旅レポ

Google Mapsを活用し、イタリア ミラノでイタリア料理を食べ歩き

ピザやパスタ、リゾット、ジェラートなど奥深さや完成度の高さに感動

日程:8月28日~31日(現地時間)

「Marggella Ristorante Pizzeria」の“タリアテッレ”とポルチーニ茸のクリームベースソース

 ドイツ・ベルリンで開催される家電見本市「IFA」を取材するために、9月上旬にドイツを訪れるのがここ数年の定例行事となっている。ただ、単純にドイツ往復だけではもったいないので、取材前後に数日の予備日を取り、ヨーロッパを観光するのが常となっている。そして今年は、イタリア・ミラノでミラノ国際博覧会が開催されていることもあり、友人のジャーナリストから、IFA取材前にミラノに行こうと誘いを受けた。筆者はこれまでイタリアを訪れたことがなく、旅行好きの友人やジャーナリスト仲間から、イタリアの良さをさんざん聞かされていたこと、そしてちょうどミラノ国際博覧会の取材もできそう(その取材記事はこちら)ということで、渡りに船とその誘いに乗ることにした。

 今回のミラノ訪問は、ミラノ国際博覧会の取材もあるが、最大の目的は食だ。実は、誘いを受けた友人からは、以前よりイタリアの食べ物のおいしさを事あるごとに聞かされていた。しかも、ミラノには行きつけの店もあるという。そこで、ミラノでおいしいイタリア料理をとことん食べてやろう、となったわけだ。というわけで本稿では、男3人でミラノで食べてきたイタリア料理の数々を紹介していきたいと思う。

“食の祭典”ミラノ国際博覧会のイタリア館。万博にあやかり、ミラノでイタリア料理を食べ歩くことにした

まずはミラノの定番料理から

 ミラノの定番料理と言えば、「ミラノ風リゾット」に「ミラノ風カツレツ」が真っ先に思い浮かぶ。そこでまず最初は定番料理から、ということでミラノの地元料理を提供している店を訪れることにした。

 ミラノ国際博覧会の取材と見学をひととおり終えた8月29日の夕刻、ミラノ市内にある料理店「ANTICA OSTERIA MILANESE」に向かった。あらかじめ「Google Maps」で“ミラノ料理”というキーワードで探して見つかったレストランの中から、評価の高さとホテルからのアクセスの良さを基準に選んだ店だ。開店時間は19時30分だったが、店舗には19時過ぎに到着。開店までまだ30分近くもあり、店は開店準備の真っ最中だったが、聞いてみると快く店内に入れてくれた。

ミラノ国際博覧会会場から地下鉄で移動し、「スフォルツェスコ城」を通って店へ
店までの道のりも、いい雰囲気だ
夕食に選んだ「ANTICA OSTERIA MILANESE」。ミラノの地元料理を出すレストランとして人気のようで、Google Mapsでの評価も高かった
店内はなかなかお洒落な雰囲気だった

 ここで注文したのは、ミラノ風リゾットとミラノ風カツレツ。そして、パスタとして定番の「ペンネアラビアータ」も合わせて注文。

 まず最初に運ばれてきたのが、ペンネアラビアータ。ペンネパスタをトマトソースに絡めた、非常にシンプルなパスタだが、その味ははっきり言って衝撃だった。パスタのゆで加減はいわゆる“アルデンテ”で、しっかりとしたもちもち感とわずかな芯の歯ごたえが絶妙。また、甘く酸味のあるトマトの風味が強烈に口に広がり、塩加減もベスト。これまで、海外で食べたイタリア料理は、どれもパスタは茹ですぎ、味はイマイチと、微妙なものばかりだった。イタリアならそんなことはないだろうと思いつつも、頭の中ではまだ半信半疑だったのだが、そんな疑念はこのペンネアラビアータで完全に消え去った。とにかく最高のひと言で、一気にテンションが上がったのだった。

メニュー。ミラノ風リゾット(18ユーロ)とミラノ風カツレツ(14ユーロ)、ペンネアラビアータ(9ユーロ)を注文
まず最初に運ばれてきた、ペンネアラビアータ。パスタのゆで具合はベストな“アルデンテ”で、トマトの風味や塩味も最高。さすが本場イタリアだ

