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“大阪と和歌山の壁”だった難道をバイパスする国道480号 鍋谷峠道路・父鬼バイパスが開通
2017年4月3日 16:44
- 2017年4月1日16時30分 開通
大阪府、和歌山県、国土交通省 近畿地方整備局は4月1日、大阪府和泉市と和歌山県伊都郡かつらぎ町を結ぶ国道480号の「父鬼バイパス」「鍋谷峠道路」を16時30分に開通した。
国道480号の鍋谷峠付近約10.1kmは、曲線半径が15m未満の線形不良箇所が47カ所、約4kmがすれ違い困難が幅員5.5m未満の区間が約4.1kmと、狭隘区間や線形不良区間が続く交通の難所となっていたことからバイパス道路の整備を実施。大阪府が大阪府和泉市内の「父鬼バイパス」(4.5km)、和歌山県が和歌山県かつらぎ町内の「平道路」(4.3km)を整備し、その間の「鍋谷峠道路」(4.1km)を直轄権限代行事業として国交省が整備を進めてきた。
父鬼バイパスは2008年までに一部区間(1.7km)が開通、和歌山県の平道路は2010年までに全線開通しており、2017年4月1日に残る区間である父鬼バイパスの2.8km、鍋谷峠道路の4.1kmが開通し、計画されていた12.9kmの区間が全線開通した。
今回開通区間のほとんどがトンネル部で、父鬼バイパスの「父鬼トンネル」が約1.5km、鍋谷峠道路の「鍋谷トンネル」が約3.7kmとなっている。
開通日となった4月1日の午後には、和歌山県かつらぎ町の道の駅「くしがきの里」で開通記念式典が行なわれた。くしがきの里は、平道路の沿線にできた新しい施設で、2016年にプレオープンし、この道路開通に合わせて4月2日にグランドオープン。鍋谷トンネルの和歌山県側から3kmほどの場所にある。
ちなみに、道の駅の名前にある“くしがき”とは縁起物としても使われる「串柿」のことで、道の駅がある四郷地区は400年以上の歴史を持つという串柿の一大産地であることから名が採られているそうだ。
また、この日は15時に国道26号 第二阪和国道も開通。大阪府と和歌山県をまたぐ道路が同日に2カ所開通することになった。式典は同日午前中に第二阪和国道、午後に父鬼バイパス・鍋谷峠道路と実施時間を分けており、主催者となる国交省幹部や両府県の知事はもちろん、多くの来賓が両方の式典に揃って参加した。
記念式典では、まず国交省 近畿地方整備局長の池田豊人氏が「鍋谷峠道路、父鬼バイパスが開通することで、長年の懸案だった国号480号の“難所”が抜本的に改善されることになる」と道路の意義を説明しつつ。「末永く、この地域の発展につながることを祈念する」と開会の辞を述べた。
そして、主催者側より和歌山県知事の仁坂吉伸氏が登壇。「この鍋谷峠は、480号という国道。だんだん少なくなっているが和歌山県にはちょっと狭い国道がたくさんある。ここは最高に難しい国道。よく冗談で10回通ったら1回落ちると言っていた。ならば早く直さなくてはならない。10年前に知事になって和歌山の道をよくしようと頑張ったが、実は平成19年(2007年)度に、国交省から多くの事業化の決定をいただいた。それがいま続々とできあがってきている。ただ、要望を出したもののなかで、鍋谷峠の直轄代行のお願いだけは駄目だった」との過去を紹介。
続けて、「理由は『和歌山と大阪と足並みが揃っていない。大阪側がそれなりに作ろうということになっていないといけません』と言われた。そこで当時、大阪府知事をしていた太田房江さんに一緒に要望しようと申し上げ、理解していただいた。その次の年、和歌山県と大阪府が始まって以来だと思うが、両府県で国政の要請を初めて出した。それによって直轄代行の事業化が決定にいたり、9年経って完成した。大阪府側も父鬼バイパスを完成していただいて、国道480号を使う大阪と和歌山のスムーズな交通がようやく実現した」と道路の完成を喜んだ。
次に大阪府知事の松井一郎氏が挨拶。「第二阪和国道とともに、大阪~和歌山間の利便性を向上する路線として、国交省、和歌山県と連携しながら整備を進めてきた。それらが京奈和自動車道で一連とつながることで、充実した道路ネットワークができる」と今回の開通による道路網を紹介したうえで、「関西には多くの外国からのお客さまも来ている。大阪府民、和歌山県民だけでなく、外国のお客さまにも府県の距離が近くなることで、それぞれの観光資源を楽しんでいただけることになる。リピーターが増えて、関西がにぎわうと考えている。これからも関西一丸となって盛り上げていく。一緒になってそれぞれの地域を豊かにしていきたい」との道路活用に意欲を見せた。
その後、和歌山県と大阪府から選出されている衆参国会議員の来賓による挨拶が行なわれた。
