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ブリッジで海面30mのガラス床を体験!「ダイヤモンド・プリンセス」キッズ・ツアー実施

横浜市港湾局の企画に5歳児25人が参加

2017年11月10日 実施

日本発着クルーズ就航4年目の総トン数11万トンの大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」に25人の5歳児たちがやってきた

 横浜市港湾局は、11月10日に横浜港大さん橋において保育園児を対象にした客船見学会(以下、キッズ・ツアー)を実施した。キッズ・ツアーは、プリンセスクルーズの協力を得て、横浜港大さん橋国際客船ターミナルに停泊している客船「ダイヤモンド・プリンセス」(総トン数11万5875トン、英国船籍で母港はロンドン)を見学するもの。

 横浜市港湾局では、横浜港を「市民が集い・憩う港」と位置付けており、寄港する客船や港そのものに接する機会を設けている。その一環として、市民を対象にした客船船内見学会を数多く実施しているが、将来の横浜を担う“若き人材”にも横浜港に関心を持ってもらうために、大学生から保育園児まで、学生や児童、園児を対象とした見学会も積極的に企画している。

11月10日、横浜大さん橋に係留する(左から)「ロイヤルウイング」「飛鳥II」「ダイヤモンド・プリンセス」。大型客船2隻の係留で横浜大さん橋は大変にぎわっていた
横浜大さん橋のウッドデッキ越しに見るダイヤモンド・プリンセス。特徴ある「グラブロ」を思わせるブリッジから船首部分

 今回のキッズ・ツアーでは、横浜市内の認可保育園を対象に参加を募り、応募した保育園から抽選で「小学館アカデミー なかやま保育園」(横浜市緑区)と「岩間保育園」(横浜市保土ヶ谷区)の5歳児クラス25名と引率の職員8名が参加した。

 なお、キッズツアーで見学する「ダイヤモンド・プリンセス」は米企業プリンセスクルーズが運航する英国船籍の外国船なので、乗船する場合は寄港停船中であっても出国扱いとなる。旅行会社などが企画する通常の船内見学会では、未就学児(義務教育対象年齢前)であってもパスポートの提示と出国手続きが必要だが、キッズ・ツアーでは、引率職員が園児の保護者となることで、園児たちのパスポート提示は不要としている。

 ダイヤモンド・プリンセスはプリンセスクルーズが運航する17隻のなかでは総トン数11万5875トンと大型の部類に入る。2014年から日本発着のクルーズ航路に就航し、以来2017年までいずれのクルーズプランもほぼ完売という順調な航海を重ねている。プリンセスクルーズはすでに2018年のクルーズプランを発表しているが、これまでの4月~11月に加えて、2019年の2月と3月にも日本発着クルーズを追加するなど、「乗りたいのに乗れない」という声に応えるべく、日本向けクルーズのシーズンを延長したと、同社PR/マーケティング係長の山根由佳氏は説明している。

 なお、ダイヤモンド・プリンセスは11月のクルーズを終えたのち、12月と1月は東南アジアクルーズに配船するなど1年中稼働することになるが、整備などにかける時間はこれまでどおりとなるので、安全性に問題はないという。

 今回のキッズ・ツアーは10月26日に横浜を出港して鹿児島からベトナム、香港、台湾、そして那覇を巡って11月10日朝に帰港した16日間の航海と、同日17時に出港して那覇から石垣島、台湾を巡る10日間の航海の間に実施している。

 キッズ・ツアー参加者たちは、乗船パスを受け取り、出国手続き恒例の「X線による手荷物検査」を受けたのち、乗船ゲートからギャングウェイを通り、第5「プラザ」デッキに設けた船客乗船口でセキュリティ対策のための乗船バスチェックと顔写真撮影を終えてから船内に入る。そこは、3層吹き抜けの空間を擁する「グランド・プラザ」で、ステージではバイオリンとチェロの2重奏によるバロックが保育園児を出迎えた。

 キッズ・ツアーのメンバーは階段を使って2層上の第7「プロムナード」デッキに上がり、右舷側の通路からエクスプローラーズラウンジや、日本発着クルーズ就航のために2014年の大改装で新設した寿司バー「Kai寿司」やイタリアンレストラン「サバティーニ」などのスペシャリティレストランといった、ダイヤモンド・プリンセスの“高級レストラン街”を船尾に向かって移動。さらに、後部エレベータを使って一気に第14「リド」デッキまで上がる。