 1品目がこの素晴らしさだったので、2品目以降への期待度も一気に高まった。そして次に運ばれてきたのが、ミラノ風カツレツ。この店のミラノ風カツレツは豚肉が使われていた。出てきたミラノ風カツレツは、骨付きで想像以上に大きく、1人だとなかなか食べ尽くすのはきついのでは、と思うほどだった。

 味付けは、わずかな塩味と衣に混ぜられたチーズの風味だけなのかもしれないが、チーズのコクと塩味、そしてジューシーな豚肉が合わさり、日本のとんかつとは全く違う、なんとも言えない味わいとなる。レモンを一絞りすると、酸味と爽やかな香りも加わって、また味わいが変わる。これも大当たりだ。

 そして、最後にミラノ風リゾット。筆者は、日本ではリゾットを食べることは少ないが、このリゾットも先の2品同様、口に入れた瞬間に鮮烈な印象を受けた。サフランの黄色が鮮やかな、非常にシンプルなリゾットなのだが、なぜこんなにおいしくなるのか、もはや想像がつかない。もちろん、米はわずかに芯が残った”アルデンテ”状態で、食感も最高。チーズはかなりコクが強かったが、それがまた米と非常に合っていると感じた。

 最後に、イタリアでコーヒーといえばエスプレッソ、ということでエスプレッソを頂いて1軒目は終了。もちろん男3人とも大満足であった。

ミラノ風カツレツ。骨付きの豚肉を、チーズを混ぜた衣で揚げたカツレツだ
肉は薄くのばされているが、なかなかジューシー。濃厚なチーズ風味の衣との相性も抜群
ミラノ風リゾット。サフランの黄色が非常に鮮やかだ
具は全くないが、濃厚なチーズと米の味わいだけで幸せな気分になる。もちろん米も”アルデンテ”
食後にエスプレッソを頂いて夕食は終了。どれも非常においしくて、全員大満足だった
店を出て帰る頃には、スフォルツェスコ城はライトアップされていた

翌日の朝食はサンドイッチをチョイス

 翌8月30日は、滞在中にミラノを終日観光できる唯一の日だった。そこで、主要な観光地を巡りつつ、思いきり食事を楽しむことにした。

 前日のミラノ国際博覧会見学の疲れが残っていたこともあって、皆朝8時頃に起き出し、朝食を取ることなくホテルを朝9時過ぎに出発。朝10時半からレオナルド・ダ・ヴィンチの名作「最後の晩餐」の鑑賞を予約していたので、「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」に向かい、目当ての最後の晩餐を鑑賞。そして、遅めの朝食を取ることにした。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」がある、「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」。最後の晩餐鑑賞も、ミラノ訪問の大きな目的のひとつだった
内部は撮影禁止だったため、ロビーに飾られていた写真をパチリ

 ここでも参考にするのはGoogle Maps。サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会付近で“朝食”をキーワードに検索してみたところ、見つけたのが「Pasticceria San Carlo」だ。パンやケーキの店のようで、Google Mapsでの評価もかなりの高得点だったのだが、大勢の地元客が詰めかけており、期待が持てそうだ。

Google Mapで見つけた、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会から徒歩圏内の「Pasticceria San Carlo」。パンやケーキで有名な店のようだ
店内のショールームにはサンドイッチを陳列
甘いパンやケーキもたくさん陳列されており、見るからにどれもおいしそう
店内にはバーカウンターもあり、大勢の客で賑わっていた

 店内に入ってみると、サンドイッチやパンが多数ショーケースに陳列されていた。その中から、ハムとチーズのサンドイッチ(6ユーロ)とベリーの乗ったミニタルト(2ユーロ)を選び、カフェマキアート(4ユーロ)とともに注文した。

 ハムとチーズをクロワッサン生地ふうのパンで挟んだサンドイッチは、見た目こそシンプルで普通だが、パンの味が素晴らしかった。バターの風味が強めでサクッとした歯ごたえのパンは、塩味の強いハムとチーズの風味に一切負けることがない。ミニタルトは、想像通りの味ではあったが、カスタードは甘すぎず、日本人好みの味に仕上がっていた。友人たちは、フォカッチャ生地のサンドイッチや、甘めのパンを注文していたが、それらも絶賛の味だったようだ。

 カフェマキアートは、エスプレッソとミルクが別々に提供され、双方を自分でグラスに注いで飲むというスタイル。店内の洒落た雰囲気といい、男3人で来るのはちょっと失敗だったかもと思わされたが、食べ物の味に関しては大正解だった。

