ニュース

ミズベリング・プロジェクト、水辺活用に関するテーマフォーラム「ミズベリング ジャパン」

2016年3月3日 実施

フォーラムが開催された渋谷ヒカリエには600人の参加者が集まった

 ミズベリング・プロジェクト事務局は3月3日、渋谷ヒカリエにおいて国土交通省 水管理・国土保全局と共催で水辺の可能性について提案するフォーラム「ミズベリング ジャパン」を開催した。ミズベリング・プロジェクトとは、川など水辺空間を「身近なニューフロンティア」として新たな価値を創造していくプロジェクトで、従来の行政主導ではなく、市民・民間・行政が一体となった活用や開発を目指している。

司会進行役を務めたミズベリング・プロジェクト事務局 プロデューサーの山名清隆氏と国土交通省 河川環境課 課長補佐の田中里佳氏

 今回の「ミズベリング ジャパン」は水辺による地域活性化に挑戦する人に向けて実現に向けた方法や支援の提案を行なっていくのを目的で、全国各地より600人が集結。日本各地の水辺の活用について、実際に活動を行なっている企業や専門家のプレゼンテーションや有識者によるクロストークなどが行なわれた。

 今回のフォーラムのオープニングでは、司会進行役としてミズベリング・プロジェクト事務局 プロデューサーの山名清隆氏と国土交通省 河川環境課 課長補佐の田中里佳氏が登場。山名氏は「今日は全国から日本の水辺でいろんなことを画策している方に来てもらって、今の日本の河川空間で何が起こっているのか。そしてこれからどんなことが起きるのかをみんなで共有して、そして実際にプレーヤーたちがつながる場を作ってみたいです」と挨拶した。

 続いて行なわれたミズベリング・プロジェクト事務局による、プロジェクトの活動報告。ミズベリング・プロジェクト事務局 ディレクターの真田武幸氏と岩本唯史氏が、青いツナギ姿で今の日本の河川における現状について説明を行なった。

 2人によると、日本の川を全部集めると3万5640km2と九州と同じ面積になり、長さでは14万3941km2、地球3周半と壮大だという。それにも関わらず、河川はずっと地方公共団体や公益事業者など公的主体の管理に留まり、開発が橋梁や公園などと限られていたという。岩本氏は「これは機会損失です」とコメント。しかし、規制緩和がスタートしたことで水辺の商業利用が促進され、イベント施設やカフェ、キャンプ場などといった従来にない河川の可能性が追求できるようになったという。

 真田氏は「(水辺活用の)アイディアを自由に考えていいよ、というのをミズベリングでずっと行なってきました。ミズベリング始めます、と言ってから、『こういうのがやりたい』『町おこしに川を使いたい』など、月に10本ぐらい突然電話がかかってきます」と話し、水辺活用においての相談が集まっていることを明かした。

ミズベリング・プロジェクト事務局 ディレクターの真田武幸氏
ミズベリング・プロジェクト事務局 ディレクターの岩本唯史氏
日本の土地において河川が占める割合が大きいのに対して利用されていない状況を説明

全国における水辺の活用をプレゼンテーション

 活動報告の後は、実際に全国の現場で水辺の開発や活用に取り組む企業・有識者によるプレゼンテーションへ。

「二子玉川スマートブリッジ構想」というテーマを掲げて登壇したのが、東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 統括部長の東浦亮典氏。多摩川をはさむ二子玉川エリアは最近では東地区再開発や二子玉川ライズがオープンするなど新しい動きが起こったが、東浦氏は二子玉川は二子橋から下流の橋へ行こうとすると4〜5km先の丸子橋まで行かないといけないため、東西南北の交流がしにくい街である点を指摘。現行の二子橋は車中心の橋であり、人や自転車が渡るには不便かつ危険だという。

 同氏は「個人的妄想」と前置きしつつも、「もう1本、人と自転車のためだけのデザイン性が高い橋を作りたいです」と言い、「マルシェとかお祭りもこの橋の上でやったらいいんじゃないかと。この橋をエリアマネージメント的に地域の団体がいろんなアイデアで利活用していく、そのことで(世田谷区と川崎市の)両自治体での交流が広がるだけじゃなく、地域の経済が非常によくなっていくんじゃないかと思っています」と話した。

東急電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 統括部長の東浦亮典氏
多摩川を挟む二子地区と玉川地区で構成される二子玉川
ルクセンブルクのネイ・アンド・パートナーズによる橋のイメージ画

