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ANAが「子ども霞が関見学デー」で航空教室などを実施

操縦士や客室乗務員、整備士が自身の仕事を分かりやすく紹介

2016年7月27日 実施

 ANA(全日本空輸)は7月27日、東京都千代田区の総務省などを会場に開催された「子ども霞が関見学デー」の国土交通省プログラムにおいて、ミニ航空教室などを実施した。

「子ども霞が関見学デー」は、夏休みの子供と保護者向けに開催するイベントで、各府省庁などが連携して業務説明や省内見学などを行ない、子供たちに社会を学ぶ体験活動の機会を提供し、府省庁などの施策に対する理解を深めてもらうことを目的とした取り組みで、2016年は7月27日、28日に実施された。

 そのなかで国交省は「国土交通大臣とおはなししよう」「鉄道の運転を体験してみよう」「海の玄関口!!みなとを知ろう!!」などのプログラムを用意しており、空港やエアラインで働く人たちのことを学ぶ「知ってる?空のお仕事」がJAPA(日本航空機操縦士協会)とJAEA(日本航空技術協会)によって主催され、27日のコンテンツをANAが担当した形だ。

 ANAは、空港で働く航空管制官や航空整備士、航空機に乗務するCA(客室乗務員)や操縦士が自身の仕事を説明するミニ航空教室、現役操縦士が隣でサポートするフライトシミュレータ体験、CAや操縦士の制服着用体験などを行なった。

フライトシミュレータでは、現役操縦士の谷口涼さんが隣でアドバイスを送る。動画は羽田空港を離陸して東京湾周辺を航行し、再び羽田空港に着陸するまでの様子

管制官など空港に勤務するスタッフの仕事を紹介

 ミニ航空教室の第1部では、「航空管制官」「運航情報官」「管制技術官」の仕事についてスライドとともに紹介された。

「航空管制官」のパートでは、羽田空港の管制塔は世界で4番目に高い管制塔で116mあること、それによって空港の様子がよく観察できること、そして操縦士と連絡を取り合うことで、空の信号機のような役目を果たしていることなどが説明された。説明の最後には操縦士とどんなやり取りをしているのか、子供たちの前で実演。

 航空教室が終ると、管制官が使用しているヘッドセットを装着してみたいと、多くの子供たちが押し寄せ、「将来管制官になるにはどうすればいいのですか?」と質問する子供の姿も見られた。

「運航情報官」のパートでは、滑走路など空港の状態を常に観察して、飛行機の離着陸に支障のある障害物があればそれを撤去したり、着陸した飛行機が駐機するためのスポットの確保や案内などを行なったりしていることが説明された。滑走路の点検は黄色いクルマに乗って目視でも行ない、飛行機が駐機するスポットの確認はライブカメラで行なっているとのことだ。

「管制技術官」のパートでは、管制官の業務を支える役目であり、レーダーなどのメンテナンスを行なっていることと、飛行機の位置を把握するレーダーの重要性などについて説明された。

「保安防災」のパートでは、化学消防車などの空港で「はたらくくるま」が紹介され、消火訓練などを行なって万一の事態に備えていることが説明された。第1部の最後では、飛行機が着陸するときの時速は新幹線と同じぐらいであること、東京タワー約34個分の上空を飛行していること、関空の滑走路は富士山の高さと同じぐらいの長さであることなどが豆知識としてクイズ形式で紹介されていた。

羽田空港の管制塔の場所や高さ、役割について説明があった
羽田空港の管制塔の高さは116m
管制官は空の信号機のような役目という説明
管制官と操縦士で、実際にどんなやり取りを行なっているのか実演された
運航情報官は飛行機が無事に離発着するために、滑走路などを観察する重要な仕事
黄色いクルマに乗って、平均速度60km/hで滑走路を目視で点検する
乗客が乗り降りする際には飛行機は「スポット」に駐機する
スポットはライブカメラで監視している
飛行機の位置を把握するために必要なレーダーなどのメンテナンスを管制技術官が行なう
故障が見つかったら、管制技術官が現場に駆け付けて修理を行なう
化学消防車は普通乗用車の約2台分の大きさ、重さは約19台分あるが、30秒で80km/hまで加速する
そのほかの空港で「はたらくくるま」の紹介
消火訓練を行ない、万一の事態に備えているという
飛行機が着陸するときの速さは新幹線とほぼ同じ
飛行機は東京タワー約34個分の高さを飛行している
関空の滑走路の長さは富士山の高さとほぼ同じ
滑走路のライトを点灯しているのは管制官
航空教室が終ると、管制官が使用しているヘッドセットを装着してみたいと、多くの子供たちが押し寄せた
教室会場には将来エアライン関連の職業に就くための学校のパンフレットなども置かれ、「将来管制官になるにはどうすればいいのですか?」と質問する子供の姿も見られた

飛行機をメンテナンスする整備士や、客室乗務員、操縦士が登場

 ミニ航空教室の第2部で紹介された職業は整備士、CA、操縦士。まず、羽田空港で飛行機の整備業務をしている片瀬周平さんが、整備士の仕事を紹介した。

 整備士には「ドック整備」「ライン整備」「エンジン整備」「装備品整備」の仕事があり、これらの業務を行なうには専門知識と経験が必須であること、それらは学校や実務で学べることを説明。

「2030年には現在の倍の航空整備士が必要になるので、将来整備士になってくれたらうれしいです。一緒に安全で楽しい飛行機を整備して、作り上げて、お客さまに提供していけるような、そんな皆さんをお待ちしてますので、ぜひ一緒に働いてみませんか」と呼びかけた。

