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京急など4社、シャープ製モバイル型ロボット電話「ロボホン」を用いた観光客向けレンタルサービス提供

羽田空港のグローバルWiFiカウンターで貸し出し。日本人もレンタル可能

2017年3月22日 発表

2017年4月25日 開始

観光案内を多言語で行なう「RoBoHoN(ロボホン)」のレンタルサービスを開始

 京急(京浜急行電鉄)とシャープ、ビジョン、フューブライト・コミュニケーションズの4社は、シャープのモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」を活用した多言語観光ガイドを行なうコミュニケーションロボットレンタルサービスを4月25日から開始することを発表した。

 コミュニケーションロボットを使用した個人を対象にした観光向けレンタルサービスは日本で初めて。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてさらに増加が見込まれる訪日外国人客の利便性を向上するとともに、日本が持つ技術力、サービス力を感じてもらえるものとし、日本の主要玄関口の一つである羽田空港国際線ターミナルを起点にスタートするものとなる。

 ロボホンは身長約19.5cmの二足歩行可能なロボットで、SIMカードスロットを備えており、電話やメール、カメラなどスマートフォンのような機能を持つ。これらの機能はロボホンと対話をしながら使うのもユニークなところ。本体価格19万8000円(税別)で販売されている。

 今回のサービスは、京急がこのロボホンのレンタル事業ならびに本体や関連商品の販売、シャープがロボホンの多言語化、ビジョンがレンタルや販売、カスタマーサポートなどの運用、フューブライト・コミュニケーションズがアプリ開発を担当。

 レンタル時のユーザーの窓口はビジョンが担い、同社の旗艦店である羽田空港国際線ターミナル2階の「グローバルWiFi羽田空港カウンター」で受付と貸し出しを行なう。返却は羽田空港のほか、成田国際空港、セントレア(中部国際空港)、関西国際空港、福岡空港でも対応する。

 シャープでは、今回のサービス開始に合わせて、従来は日本語でしか対話できなかったロボホンをアップデートし、新たに英語と中国語に対応。フューブライト・コミュニケーションズが作成したアプリ「ロボてなし」が、訪日外国人に訪問先の提案などを各言語で行なえるようになっている。

 もちろん、このアプリのほかにロボホンが持つカメラやダンス、撮影した写真や動画を内蔵のプロジェクタで投影する機能なども、3言語の音声コマンドで利用できる。

シャープのモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」
シャープ純正のキャリングケース
日本語、英語、中国語で観光案内や自己紹介をするシャープ「ロボホン」。日本語と英語は観光案内、中国語は自己紹介をしている
シャープ「ロボホン」の動きいろいろ

 ロボてなしアプリで紹介する観光スポットは、まずは4社で協議したという30カ所程度を登録した状態でスタート。羽田空港での貸し出しとなることから、東京都、神奈川県のスポットを登録している。コンテンツとしては、定番のスポットは入っているが、あまり知られていない場所も登録してあるほか、京急の事業ではあるものの京急沿線にはこだわらずに登録しているという。

 貸し出し時にロボホンにSIMカードは入っておらず、ビジョンが訪日外国人向けに提供している国内向けモバイルルーターレンタルサービス「NINJA WiFi」のモバイルルーターとセットとなる。従って、ロボホンの通話機能などは利用できない。ロボホンのレンタル料金(税別)は24時間(1泊2日可)で1500円、48時間(2泊3日可)で3000円、72時間(3泊4日可)で4000円、以後12時間ごとに500円。これに加えてNINJA WiFiのレンタル料金が必要となる。

 さらに、このサービスは日本人も利用可能(NINJA WiFiのレンタルも必要)となっており、純粋にロボホンのレンタルサービスとしても新たな取り組みという。購入前に試したいといったニーズに応えるもので、レンタル後に購入した場合、9月末までのサービスとしてロボホンの機能を利用するうえで加入が必要となる「ココロプランベーシック(1年分)」と、「キャリングケース」をプレゼントする。

3月22日に行なわれた発表会の登壇者。左から順に京浜急行電鉄株式会社 羽田空港国内線ターミナル駅 駅長 市川秀雄氏、株式会社ビジョン 空港事業部 統轄 奥山亘氏、シャープ株式会社 IoT通信事業本部 コミュニケーションロボット事業部 課長 景井美帆氏、株式会社ビジョン 空港事業部 統轄 奥山亘氏

 3月22日に羽田空港内で実施された発表会では、各社の代表者が挨拶。

京浜急行電鉄株式会社 羽田空港国内線ターミナル駅 駅長 市川秀雄氏

 京急 羽田空港国内線ターミナル駅 駅長の市川秀雄氏は、取材に訪れた報道陣の多さに「さすがロボホン人気」とまずは驚きの一言。「羽田空港の駅の乗降人員は対前年10%を超える伸び率で年々伸びており、サービス拡大を目指している。京急の羽田空港からロボホンをパートナーとした新しい観光の携帯を提供できれば」と期待を寄せるとともに、「レンタルサービスは、外国のお客さまだけでなく、日本人の皆さまにもご利用いただける」と日本人にもアピール。

 さらに京急では、ロボホンにちなんだグッズの販売も予定。4月下旬以降に等身大のアクションフィギュア「プラRoBoHoN」(税別2800円)を販売するほか、ロボホンに使える帽子と赤色旗のペーパークラフトや、耳と制服デザインの前掛けシールセットなどを予定。このほかにも2100形車両で使われている、水玉のシート柄を模した卓上ホルダーなども検討しているという。

