪能できるという、非常に得難い体験をできたことになる。
ウィングエリアは床下で死角になる桟橋も目視できるように、床板を外すと足元に「ガラス張りの床」が現われる仕組みになっている。ウィングの高さは喫水線から約30m(マンションでいうと10階建てに相当)もある。キッズ・ツアーのメンバーはガラス張りの床をのぞき込むだけでなく、「乗っかって」30mの高さの浮遊感を楽しんでいた。
その後、質疑応答の時間となり、キッズ・ツアーのメンバーからの「船の煙突から出ていた煙はなに?」「船はどうやって動かすの?」という質問に、引率のダイヤモンド・プリンセス乗員は「煙はごみを燃やすときに出ています。この船にはお客さんと乗員合わせて3000人が生活しています。その生活に必要な煙が出ます。しかし、環境に配慮した煙です」「船を動かすのに、皆さんはハンドルのようなものを想像すると思います。しかし、今の船は、皆さんが持っているゲーム機のようなボタンやボールのようなもので動かします。皆さんでも船を動かせますよ」と分かりやく丁寧に答えていた。
ブリッジ見学が終わったキッズ・ツアーのメンバーは、第14デッキの今度は右舷側を通って船尾方向に移動し、第14デッキ最後尾にある「Outrigger Bar」で記念撮影と休憩を取ったところで、見学時間終了となった。
今回ツアーに付き添ったプリンセス・ダイヤモンド側のスタッフ「ケン」氏は、同船に50~60人いる日本人スタッフの1人だ。正式な役職は、「アシスタント・クルーズ・ディレクター」で、船内イベントの司会を主に担当している。ちなみに、日本人以外も含めると日本語を話せるスタッフは100人ほどいる。
また、ケン氏以外にキッズ担当クルーとしてメキシコ人とウクライナ人の2名がキッズ・ツアーに同行していた。ダイヤモンド・プリンセスではキッズ・ルームを設けるなど、子供向けのアクティビティ(美術教室やボードゲーム、ビデオゲーム、そしてパーティー)や託児サービスが充実している。このため専門チームを構成して乗船している。チームのスタッフは6名で全員が専門教育を受けているとのことだ。
キッズ・ツアー最後の休憩時間にはシェフスタッフの1人もやってきて、子供たちと交流した。このシェフはマレーシア人だが関西弁が堪能で、聞けば大阪在住でダイヤモンド・プリンセスのシェフ歴は3年。その前は、ホテルに勤務していたという。
通常、客船の船内見学会は利用者を増やすための「販促」活動として、船会社だけでなく旅行代理店などが企画して実施するケースが多い。11月10日の横浜大さん橋係留中には、キッズ・ツアー以外にもそういった通常の船内見学会もあり、数多くの人がダイヤモンド・プリンセスの船内を楽しんでいた。山根氏によると、客船のツアーは移動費、宿泊費、飲食費がすべて入った、実はリーズナブルな旅だが、一括して価格を提示すると踏み切れない場合が多いという。しかし、船内見学会に参加して実際に客船を見ると気持ちが高まり、販促として大きな効果があると説明する。
ただし、キッズ・ツアーに関しては、そのような販促活動とは一切関係なく、横浜市港湾局が目指す「将来を担う若い世代に船と港に関心を持ってもらう」という考えに共感して協力していると山根氏は語っていた。