店内のテーブル席はこんな雰囲気。男3人には少々場違いな、非常に洒落た店内だった
筆者が注文したサンドイッチとミニタルト
パンはクロワッサン生地ふうで、サクサクかつバターの風味が強く、とてもおいしかった
ミニタルトは、甘すぎず日本人の口にもよく合う
こちらは、友人が頼んだサンドイッチ。フォカッチャ生地でトマトやレタス、チーズ、ハムを挟んだもので、こちらもかなりおいしかったそうだ
カフェマキアートは、エスプレッソとミルクが別々に運ばれてびっくり
まずは、グラスにエスプレッソを注ぐ
エスプレッソの上からミルクを注ぐ。ふわふわの泡も嬉しい

昼はピザ、そしてジェラート店をハシゴ

 軽めの朝食を終え、次は昼食だ。昼食の内容はもう決めていた。それはピザだ。まだピザを食べていなかったので、とにかくピザを食べに行こう、ということになった。ピザの店は、この後見学する予定にしていた「ミラノ大聖堂」付近で探すことにして、路面電車に乗って移動。そして、Google Mapsで”ピザ”をキーワードに検索してヒットしたのが「SPONTINI」だ。この時点では、3人ともこの店のことを知らなかったのだが、ミラノの超有名店だとその直後に知り、行ってみることにした。

サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会からミラノ大聖堂付近までは路面電車で移動
ミラノの象徴でもあるミラノ大聖堂。大勢の観光客が集まっていた
ミラノ大聖堂そばのピザ屋「SPONTINI」。ミラノで大人気のピザ屋とのこと

 注文したのは、定番ピザ「マルゲリータ」だが、出てきたピザを見てびっくり。いわゆる、薄いイタリアピザを想像していたのだが、SPOTINIのピザは2cmほどの分厚いパン生地のような、日本で言うところの”ピザトースト”のようなピザだったのだ。その時点で、もしかして失敗した?と思ったのだが、食べてみると、これがかなりおいしい。想像するイタリアピザとは食感が全く異なるが、それでも外はサクサク、中はもちもちの生地と、トマトソース、濃厚なチーズの味わいは、非常にインパクトがある。これまでに味わったことのない衝撃的なピザだったが、イタリアにはこういう食べ物もあるのかと、新たな発見だった。途中、あまりに濃厚な味わいに、やや飽きを感じる部分もあったが、ミラノの代表的ファストフードとして人気が高いのも納得だ。ちなみに、今年10月に東京・原宿に支店ができるとのことだ。

店内はファストフード店そのもの。メニューからマルゲリータとコーラのセットを頼んだ。値段は5.5ユーロ
カウンター越しに見えたSPONTINIのマルゲリータピザ。いわゆるイタリアピザとは全く異なる見た目に驚き
これがSPONTINIのマルゲリータピザ。2cmほどもあるかのような分厚い生地と、濃厚なチーズがたっぷりで、見た目以上にボリュームがある
生地はまるでパンのよう。しかし、底面はカリカリで中はもちもち、チーズとトマトソースとの組み合わせも抜群で、これはこれでとてもおいしかった

 SPONTINIのピザはかなり重かったが、まだまだ食べ歩きは終われない。次はジェラートだ。筆者を誘ってくれた友人は、「今回は最低でも1日1ジェラート」と言っていたほどのジェラート好き。そこで、その友人がチェックしていた、ミラノ大聖堂付近にある2軒のジェラート店をハシゴすることにした。
 まず最初に向かったのが「TRE GAZZELLE」。ショーケースには多数のジェラートが陳列されていたが、今回はその中からレモン、ミルク、マンゴーの3種類をチョイス。こってりしたピザの直後だったこともあって、あっさりとした酸味のレモンジェラートで一気にクールダウン。ミルク、マンゴーも見た目ほどの濃厚さはなく、比較的あっさりと食べられた。

ミラノ大聖堂付近の商店街をぶらぶらしながら、ジェラート店へと移動
ジェラート店「TRE GAZZELLE」
商店街に位置していることもあって、店内は大混雑
ショーケースにはジェラートがたくさん
ここでは、レモン、ミルク、マンゴーの3種類を選択。比較的あっさりとして食べやすいジェラートだった。これで3.5ユーロ

