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「ワオ」を狙った破格の仙台~新千歳(札幌)/桃園(台北)線。ピーチと宮城県知事らが記者会見

4000円台の仙台~札幌線、7000円台の仙台〜台北線の「気軽すぎる旅」へ

2017年5月17日 開催

左から会見を行なった仙台国際空港株式会社 代表取締役社長 岩井卓也氏、Peach Aviation株式会社 代表取締役CEO 井上慎一氏、宮城県知事の村井嘉浩氏

 ピーチ(Peach Aviation)は5月17日、9月より仙台~新千歳(札幌)線および仙台~桃園(台北)線を開設することを明らかにした。仙台~札幌線は9月24日より運航し、最安値は4290円から。仙台〜台北線は9月25日より運航し、7580円から。詳細は既報をご覧いただきたい。

 ここでは、宮城県庁舎で行なわれた、ピーチ 代表取締役CEOの井上慎一氏、仙台国際空港 取締役社長の岩井卓氏、そして宮城県知事の村井嘉浩氏の3者が、記者会見とその後のぶら下がり取材で語った内容についてお伝えする。

ピーチ社長 井上氏「潜在需要、日本にはまだまだある」

Peach Aviation株式会社 代表取締役CEO 井上慎一氏

 冒頭で挨拶をしたピーチ 代表取締役CEOの井上氏は、「私どもにとりましても念願の、仙台を舞台としたピーチの物語が始まります。これまで以上に国内外からお客さまが仙台、東北に来られることを期待しています。

 ピーチは2013年4月に仙台~関空(大阪)線を就航しました。現在は週に21往復、多いときは週に28往復飛ばしています。仙台~関空線は、開設以来非常に人気が高い路線で、2015年度までは3年連続で日本の全路線のなかで一番搭乗率の高い路線でした。2016年度も第三四半期まではNo.1でしたので、おそらく4年連続でNo.1になるであろう路線です。宮城県を含む東北の潜在需要の大きさはやっぱり確かだな、と認識しています。

 ピーチは就航当初より、就航地の皆さまと『パート・オブ・コミュニティ』、就航地の一員として取り組ませていただこうという方針で臨んでいます。ピーチがお客さまを仙台までお連れする、あるいは仙台からどこかへお連れする、というだけではなくて、地域の経済の発展などに貢献できるような航空会社でありたい。宮城県や仙台国際空港をはじめとした皆さまと協力させていただきながら、東北全体を盛り上げて、地域経済の活性化や、ひいては地域創生、東北復興に少しでもお役に立てればと思っています。皆さまにおかれましても、“空を飛ぶ電車”の気軽すぎる旅、ぜひ継続してお楽しみいただければ」と述べた。

 仙台~新千歳線・桃園線の搭乗率について井上氏は、「両路線とも75%~80%が目標。安い運賃で潜在需要を掘り起こすのが私どもの基本形で、ライバルとの奪い合いではなく、これまで(旅客機に)お乗りにならなかった方にいかに弊社にお乗りいただくか、ということを考えています。ポテンシャル自体、日本にはまだまだございますので、当分は潜在需要を獲得していくことを目標としています」とした。

 仙台を拠点に、4時間(で行ける範囲)の円、このなかは我々にとって全部ターゲットなんです。空港の利用できるスロット、お客さまの都合のよいダイヤ、経済的な条件など、総合的に勘案して一番適正だと判断し、開設するのがこの2つの路線。台北からのインバウンドはかなり期待できると思っています。ただ、これで終わりではございません。ほか(の路線の計画)もあります。

 新千歳路線についても、「北海道とつながることで、新しい流動の形成を期待できると思っています」と話し、運賃を安くしたことで、どういう変化が起きるか見極めながら新しいパターンができればと期待を込めた。

 また、観光地としての仙台の魅力については「私たちが決めてはいけないということは分かっている。1つ例を挙げると、東北を旅行された方々のInstagramに投稿された写真を集めて社員たちと眺めたら、そこで出てきたのはガイドブックにはない世界ばかりだった。リンゴが浮いている温泉に行かれたりとか、反応するところが違うんですよね。私たちが期待しているのは、そういう方たちを東北にご案内することで、新しい旅の価値が彼ら・彼女らによって発信されるのではないかということ。仙台、東北には魅力はあって、まだ知られていないだけ。それが知られるように貢献していきたいと思っている」と意気込みを語った。

 4000円台という低価格に設定した理由を聞かれると、「やっぱり『ワオ』がないとだめですよね。これがないと潜在需要が喚起しません。普通の値段より少し安いのではお客さまは反応されない。ぜひピーチのお安い運賃で、札幌日帰りのような「気軽すぎる」旅、新しいライフスタイルをお楽しみいただければ」と挨拶を終えた。

仙台国際空港社長 岩井氏「新しい旅行スタイル、新しい航空需要が拡大するのでは」

仙台国際空港株式会社 代表取締役社長 岩井卓也氏

 次に仙台国際空港 代表取締役社長の岩井氏が、「昨年7月の運営開始以来、ピーチさんによる仙台空港拠点化の実現を待ち望んでいた。ピーチさんのお客さまは、電車感覚で気軽に国内外にお出かけになる、新しい旅行スタイルをお持ちでいらっしゃいます。仙台発着路線が(既存の関西国際空港線に加えて)3路線になることで、気軽に東北に来られる方が増え、また東北の方々の間でも新しい旅行スタイルが一気に広まるのではないか、新しい航空需要が拡大するのではないか」と新規就航に期待を寄せた。