 西鉄 都市開発事業本部 企画開発部 課長の花村武志氏がプレゼンテーションするのは「俺の福岡水上公園計画」。福岡市の水上公園のなかに水辺に面した建物を建設し、休養施設やレストランを誘致、水上公園が公園と建物が一体となった水辺の空間になる計画だ。花村氏によると、福岡の中心地である博多と天神の間にある水上公園は今後開発予定のウォーターフロントに続くだけでなく、福岡市の再開発プロジェクト「天神ビックバン」構想の一番東側の玄関口にあり、再開発のトリガーとなる場所だという。

 同氏は「水上公園のオープンは今年(2016年)の7月なのですがゴールじゃないと思っています。これは新しいスタートと思っていまして。この水上公園のオープンがスタートとなり、さまざまな方々と連携をしながら地域の幸福度を高める、それが結果的には地方創生になるんじゃないか、と思っています」と話した。

【お詫びと訂正】初出時、西日本鉄道の社名に誤りがありましたので修正いたしました。お詫びして訂正いたします。

西日本鉄道株式会社 都市開発事業本部 企画開発部 課長の花村武志氏
水上公園は天神に近く、重要なポジションの水辺だ
水上公園にオープンする施設のイメージ画と模型

 3人目の登壇者である水都大阪パートナーズ理事の泉英明氏は、水辺の活用で全国の自治体より先を進む大阪の躍進の理由について説明。その1つが大阪府・大阪市・経済界の3者がタッグを組んでいる点だという。プロの人材や民間企業出向者などで構成した「水都大阪パートナーズ」という組織で空間やビジネスモデルを作り、水辺利用における府・市の合同事務局である「水都大阪オーソリティ」。そして両組織のトップに「水と光のまちづくり推進会議」という府と市、経済3団体のトップによる意思決定機関が存在し、オール大阪で水辺の活用を支えていく組織が整っている、とのこと。

 また、施設利用やボランティアといった民間による活動も盛んで、官民による空間活用の仕組みも用意しているという。泉氏は「大阪はどういう風に行動してきたかと言いますと、自由と責任のマインドで、自分たちで公共空間を使いこなしていこう、というのが非常にあります」と話した。

一般社団法人水都大阪パートナーズ理事の泉英明氏
オール大阪体制で、水辺の活用に取り組んでいる
2013年からは「水都大阪パートナーズ」、「水都大阪オーソリティ」、「水と光のまちづくり推進会議」体制で水辺活用を推進。また、民間でも施設利用やボランティアが盛んだという

 川沿いにホテルを建設しようとして建築法規の問題で苦労した話をしたのは、リビタ 地域活性化ホテル準備室 企画担当の綿引孝仁氏。清澄白河に建設予定のホテルの川床を堤防の上に建てる計画を立てたところ、川床が「建築物」か「(準用)工作物」かで東京都からストップがかかってしまったという。「建築物」と解釈された場合は、重量の関係から堤防の上の建設が難しくなる。しかし、京都や大阪、日本橋などに川床の実例があったことや、ミズベリング・プロジェクト事務局や国交省などさまざまなところを巻き込んで4カ月相談した結果、最終的には「(準用)工作物」と判断が下され建築審査を通過したとのこと。

株式会社リビタ 地域活性化ホテル準備室 企画担当の綿引孝仁氏
川床が「建築物」なのかそれとも「(準用)工作物」なのかが今回の実現のポイントに
ホテルは2016年の秋にオープンが予定されている

水辺から見えるライフスタイルとは?

 プレゼンテーション前半は建築や都市計画の視点から水辺活用の計画について語られたが、後半は編集者の視点から提案が行なわれた。

 ネクスト HOME’S総研 所長の島原万丈氏は「Sensuous City(センシュアスシティ/官能都市)」というキャッチフレーズを掲げ、雑誌や住宅情報サイトが掲げる「住みたい街ランキング」とはまた違った基準で独自のランキングを発表した。

 ランキングは「共同体への帰属」「匿名性」「ロマンス」などといった「関係性」と、「豊かな食文化」「街を感じられる」「自然を感じられる」など「身体性」というセンシュアス度を計る2つの指標を使い作成され、センシュアス度の高さは幸福実感度や居住満足度の上昇につながるという。また、同氏はパリのセーヌ川の橋や水辺、ニューヨークのブルックリンブリッジパークの例などを挙げ、「水辺は都市をセンシュアスにします」と水辺の魅力について話した。