 次に向かったのが「Vanilla」という直球な名前の店だ。Google Mapsでチェックしてみると、先ほどのTRE GAZZELLEよりも評価が高かったが、どの程度違うのか興味津々。こちらでは、パイナップルとミックスベリーの2種類をチョイスしてみたが、どちらも先ほどの店よりも濃厚な味わい。それでいて、それぞれのフルーツの味わいもしっかりとしていて、かなりおいしかった。筆者はどちらも甲乙付けがたいと感じたが、ジェラート好きの友人は、Vanillaの味が好みだったようだ。

こちらが2軒目のジェラート店「Vanilla」。Googe Mapsでの評価はこちらの方が高かった
こちらもショーケースにはジェラートがたくさん
スティックタイプのジェラートもある
パイナップルとミックスベリーのジェラートを選択。こちらの方が濃厚な味わいで、いかにもジェラートという印象。2.5ユーロ

夕食は高評価のイタリア料理店でピザとパスタ

 ミラノ大聖堂や、隣接するドゥオーモ博物館を時間をかけて見学しつつ時間を潰し、夕食の店を選ぶことにした。昼に食べたピザはやや特殊だったこともあり、やはり本格的なイタリアンピザを食べたい。合わせてパスタも食べようということになり、Google Mapsで”ピザ”や”パスタ”をキーワードに検索して見つけたのが、「Marggella Ristorante Pizzeria」だ。ミラノ大聖堂からは地下鉄で移動した。

ミラノ大聖堂内部は、非常に荘厳な雰囲気だった
こちらは、ミラノ大聖堂の横にあるドゥオーモ博物館
ドゥオーモ博物館には、ミラノ大聖堂にまつわる様々な美術品が展示されている
ミラノ大聖堂から地下鉄で移動し、夕食へ
夕食に選んだ「Marggella Ristorante Pizzeria」。Google Mapsではかなりの高評価だった
メニュー。ピザは「ナポリ」(7ユーロ)と「プロシュート」(6ユーロ)、パスタは「ポルチーニ」(10ユーロ)と「ボンゴレ」(12ユーロ)を注文

 イタリアに限らず、ヨーロッパではディナータイムが19時以降と、日本人的感覚ではやや遅い場合が多く、この店も同様だった。ただ、昨晩同様に19時直前に店に到着したが、快く店内に入れてくれた。

 ピザはトマトベースでモッツァレラチーズとアンチョビ、オレガノが乗った「ナポリ」と、同じくトマトベースでモッツァレラチーズとハムが乗った「プロシュート」を注文。パスタは、友人たっての希望で、平打ちパスタ”タリアテッレ”とポルチーニ茸の「ポルチーニ」と、アサリの入った定番パスタ「ボンゴレ」を注文した。

 最初に運ばれてきたのが、ピザ2種類だ。注文時に3人でシェアすると言っておいたのだが、双方とも8等分に切り分けて出してくれた。通常、イタリアではピザは切らずに出されることが多いそうだが、こういった心遣いは非常に嬉しい。

 というわけで、まずはナポリを一切れ取り、口に運んでみた。そのとたん、なんとも言えない幸せな気分となった。チーズの濃厚さ、トマトの風味、ちょうどいい塩加減のアンチョビ、もっちりとして耳がサクサクのピザ生地と、どこを取っても文句の付け所がなかった。はっきり言って、これまでに食べてきたピザの中でトップクラスのおいしさだった。本場のピザはこんなにもおいしいのかと、感動を覚えるほどだった。

 もうひとつのプロシュートも同様で、ナポリと比べてアンチョビがハムに変わっただけといった感じではあるが、風味は全く異なっている。アンチョビに比べて塩加減の弱いハムだったこともあるのか、こちらの方が少しマイルドな印象もあったが、こちらも絶品。サイズは直径25cmぐらいあったが、3人であっという間に平らげてしまった。

まず運ばれてきたピザ「ナポリ」。シェアすると伝えていたため、あらかじめ8等分にカットしてくれていた
これぞイタリアのピザといった雰囲気、釜で焼かれた香ばしさと共に、チーズのコクとアンチョビの風味が広がり、感動的なおいしさだった
こちらはハムの乗った「プロシュート」
具材がハムになっただけで風味が大きく変わり、見た目以上に味わいに違いがある。塩味も絶妙で、こちらも非常においしかった
唐辛子オイルをかけると、ピリッとした刺激が加わって、大人の味になる

