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ANAのボーイング787-9国際線仕様機のエンタメシステムやシートを紹介

ライブTV、雑誌やコミックなどの電子書籍を楽しめる

2015年5月5日 運航開始

ボーイング787-9のコックピット。副操縦士側のみHUDが降りた状態

 ANA(全日本空輸)は、4月28日にボーイング787-9の国際線仕様機を受領し、日本の航空会社として初めて同型機を国際線に投入することを発表した。すでに5月5日より、NH217(羽田12時30分発~ミュンヘン17時20分着)、NH218(ミュンヘン21時25分発~羽田15時50分+翌日着)で、隔日運航が行なわれている。この国際線仕様機を地上駐機中に見学できたので、その機内を紹介する。

 現在運航されているボーイング787-9型機の国際線仕様機は、登録記号「JA836A」の1機のみ。ニュース記事(http://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/20150428_700064.html)でもお伝えしている通り、ビジネスクラス48席、プレミアムエコノミー21席、エコノミークラス146席の3クラス/215席を備える。ボーイング787-8の国際線仕様機はビジネス46席/プレミアムエコノミー21席/エコノミー102席の計169席なので、胴体のストレッチで45席増加したことになる。

まだ1機しかいないボーイング787-9の国際線仕様機「JA836A」
上部に機内インターネットサービス用のアンテナが付いている
エンジンはロールスロイスの「Trent 1000-K2」

ライブTV放送や電子書籍を楽しめる機内エンターテインメントシステム

 ボーイング787-9型機の国際線仕様では、リアルタイムで地上と同じライブ放送を行なう「SKY LIVE TV」サービスや、雑誌やコミックなどの電子書籍をシートモニターで楽しめるエンターテインメントシステムが導入された。特に、ライブ放送を視聴できるのは日本の航空会社としては初めてのことになる。

 なお、搭乗クラスのシートによる画面の大きさに違いはあるが、機内エンターテインメントシステムの機能そのものは、搭乗クラスによる差はない。

機内エンターテインメントシステムのメインメニュー

 「SKY LIVE TV」では、ワールドワイドのニュース放送「CNN International」、スポーツイベントのライブ放送「Sport 24」、NHKの海外向け放送「NHK World Premium」の3局を視聴できる。

 今回は地上駐機中の見学だったため、空の上での状況についてはコメントできないが、地上では映像が乱れることもなく快適に視聴できた。特に海外に一定期間滞在すると日本の情勢に疎くなりがちということもあり、日本人にとってはNHK World Premiumの放送を帰国時の機内で視聴できることはメリットになりそうだ。

 ただ、全画面表示した際に、CNNとSport 24については画面いっぱいに表示されたが、NHK World Premiumのみは黒い余白、いわゆる額縁表示になってしまっていた。もっとも、ビジネスクラスでは17インチと大型のディスプレイを搭載するほか、プレミアムエコノミーとエコノミーは人間とシートモニターの距離が近いので、一回り小さく表示されても実用上の問題があるほどではない。

「CNN International」「Sport 24」「NHK World Premium」の3番組をライブで視聴できる
CNN(写真左)は画面いっぱいに表示されるが、NHK World Premium(写真右)は額縁表示となった

 電子書籍サービスは雑誌、コミック、実用書などを閲覧できる。ちなみに、僚誌Internet Watchの記事にある通り、この提供元はBookLiveであることが発表されている(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150508_700955.html)。

 操作は簡単で、タッチ操作の画面は画面中央を押すとメニュー表示、画面の左右端近くをタッチするとページ送り/戻し、上下左右付近は拡大表示時の操作にも使われる。また、タブレットやスマホの電子書籍アプリ同様、画面をなぞる(スワイプ)することでもページ送り/戻しができる。

 各操作はシートコントローラでも行なえるようになっており、シートの背もたれに体を預けて見るような場合は、コントローラを使って手元で操作する方がラクだった。

電子書籍(e-books)のメニュー
雑誌は「週刊パーゴルフ」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」といったビジネスパーソン向けから、「ソトコト」「Hanako」といったカジュアルなものまで8冊が用意される
その他の雑誌は韓流スターを取り上げた「TOP STAR NEWS」のみ
実用書は「本当に頭がいい子の育て方」「新 自分を磨く方法」など自己啓発書を中心に9冊
マンガは「進撃の巨人」「名探偵コナン」「ONE PIECE カラー版」「テニスの王子様」「宇宙兄弟 オールカラー版」「アオイホノオ」「風の大地」「海月姫」「俺物語!!」「女王の花」「幽霊塔」「風光る」の12シリーズ
日本人向けの観光本はドイツと中国の「地球の歩き方」
その他の観光本は訪日外国人向けの「GOOD LUCK TRIP」
ANA機内誌の「翼の王国」もシートモニターで楽しめる
タッチでの操作方法。中央でメニュー表示を行なえるほかは、四辺付近をタッチして操作する
正しい操作には本が開く方向が重要なため、書籍閲覧前にどちらに開く本かメッセージが表示される
メニューは拡大縮小や全画面表示など。ブックマーク(しおり)機能も備える
翼の王国を読んでいるところ。ページめくりはリアルなアニメーションで表現される
シートコントローラでも各種操作が可能。これはビジネスクラスのコントローラだが、プレミアムエコノミーやエコノミークラスも同じ