外国船に乗船するため、出国手続きと手荷物検査を行なってから乗船となる。なお、ここから船内まではセキュリティ確保のため撮影禁止となった
第5「プラザ」デッキから乗船してキッズ・ツアーのメンバーを出迎えたのは、いきなりの三層吹き抜けレセプションエリア「グランド・プラザ」とバイオリンとチェロのバロック演奏だった
そして一気に2層上の第7「プロムナード」デッキまで上がる
第7デッキまで上がったら、まずはみんな整列して
みんなも大人も誘惑の多い第7デッキのお店を突破して
船のエレベータで一気に第14デッキまで上がる
日本発着クルーズということで、船内表示は日本語も多い

 第14デッキは、その名称が示すように、メインダイニングのビュッフェレストラン「ホライズンコート」に屋内プール「Calypso Reef & Pool」、大型スクリーンを備えた屋外プールエリア「Neputue's Reef & Pool」、そして、ピザバーの「プレーゴ」やアイスクリームバーなど、5つのバーを擁するダイヤモンド・プリンセスの“カジュアルなレジャーエリア”だ。

 キッズ・ツアーのメンバーたちは、ホライズンコートに並ぶ美味しそうなデザートや、屋外プールから見える上層に当たる第15「サン」デッキに設置した屋外映画館「ムービーズ・アンダー・ザ・スターズ」の大型映像装置などに興味津々だが、彼らは左舷側の通路を船首に向かって移動する。

第14「リド」デッキには船内最大のビュッフェレストラン「ホライゾンコート」がある
みんなも大人も誘惑の多いホライゾンコートを突破する
スタッフがとってもフレンドリー
屋外プールエリア「Neputue's Reef & Pool」で開放的な雰囲気に歓声を上げると
これまたフレンドリーなバースタッフが歓迎してくれた。左から「Prego Pizzeria」「The Mermaid's Tail Bar」「Traident Grill」
ピザ職人がクルクルクルーと生地を伸ばすと大人からも子供からも「おおお!」と歓声が

 レジャーエリアの第14デッキだが、その最前方には公式デッキプランに書かれていない空間がある。ここがダイヤモンド・プリンセスの「ブリッジ」になっている。一昔前なら、船内見学会や航海中のアクティビティとしてブリッジ見学は人気の高いコースだったが、プリンセスクルーズの山根氏によると、今はセキュリティ対策のため外部者の入室はほとんどできないという。当然、寄港中の船内見学会で公開することもほとんどない。しかし、「横浜市港湾局には寄港時において大変お世話になっている」(山根氏)という縁もあって、キッズ・ツアーでは特別にブリッジの見学が許された。

 それでも船を制御するブリッジ中央のエリアは立ち入りも撮影も禁止で、ダイヤモンド・プリンセスで外観の特徴ともなっている左舷右舷それぞれで船体からも大きくはみ出しているウィングエリアの見学となった。とはいえ、ここは入出港における操船や接岸離岸作業の指揮所となるところで、特にダイヤモンド・プリンセスは船体から外に突き出しているため、その“見晴らし”はすこぶるよい。そういう意味では、キッズ・ツアーのメンバーはこの客船で最も迫力のあるレアな展望エリアを堪能できるという、非常に得難い体験をできたことになる。

今では公開する客船も少なくなったブリッジも見学できた。前甲板に設置したプールが確認できる
横浜港のシンボル「氷川丸」と「マリンタワー」もよく見える
船首の向こうに見える小型船停泊港は、横浜港や工場夜景クルーズなどの遊覧事業や横浜港利用本船の通船サービスを提供している京浜フェリーボートの専用桟橋だ
ダイヤモンド・プリンセスの外観的特徴となっている船体幅をはみ出すほどに長いブリッジウィングエリア
右舷側ウィングエリアから船首方向を見る。岸壁直上になるので係留作業の指揮がやりやすい
同じ場所から船尾方向を見る。岸壁にある黄色い3本は可動式ギャングウェイ(搭乗橋)の軌線だ

 ウィングエリアは床下で死角になる桟橋も目視できるように、床板を外すと足元に「ガラス張りの床」が現われる仕組みになっている。ウィングの高さは喫水線から約30m(マンションでいうと10階建てに相当)もある。キッズ・ツアーのメンバーはガラス張りの床をのぞき込むだけでなく、「乗っかって」30mの高さの浮遊感を楽しんでいた。