 そして、我々がピザを平らげるのを待っていたかのように運ばれてきたのが、パスタ2種類だ。まずは、ポルチーニから。いわゆる平打ちのパスタ“タリアテッレ”とポルチーニ茸をクリームベースのソースでまとめたものだが、ピザに続いてこちらも口に入れた瞬間そのおいしさに打ちのめされた。これぞ”アルデンテ”という、完ぺきなパスタのゆで加減に、独特な風味のポルチーニ茸とクリームソースがマッチして、箸、いやフォークが止まらない。もちろん、ボンゴレも同様。ボンゴレは、日本でも何度も食べたことのある定番パスタだが、やや塩味が強めという印象も、アサリの旨みと潮の香りがまとわりついたパスタは、絶品以外の何物でもなかった。

 さらに、店員が出してくれたパルミジャーノ・レッジャーノをかけると、アサリの旨みにチーズの濃厚さが加わり、一段とおいしくなった。パスタのゆで加減は、もはや言うまでもない。

ピザを食べ終えるのを見計らったように運ばれてきた、「ポルチーニ」
わずかに芯の残る絶妙なパスタのゆで加減、ポルチーニ茸の独特な風味、濃厚なクリームソースと、非の打ち所のないおいしさだ
こちらは日本でもおなじみのボンゴレ。アサリの旨みと潮の風味が口いっぱいに広がる
パスタは、もちろんアルデンテ。やや塩味が強いと感じたが、これぞパスタという印象で絶品だった
パルミジャーノ・レッジャーノをかけると、コクが加わりさらにおいしくなる
食後はやはりエスプレッソ。マイルドな苦みがこってりとした口のなかを静めてくれる

 我々が料理を食べ終える頃には、店の中は客でいっぱいとなっていた。先ほど、ピザをカットして出してくれたと書いたが、それだけでなく、店員は客の食事の進み具合を常にチェックし、最適のタイミングで料理を運んできてくれる。料理のおいしさだけでなく、そういった細やかな気遣いもあって、地元で評判の店となっているのだろう。とにかく、感動の夕食であった。

店を後にする頃には、店内も外のオープンスペースも客でいっぱいに。ここからも評判の高さがうかがえる

ミラノ出発前にジェラートとピザ

 翌8月31日。この日は夕方前のフライトでベルリンへと移動することになっていた。それまでには十分に時間があるので、移動前に当然食事だ。昨日さんざん食べ歩いたこともあって朝食は省き、11時前にホテルをチェックアウト。そして、ホテルに荷物を預け、ホテルから徒歩圏内の店を探すことにした。

最終日は午後のフライトまでホテル周辺を散策しながら食事場所を探すことに

 ただ、ここで店選びが少々難航。良さそうな店を見つけたと思っても、夕方からオープンだったり、当日休みだったりで、なかなか決まらない。そこでまず、「1日1ジェラート」を達成すべく、先にジェラート屋に行き、ジェラートを食べつつ考えることにした。訪れたジェラート屋は「Artico」という店だ。

 清潔な雰囲気の店内には、30種類を超えるジェラートが用意されていた。その中から筆者は、マスカルポーネとキャラメルを選択。マスカルポーネは、思ったほど濃厚ではなかったが、ほのかに生姜の風味がきいた、意外な味わいが印象的。対するキャラメルは、まさに直球なあまりキャラメルの味わい。双方の対比がなかなか絶妙だった。

閉店の店が多く、昼食のできる店探しに難航
ジェラートを食べつつその後の予定を調整することに。向かったのは「Artico」という店だ
ショーケースにはカラフルなジェラートが並んでいた
選んだのは、マスカルポーネとキャラメル。2.5ユーロ。さっぱりとしたマスカルポーネと濃厚なキャラメルの対比が絶妙だった

 さて、ジェラートで一服したとはいえ、未だ昼食の店は決まらず。とはいえ、空港へ移動する時間は刻々と迫っている。ということで、道すがらに見つけた「NISIDA」という店に入ることにした。

