ニュース

中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京、高速道路保全管理の人材育成を担う「技術研修所」公開

路面性状測定車「ロードタイガー」も登場

2017年1月25日 公開

 中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京は1月25日、神奈川県相模原市にある橋本テクニカルセンター内に2016年10月に開設した「技術研修所」を報道関係者に公開した。

 NEXCO中日本(中日本高速道路)のグループ会社である同社は、東名高速道路や中央自動車道、圏央道などNEXCO中日本の東京支社および八王子支社の管区となる11の高規格幹線道路、837kmの区間における保全管理などを業務としている。そうした保全管理に携わる人材の育成、安全性向上や技術力向上を目的としているのが技術研修所だ。

 挨拶に立った中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京 取締役経営企画部 部長の川北眞嗣氏は、技術研修所の目的として、高速道路の安全性向上を、とくに点検に関する技術者育成、点検の技術技能の向上を掲げた。

 また、技術研修所のメリットに、現場では土の中やコンクリートの中にあって内部構造が見えないものの模型を集め、中がどうなっているかの学習ができる点、現場では点在している構造物、それを1カ所に集めて効率的な検証を行なうことができる点、そして高速道路で不要になった撤去材を用いることで、より実践的な勉強ができる点といった3点を挙げている。ほか、NEXCO中日本グループ内のみの活用にとどまらず、「今後、沿線自治体の皆さまにも、技術者育成のためにも活用いただき、地域連携を深めていきたい」と述べている。

中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 取締役 経営企画部 部長の川北眞嗣氏
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 技術研修所 所長の赤坂俊幸氏

 技術研修所 所長の赤坂俊幸氏は、NEXCO中日本グループが掲げる安全性向上への「5つの取り組み方針」を紹介し、そのなかで、「安全を支える人材の育成」を役割として説明した。研修カテゴリとしては、「安全研修」「土木研修」「施設研修」の3つに大別される。そしてこれら3つのカテゴリについて、施設・設備を見学することができた。

NEXCO中日本グループの「5つの取組方針」。これに先立ち上映されたビデオでは、2012年12月2日に中央自動車道 笹子トンネルで起きた天井板落下事故を教訓とし、安全を最優先する姿勢なども紹介された
3つの研修カテゴリ

 所内には、トンネル模型や橋梁模型など、大型の模型が多数設置されており、検査手順を学んだり、訓練に活用したりしていることが実技とともに紹介された。トンネル模型は、壁面サンプルに設けられた消火装備や照明などの検査、訓練だけでなく、裏面には現在用いられている代表的なトンネル工法であるNATM(ナトム)工法と矢板工法という2つの工法の違いが学習できる構造となっていて興味深い。

 また、橋梁構造物では、鋼鉄桁橋が置かれ、内部の点検技術を習得できるほか、撤去材の断面サンプルでは内部構造をより深く学ぶとともに、中性化、塩害などコンクリートの劣化の特徴も学ぶことができる。

トンネル模型では消火栓の点検がデモされた
非常用設備はトンネル電気室防災受信盤との連動試験もできる
トンネル模型の裏面は手前がNATM工法、奥は矢板工法の特徴を示している。このように、工事完了後は表面から見えない部分の構造知識も身につけることで、危険予知などに繋げる
撤去材は実際に数十年使用されたもので、切り取られた断面からは内部の構造や劣化の様子が分かる
コンクリートは、製造当初はアルカリ性であるが、経年劣化とともに中性化が進む。写真はそのサンプルであり、赤い右はまだアルカリ性であることを、表面側となる左は白く中性化が進んでいることを示している
コンクリート構造物内部の劣化を検査するさまざまな装置が用意され、その使い方を学ぶことができる
内部に空洞などがあると温度に変化が生じることを利用した赤外線サーモグラフィ法の検査機器
金属の素材に対しては、磁気の変化でき裂箇所を視覚化する磁粉探傷検査機器が用いられる
橋梁の内部を再現した模型。内部に入って検査の訓練ができる
鋼材のき裂箇所にはマークされていた
舗装面の構造が分かるカット模型
複数の層、複数の素材からなる舗装面を学ぶことができる
セミナースペースに置かれた点検、保守に用いられる工具や装備類。それぞれ落下防止のワイヤーが取り付けられているように、安全意識の啓蒙活動なども行なわれる

 一方で高速道路の橋梁や法面などに用いられる支承や伸縮装置、グランドアンカーなど実際の製品サンプルも置かれ、こちらではその構造から点検箇所、点検方法を学んでいく。こうした土木研修のほかにも、非破壊検査で用いられる計器類の展示や、さまざまな施設の状況を確認・管理するためのIP伝送装置の研修を行なうための機器、ケーブル配線を行なう研修設備など幅広い。

橋脚と橋桁との間に用いられる支承やカット模型
橋桁などの連結部分に用いられる伸縮装置
地すべりなどの抑止として法面などに用いられるグラウンドアンカー
分散設置された設備の監視を行なうIP伝送網を構成する各種機器
素早い復旧のための結線技術の向上も目的とされる

 さらには、路面性状測定車「ロードタイガー」や、橋脚の下部などを確認するためのドローンなどの研修も技術研修所で行われる。

路面性状測定車「ロードタイガー」は、わだち掘れ、ひび割れ、平坦性、縦横断形状などを最高時速100km/hまでの走行速度で検査することができる
車両の正面下部にはレーザー照射器があり、ここからレーザーを照射、路面に投影されたレーザーを正面上部に設けられたラインセンシングカメラによって読み取り、路面のわだち掘れを測定できる
橋脚の底面などを確認するために設計されたドローン。長時間の動作を実現するために有線でドローンに電源を供給することに加え、橋脚に設けられた遮音壁などを乗り越えるために背の高いアームを、同時に目視できないところで飛行するドローンの状況を確認するためのカメラなどユニークな構成となっている
ドローン本体はクアッドコプター式で、橋梁底部の状態を確認するためのカメラが上部に向けて設けられている

 なお、同様の施設は、グループ内の中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋にも2カ所開設されている。技術研修所の開設により、中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京、中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋双方に研修施設が揃うこととなる。