整備士の仕事について説明する片瀬周平さん
片瀬周平さんは、空を飛ぶ乗り物のなかで、エアライン業における飛行機の整備を行なっている
整備士には「ドック整備」「ライン整備」「エンジン整備」「装備品整備」の仕事がある
整備士の仕事には専門知識と技術が必要だけど、学校や実務で勉強を続ければ誰でも整備士になれるという
飛行機が好きで向上心や探求心があるなら、ぜひ整備士を目指してほしいという
整備士の資格は専門学校で取得できるほか、会社に入ってからも取得できる
日本の航空整備士はおよそ5700人
2030年には現在の倍の航空整備士が必要になるので、将来整備士になってくれたらうれしいと子供たちに呼びかけた

 CAの仕事の説明は沢本香澄さんが担当。CAを目指して入社すると、まずお客さまの安全を守るためのさまざまな研修を受けて、それから接客などについても学ぶと説明。はれてCAとしてデビューしてからの、1日の仕事の流れを紹介した。出勤時刻は搭乗の60~90分前で、出発の40~50分ほど前に搭乗して機内の安全などの確認も行なっているという。

「CAはたくさんのお客さまに会うことができるとても魅力的な仕事なので、ぜひ皆さんCAを目指してくださいね」と話してくれた。

CAの仕事について説明する沢本香澄さん
CAになるにはまず、お客さまの安全を守るためのさまざまな研修をしっかり受けることを説明
CAとして働くことになると、搭乗当日はまずブリーフィングから始まる
飛行機には乗客よりも40~50分ほど早く搭乗する
搭乗したら、機内の安全や必要なものに不足はないかを確認する
機長を交えた機内ブリーフィングでは、機体の揺れに影響する天候などの最終確認を行なう
確認を終えたら搭乗客を迎えることになる
搭乗客を笑顔で迎えることも大切な仕事
シートベルトを着用できているか、搭乗客の様子を確認する
離陸前に搭乗客へのアナウンスを行なう
離陸後は飲み物や機内食を提供する
搭乗客に体調のわるい人がいないか見ながら、ときには窓からの景色の説明など、声をかけることもある。機内販売もCAの仕事

 操縦士の仕事を説明したのは、ボーイング 787型機の副操縦士を務める谷口涼さん。パイロットが持っているフライトバッグには、着替えや日用品のほかに8つの免許証など乗務に必須のものが入っていることや、フライト当日の1日の流れを紹介。安全な航行のために、機長と副操縦士の2人のチェックでさまざまな項目を確認しているという。

 飛行機の高度は東京~大阪間など短めの距離であれば約8500m、東京~札幌/沖縄などでは約1万2200mまで上昇し、ボーイング 787型機の場合の巡航速度は約920km/hであることなどを説明。

 CAと違い、乗客と触れ合う機会が少ないので、空港で見かけたら声をかけてくれるとうれしい、さらに「将来パイロットになるんだ」と言ってくれたらもっとうれしいと話した。

「将来パイロットを目指す皆さんには、ぜひいろんなことに興味をもって、いろんな人と仲よくなってほしいと思います。パイロットは機械だけでなく人とも一緒に仕事をするので、いろいろな知識をもった“いい大人”になってください」と未来の後輩になるかもしれない子供たちへの気持ちを語ってくれた。

操縦士の仕事について説明する、ボーイング 787型機副操縦士の谷口涼さん
パイロットが持っているフライトバッグの中身について説明。8つの免許証など乗務に必須のものから、着替えや日用品まで入っている
フライト当日は国内線乗務であれば約1時間前、国際線乗務であれば約1時間30分前に出勤して、機長と副操縦士で天候や機体の状態などについて打ち合わせを行なう
飛行機には出発時刻の30~40分前に乗り込み、整備士からの説明を受ける
整備士をもちろん信頼しているが、操縦士自身も機体のチェックを行なう
出発前にはフライトコンピュータに航行ルートや高度、上空の風の状況などを入力する
CAとのブリーフィングを終えたら、いよいよ乗客の搭乗開始
搭乗が終わりドアを閉めたら、バックできない飛行機をプッシュバックしてもらい、滑走路へ移動を始める。滑走路まではおよそ30~40km/hで移動するという
管制官からの説明にあったように、管制官の指示に従って離陸する
飛行機の高度は東京~大阪間など短めの距離であれば約8500m、東京~札幌/沖縄などでは約1万2200mまで上昇する
ボーイング 787型機の巡航速度は約920km/h
着陸の約40分前から着陸準備に取りかかる
降下しながら巡航速度の約920km/hから約270km/hまで減速して着陸する
マーシャラーや機械の誘導に従ってスポットに機体を移動させる
ほかの便のためにフライト後には実際に航行してみた際の天候などを報告する

フライトシミュレータや制服体験も子供たちに人気

 ミニ航空教室の会場では、子供向けにリサイズされながら本格的なフライトシミュレータが用意され、整理券はあっという間になくなるほどの人気だった。現役操縦士の谷口涼さんが隣でアドバイスを送り、記念撮影にも応じていた。また、制服体験コーナーでは、CAの沢本香澄さんや整備士の片瀬周平さんらが、子供用サイズの制服を参加者に着せて、記念写真を撮ってあげていた。

子供用にリサイズされたフライトシミュレータは大人気
順番を待つ子供たちは、渡されたタブレットの動画で予習
フライトシミュレータは男の子はもちろん女の子にも大人気。現役操縦士の谷口涼さんが隣でアドバイスを送る
羽田空港のC/D滑走路を離陸して、関東周辺を巡ったら、羽田空港に戻る。時間の経過とともに画面も夕景から夜景に
フライトシミュレータを終えると、谷口涼さんお墨付きの「子どもパイロットライセンス」がもらえる
制服体験コーナーでは、CAの沢本香澄さんや整備士の片瀬周平さんらが、子供用サイズの制服を参加者に着せて、記念写真を撮ってあげていた