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祝!! スクートが関空に就航。最新鋭旅客機ボーイング 787で、関空~バンコク・台湾~シンガポールを結ぶLCC

関空で中長距離路線の格安航空会社を利用可能に

2015年7月8日 就航

 シンガポール航空が100%出資する格安航空会社(LCC)であるスクートは7月8日、関西国際空港(大阪)~ドンムアン(バンコク)~シンガポール線を新規開設した。9日には関西国際空港(大阪)~高雄(台湾)~シンガポール線を新規開設し、以後、水・金・日曜日の便が関空~ドンムアン~シンガポールで、火・木・土曜日の便が関空~高雄~シンガポールのルートで運航される。

 運航スケジュールなどは、到着放水アーチ記事を参照してほしい。

 スクート初就航となる関空では、27番搭乗口において、定期便就航セレモニーが開催された。

「スクートの787はゲームチェンジャー」

搭乗口で挨拶を行なう、スクート シンガポール本社 営業本部長 スティーブン・グリーンウェイ氏

 冒頭、挨拶に立ったのは、スクート シンガポール本社 営業本部長 スティーブン・グリーンウェイ氏。グリーンウェイ氏は、列席者や初便の乗客、そして自社のスタッフにお礼を述べた後、スクートが関空路線に投入した787の意義について語った。

「以前、私は関西空港で勤務していました。大阪は私にとって第2の故郷のようです。ですので、大阪、そして関西空港に戻ってきたことをとても嬉しく思います。これはスクートに勤務して以来の私の夢でした。そしてついに本日それがかなったわけです。当社が成田空港に就航してからわずか2年あまりですが、1日1便にもかかわらず、すでに70万人ものお客さまに利用していただいております。東京路線同様、本日就航いたします大阪路線も大きな成功を収めることと確信しております」

「夜の活気満ちた道頓堀、壮観な海遊館、美しい大阪城など大阪にはすべてが揃っています。高野山への御遍路、日本文化の中心である京都を散策するのにも大阪はとてもよい位置にあります」

「本日はたくさんの祝い事があります。1つ目はもちろん、バンコク(ドングアン)経由シンガポール~関空路線の就航です。そして明日は、台湾 高雄経由シンガポール~関空路線が就航します。2日に2つ大きなお祝いごとがあります。就航初日の今日、真新しいボーイング 787-9ドリームライナーを投入できたこと、これが2つめのお祝いです」

「この飛行機のニックネームは、“マジュラー(Maju-lah)”とつけました。このマジュラーはマレー語で“前進”という意味です。この飛行機は先週当社に納入されたばかりで、2~3日特別な塗装を行なっていました、マジュラーはシンガポール建国50周年を祝う特別な塗装を施した、とても特別な飛行機です」

「このボーイング 787は、当社のボーイング 787ドリームライナー20機のうちの5番目の飛行機です。来月8月までには、スクートは世界で唯一、すべての飛行機を787ドリームライナーで揃える航空会社になります。これは特別なことです。787ドリームライナーには、新しく改装された座席、ストリーミングムービーの試聴、機内でのインターネット利用が可能になるWi-Fiを装備し、機内Wi-Fiによって電子メールのチェック、Skypeを使うことができます。また、座席には電源ですとか、大きな窓ですとか、快適な空間を備えております。快適な乗り心地、排気音の抑制、音も静か、そしてコスト面での大幅な改善などです」

「一言でいうと、スクートの787はゲームチェンジャーです」

「これにより、他社がたちうちできないお得な運賃と、ワールドクラスのLCCサービスを引き続きお客さまに提供することができます。スクートは若い航空会社です。初就航からわずか3年あまりですが、現在30以上の空港に就航しています。この数字ももっと増える予定です。この間に、500万人ものお客さまに利用していただきました。また、いくつかの航空関係の業界紙、Webサイトからは、アジア太平洋でNo.1のLCCであると評価していただいております」