 このほか、映画や音楽、ショッピングなど従来の機内エンターテインメントシステムでも一般的だったコンテンツは一通り備えている。

 ちょっとユニークなのは、「シートtoシートメッセージ」で、その名の通り、指定した席番号の人へメッセージを送る機能だ。会社の上司や同僚など、飛行機の中でまで隣にいると気が休まらないが、連絡は取りたいというケースはあるだろう。そういった場合でも、お互いの席番号さえ把握しておけば、席を移動することなくコミュニケーションできる。

 ちなみに、席番号さえ入れれば、誰にでも送信できるが、受信側はメッセージを開く前に拒否することもできる。赤の他人からのメッセージを無理矢理読まされるということはない。

もちろん映画や音楽、ゲームなど従来的なコンテンツも用意されている
ショッピングもシートモニターから行なえる
「シートtoシートメッセージ」機能
「受信トレイ」「メッセージ作成」といったボタンが並ぶメールソフトに似た画面
メッセージの作成画面。宛先とCCを入れて、タイトル、内容を入れる。ここもメールと同様だ
文字入力は画面上に表示されるバーチャルキーボードか、シートコントローラ裏側のキーボードを利用する
メッセージが届くと、どの席から届いたメッセージかをポップアップ表示する。赤の他人からのメッセージはここで拒否ができる
内容は空だが、記者が座っていた4Gの席に、2K席から届いたメッセージを表示。「返信」「全員に返信」「転送」などのボタンが並ぶ
届いたメッセージは受信トレイに一覧表示される
こちらはUSBメディアプレーヤーのデータを機内エンタメを通して再生できる機能

 飛行機旅に欠かせない(?)情報の1つが、機内で放映される地図だ。以前は上空から見るだけのものだったが、昨今では3D表示されるものもあるなど、ビジュアル面での進化がめざましい。

 ANAのボーイング787-9国際線仕様機に搭載された「ANA SKY MAP」は、ルートや飛行機、地図を立体的に表示できるだけでなく、表示方法なども細かく選択できる。例えば「オーバーヘッド」を選択すると飛行機を上から見たところ、「フライトプレビュー」を開くと立体的にルートを示して表示される。さらに面白いのが機体の姿勢も表示できる点で、同時に表示されるアナログ表示の計器も飛行機に乗っている気分を高めてくれる。

 また、おそらくGoogle Earthのデータを利用していると思われるが、好きな場所を好きな拡大率で地図表示できるほか、表示したい土地を検索することもできるなど、電子地図としてもある程度は利用できる。目的地の地図を確認しておきたいときなどに便利だろう。

飛行機がいまどこにいるかなどを把握できるANA SKY MAP
8種類のビューから任意に表示方法を変えられる
飛行機の機体を中心に表示を調整する機能
機体の姿勢や向き、高度などをアナログ計器で表示する機能
地図の機能。地球儀を8方向に回すことができる
羽田空港を最大の拡大率で表示したところ
主要な地名が用意されたリストから好きな場所を表示できる
地図表示位置の移動など、操作はスワイプでも可能

ボーイング787型機初の機内インターネットサービス「ANA SKY WiFi」

 ANAが今回吐乳投入したボーイング787-9には、機内インターネットサービスである「ANA SKY WiFi」が搭載されている。これはボーイング787型機では初の導入となる。しかも、ANAは本機より料金システムの見直しを行ない「ANA WiFi Service 2」として提供を行なう。その特徴は、料金が時間制になったことだ。

 従来のボーイング777-300ERやボーイング767-300ERに搭載されたANA SKY WiFiは、OnAirのシステムを利用して、5MBプランが6ドル、10MBプランが12ドル、20MBプランが24ドルという容量制の料金だった。使い残しの容量を30日以内の次回搭乗時に流用できるというメリットはあるが、何度も飛行機に乗る人でないと恩恵がなく、思う存分使いたい場合に最大20MBの容量は少なめだ。

 今回のANA WiFi Service 2は、パナソニック アビオニクスのシステムを用いて、30分(6.95米ドル)、3時間(16.95米ドル)、24時間=フルフライト(21.95米ドル)の3プランを提供。今後、ボーイング787-8を含む同型機への採用を拡充していくとしている。

 なお、機内インターネットシステムは、一定高度に達してからでないと通信衛星とリンクしないため、インターネットを利用できない。前述の通り、今回は地上駐機中の見学だったので、システムのポータルサイトのみを閲覧できた。

