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国管理空港で初の民営化、仙台国際空港が7月1日から新たなスタート
施設改修にも着手、2017年度末には新ピア棟完成へ
2016年7月2日 23:29
- 2016年7月1日 民営化
仙台国際空港は7月1日、国管理空港としては国内第1号となる民営化を果たし、その営業初日を迎えた。空港の運営は仙台国際空港株式会社が担い、東北を代表する国際空港として、国内線の充実はもとより、路線と空港施設の両面においてインバウンド需要の拡大に向けた施策や十分な受け入れ体制の構築を目指していくことになる。
「国・地域の大きな課題」の解決を背負わされた“小さな空港”の役割とは
当日開かれた記者会見で、仙台国際空港 代表取締役社長の岩井卓也氏は、民営という新たな体制で臨むにあたり、同空港が「小さい空港・会社(の通常負うべき役割)をはるかに超えた、国・地域の大きな課題に直結しているのではないか」と述べた。その大きな課題として「交流人口、観光、インバウンドにかかわる課題」「官から民へ、という民営化における課題」「被災地の復興という側面における課題」の3つを挙げ、「国全体の大きな、複数の政策課題のちょうど交差点のようなところにいるのかなと思っている」とし、これらに一生懸命取り組んでいくと約束した。
同社管理部長の金子次郎氏は、仙台空港が置かれている状況と将来像について解説。今後の航空需要予測としては、とりわけアジア圏において増える見込みであると述べ、また日本全体ですでに2015年度の時点で訪日外国人が2000万人に近づいているとしながらも、仙台においては「ようやく震災前年の水準に達したところ」であり、交流人口を増やすことがテーマになると語った。
そのなかで仙台空港は、福岡に次いで2番目に大動脈となる都市ターミナル駅に近い空港であること、東北6県すべてが「キャッチメントエリア(アクセス性の高いエリア)」であること、さらに金子氏自身「個人的な感覚」であると断りつつも、真冬でも「雪が積もらない(欠航率が低くなる)」立地にあることなど、さまざまな利点があるとする。こうした利点を活かし、機材の大型化、LCCを始めとする新規路線の拡充などを通じて、東北のハブ空港として存在感を高めるとともに、航空需要を増やす必要があると訴えた。
投資額は30年間で341億円。積極かつスピーディーな施設拡充を図る
今後の5年間は「集中改革期間として早期に黒字化を目指す」ことを前提に、同社は30年間の投資額として341億円を見込む。その内容の1つとして、空港設備への「適切な投資」を挙げた。
具体的には、現在のターミナルビルの西側方ピア棟(旅客搭乗施設)を新設する。120m程度のエプロンルーフと3本ほどのエプロンゲートからなるピア棟が完成することで、駐機場所を数機分増加させられるだけでなく、送迎バスや搭乗橋を利用しなくても雨に濡れずに飛行機までアクセス可能になる。送迎バスの運用コストや搭乗橋使用料を削減しつつ、空港としての機能の増強も図れるとしている。2017年度早々に着工し、2017年度末には完成させる予定だ。
空港ビル内の施設の充実も計画している。出発ロビー階では、国内線の保安検査場のゲートを現在の国際線のゲートと隣り合う位置に移動させ、国内線のゲートだった場所には土産物店などのショップを多数設置する。これによって保安検査場までの間に必ずショップの前を通過することになり、利便性が向上するとともに利用者を増やすことにつながるとしている。保安検査場通過後のエリアでも、買い物や飲食を楽しめる商業施設を現在の4倍程度の面積に拡大させる。いずれも着工は2017年度後半、完成は2018年度としている。
さらに、到着ロビー階には「“東北に来た”と感じさせる施設」を設ける。まず国内線到着出口の近くに、交通機関や観光スポットなどをガイドする総合案内所を設置。国際線到着出口からはやや距離があるが、「適切な案内を表示」するなどして総合案内所では訪日外国人向けに豊富な情報を提供する。
その隣には「アライバルカフェ」も新設。到着した人が次に目的地に向かう前に一息つける場所、あるいは出迎える人が落ち着ける場所として機能させることを目指す。これらは2016年10月以降に着工し、2016年度内に完成させたいとしている。なお、「地域の人々との共生」もテーマとして掲げていることから、空港施設の1つとしてジョギングする人が気軽に休憩に立ち寄れる「ランニングステーション」を設けることも検討している。
こうした投資額の回収・確保については、旅客の増加などで対応する。現在324万人の旅客があるところ、LCCの利用客を中心に5年後(2020年)には410万人、30年後(2044年度)には550万人へとそれぞれ引き上げることを目標にし、貨物についても現在の0.6万トンから5年後は1万トン、30年後は2.5万トンと順次増加させる。