 こちらも、先ほどのジェラート屋同様に清潔感あふれる店内で、伝統的な店とはやや趣が異なる印象。お昼時ということでランチメニューがあったので、その中からハムとマッシュルームの乗ったトマトベースのピザ「レッジーナ」を選んだ。こちらのピザは、ベースとなるピザ生地の小麦の香りと釜で焼いた香ばしさが強く、昨日夜のピザとは趣がかなり異なっていた。とはいえ、これはこれで非常においしくいただけた。ピザひとつとっても、店それぞれに味わいが異なり、非常に奥が深い。食後のエスプレッソと合わせて8ユーロ。金額にも大満足だ。

昼食に選んだ店は、ジェラート店近くの「NISIDA」。お洒落な店構えで、直感的に決めた
メニュー。ランチタイムはドリンクがセットとなり、なかなかリーズナブル
筆者が選んだ「レッジーナ」。やや厚めで小麦の香りの強い生地が特徴的で、食べ応えのあるピザだった
昨日のピザとは味わいがかなり違ったが、こちらも納得のおいしさだった
こちらは友人の頼んだ「ディアボラ」。ピリッと辛みの強いピザで、こちらもなかなかの味わいだった
別の友人が頼んだパスタ。豆と細かく切ったパスタという独特な組み合わせ。比較的さっぱりとしており、ややパンチに欠ける印象だった
食後のエスプレッソ。食後のエスプレッソの魅力がだんだんわかってきたような気がした

 昼食も終わり、大満足でホテルに戻る予定が、ホテルの目の前で「gelatonatura」というジェラート屋がオープンしているのを発見。そこで、最後のジェラートを楽しむことにした。地元のおじさんやおばさんで賑わう中、ヨーグルトとベリーのジェラートを注文。こちらは、昼食前に食べたジェラートよりもかなり濃厚な味わいだった。平日の昼ながら、地元客が大勢集まり食べていることから、イタリアではこのような濃厚な味わいのジェラートが定番なのかもしれない。しかし、ひつこいということはなく、昼食で満腹だったにも関わらず、あっという間に平らげた。

 以上で今回のミラノでの食べ歩きは終了。この後、ホテルで荷物をピックアップし、空港に向かってベルリンへと移動したのだった。

ホテルの目の前にあるジェラート店「gelatonatura」がオープンしていたので、最後に食べていくことにした
フルーツをベースとしたジェラートがたくさん並んでいた
ヨーグルトとベリーを選択。2.5ユーロ。かなり濃厚な味わいで、インパクトの強いジェラートだった

ミラノを訪れるなら8月は避けたい

 今回ミラノを訪れるにあたって、食事をする店はあらかじめいくつか候補をあげていた。ミラノ行きを誘ってくれた友人一押しの料理店や、ミラノのB級グルメとして話題の”揚げピザ”を出す店などに行く予定だった。しかし、実際にそれら店舗に行ってみると、ほとんどが夏期休業中だったのだ。店はシャッターが下ろされ、「8月いっぱい夏期休業」といった張り紙が貼られていたのだ。どれも人気店ばかりだが、8月まるまる1ヶ月を休業にしているとは思っておらず、これには同行した友人も呆然。こういった状況を見る限り、食を堪能するためにミラノを訪れるなら、可能な限り8月は避けるべきだろう。

事前に調べていた店の多くが夏期休業だった
有名店でも8月はまるまる休業という店が多いようだ。食を目当てにミラノを訪れるなら8月は避けるべきだろう

 そういった経緯から、今回はGoogle Mapsを活用した行き当たりばったりのミラノ食べ歩きとなった。しかし、実際に訪れた店は、どれも非常にレベルが高く、行き当たりばったりながら、とても満足度が高かった。それとともに、イタリア料理の奥深さや完成度の高さを、思いきり印象づけられた。実は筆者は、イタリア料理も日本で食べるのがいちばんおいしいと信じていたのだが、今回訪れた店での食事を通して、その考えを改めることにした。日本のイタリア料理はかなりおいしいが、本場イタリアは、それに輪をかけておいしいと断言したいほどだ。

 何はともあれ、またいつかイタリアに行き、色々な料理を食べ歩きすると強く心に誓ったのだった。

平澤寿康

うどん県生まれ。僚誌PC Watchなど、IT系の執筆を中心に活動。旅&乗りもの&おいしいもの好きで、特に旅先でおいしいものを食べるのに目がない。ただし、うどんにはかなりうるさい。