「今回、大阪とバンコク、シンガポール、そして明日は高雄とを結ぶことができます。これをとても誇りに思っております。私どもは、スクートならではのサービス、“Scootitude(スクーティチュード)”と申しておりますが、これと価値を大阪にお届けできますこと、さらにこの地域と環境のビジネスチャンスを拡げるお手伝いができることを大変喜ばしく思っております」と、挨拶した。

関空のLCCは、スクートの就航で第2ステージへ

シンガポール国際企業庁(シンガポール大使館商務部)所長 ゴ・ウィミン氏

 続いてシンガポール国際企業庁(シンガポール大使館商務部)所長 ゴ・ウィミン氏が日本語で挨拶。

「シンガポールでは、日本に対する関心が高まっています。シンガポールから日本への訪問者は約19万人で、日本からシンガポールへ訪問する日本人の方と比較すると圧倒的に少ないのですが、年々増加傾向となっています。とくに旅行に関する縛りのない旅行者、いわゆるフリー&イージーのリピーターが年間、数回日本に渡ることは珍しくありません」

「シンガポールは従来、ビジネスハブとして活躍しており、多くの日系企業がシンガポールを拠点としています。アジアのビジネスをシンガポールから指示していました。そのため、日本からは観光客のほかに、駐在員、家族らが、シンガポールと大阪の間に行き来するようになりました」

「年間のシンガポールへの日本人訪問者は、約82万人を超え、シンガポールへの(国別)渡航者ランキングで6位となっています。また、近年起業家やインターン先を探している大学生、現地採用などさまざま理由でシンガポールへ日本人が渡っています、そういった方々は予算が限られ、コストをなるべく削減したい意向は強いのでしょう」

「観光産業の市場は、この形で変化しつつあります。日本では『立場が変われば人が変わる』というようなことわざがあります。旅行者のニーズが変わったからこそ、シンガポールの航空会社もニーズに基づき立場が変わらなければいけません。そこがスクートの強みでもあり、この度、大阪~シンガポールの新規路線を開設する運びとなりました。人と人の交流が促進され、もの、金、情報が自由に行き交うことが実現できます。両国の関係を強化する大きなステップですので、ぜひとも皆さんのご協力をお願いします」と述べ、LCCが大阪とシンガポールを結ぶことへの期待を強くにじませた。

 このスクートの就航については、新関西空港 代表取締役社長兼CEOの安藤圭一氏がラブコールを送っていたのだという。

新関西空港株式会社 代表取締役社長兼CEO 安藤圭一氏

「今日は待ちに待ったスクートさんの新規就航が実現することになり、本当に喜んでいます。元々LCCということで、関空はLCCに力を入れていたのですが、『スクートさんにもぜひ飛んできてほしい』ということで、一昨年の12月にシンガポールにおじゃまし、路線開設をお願いしました。そのときには機材繰りの問題などがありまして、実現するまでには時間がかかるかなということでしたが、よく今日の日を迎えることができまして、本当に嬉しく思っています」

「このLCCというものを関空でスタートして、日本のマーケットに受け入れられてきたわけですが、これから日本においてもLCCの第2ステージが始まるものと認識しています。従来、LCCは4時間圏内の近距離を中心にマーケットを創出してきたわけですが、今回シンガポールと結ぶスクートが入って、中長距離のマーケットに、まさにトライしていくことになります。我々からしますと、高品質・高サービスのシンガポール航空が全額出資した子会社となるスクートさんが、今回中長距離のマーケットを切り拓いてくことになります」

「先ほどの話にもありましたように、(飛行時間が)短時間ではないわけですから、ボーイング 787-9という最新鋭機材を使うことになります。LCCですけれども、ビジネスクラスを持っています。そういった観点からLCCの第2ステージの幕開けを象徴するようなフライトになると思っています。東南アジア~日本との間の中長距離のマーケットをお互いにしっかり開拓していく必要があるのではないかと思っています」

