ニュース

仙台国際空港、民営化を記念する式典とレセプションを7月1日開催

空港会社社長、国土交通大臣、宮城県知事らが出席

2016年7月1日 民営化/式典開催

民営化を記念した式典が開催された

 7月1日から国管理空港初の民営化を実現し、再スタートを切った仙台国際空港。民間企業による運営初日となった同日に、空港内では運営開始記念式典が、仙台空港近くのホテルでは多くの関係者を集め、運営開始記念レセプションが行なわれた。ここでは、それら式典・レセプションの登壇者による発言の要旨をお届けする。

地域の人々と“一緒に汗をかいて”事業に取り組む

 仙台国際空港内で行なわれた運営開始記念式典では、仙台国際空港 代表取締役社長の岩井卓也氏、国土交通大臣の石井啓一氏、宮城県知事の村井嘉浩氏の3名が登壇した。

仙台国際空港株式会社 代表取締役社長 岩井卓也氏

 仙台国際空港 代表取締役社長 岩井卓也氏の発言。「仙台空港は1957年の開港以来、3000mへの滑走路延長、ターミナルビルの新設、空港鉄道の開通など、先人の努力が積み重ねられてきた空港でございます。なかでも、5年前に東日本大震災があり、大勢の方がこのビルに避難され、また震災後、迅速な復旧が行なわれたことは皆さんの心に残っているのではないかと思います。

 本日、国、県、地元の皆さまの多大なご協力を得まして、国管理空港から初の民間会社が経営する空港となります。私ども仙台国際空港株式会社が、滑走路の管理運営、ターミナルビル運営、駐車場運営などを一体的に行なって参ります。

 私どもは安全・保安を第一に考えます。また、地域との共生もきちんと引き継いで参ります。そのうえで東急前田豊通通商(グループ)のノウハウを活かして、旅客数、貨物量を増やすための施策を打ち、また東北の皆さまと一緒に汗をかいて、交流人口の増加と地域経済の活性化を実現することが、この事業の目的であると考えています」と挨拶した。

国土交通省大臣 石井啓一氏

 国土交通省大臣 石井啓一氏の発言。「空港運営の民間委託は、滑走路とターミナルビルを民間企業が一体運営することにより、民間のノウハウを活かして、空港や地域の活性化につなげる新たな取り組みです。そしてこの仙台空港の運営の民間委託は、国が管理する空港の第1号として、全国に先がけて行なわれる大変重要なプロジェクトです。空港運営の民間委託を通じて、仙台空港が多くの方々に利用され、そして愛される空港となることを期待しております。

 さらには仙台空港を拠点として、経済効果が広く東北全域に波及し、東北地方の活性化や東日本大震災からの復興の加速にもつながることを期待しております。

 仙台空港の新たな門出に際しましては、運営に当たる仙台国際空港株式会社の皆さまはもちろんのこと、地域の皆さまにおかれましても、仙台空港を引き続きしっかりとお支えをいただき、東北における国内外の交流の起点として大きく育ててくださいますよう重ねてお願いを申し上げます。国土交通省といたしましても引き続き最大限の協力をして参る所存であります」と述べた。

宮城県知事 村井嘉浩氏

 宮城県知事 村井嘉浩氏の発言。「宮城県では仙台空港を核として、地域経済の活性化を図り、いち早く創造的復興を成し遂げたいという思いから、全国に先がけて仙台空港の民営化を推進して参りました。

 今年度は空港民営化元年であり、政府も東北観光復興元年を宣言し、東北への誘客に向けて大規模なプロモーションを展開することとしており、交流人口の飛躍的な増加に向けて、東北が大空に飛び立つ、まさに“TAKE OFF”の年となるわけであります。

 県ではこうした絶好のチャンスを逃がさず、政府の取り組みや東北各県の自治体や経済界などと連携し、仙台空港を拠点に国内外から積極的に観光客を呼び込み、そのお客さまに東北各地を周遊していただくことで、東北全体の交流人口を大幅に増やしたいと考えております。

 仙台空港が宮城東北の皆さまにとって身近な空港として愛され、東北を訪れる皆さまに一番に選ばれる魅力ある空港へと発展するよう、仙台国際空港株式会社と地域の皆さまの力を結集して、大切に育てて参りたいと思います」と語った。

固い握手を交わした岩井社長(左)と村井知事(右)

 式典後の囲み取材での発言についても紹介する。仙台国際空港の岩井氏の発言。「ようやくこの日が来たなと思っております。皆さまの期待に応えるためにも、一生懸命安全を守り、一生懸命営業をして、地域に寄与する施設にしていきたいと思っています」と述べた。

 民営化によってなにが変わるのか、なにを変えたいのかという質問に対しては、「まず極めて実際的に、かつ合理的に業務を動かしていきたいと思っています。もちろん国のやり方を勉強したあとでの話ですけれども、もっと合理的に、効率的にできる余地があるのではないかと思っていますので、それをやっていきたい。もう1つは、クリエイティブに仕事をする、地域の皆さまと深い連携をする、そういった会社を目指したい」と答えた。

 宮城県知事の村井氏の発言。「震災後、この空港の民営化を地域の活性化、創造的復興の要にしたいという思いで、法律の改正までお願いいたしました。ここに至るまで非常に山あり谷あり、苦労の連続でしたけれども、やっとこの日を迎えることができました。

 今後の支援については、県職員を1人、仙台国際空港株式会社に派遣しております。緊密に連携を取り合いまして、県が協力できることはなんでもしたいと思っています。元々民営化の最大の目的は、県が航空機などを誘致するのに税金をどんどん投入するといったようなことはやめて、民間の活力で空港を元気にして、たくさんの飛行機を引っ張ってくるというものでした。税金をたくさん使っての支援ということではなく、規制緩和などの支援を主にやっていきたいと思っています。規制緩和についてはいま、岩井社長と協力し合いながら政府に要望しています。1つ1つ規制を外すことによってさらに投資しやすい環境を整えていければと思っています」と述べた。

