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大規模災害時の新たな被災者支援モデルを構築。物流・情報訓練を徳島県、セブン&アイ・ホールディングス、ANA、富士ゼロックスが共同実施

2017年11月2日 実施

徳島県、セブン&アイ・ホールディングス、ANA、富士ゼロックスが大規模災害時の新たな被災者システムモデルの訓練を実施

 2016年に年発生した平成28年熊本地震では、被災した人が自家用車で車中泊をしたり、自宅付近でテント避難したりするなど、避難行動の多様化が見られた。そのため公的な避難所を核にしている従来の支援体制では、状況の把握や被災者のケアが困難であるという課題が出た。このようなことを受けて、今後の大規模災害に対しては国、自治体、民間企業が連携し、それぞれの利点を活かした迅速かつ柔軟な被災者支援を行なうことが強く求められた。

 そこで徳島県、セブン&アイ(セブン&アイ・ホールディングス)、ANA(全日本空輸)、富士ゼロックスは、南海トラフ地震をはじめとする大規模災害発生時の被災者支援を行なうために、ANAの飛行機による支援物資輸送や、セブン-イレブン店舗を災害時の情報ステーションとするなどの新しい支援モデルを構築。そのモデルにおいて初めてとなる訓練を、内閣府と経済産業省の協力のもと、11月2日に香川県の高松空港、および徳島県内の防災施設を使用して行なった。

 この支援物資を積んだ羽田発ANA533便の高松空港への到着から、ANA貨物エリアでセブン&アイや自衛隊のトラックに物資を積み込むプロセスを取材した。

株式会社セブン&アイ・ホールディングスの西村出氏(右)

 物資を積んだANA機が高松空港に到着する前に、セブン&アイの西村氏から、訓練の背景と内容についての説明があった。それによると熊本地震では避難所に行かない被災者が全体の約9割になっていたとのこと。そのため車中泊などでセブン-イレブンの駐車場を利用する被災者が多かったという。

 しかし震災当時、こういった事実を自治体が把握できていなかったため、支援物資を必要とするところにうまく運べなかったという反省点があったので、前述したように国、自治体、民間企業が連携し、それぞれの利点を活かした、迅速かつ柔軟な被災者支援を行なうための新しい支援モデルが作られたとのことだった。

 訓練は国、自治体からの要請があったという想定で行なわれた。訓練内容は、まず国ならびに徳島県からの支援要請をセブン&アイ本部が受けて、徳島県との協定に基づいた物資支援を用意。それをセブン&アイの自社トラックで羽田空港のANA貨物施設へ配送。そして羽田発のANA機に支援物資を積んで高松空港まで空輸する。

 ANAと徳島県とは包括連携協定も結んでおり、セブン&アイとは災害支援時の連携を結んでいる。現地へ来ていた担当者からは「こういった形で協力できることは光栄であり、自分たちも気を引き締めて訓練に臨みたい」とコメントがあった。

定刻どおりに支援物資を積んだ羽田発ANA533便が高松空港に到着
前方の荷室から真っ先に支援物資が降ろされ、すぐにANA貨物エリアへ運ばれた

 高松空港に到着次第、真っ先に支援物資が入ったコンテナが降ろされて速やかに高松空港内のANA貨物施設へ送られるが、そこにはあらかじめセブン&アイと自衛隊のトラックが待機しているという段取りになっている。

 各トラックは物資を積み込み次第、受け入れ場所へ陸送。そこで仕分けされたあと現地のトラック協会のトラックで避難所に運ばれ、住民に配布するという流れだ。

 なお、富士ゼロックスの役割は機材の提供。セブン-イレブン店舗に設置した富士ゼロックスのマルチコピー機により、災害時のライフライン情報や罹災証明受け付けなどの関連情報を出力できるようにする。

 この自治体からの情報は、現地店舗へ直接届くのではなく、FAXでセブン&アイの東京本部へ送られ、それを富士ゼロックスのアプリケーションを使ってハンドリングしてから、現場の店舗のコピーで印刷し、店頭に掲出して被災者の情報源とする。ちなみに災害時には特別なIDが発行されるので機材の使用が無料になるとのことだった。

ANA貨物エリアにはセブン&アイと自衛隊のトラックが待機
セブン&アイのトラック。東京でも物資を羽田空港まで運んでいる
陸上自衛隊 第15普通科連隊災害派遣隊のトラック
ANA Cargoのフォークリフトでトラックに物資が積みこまれる。今回は水とトイレットペーパー、紙おむつという内容だった
積まれた荷物は担当者が内容と数を確認する。そして仕分け施設へ輸送を開始。発災直後からの支援を行なうものだけに、どの工程も手際よい印象だった

【お詫びと訂正】初出時、セブン&アイ・ホールディングスの社名を誤って記載している箇所がありました。お詫びして訂正いたします。