「アジアの中では、ASEAN経済共同体ができますし、TPPの話もどんどん進展しているようであります。2030年に向けてアジア太平洋の航空マーケットは、今の3倍~4倍に拡大していくことが期待されています。我々は、エアラインさんとまさに一緒になって、このマーケットにの拡大に貢献していきたいと思っています」

「今日(7月8日)のニュースで京都が『世界で一番魅力的な都市』に昨年に続いて選ばれたわけですが、そういった意味でも関西は非常に元気ですので、たくさんのお客さまをお迎えするとともに、アウトバウンド含めて、たくさんのお客さまがビジネスや観光で、シンガポール、バンコク、高雄に訪れていただきたいと思います」と熱い期待を語り、「本日は誠におめでとうございます。コングラチュレーション」と結んだ。

テープカットの後、抽選会も実施

 本来、挨拶の後、テープカットが行なわれ、抽選会、そして搭乗へという流れになるのだが、実は初便の到着が1時間ほど遅れたため、出発時刻も遅くなってしまった。

 そのため、搭乗までの時刻に余裕ができ、搭乗口ではグリーンウェイ氏と記念写真を楽しむ搭乗客や、互いに写真撮影を楽しむスタッフなど、明るい雰囲気に包まれていた。この遅れについてグリーンウェイ氏は、ドンムアン空港でのチェックイントラブル(システムフェールと表現)によるものと説明。グランドハンドリングに起因するものだと語った。

 関空でのグランドハンドリングは、JAL(日本航空)及びKGS(関西空港グランドサービス)に委託。実際に搭乗口でのチェックイン作業は、JALスタッフがスクートのシャツを着て行なっていた。

就航を祝うパネル類
スクートのウリは、ボーイング 787を運航することだろう
就航記念のテープカット。左から関西空港全体構想促進協議会 小林宏行氏、国土交通省 大阪航空局 関西空港事務所 関西国際空港長 大越康史氏、新関西空港 代表取締役社長兼CEO 安藤圭一氏、スクート スティーブン・グリーンウェイ氏、スクート 日本・韓国支社長 坪川成樹氏、シンガポール国際企業庁所長 ゴ・ウィミン氏
無事にテープカット
関空のマスコットキャラクター「カンクン」も加わっての花束贈呈。花束は初便の機長に送られた
CA(客室乗務員)も加わっての記念写真
カンクン退出。今ひとつ、活躍の場がなかったかもしれない
抽選会を実施
航空券などが当たっていた
初便の乗客となっていた雑誌「航空情報」の編集者も抽選に当たっていた
抽選会などしているときに初便到着。最新鋭旅客機ボーイング 787-9のスペシャル塗装機。地上スタッフはJALが担当
シンガポール建国50周年を記念した塗装だという
CAによる記念写真。パネルと同じポーズを取ってもらった
搭乗時刻が定刻よりも遅くなったが、スクートスタッフとゆっくり記念写真を楽しんでいる人を多く見かけた
搭乗口による手続きが始まった。スクートからの委託によりJALスタッフが手続きを行なっていた

 搭乗までの時間を利用して、新関西空港 代表取締役社長兼CEO 安藤圭一氏と、スクート シンガポール本社 営業本部長 スティーブン・グリーンウェイ氏の囲み取材が行なわれた。

──16社目のLCCの就航となりますが、率直に今の感想を教えてください。

安藤氏:そうですね、16社目ということで、とってもうれしく思いますし、今回は中長距離のLCCということです。従来は、短距離中心のLCCマーケットを拡大してきたわけですが、アジアとの関係で行けば、新たな第2ステージが始まるというふうに思っています。4時間圏内が今までのベースだったのですが、これが長くなります。そうすると快適な空の旅ができるかどうかがポイントになりますが、今回のスクートさんのようにボーイング 787を使って『快適に旅ができる』、そうしたLCCマーケットを拡大していくということですから、そういう意味では、今日は記念すべき日であると思っています。

──関空がLCCに提供できるサービスとしてどこが優れていますか?