 鉄道、バス、タクシー、レンタカーなど二次交通の充実についての質問には、「鉄道につきましてはダイヤを柔軟にしていただけるようにJRと打ち合わせをしています。バスにつきましては岩井社長のところでいま、バス会社と具体的な打合せをされていまして、ここに来られたお客さまをバスで東北各地に誘えるようにしたいと思っています。タクシー・レンタカーにつきましては、こちらになるべくタクシーなどの台数が確保されるよう、そういうお手伝いもしていかなければならないと思っています」と答えた。

旅客増に対応するホテル建設を“陳情”?

 式典後、仙台空港近くのホテルに会場を移して行なわれた運営開始記念レセプションでは、東急電鉄(東京急行電鉄)代表取締役社長の野本氏、国土交通省副大臣の土井氏、宮城県知事の村井氏らが挨拶した。その内容は以下のとおり。

レセプションの会場となった仙台国際ホテル
東京急行電鉄株式会社 代表取締役社長 野本弘文氏

 東急電鉄の野本弘文氏の発言。「私たちコンソーシアム(東急前田豊田通商グループ)は、仙台空港が日本の玄関口の1つとして、そして世界中の方に選ばれる空港として、さらには空港貨物の拠点としたいと考えています。訪日外国人の数、力強い観光政策のおかげで、すでに2000万人を超え、2020年のオリンピックには4000万人に伸ばすべく意欲的に取り組んでいます。ただ、東北地方を訪れる外国の方は、いまは5%にも満たないのが現状であります。

 今年はまさに東北観光復興元年。私どもとしても、東北の魅力を世界中に発信し、仙台国際空港が東北のゲートウェイとして海外からも多くのお客さまにお越しいただきたいと思っています。東北には日本人をも引きつける伝統文化や四季の美しい景色が数多くあります。これらのコンテンツを組み合わせることで、国内はもとより海外からもより多くのお客さまに訪れていただき、東北の素晴らしさを知っていただきたい、東北地方の新鮮な食材を世界に届けたい、とも思っています。

 海外での豊富な経験をもつ前田建設さん、海外物流に非常に強い豊田通商さんとも力を合わせ、東北の魅力を発信し、物流への取り組みを進めることで、東北経済の活性化にもお役に立ちたいとも思っております。空港と新幹線、高速バスなどを組み合わせることで、東北のゴールデンルートがいくつもできてくるものと期待しております。東北の魅力を組み合わせることで新たな付加価値が生まれ、多くのお客さまにその素晴らしさ、楽しさを体感していただけるよう、皆さまと一緒に頑張りたいと思います」と挨拶した。

国土交通省 副大臣 土井亨氏

 国土交通省 副大臣 土井亨氏の発言。「思い起こせば5年前、仙台空港は大変な被害を受けました。当時はターミナルを建て替えなければいけないのではないか、という大きな被害でした。しかし宮城県をはじめ多くの皆さま方のお力添えでいち早く復旧し、そのときから村井知事をはじめ東北の経済界の皆さま方が、仙台空港を東北のゲートウェイ、東北のハブ空港にしなければいけないという形で要望をいただきました。

 時間はかかりましたが、法律の改善を行ない、第1号として本日仙台国際空港として新たに生まれ変わり、民間の皆さんにお世話になりながら、仙台含めて東北の新たなる発展のために頑張っていただく、そういうスタートを切ることができました。

 課題はまだございます。運航時間を延長してほしい、免税店を充実してほしい、そういう要望をいただいています。仙台国際空港株式会社さま、隣接の市町村の皆さま、地域の皆さまのご理解をいただきながら、東北の表玄関、東北のゲートウェイとして機能するような仙台国際空港にするために、私たちもしっかりとあと押しし、ともに歩んで参りたい。決して宮城県だけのためではなくて、東北の新たな発展のスタートのために、東北になくてはならない国際空港として進んでいただきたい」と語った。

宮城県知事 村井嘉浩氏

 宮城県知事 村井嘉浩氏の発言。「東日本大震災で被害を受けた当時の仙台空港の現場を見て、このまま空港がなくなってしまうかもしれないという危機感がスタートでした。単にもとに戻しても(仙台や東北が)元気にならないだろう、いい方法はないかと考えていたときに、民営化についてアドバイスをいただきました。法律の改正がございましたので、大変高いハードルでした。

 これを機にどんどんお客さまを呼び込みたいと思います。特に航空会社、LCCをどんどん入れていって、新たな顧客を開拓していきます。なにより規制緩和が重要で、民間が投資しやすい環境を作っていくのが我々の仕事。できない理由よりもできる方法をぜひ一緒に考えていただければと思います。

 ところで、お客さまが増えると当然泊まるところが足りなくなってきます。数年前まで(レセプション会場となった仙台国際ホテルの)近くに東急さんのホテルがありました。震災前に決定していたこととはいえ、震災直後にホテルを潰してしまったので、我々は大変迷惑をこうむっているのであります(笑)。空港のそばでけっこうでございますので、1日も早く建設していただくことを陳情申し上げます(笑)」と挨拶した。

仙台国際空港の発展を願い、多くの関係者が壇上で鏡開きを行なった
鏡開きには、東北楽天ゴールデンイーグルスの元監督で、現在楽天野球団の取締役副会長を務める星野仙一氏(右から2人目)、宮城県出身の映画監督である大友克洋氏(左から2人目)も参加した