旅レポ

森と湖の国フィンランド~一番近いヨーロッパへリラクゼーショントリップ~(その3)

暮らすように旅するクーサモ編

 フィンランド北東部に位置するクーサモ(Kuusamo)は首都ヘルシンキから国内線で1時間40分、人口約1万6000人のロシアとの国境に接する小さな町です。人間と同じ数のトナカイがいると言われていて、夏場は釣り、ラフティング、カヌーが盛ん。冬はスキーリゾートとして多くの観光客が訪れます。真冬はマイナス40℃にもなるため、夏と冬では70℃近い気温差になるんだとか!

 訪れた10月中旬は日中の最高気温がすでに一桁台で、山沿いはもうすぐ雪景色になるという頃でした。“森と湖の国”という言葉がぴったりのそんなクーサモで、フィンランド人になったような、ちょっと特別な体験をしてきました。

絵本の世界のような景色
クーサモでのドライブは湖、森、湖、森の連続
そして、ときどきトナカイ!

沼地でクランベリー摘み! っていうかこれ本当にジャムになるですの?!

 まず最初はクランベリー摘みです。フィンランドではこの“ベリー摘み”はとってもポピュラーなアクティビティで、フィンランドの人々にとっては暮らしに溶け込んだ生活の一部のようなもの。森に分け入って恵みを頂くことができるのは国民の権利とさえ言われているんだとか。ただし木を折らないとか、むやみやたらに荒らさないなど、自然を尊重し大切に守りながら生活しているのがフィンランド流。ということで、私たちも大自然をリスペクトしながらベリー摘みスタートです!

まずはレクチャー。足元に気をつけましょうとか、あんまり遠くへは行かないでとか
沼地に散った参加者たち
あれれ? 全然見つからないんですけど
あった、あった! ようやく一粒見つけました

 クランベリー摘みがちょっと想像と違ったアクティビティでしたの。私はもっとわんさか、目をつぶっていても大量に収穫できるものだ(勝手に)と思っていたのです。が、聞くところによると基本的にベリーは7月末~8月にかけて摘むもので、唯一このクランベリーは寒さに強く“冬の雪の下でも採れることもある強いベリー”とのことで、この時期でも探せばきっとあるでしょう、といった感じだったようです。勝手に豊作豊作~ラララ~♪ を想像していた私がいけなかったのですね。もちろんシーズンである夏場は、色々な種類のベリーが収穫できるはずですよ。

足元は長靴がずぶずぶと埋まっていきそうな湿地帯。これもちょっと想像と違った!(笑)
開始から30分。これしか採れていないんですけどーっ!
ふと頭を上げると現地コーディネーターのニーナが絵になる姿でいたのでパチリ。さすがフィンランド人、しっくりくる!

 曲げていた腰も辛くなってきた頃、ベリー摘みタイムは終了。ほかの皆さんも似たり寄ったりの感じの量で、ホッ!でもこれ、次に行く施設でジャムにしてお土産で頂けるとのことですが、大丈夫なんでしょうか? 煮てしまうと1瓶にもならないと思うんですが。どうなったのかは後半で!

Ruka Safaris

Webサイト:Ruka Safaris
Webサイト:ベリー摘みのページ
TEL:(08) 852 1610

カントリーハウスでフィンランドのお菓子プッラ作り

世界名作劇場に出てきそうな素敵な奥さまがお出迎え

 摘んだばかりのベリーを持って向かったのは「Pohjolan Pirtti」という施設。こちらはマッティさん&タニヤさんというご夫婦が経営する、フィンランドのトラディショナルな生活空間を体験・味わうことのできる総合施設です。宿泊はもちろん、サウナ、レストラン、特別プログラムなどさまざまなサービスを行なっていて、特に冬シーズンの土曜日に開催されるホリデープログラムはお子さんに大人気なんだとか。日本で言うと色々な体験ができる民宿のような場所でしょうか。

お家の中はこんな感じ。19世紀当時の雰囲気を今に伝えています

 私たちがおじゃましたこのお家は、なんと125年も前の1891年に建てられたという歴史ある建物。置かれているソファやチェスト、長イスなどはすべて100年以上前のアンティークなんだそう。木のぬくもりが感じられる、とっても居心地がよいお家でしたよ。ここでは「Pulla(プッラ)」と呼ばれるフィンランドの家庭で作られる菓子パン作りを体験しました。

Pulla(プッラ)作りスタート。こねこねして、
生地を細長くしていき、
手でざっくり切って、
くるくると丸めて、
レーズンを添え、卵黄をハケで塗ったら完成

 タニヤさんの手元を見本に、さっそく私たちもこねこね。自分の好きな形に仕上げるのは楽しい作業です。レーズンとザラメをお好みでトッピングして完成。あとはオーブンで焼いてもらいます。