 その後、質疑応答の時間となり、キッズ・ツアーのメンバーからの「船の煙突から出ていた煙はなに?」「船はどうやって動かすの?」という質問に、引率のダイヤモンド・プリンセス乗員は「煙はごみを燃やすときに出ています。この船にはお客さんと乗員合わせて3000人が生活しています。その生活に必要な煙が出ます。しかし、環境に配慮した煙です」「船を動かすのに、皆さんはハンドルのようなものを想像すると思います。しかし、今の船は、皆さんが持っているゲーム機のようなボタンやボールのようなもので動かします。皆さんでも船を動かせますよ」と分かりやく丁寧に答えていた。

ウィングエリアのウッドパネルを取り外すと「ガラスの床」が現れた。海面からの高さは約30m
「ぎゃー! こわいー!!」
といいながら乗ってみる

 ブリッジ見学が終わったキッズ・ツアーのメンバーは、第14デッキの今度は右舷側を通って船尾方向に移動し、第14デッキ最後尾にある「Outrigger Bar」で記念撮影と休憩を取ったところで、見学時間終了となった。

ブリッジを出たら、第14デッキの右舷側を通って移動。第15「サン」デッキの屋外映画館「ムービーズ・アンダー・ザ・スターズ」に歓声を上げ
アイスクリームバー「Swirls」に歓声を上げ
現われた外国人スタッフに固まる

 今回ツアーに付き添ったプリンセス・ダイヤモンド側のスタッフ「ケン」氏は、同船に50~60人いる日本人スタッフの1人だ。正式な役職は、「アシスタント・クルーズ・ディレクター」で、船内イベントの司会を主に担当している。ちなみに、日本人以外も含めると日本語を話せるスタッフは100人ほどいる。

 また、ケン氏以外にキッズ担当クルーとしてメキシコ人とウクライナ人の2名がキッズ・ツアーに同行していた。ダイヤモンド・プリンセスではキッズ・ルームを設けるなど、子供向けのアクティビティ(美術教室やボードゲーム、ビデオゲーム、そしてパーティー)や託児サービスが充実している。このため専門チームを構成して乗船している。チームのスタッフは6名で全員が専門教育を受けているとのことだ。

 キッズ・ツアー最後の休憩時間にはシェフスタッフの1人もやってきて、子供たちと交流した。このシェフはマレーシア人だが関西弁が堪能で、聞けば大阪在住でダイヤモンド・プリンセスのシェフ歴は3年。その前は、ホテルに勤務していたという。

キッズ・ツアーを案内した、ダイヤモンド・プリンセスでアシスタント・クルーズディレクターを務める「ケン」氏
なぜか休憩中に乱入してきた、マレーシア人にして関西弁バリバリのシェフスタッフ「ザッキー」氏
かくして、2時間におよぶ「キッズ・ツアー」は終了した。「船っていくらかかるの?」「船長になればお母さんただで乗せられるよ」「おおー!」と喜んだ彼らのなかに将来の船長がきっといるはず

 通常、客船の船内見学会は利用者を増やすための「販促」活動として、船会社だけでなく旅行代理店などが企画して実施するケースが多い。11月10日の横浜大さん橋係留中には、キッズ・ツアー以外にもそういった通常の船内見学会もあり、数多くの人がダイヤモンド・プリンセスの船内を楽しんでいた。山根氏によると、客船のツアーは移動費、宿泊費、飲食費がすべて入った、実はリーズナブルな旅だが、一括して価格を提示すると踏み切れない場合が多いという。しかし、船内見学会に参加して実際に客船を見ると気持ちが高まり、販促として大きな効果があると説明する。

 ただし、キッズ・ツアーに関しては、そのような販促活動とは一切関係なく、横浜市港湾局が目指す「将来を担う若い世代に船と港に関心を持ってもらう」という考えに共感して協力していると山根氏は語っていた。

現代大型リゾート客船が少しでも船内容積を確保しようとした結果生まれた「箱のようなお尻」スタイルをした船尾には、英国船籍の商船であることを示す「レッドエンサイン」が翻る
前部マストにはプリンセスクルーズの社旗と日章旗、そして、「危険物積載作業中」を示す国際信号旗「B」旗を掲げていた
海上保安庁第三管区MICSによる横浜港本牧ふ頭の13時30分時点での風は東の風で風速2m。満艦飾の国際信号旗が珍しくすべてきれいにはためいていた。ダイヤモンド・プリンセスはこの3時間半後、那覇に向けて出港した