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NEXCO中日本、名神高速 芹川橋の劣化状況を公開
橋梁やトンネルなどの大規模更新・修繕事業について説明
(2015/3/30 14:02)
- 2015年3月27日 実施
現在、NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本(NEXCO 3社)が供用する高速道路は総延長が約9000kmに及ぶが、そのうち約4割に相当する約3700kmは、供用開始から30年以上経過。また、橋梁やトンネルなどの構造物についても、全橋梁の約4割、全トンネルの約2割が供用開始から30年以上経過しているという。そういった供用開始から30年以上経過した高速道路や構造物については、経年劣化によるリスクの増大が懸念されている。
そこでNEXCO 3社は、2012年11月7日に「高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会」を設立し、高速道路や構造物の大規模更新、大規模修繕についてのとりまとめを行なってきた。そして、2014年1月22日に「大規模更新・大規模修繕計画(概略)」が公表され、国土幹線道路部会への報告や審議を経て、2015年3月25日付で更新事業の実施について国土交通大臣から道路整備特別措置法に基づく許可が下りた。合わせて、更新事業の財源を確保するため、料金の徴収期間を2060年(平成72年)6月まで延長することも許可された。
これを受けNEXCO中日本は、3月27日に、今回許可された高速道路更新事業についての説明を行なうとともに、実際に大規模更新を予定している橋梁の現場案内を行なった。
NEXCO中日本代表取締役社長CEOの宮池克人氏によると、高速道路を劣化させる要因は大きく3つあるという。
1つは、経年劣化によるもの。冒頭でも紹介したように、NEXCO 3社が共用している高速道路の中には、供用開始から30年以上経過した部分がかなり存在しており、そういった箇所の道路や構造物では劣化がかなり進んでいる。
2つ目は、通行する車両の重量が増えている点。大型車の交通量が大幅に増加するとともに、規制緩和によって車両の総重量は年々増加傾向にある。その上、大型車では検問での取り締まり台数のうち約25%が過積載による重量超過になっていると指摘。車両の総重量が増え、過積載の大型車も多く走行することにより、路面の劣化が早められているそうだ。
3つ目は、凍結防止剤の使用量増加だ。降雪寒冷地域などでは冬場に路面に凍結防止剤を散布しているが、凍結防止剤は塩化ナトリウムのため、路面のコンクリートに悪影響を及ぼすことになる。特に、スパイクタイヤの使用が禁止された1993年(平成5年)4月以降は、それ以前に比べて凍結防止剤の使用量が約1.6倍に増えた。実際に、凍結防止剤の累積使用量が1kmあたり1000tを超えている箇所では、道路の健全性低下が顕著になっている。
これら3つの要因により、高速道路や構造物の劣化が加速度的に進行しており、従来までの修繕だけでは重大な問題に進展。通行止めなどの重大トラブルが発生する可能性のある箇所が出てきていると指摘。今後15年ほどをかけて、リスクが高いと思われる箇所の大規模更新や大規模修繕を行なっていきたいとのことだ。
今回認可された更新事業の事業費は、NEXCO 3社合計で3兆64億円にのぼる。このうちNEXCO中日本では、橋梁の大規模更新に6961億円、橋梁、土構造物(盛土など)、トンネルの大規模修繕に3140億円、合計で1兆101億円を計上している。
修繕場所や時期の選定は、これまで行なわれてきた調査に加え、今後も調査を行ないつつ、劣化の進行度合いや、作業に伴う交通への影響を考慮しながら決めていきたいと説明。中でも、中央自動車道 小早川橋(長野県茅野市宮川)、名神高速道路 芹川橋(滋賀県犬上郡多賀町中川原)を始め、名神高速道路 揖斐川橋、東名高速道路 朝比奈川橋、東海北陸自動車道 各務原トンネルなどは、特に劣化が激しいとして早急に大規模更新や大規模修繕に着手したいとのこと。早いものでは、2015年(平成27年)度中の着手を予定しているという。
また、大規模更新や大規模修繕では通行規制が伴うことになるが、それによって発生が予想される交通渋滞なども、最小限に抑えたいという。そのための方策として2つの例を示した。
1つ目は、高速道路ネットワークによる迂回だ。例えば、東海地方から滋賀県付近へとつながる東名高速道路および名神高速道路というように、都市部近郊では工事による影響が大きいと考えられる。そこで、そういった地域での大規模更新や大規模修繕は、新東名高速道路や新名神高速道路など、迂回路として利用できる高速道路ネットワークが完成したあとに実施することによって、影響を抑制しようと考えているという。
2つ目は、新技術や新工法による工期の短縮だ。例えば、道路の床版を取り替える工事の場合、全面通行止めで行なうのではなく、車線を規制して順番に取り替えを行なう方法がある。また、橋梁の床版を取り替える場合には、コンクリート製の床版を現地で打つのではなく、工場であらかじめ製造したプレキャスト床版を現地に運んで設置するという方法を取ることで、工期を短縮できる。
この他にも、新しい工法を積極的に研究開発することなどによって、社会に対する影響を最小限にとどめたいとのことだ。
続いて、NEXCO中日本彦根保全・サービスセンター所長の石本秀樹氏によって、早急な大規模更新工事の着手が予定されている、名神高速道路の芹川橋についての説明が行なわれた。
芹川橋は、名神高速道路彦根IC(インターチェンジ)から3kmほど大阪寄りに位置する橋だ。橋長は117mで、1964年に供用が開始された。供用開始から50年が経過していることに加え、交通量が多いことによる床版の疲労、冬期に凍結防止剤を散布していることによる塩害が発生。過去に、床版の厚さを建設時の19cmから23cmとする増厚や橋桁の補強なども行なっているそうだが、現在では床版に“ポットホール”と呼ばれる穴ができたり、ひび割れや剥離もかなり進行しているという。このまま放置しておくと、重大なトラブルの発生が懸念されるため、床版の取り替えを決断したとのこと。
また今回は、実際に芹川橋の現場において劣化状況の説明も行なわれた。実際に芹川橋の下部を見ると、いろいろな場所でひび割れやコンクリートの剥離が確認できた。
ひび割れについては、経年劣化や重量の重い大型車両の通行などによって道路表面にできたクラックから水や凍結防止剤が染み込み、徐々に底面まで広がっていたものだという。また、コンクリートの剥離は、内部の鉄筋が錆びて膨張することによって発生している。実際にコンクリートが剥離している部分を見ると、茶色く錆びた鉄筋が見えていた。
ただし、このような状態でも、今すぐに危険というわけではないとのこと。内部には鉄筋が張り巡らされ、鉄筋による十分な張力が確保されているため、床版が大きくはがれ落ちる心配はない。また、錆びた鉄筋についても、錆びているのは表面のみで、こちらも張力はまだ問題ないという。
ただ、供用開始から50年が経過していることや、劣化の進行具合を鑑み、対処療法的な修繕ではなく、抜本的な修繕が適当と判断し、床版の取り替えという大規模更新工事を行なうことにしたと説明した。