ネクスト HOME’S総研 所長の島原万丈氏
センシュアス度の指標を元に作成された住みたい街ランキング

 もう1人の編集者、月刊ソトコト編集長の指出一正氏は「若い人の移住を見るとけっこう水辺が多いです」と話し、新卒で唐桑半島に移住した「ペンターン女子」や、長浜市の米川に若者達がシェアスペースを作ったという水辺のエピソードや、川での子育てについて紹介。また、指出氏は「水辺作りに人を巻き込むソーシャルな視点」で必要なものとして、水辺に何回も足を運んでくれるような限りなく友達に近い人口「関係人口」を増やしていくこと、自分が関わることで得られるワクワク感の元「未来を作っている手応え」を持つこと、そして水辺作りをやらされているのではなく「『自分ごと』として楽しい」の3点を挙げた。

月刊ソトコト編集長の指出一正氏
プレゼンテーションでは水辺に住む若者や自らの子育てについて紹介した

Google ストリートビューの「川」版も登場

 ミズベリング ジャパンでは専門家や有識者のプレゼンテーションの途中、Googleストリートビュー上における新サービス「RIVER VIEW」を紹介。これはミズベリング・プロジェクト事務局がGoogle ストリートビュー トレッカーパートナーズプログラムに参加して、隅田川や神田川、東京湾などで撮影したものだ。

 この「RIVER VIEW」は3ルートあるが、ルートは以下のとおり。

1.羽田空港〜海老取川〜京浜運河〜天王洲運河〜レインボーブリッジ〜浜離宮〜隅田川〜神田川
2.羽田空港〜東京ゲート・ブリッジ〜オリンピック会場〜(海の森水上競技場:ボートカヌー会場)〜新豊洲市場〜豊洲運河〜隅田川〜神田川
3.神田川〜隅田川〜日本橋川

 サービスは3月上旬より順次、Google Mapsのストリートビュー機能上に公開される。

中央が「RIVER VIEW」を担当したミズベリング・プロジェクト事務局 ディレクターの有澤卓也氏
実際に「RIVER VIEW」を開くと会場からどよめきが起こった
フォーラムでは、音楽家のトベタ・バジュン氏プロデュースの音楽も流れた

有識者3人による水辺活用クロストーク

 プレゼンテーションに続いて行なわれたのは有識者3人によるクロストーク。出演者は、東京大学 公共政策大学院特任教授の辻田昌弘氏、公共R不動産・OPEN A代表の馬場正尊氏、国土交通省 水管理・国土保全局長の金尾健司氏だ。今回のトークはシークレットキーワード式で、あらかじめテーマは用意されておらず、総合司会進行役の山名氏が提示するキーワードに沿って話をするというもの。

クロストークの様子
提示されたキーワードに沿ってトークを進めていく

 最初のキーワードは「ミズベリングで何が変わった?」では、辻田氏は「行政と民間の関係、それから行政といっても国と自治体の関係はすごく大きく変わりつつあるような気がします」と発言。

 同氏は国と住民の関係についてのピラミッド図を出し、「今までは多分、国が三角形の頂点になっていろんなものを決めて予算とかリソースを配分し、一番下に住民がいる状態。多分、モノを作る時代だとこれが一番効率がいいです。しかし時代が変わると、市民が一番上になり、自治体が市民と共闘・連携して一緒にやっていき、国がこれを下から支える仕組みになります。今、そういう時代の大きな転換点が来ているのでは? すべての行政がいきなりこうなるとは思いませんが、ミズベリングでは行政の仕事の仕方について大きな転換点に来ていますね」と説明した。

 この辻田氏の発言を受けて、馬場氏は「今まで物事、特に都市なんかは国など計画する人が計画し、作る人が作り、そしてそれを誰かが使うという感じだったのですが、逆に今後の時代は使う人がまず妄想し、どうやって作ればそれが何とかなるかを考え、それを後から計画して、プログラム化していく、と逆になる気がします」とコメントし、さらに「逆になるだけではなく、プロジェクトの当事者化でそれぞれの役割が曖昧になってくるのでは?」と新時代の官民のあり方について示唆した。

辻田氏が出した、新時代の行政と民間の在り方のピラミッド
東京大学 公共政策大学院特任教授の辻田昌弘氏
公共R不動産・OPEN A代表の馬場正尊氏
国土交通省 水管理・国土保全局長の金尾健司氏