 京急では、まずは20台程度をレンタルサービス向けに用意し、状況を見ながら数を増やすことを検討。1台あたり年間200日の稼働率を目指す。

 また、京急の事業として、レンタル事業そのものや、ロボホンをきっかけとした観光客が移動する際の運賃などでの収益は多くを見込んでおらず、その先にある販売などの事業に期待をしているとのこと。

 市川氏も挨拶のなかで、「ロボホンと触れてみたい、パートナーとなってみたいという人は、ぜひ京急に乗ってお越しいただければ」と日本人の利用者に呼びかけた。

帽子と赤色旗のペーパークラフトや、耳と制服デザインの前掛けシール
卓上ホルダーは計画のみで実物はまだないとのことで、シールを貼った完成イメージ品を紹介した
等身大のアクションフィギュア「プラRoBoHoN」は税別2800円で販売予定
株式会社ビジョン 空港事業部 統轄 奥山亘氏

 続いて、ビジョン 空港事業部 統轄の奥山亘氏が挨拶。「こういった商品を扱うのは初めてだが、訪日外国人に対してNINJA Wifiとセットでレンタルするのは日本初の取り組みで画期的なこと。外国人が新たなロボット体験をしていただく機会を、私どもの入り口でさせていただく。街中にロボホンであふれかえるようなところまで事業を盛り上げていきたい」と意欲を示す。

 また、日本人に向けても「高額な商品なので、買う前に触れてみたい、体験してみたい。それから購入したい人もいると考えている。レンタル事業の特性を考え、まずは触れられるレンタルを提供して、そのあとに購入という、新しいアプローチとして面白いのでは。京急の電車で品川から(最速で)11分。会社帰りに店舗に寄って」と呼びかけた。

 ビジョンが羽田空港に構える「グローバルWiFi羽田空港店カウンター」は、国際線ターミナルのウィングエアポート羽田2階にあり、京急・羽田空港国際線ターミナル駅の、品川方面ホームとつながるエスカレータのすぐ近く。2016年4月には事前予約したモバイルルーターをロッカーから自動で借り受けできる「スマートピックアップ」サービスも開始した。

 ただし、ロボホンのレンタルサービスについてはスマートピックアップに対応しない。現状では事前予約に対応しないことに加え、レンタル時にロボホンの説明を行なったうえで貸し出すため。説明に要する時間は5分程度であるという。

 ちなみに今回の取り組みは、京急がレンタル/販売事業、ビジョンが顧客対応や運用を行なうこともあり、まずは羽田空港でスタートすることになっているが、反響次第では他空港への展開も期待。京急側も、レンタル/販売そのものを事業にしており、先述のように沿線への観光客誘致のみを目的とはしていないため、京急が他空港へのロボホンレンタル展開に関与する可能性も否定しなかった。

グローバルWiFi羽田空港店カウンター
フューブライト・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役 居山俊治氏

 アプリ開発を担っているフューブライト・コミュニケーションズ 代表取締役の居山俊治氏は、「持ち運びできるという特徴を活かして、外国から来た旅行者にいままでにない日本でしかできないサービスを提供したいと考えている。京急へとレンタルサービスを提案した。この4社で、サービスが実現できる運びになってうれしく思う」と、まずは、このレンタルサービス開始に喜びを表わした。

 同社が提供するロボてなしアプリは、「ロボホンと一緒に旅をして、旅を楽しむ」をコンセプトとしており、簡単に地域情報などを検索できるスマートフォンに対し、「ロボットは便利さを追求するものではないと思っており、ロボットだからこそおもてなしを提供したい。アプリは利用者が特定地域に入ると『一緒に写真を撮ろう』『あっちに行こう』などと提案する。場合によっては遠回りになることもあるかもしれないが、一緒に旅をして、新たな発見をして、日本での楽しい思い出を作ってもらいたい」と、どのような体験をしてもらいたいかを説明した。

シャープ株式会社 IoT通信事業本部 コミュニケーションロボット事業部 課長 景井美帆氏

 シャープ IoT通信事業本部 コミュニケーションロボット事業部 課長の景井美帆氏は、「この取り組みおいて、初めて英語、中国語の音声対話に対応した法人向けの導入を行なった。観光アプリ以外の写真撮影やプロジェクタ、ダンスや一部の会話も、ロボホン本体の機能を多言語で切り替えられる」と説明。この取り組みと多言語を同時に行なったことについては「今後の法人導入において重要な案件になってくると考えたから」と述べた。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて観光業でもロボットを導入する事例が増えていることに触れ、「これらは不特定多数にサービスを提供するものだったが、今回のサービスはロボホンは一人一人に寄り添ってサービスを提供するもの。これは『いつも持ち歩けるサイズ』『人に寄り添っていくパートナーロボット』というコンセプトと非常に合致したサービス。これはロボホンにしかできない、ロボホンならではの観光サービス」とアピールした。

 また、今回は東京、神奈川県の観光案内になっているが、「今後はほかの施設に展開していく可能性があると思う。いろいろなところで首からロボホンを提げたお客さまがあふれるように取り組みを進めたい」と意欲を示した。

発表会ではサービスのコンセプトや利用イメージをムービーで紹介