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西鉄、2019年春運行開始の新型観光列車について説明

事業戦略を説明、福岡空港のコンセッションに応募

2017年5月17日 開催

西日本鉄道株式会社 代表取締役社長 倉富純男氏(右)と事業創造本部 副本部長 藤田浩展氏(左)

 西鉄(西日本鉄道)は5月17日、都内で報道向けに2017年度の事業戦略と、2019年春に運行開始予定の新型観光列車について説明会を行なった。新型観光列車については、地元の人も気軽に利用できる「利用しやすい価格」とし、詳細は今後約2年かけて準備をするなかで決めていくという。

新型観光列車は利用しやすい料金で2019年春に運行開始予定

西日本鉄道株式会社 事業創造本部 副本部長 藤田浩展氏

 2019年春運行開始予定の新型観光列車は、車内で沿線の食材による料理が楽しめるというもの。今後2年ほどかけて準備をしていくが、2017年度(平成29年度)は車両設計、車両イメージ、車両ネーミングを決め、2018年度(平成30年度)は車両改造を行ない、料理、運行ダイヤ、料金を決めるというスケジュールとなる。

今後予定しているスケジュール

 新型観光列車については、西鉄 事業創造本部 副本部長 藤田浩展氏が「沿線地域の持つ魅力発信によるさらなる活性化を目指し、当社初となる本格的な観光列車を導入する」と西鉄のさまざまな取り組みをつないでいくものと説明した。

 さらに藤田氏は「沿線の地域資源を発掘、発信することで、沿線地域の活性化と価値向上につなげていきたい。具体的には観光列車の利用者が沿線地域で消費行動をすること。地域の店舗や企業などの販売拡大の支援。沿線地域の情報発信による観光客の増加。そして、長期的には、沿線イメージ向上による居住人口の増加」と狙いを話した。

 新型観光列車のターゲットは「地元の方(福岡・九州在住の方)」「来福観光客」としており、属性としては外向的な性格で時代の変化に敏感で自分流に楽しみを広げる「クリエイト型」、堅実で社交的、ほどよい新しさを好む「安定型」をメインターゲットとするという。

現在の取り組みをつなぐ役目もある新型観光列車
沿線発信
全体の方針は、沿線地域資源と観光を結びつける
ターゲット
コンセプト
車両の概要
現時点で発表されたことは概要程度で、今後2年かけて決めていくという
地域連携の様子
ふだん西鉄を利用する人に向けた観光列車であることもアピール

 運行は天神大牟田線で行ない、食事を楽しみながら、沿線風景をゆっくり楽しめるというダイヤを検討する。列車の定員は50名前後で、料金は「ご利用いただきやすい価格」としており、「ちょっといいレストランで食事をするくらいの値段」というイメージが示された。JR九州が運行するクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」のような高額なものではなく、沿線地域の人の利用を見込んでおり、結果的に国内観光客、インバウンドも広がっていくようなことを期待しているとした。

車両は3両編成で、通勤型車両をベースに「えっ」と思う改造を施す

 車両については、既存車両を改造した3両編成とし、デザインはランドスケーププロダクツの中原慎一郎氏が手がける予定。改造元の車両は未定としながらも、藤田氏は「少なくとも20年間は走れる車両を使いたい」とし、比較的新しい車両を用いるという。西鉄 代表取締役社長の倉富純男氏は、「通勤型車両を改造することになるが、中身はえっと思うような改造」と説明。現在、観光列車で利用している8000形電車をベースとすることは使用年数から「あり得ない」と否定した。

 さらに新型観光列車の運行に合わせ、地域資源を使った商品開発、まちづくり、アンテナショップ、駅での土産物店の整備などに取り組み、相乗効果を狙うとしている。

 なお、現在8000形電車で運行している観光列車、「旅人(たびと)」「水都(すいと)」については現在8000形の老朽化により2017年度にリニューアルする。倉富氏は今回発表した新型観光列車と並列して考えていくとした。

2017年度は多方面に注力、福岡空港の運営権取得を目指す

西日本鉄道株式会社 代表取締役社長 倉富純男氏

 同時に行なわれた事業戦略説明では、西鉄は鉄道やバス事業だけでなく、ホテル、レジャー、不動産や流通、物流、農業など幅広く事業を行なっていることがあらためて説明された。収益比率の面でもセグメント別ではかろうじて運輸業がトップとなっているが、全体では2割ほどで、流通業や物流業の収益が大きな比率を占めている。

 2017年の事業で、福岡空港のコンセッション方式による民営化に応募することについては、代表取締役社長の倉富純男氏が「新たな収益源の確保では、福岡空港の運営権の獲得を目指している」と明言。「現在、入札に向けた準備を進めているが、8月には第一次審査、来年5月ごろには優先交渉権社が決定する」と説明した。

 西鉄が空港運営に参入する意義は「しっかりと質の高いサービスの向上ができる空港にしたい。地域の人のノウハウを集約するほうが、いい空港になると思っており、その一躍を私どもが担うべき」と説明した。

 また、博多港のクルーズ寄港回数が増えているため、ウォーターフロント地区再整備を行ない、クルーズ船受入環境の充実やMICE機能などの強化を行なう。

 そのほかの事業では、「天神ビッグバン」として天神エリアの再開発に本格着手、より付加価値の高いビルへと建て替えを促していくほか、沿線の開発、ホテル事業などではアジアビジネスの拡大、九州域外にホテル、生活雑貨販売、住宅事業を展開する。

乗合バス事業は全国最大規模だとしている
西鉄天神高速バスターミナルは東京・新宿のバスタ新宿と同規模と説明
鉄道は3路線
ホテル事業は国内で4ブランド20ホテル
ホテルは海外展開
レジャー事業も手がける
農業にも進出
ICカードの「nimoca」は九州だけでなく、北海道・函館にも進出
グループ全体の営業収益。バスや鉄道の運輸業は全体の22%
福岡のポテンシャル。ウォーターフロント地区の再整備も行なう
空港の滑走路増設など整備も進んでいる
天神の機能更新への本格着手
地域マーケットビジネスの深化
持続可能な公共交通モデルの構築や、観光・インバウンド需要の取り込み
新たな収益源の確保として、福岡空港運営に参画。ICT新技術の活用も行なう
アジアビジネスの拡大
九州・福岡以外にも国内展開を行なう
2017年度の設備投資計画