安藤氏:ターミナル3もそうですが、中長距離のLCCにも対応できるようなターミナルを作るのがコンセプトです。どんな機材が来ても対応できるような形。フルサービスのA380のような、豪華な空飛ぶホテルといわれているA380にも対応できるような空港、小型のLCCにも対応できる空港、LCCの787にも対応できる空港、我々としてはフル装備していかなければならないと思っています。

──今回の路線はどうやって決めたのですか?

グリーンウェイ氏:台湾とバンコクを経由する理由としては、飛ばす飛行機が大きいことです。シートも400席近くあり、それを埋める必要があります。そのためいくつかの場所に立ち寄る必要があります。もう1つの理由は、台湾とバンコクは日本人にとって人気のある目的地です。そのマーケットにはチャンスがありますので、そこには参入していきたいと思います。

 また、台湾にとって日本は非常に人気のある場所で(台湾などに立ち寄ることで)、両方向の需要と取り込んでいきたいと思います。

 シンガポール直行便を入れたいのですが、成田空港からの便は台湾経由ということで成功しています。今回もそれに習って、台湾経由、バンコク経由ということにしています。

──ターゲットのお客さまはどのような方ですか?

グリーンウェイ氏:全員です(笑)。若い方、気持ちが若い方をターゲットにしています。また、若くはないけれどもお得感を求めている方。その方達も私たちのターゲットです。ただ、いろいろなサービスやメニューを用意しますので、皆様に満足していただけると思っています。

──成田就航後、2年経ってから大阪に就航していますが、きっかけとなったのは?

グリーンウェイ氏:新機材が到着するのを待っていました。これまではボーイング 777をシンガポール航空から払い下げてもらって使っていました。しかしながら、新機材となるボーイング 787で就航したかった。大阪は常に就航したい個所でした。航空機ですが、現在新鋭機のボーイング 787は5機あります。今後6カ月の間に、新しく7個所に航空機を飛ばす予定です。

──16社のLCCがあって競争が厳しいと思うが、どのように差別化していきますか?

グリーンウェイ氏:日本~台湾を結ぶ路線はたくさんありますが、成田に関しては(スクートの)路線はとても成功してます。また、普通のLCCでは使用されない、787型機を使っています。787型機は、Wi-Fiなど最新のサービスを提供できます。

 また、今回の初便の搭乗率だが、シンガポールから関空へ向かう便が84%、関空からシンガポールへ向かう便が79%とのこと。シンガポールまで通しで乗る人は10%~20%で、これはバンコクが日本にとってとても人気のある土地だからとのことだ。台湾経由便については、台湾から日本に向かう乗客のほうが多くなると見ており、台湾人にとって日本が人気の観光地であるほか、高雄が日本ではメジャーな観光地になってないからだという。この辺りは、台湾南部の観光が盛り上がりかけていることもあり、台湾ブームの拡大に期待を寄せていた。

 スクート 日本・韓国支社長 坪川成樹氏は航空券の売れ行きについて、「通常の航空会社だと、初便については3カ月~4カ月前から発売する。6~7週間前でこれだけ埋められたことに誇りを持っている。8月の数字だと、高雄経由でのシンガポールはすでに85%埋まっており、バンコク経由のシンガポールは8割埋まっている。弊社にとって満足した数字」と、評価していた。

搭乗口での取材を終え、飛び立つ初便取材のため報道陣は地上へ移動。特別塗装機だけあってハデだ
胴体前方が787-8に比べ、約6.1m延長された787-9
50周年記念
機首にはマーライオン
コクピット下には、「Maju-lah」の文字
エンジンはロールスロイス版
Wi-Fiアンテナを装備する
登録記号は「9V-OJE」
後ろまわりを見ていたら、たまたまJALの787が通過していった。こちらは787-8
折角なので、機体に描かれている風船をすべて撮影してみた。片側20個で間違いないと思うのだが……
離陸へ向けてプッシュバックが始まった
いってらっしゃい
曇り空の中、バンコクへ向けて飛び立っていった

編集部:谷川 潔