 続けて「仙台空港の昨年度の旅客数は316万人でした。一昨年度から比べると1.6%の増加ですが、国際線は昨年度22万人で、一昨年度と比較して42%の増加です。ピーチさんをはじめとする増便、新規就航によって、ますます多くのお客さまに旅を楽しんでいただけたらと思っています。

 新しい需要を創造できるのがLCCの魅力。関西路線が飛び始めてからも伊丹便のお客さまは減っていない。新しい需要が掘り起こせた、ということが実証できています。新千歳でも台北でもそういうことが期待できるだろうと思っています。

 この4月に、仙台国際空港の着陸料、そのほかの料金体系を一新しました。実際に乗られたお客さまの数に連動した変動料金制を大幅に取り入れたことで、エアラインにとっては固定費が変動費になる。その変動リスクを空港側でも相当背負うことで、より飛んでいただきやすくする料金体系に変えました。

 また、今後の観光面における仙台、東北への関わり方について岩井氏は「観光コンテンツは、新しく作らなければいけないものばかりでもない。別の角度から光を当てた途端にすごく輝くものもありますし、単に知られていないものもあります。そういったものについて、いろいろな協力をしながら観光振興のお手伝いをしていくことで、路線需要を拡大するお手伝いができれば」という考えを示した。

 最後に、「仙台国際空港では、先月1階の到着ロビーがリニューアルオープンしまして、観光案内所などの施設も利用できるようになりました。お土産物も着々と充実させております。お客さまにもっと気軽に、もっと快適に空の旅を楽しんでいただけるように当社も頑張ってまいります」と意気込みを語り締めくくった。

宮城県知事 村井嘉浩氏「県経済には、間違いなく大きな影響を及ぼす」

宮城県知事の村井嘉浩氏

 宮城県知事の村井氏は「2年前にピーチが仙台空港を拠点化するというお話を伺って以来、この日をずっと首を長くして心待ちにしていた。今後は、1人でも多くの方にご利用いただけるように私もPRに努めて参りたいと思います」と仙台空港の拠点化について感謝の意を述べた。さらに、4000円台という価格については「聞いてびっくりいたしました。新千歳線も、桃園線も、この値段だったら私でも、どんなに忙しくても、日帰りでも行けるんじゃないかというびっくりするような価格です」と話した。

 さらに、「特にインバウンドに大きな影響を及ぼしていただけると思っています。北海道に多くの外国人が行かれますが、その方たちが新千歳線を使ってこちら(仙台)に入ってくれることも期待できますし、台湾から直接入ってくださることも期待できると思います。利用率が高まると、さらに新しい路線の開設を検討していただくという話も伺いましたし、今回発表された路線の便数を増やしていくことも可能だとのことなので、大いに期待していただきたい」と今後にも期待を寄せた。

 県経済については、観光面で間違いなく大きな影響を及ぼすとしたうえで、「宮城県に宿泊される外国人のうち、台湾からのお客さまは3割以上を占めています。台湾のお客さまはリピーターが大変多く、観光が大好きな国民でもあるので、2度、3度と日本に訪れるお客さまを東北に誘う非常に大きなツールになるだろう」と考えを述べた。

 続けて「ピーチさんが週4便飛ばしてくださるおかげで、他社の航空会社さんも含めるとデイリー(で便がある状態)になりました。旅行代理店から見ますと、旅行商品を組みやすくなったといえます。県民、東北の皆さまにとっても利用しやすいものになったのではないでしょうか。

 新千歳線も搭乗率の高い路線ですので、北海道からのお客さまをより誘うことができるだろうと思います。函館~札幌間は(列車など既存の交通機関だと)非常に時間がかかりますので、大都市圏である札幌からのお客さまをこちらに引っ張ってくる大きなツールになるだろうという風に期待しています。とにかく、ピーチが新しい路線を開設したことをいろんなところでアピールして、特に価格面を強調して、多くの人にご利用いただけるようにしたいと思います。外国の旅行会社にもアプローチしていきたいと思っています」と述べた。

 夜間駐機、24時間運用の課題については、「拠点化の1つの制約になっているのが運用時間。LCCですので、多少時間がオーバーしても入れるようにしないと。(ディレイで時間をオーバーしたからといって)ほかの空港に行ってください、ということになると、朝出発できなくなるので、拠点化の意味がなくなってしまう。できるだけ運用時間を伸ばしていただくことが、LCCが安定して就航する大前提ですよと前々からいわれていました。

 岩井社長とも話して、できるだけ運用時間の延長に向けて努力しようということにしています。現在は国交省と交渉していますが、ニーズがあるか、そして地元のご理解が得られるか、が重要と言われている。ニーズの見通しは立っている。今後は地元の皆さんのご理解が大切ですので、今一生懸命お話をさせていだいています。

 ただ、空港の24時間化になると、その分社員を24時間待機させていなければいけない。空港職員も置かなければならない。ほとんど便数がないにも関わらず人件費がかかってしまうことになるので、最初から24時間は無理だろうと。ピーチさんが『この時間までは必要』というところまで伸ばして、最終的には24時間にもっていければいいのではないか」と答えた。なお、今回の新路線については現在の運用時間内で対応するとのこと。