みんな真剣!
私のはコレです
トレーに並べてオーブンで焼きます

 プッラが焼きあがって冷めるまでの間はフリータイムだったので、これぞフィンランド!といった感じの景色を夢中でカメラに収めてみました。

 プッラを焼くいい香り包まれながら、この日のランチのサーモンスープとパンをいただきました。この、ご主人のマッティさん手づくりスープがとっても美味しくて、おかわりする人が続出! 決して凝った料理ではないはずですが、素材がすべてよいのでしょう。地元で採れた野菜とサーモンの旨味が存分に味わえる絶品スープでした。思い出すだけで幸せな気持ちになる、そんな素晴らしいスープを食べたのは生まれて初めてです。そうそう、サーモンは煮込んで固くならないように出来上がりの10分前に入れるのがコツなんだとか。

マッティさん手づくりの絶品サーモンスープ
すべて地元の素材を使用
昔ながらの薪オーブン。さぁプッラが焼きあがりましたよ♪
思っていたより膨らむ! どなたかのはかなり巨大になってます

 プッラは生地にスパイスとしてカルダモンが入っているので、コーヒーに合う大人のおやつパンといった感じ。食感は日本のパンのようにふわふわやわらか系ではなく、ずっしりもちもちしています。ヘルシンキが舞台の日本映画「かもめ食堂」で有名になったシナモンロールと似ていますが、フィンランドのカフェなどではこの「Pulla」という名前で売られているようです。

見た目も素朴でかわいい、プッラ

 さて、忘れてはいけないのが午前中に摘んだクランベリー。着いた直後に全員の分を旦那さまに託しておいたら、帰る頃にはこんなかわいらしい瓶に入った立派なジャムになっていました。あらかじめ作っておいたものに足して瓶詰めしてくださったのだそう(ですよね、ですよね)。

 市販のジャムと比べて甘さを抑えてあるので、フィンランド風にお肉料理にソースとして添えて食べるといいのだそうです……ということを言われていたはずなのに、日本に帰ってきてトーストに塗って毎日食べていたらあっという間に終わってしまいました。

この中に苦労して見つけたあの一粒が入っているですのね~
Pohjolan Pirtti

Webサイト:Pohjolan Pirtti
所在地:Tavajarventie 9 FIN-93600 Kuusamo

グループ滞在に最適な高級ロッジはすこぶる快適

 クーサモでは2泊したのですが、その1泊目が「Luppolinna」というロッジでした。トイレ・バス付きのツインルームが12室もある、グループ滞在にオススメの宿です。首都ヘルシンキをはじめ、フィンランドのアコモデーションはクオリティが高くてびっくりでした。暖炉が活躍する冬は特に、温かみのあるウッドコテージタイプに泊まりたくなりますよね。フィンランドの人はこのようなロッジを、10日間~2週間ほど借りてホリデーをのんびりと楽しむようです。う~ん、贅沢!

高級ロッジのカテゴリーに入るようです
夏場はここで読書もいいですわね
森のなかに佇む、という言葉がぴったり
湖が目の前!
お部屋はこんな感じ。ロフトがあって山小屋風
くつろぎのリビングルーム
朝食を食べたテーブル
湖側に大きな窓があって景色を眺められます
典型的なフィンランドの朝食。ヨーグルトにはやっぱりベリー

 この日、優雅に朝食をとっていたら、窓から見える湖のほとりに2頭のトナカイを発見! 大急ぎでカメラを持って外に出ました。湖に行くまでの地面は湿気を帯びた沼地(またしても!)で、これまで歩いたことがないフカフカの感触にびっくり!フィンランドの森の生命力を感じた瞬間でした。

ふかふかのじゅうたんのような弾力のある苔が一面に
マクロの世界の生命力に感動。踏むのをためらっちゃうほど

 トナカイを追いかけて外に出たはずなのに、苔ばかり気になって下を向いていたら、いつの間にか彼らは遠くへ……。トナカイは野生ではなく、家畜として飼われているケースがほとんどなのだそうです。

あっ、立ち止まってこっちを見ている!
道路に出てきて優雅に歩くトナカイの親子
Luppolinna

所在地:Myllylahdentie 4 FI-93825 Rukatunturi
Webサイト:Luppolinna

 暮らすように旅するクーサモ編、いかがでしたでしょうか。派手なアクティビティではないけれど、こうしてフィンランド人と同じような生活を体験するゆっくりとした旅もいいものです。ロッジタイプの宿はもちろんキッチンもついていますので、地元の食材で自炊も楽しめそう。時間に振り回されることのないワンランク上の旅のスタイルかもしれませんね。

 さて次回はフィンランドツアーの最終回。クーサモでのアクティビティその2として、いよいよフィンランドサウナが登場! 極寒の川や湖で、あんなこと・こんなことのびっくり体験満載ですよ。お楽しみに~♪

今夜のゆきぴゅー@Luppolinna

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。