「ANA WiFi Service 2」対応機であることを示すマークが機内に貼られていた
機内に用意されたアクセスポイントへ接続
Webブラウザを立ち上げて、どこかのサイトを見ようとするとポータル画面が表示される
スマートフォンに表示したポータルサイト
アカウントに必要なのは、氏名、メールアドレス、パスワード、パスワードを忘れた場合のための秘密の質問
機内にはサービスガイドも用意されており接続方法を事細かく説明している

エコノミークラスのシート

エコノミークラス

 ANAが導入したボーイング787-9型機のエコノミークラスは146席を備える。3-3-3の9アブレスト使用で、シートピッチは35inch(約86cm)と余裕があり、身長約177cmと小柄とはいえない記者も余裕で足を置ける。

 全座席に9インチのタッチ操作対応シートモニターと、ユニバーサル電源(110V/60Hz)、USBポートを装備。フットレストも備えている。

 参考までに、エコノミークラスの最前列は20番列、非常口座席は23番列で、最後尾の36番列はA席側が2席の2-3-3の8アブレストとなっている。

エコノミークラスを23番列付近から見た様子
エコノミークラス最後列から見た様子
エコノミークラスのシート
ヘッドレストは高さ調整や左右を曲げることが可能
膝の前にかなりゆとりがあり、エコノミーにしては広々としている。最前列や非常口座席を除く席にフットレストを装備
オーバーヘッドコンパートメント
タッチパネル式の9インチモニターを装備
モニターの下部にUSBポートや音声端子を装備
コントローラ
シートテーブルは2つ折りタイプで、前後にもスライドする
2つ折りテーブルの手前側部分はやや跳ね上がっている。狙ったものかは分からないが、太もも付近の隙間大きくなったのは好印象
シート電源は足元に。1席につき1個ずつ備える
12.5インチのノートPCを置いた様子
最前列座席および非常口座席のテーブルはアームレストから取り出すタイプで、形状もほかの席とは大きく異なる

プレミアムエコノミーのシート

プレミアムエコノミー

 プレミアムエコノミーは21席で、シートピッチは38インチ(約97cm)と広々としている。15番~17番列がプレミアムエコノミーに設定されており、2-3-2の7アブレスト。足元が広いだけでなく、レッグレストも備えるのが特徴で、ライフラットシートに近い感覚で体を休めることができそうだ。

 シートモニターは10.6インチで、最前列は12.1インチのモニターとなる。ノイズキャンセリングヘッドフォンやスリッパも提供。テーブルはアームレストから取り出すタイプで、エコノミー最前列席のテーブルと比較しても一回り大きい。

プレミアムエコノミーのシート。シートピッチは約97cmと広々としているうえ、フットレストやレッグレストも備える
リクライニングとレッグレストは手動操作
実際に座ってみても広々としている。フットレストも装備
全座席個別に位置を調整できる読書灯を備える
シートモニターは10.1インチで、左下にUSBポートを装備する
スリッパとノイズキャンセリングヘッドフォンも用意
シート電源は足元近くに装備する
テーブルはアームレストから取り出す。2つ折りタイプでサイズもかなり大きめ。前後にもスライドする

ビジネスクラスのシート

ビジネスクラス

 ビジネスクラスは全席通路側スタイルの「スタッガードシート」を採用し、48席を用意。フルフラットシートとなっているほか、フルフラット時の快適性を高めるためにベッドパッドも提供。シートモニターは17インチと大型で、新しくなった機内エンターテインメントシステムを、より堪能できる装備となっている。テーブルは新仕様で、サイドボードの下からスライドして広げる仕組みとなった。

ビジネスクラスのシートは「スタッガードシート」と呼ばれる、すべての席から通路へ直接出られるタイプ
ビジネスクラス後方からの長め
就寝中やPCでの作業中など、CA(客室乗務員)に声をかけられたくない人のために「DO NOT DISTURB」ボタンを用意している
テーブルはサイドボードの下部に収納されており、端を引っ張ることで広げられる。シート幅いっぱいに広がる大型のテーブルだ
ヘッドレスト
リクライニングやフルフラット化、前後へのスライドは電動で行なえる
正面にフットレストスペース
ビジネスクラスのアメニティ
大型の毛布(上)と、ベッドパッド(下)が提供される
アメニティキットは「ロクシタン」ブランド
シートモニターは17インチ
サイドボード部分に冊子収納スペースを装備
同じくサイドボードにコントローラやユニバーサル電源、USBポートを備える

そのほか

ボーイング787型機の特徴といえる電気式のウィンドウシェードは健在。従来機よりも暗さが増している印象を受ける
お手洗いはビジネスクラスからエコノミークラスまで、すべてウォシュレット付き。7カ所中3カ所にはおむつ交換台も備える
ギャレー

編集部:多和田新也