「水辺で儲かる?」というテーマでは、金尾氏は「3→10」と書かれたテロップを出して説明。「3から10なんです。実はちょっと専門的な話で、水辺を活用する時に(河川)敷地の占用については占用許可準則というのがあり、これが元々は公的にしか使えなかったのですが、規制緩和で民間事業者にも認めることになりました。公的主体は10年の占用機関が認められていたのですが、民間は3年なんです。民間の方が『3年ではビジネスが成り立たないよ』という声がありましたが、今回、10年にするための意見募集を開始しました」と話した。

 この金尾氏の発言について、馬場氏は「この話は本当に民間企業にとって重要で、3年だと建物の投資を回収するのが非常に厳しいのですが、10年なら回収できます。これは素晴らしい」とコメント。金尾氏は「我々としてはいろんな水辺の価値を皆さんに見出していただいて、それを賢く使って活用していただくってことは本来の姿だな、と思っています」と語った。

「公共空間活用とオリンピック」というテーマで、金尾氏は「3→10」に続き、「89/118」と数字が記載されたテロップを出した。これは歌川広重が描いた「名所江戸百景」の絵画118作品のうち、水辺を描いたのが89枚という意味だという。同氏は「江戸の名所の3/4は水辺に関係しているので、今度、東京でオリンピックをやるにあたって、やはり東京の水辺ってことで海外から来る方々にぜひ、アピールしていきたい」と話した。

 官の金尾氏に対して民の立場からオリンピックについて語ったのが馬場氏。「オリンピックには世界中の人が来るから、公共空間を新しく使う実験をするのに、格好のチャンスだと思うんですね。ロンドンの時に『グレートロンドン』というプロジェクトがあって、ロンドンオリンピックのオフィシャルパートナーにではない市民団体や民間団体が企業スポンサーを避けて、公共空間で自由なアクティビティを仕掛けていったんです。総額200億円のプロジェクトを組んだのですが、『グレートロンドン』によってロンドンはパブリック空間の活用の仕方がパッと広がりました」と発言。

 さらに馬場氏は「僕、『PPPエージェント』って新しい職能が生まれないかと思いまして」と話した。「PPP」とは「プライベート・パブリック・パートナーシップ」の頭文字だという。

「民間企業と行政の間で翻訳をして調整をする役割が必要で、エージェント機能があったら、民間も行政もグッと楽になって物事が進むんじゃないかと思います」と馬場氏が話すと、辻田氏は「先ほどのように関係が変わってくると、結局、間に入る人は絶対必要ですね。民だと当たり前と思っていることが、官の理屈では通らない。官と民の間のコーディネーターは必要ですよね。ミズベリングはまさにそうだよね」とミズベリング・プロジェクトの意義について語った。

河川敷地の民間占用期間が3年から10年に延長された
歌川広重の「名所江戸百景」。全118作品のうち、水辺が描かれているのが89枚を

 最後のテーマ「地方創生と水辺」において、辻田氏は「地方創生も今は基本的にお金がないので、あんまり10年、20年前みたいに工場を誘致するだとか、リサーチパークを建設するだとか、リゾート開発をするだとかはなかなかできないわけです。手持ちの資源で何とかするしかないというと、川って大事なポイントかなって思います。一方、川ってどこにでもあるし、渓谷でない普通に水が流れているだけっていうところは、どう魅力付けしていくか難しいのですが」と川のメリットと活用の難しさについて言及。

 辻田氏の発言に対し、馬場氏は「民間と行政がパートナーシップを組んで、その時に大事になってくるのが、魅力ある空間を再発見することができるメディアの目です。その三角形を作れた自治体が地方創生の勝者だと思います」と語り、クロストークは幕を閉じた。

エンディングに登場した国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 河川環境保全調整官の堂薗俊多氏

 エンディングでは司会進行役の山名氏と田中氏、そして国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 河川環境保全調整官の堂薗俊多氏が登場。堂薗氏は会場の参加者に、ミズベリングの良さを四大文明になぞらえた「ミズベリング的四大文明」のキャッチフレーズを贈った。

 その4つとは、天気のいい日に水辺にイスを出す「イスダス(インダス)文明」、メタボが減って健康度が上がる「メタボガレア(メタポタミア)文明」、若々しくなる「エイジプット(エジプト)文明」、公共空間を使った新しいビジネスが生まれる「広画(黄河)文明」だ。

 今回の「ミズベリングジャパン」は最初からフランクな雰囲気で進んだが、ラストもユーモアで締めくくられ、終始、明るい雰囲気のフォーラムとして幕を閉じた。

四大文明になぞらえて水辺のメリットを紹介した「ミズベリング的四大文明」

(丸子かおり)