同日午前中に行なわれた第二阪和国道の開通式典でも挨拶した衆議院議員の二階俊博氏は、「私たちのこの地域に、大阪府の知事と和歌山県の知事に揃っておいでいただく――こんな場面は長く政治に携わっているが、おそらく見たことがない。それほど大阪府知事が足を伸ばし、我々に手を差し伸べてくれたことの意義は大きい」とコメント。それを受け、「和歌山は遅れていると言われる専門みたいになっているが、そんなことを言われてうれしいわけはない。どこが遅れているんだ!と、喜びとともに、そのぐらいの反発を持ってしっかり頑張ろうじゃないですか」と呼びかけた。
続いて、大阪府から選出されている参議院議員の柳本卓治氏が挨拶。「かつらぎ町と聞いて楽しみに来た。私の母は伊都郡にあった眼科医の娘。父は河内で、そのような恋愛が100年ほど前にあったということ。私にとっては和歌山も大阪も親戚」と、同道路がつなぐ二つの地域と自身の縁を紹介。「国家戦略上、和歌山と大阪が結んで物流・交流することは近畿圏を結んで、日本をよくすること」と将来への期待も込めた。
次に挨拶した参議院議員の鶴保庸介氏は、「大阪と和歌山、本当にこれから密になっていく。先ほどは第二阪和国道の開通式があった。あとは国道311号と関西連絡道路。少なくとも2つの弦がくっつく大きな意味がある道路ができた」と喜びのコメント。加えて「道路ができて一番うれしいと思うのは、案外この道路ができてこんなことになったというのが、皆さんありませんか? この道路を使うとこんな風になるという、思わぬ地域の価値を再発見できたりする。この父鬼バイパスと鍋谷峠道路には大きな意味があると思う」と道路の活用による地域の発展に期待した。
そのほか、来賓として臨席した衆参国会議員がそれぞれに喜びのコメント。衆議院議員の門博文氏は、「私の父親(和歌山県議会議員の門三佐博氏)がこの道路に携わってきて、今日は倅としても出席できたことをうれしく思う。父は10回選挙を戦ったが、後半のほとんどは選挙のたびにこの道路を作ることを公約の柱に掲げて、自宅の客間にこの道路の完成予想図が掲げられていた。我が家では何十年も前からこの日が来るのを楽しみにしてきた。女房もここ(くしがきの里)の近くに実家がある。今日は盆と正月が一緒に来た」との縁を語った。
開通式典では沿線の自治体や経済団体からの期待のメッセージも紹介。和歌山県かつらぎ町長の井本泰造氏は、「待ちに待った国道480号の府県間トンネル、道路が開通するということで、言葉にならないほどうれしく思っている。3月18日には、京奈和自動車道が和歌山JCTまで供用され、かつらぎ町内で東西の幹線道路が完成することになった。かつらぎ町、伊都地方にとって、人、モノ、情報の流れが変わってくる。地方創生で人口減少が続いているが、これに歯止めをかける活性化の最大の原動力であると思っている」とコメント。
続いて、大阪府和泉市商工会議所、和歌山県かつらぎ町商工会からのビデオメッセージが上映され、和泉市商工会議所は、「泉州織物産地、綿織物業などで栄えてきたが、テクノステージ和泉、トリヴェール和泉といった新しい産業団地ができてさらなる発展を推し進めているところ。しかし、5000人を超える新たな雇用が必要で和泉市だけではまかなえない状況になってしまった。鍋谷峠道路、父鬼バイパスの開通は、和歌山県からも優秀な人材を雇用できるのでは」との経済的連携や、「和泉市久保惣記念美術館、池上・曽根遺跡といった観光地がある」と観光面での交流に期待した。
かつらぎ町商工会は、「かつらぎ町は1年をとおしてさまざまな果物が実り、味わえるフルーツ王国。背後にある高野山に抱かれ、世界遺産の神社を擁するなど、自然と歴史と文化を誇る観光の町。こうした町の魅力を多くの人に感じていただくためには、スムーズに行き来できる道路が必要だった。特に大阪方面へつながる鍋谷峠は、蛇行した細い道が続き、決してスムーズに行き来できる道路とは言えなかった。まるでかつらぎ町と大阪との間に大きな壁が立ちはだかっていたように思う」と従来の状況に触れたうえで、「今回の鍋峠谷道路、父鬼バイパスの開通は、そうした壁に風穴が開き、期待の光が射し込む出来事。大阪の方々はもとより、関空からのアクセスもよくなるので、外国人観光客にも来て、魅力を堪能してもらいたい」といった期待のコメントを寄せた。
式典はその後、万歳三唱で閉幕。場所を駐車場に移して、来場者への餅まきやテープカット、くす玉開披などのセレモニーが行なわれた。
また、通り初めも「くしがきの里」から出発。地元の紀州九度山真田鉄砲隊による鉄砲の合図とともに、和歌山県警のパトカーや、伊都消防組合の消防車などが続々と出発。3kmほど先の鍋谷峠トンネルなど新しい道路へ向けて進んでいった。