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ゴッホと風車もいいけど、それだけじゃない見どころたくさんのオランダ旅。環境に配慮した企業も見学してみた
- 提供:
- オランダ政府観光局
2019年12月24日 06:00
オランダの航空会社であるKLMオランダ航空は2019年10月7日に創立100周年を迎えた。
それを記念して同社とオランダ政府観光局が共同で実施したプレスツアーに参加してきたので、前編はオランダの現在、後編はKLMが持続的な成長のために行なっている取り組みや、アムステルダム・スキポール空港に新装オープンしたばかりの「クラウンラウンジ」についてお伝えする。
KLMオランダ航空で行くアムステルダム・ロッテルダム
成田からアムステルダムまで11時間半の道のり
成田空港からオランダの玄関口であるスキポール空港までは約9300km、飛行時間で約11時間30分の距離。成田~スキポールの直行便は毎日運航しており、関西国際空港からも直行便が飛んでいる。成田線のKL862便は11時25分発、現地時間15時30分に到着するスケジュールだ。機内食は2回提供される。
往路・復路ともに日本人の客室乗務員(CA)が3名ほど搭乗しているので、英会話に自信がない人でも安心して乗ることができる。乗務員は親しみやすく、長時間のフライトを快適に過ごせた。
オランダの伝統風景が保存された場所
まず最初に紹介するのはアムステルダムの北方に位置する「ザーンセ・スカンス(Zaanse Schans)」。日本人がイメージする“これぞオランダ”という岸辺に風車がたたずむエリアであり、観光スポットとしても非常に人気がある。日中はツアー客が大勢訪れるので、朝食後すぐの8時30分ごろに訪問したのだが、ちょうど太陽が昇ってくる時間帯だったのでなんとも幻想的な雰囲気が楽しめた。
風車の中には現在も人が住んでおり、有料で内部を見学することもできる。このほかエリア内には博物館など見学できる施設がいくつかあるが、オススメはチーズ工房と木靴工房。酪農国であるオランダは乳製品が豊富で、さまざまな種類のチーズを試食しながら購入することができ、木靴工場では実際の作業の様子を眺めながらお土産用の木靴を買うことができる。
ゴッホ作品を多数収蔵するオススメの美術館
オランダと言えばゴッホの出身地としても有名だ。アムステルダムにある「ゴッホ美術館(Van Gogh Museum)」が所蔵数の多さや、アクセシビリティから人気であるが、ここでは「クレラー・ミュラー美術館(Kroller Muller Museum)」を紹介しよう。
美術館の設立に尽力したヘレン・クレラー・ミュラーは実業家の妻であり、夫のアントン・クレラーとともに1907年から1922年までの間に1万1500点の美術作品を収集し、芸術をこよなく愛した人物。目利きの画商が知り合いだったこともあり、ゴッホ作品も約90点の絵画と約180点のデッサンを収集した。こちらは世界で2番目にゴッホ作品を所蔵する美術館として知られており、所蔵するコレクションは世界的に有名なものも多い。各国の美術館に貸し出しされているので、一度は目にしたことがあることだろう。
人生の最期まで不遇だったゴッホはヨーロッパ各地を転々としており、その時期で作風が変わっているのは有名なエピソードとして知られている。ここでは、オランダ時代の暗い色調の絵から、南フランスのアルルに移り住んでから制作した明るい色調の絵、精神や体を病んだとされサン・レミの療養所で仕上げた晩年の渦巻きタッチの作品を鑑賞することができ、ゴッホの作品を見るために多くの人が訪れる。
また、こちらの美術館は広大な敷地を誇るデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園の中心にあることから周囲は美しい森林に囲まれているのが特徴。25ヘクタールの広い庭園には、アリスティド・マイヨール、ジャン・デュ・ビュフェ、マルタ・パン、ピエール・ユイグなとが手掛けた160点の彫刻作品が展示されており、芸術を楽しみながら自然のなかを散策できるのもポイントだ。郊外にあるためアムステルダムからクルマで約1時間、電車やバスなどの公共機関を乗り継ぐ方法だと約2時間ほどかかってしまうが、オランダの自然やゴッホ作品を楽しめる非常にオススメしたい場所だ。
整備されたサイクリングロードを無料自転車で疾走する
クレラー・ミュラー美術館の紹介のなかでデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園に少し触れたが、こちらを楽しむアクティビティをもう一つ紹介しよう。それは自転車だ。
オランダは平坦な地形であることからサイクリングを楽しむ人が非常に多い。街中でも、車道の脇には専用道路が設けられているところが多々ある。こちらの国立公園は東西9km、南北15kmと非常に広大で、園内には全長42kmにもおよぶ自転車専用コースが設けられている。無料のレンタル自転車を1700台用意しており、旅行者も自由に楽しむことができる。
もともとはヘレンの夫であるアントンが趣味にしていたハンティング用の森として購入したものであるが、世界大恐慌で夫妻が破産し、敷地や所蔵品を国に譲渡したため、現在ではピクニックやキャンプを楽しむ場としてオランダ国民の憩いの場所にもなっている。国立公園のため今でも自然が多く残されており、森林やヒースの原っぱなどには鹿やイノシシ、ウサギといった野生動物が数多く生息している。澄み切った空気のなかを自転車で疾走するのは爽快で、美術館と合わせて1日過ごしたい場所だ。ただし、レンタル自転車は日本では見かけない、逆回転にしてブレーキをかけるタイプのため、少し練習してから走りたい。
フィリップス誕生の地はアーティスティックな街に
デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園から南西に向けてクルマで約1時間ほどの距離にあるのが「アイントホーフェン」。世界的な電気機器メーカーであるフィリップスが創業した場所であり、現在は先進的なデザイナーが集う街として知られている。
訪れたのは著名なデザイナーであるピート・ハイン・エークが運営するレストランとショップ「Piet Hein Eek」だ。フィリップスの元工場を改装した建物は天井が高く、開放的な雰囲気が特徴的。ギャラリーには自然木や工場廃棄物などの廃材を使って生み出した家具などが数多く展示されており、同氏の環境に対する意識の高さを垣間見ることができる。アイントホーフェン・デザイン・アカデミーもあることから街自体が活気にあふれており、オシャレなカフェバーやレストランも続々と登場しているとのことだ。
未来を見据えたヨーロッパ最大の港湾都市・ロッテルダム
最後にオランダ第2の都市であるロッテルダムを紹介しよう。ロッテルダムはヨーロッパ最大の港湾都市として古くから発展しており、1965年から2003年までの間は世界一の貨物取扱量を誇っていた。街を訪れるとオランダのほかの都市と違い、高層ビルを含めて非常に個性的な建築物が多いことに気づく。ほかの都市は景観を守るための規制が厳しいといった事情もあるが、第二次世界大戦の際に空襲で焼かれてしまったことも一因であるとのことだ。
どんどん新しい建物が建設される一方で、縦横無尽に張り巡らされた運河沿いの使われなくなった数多くの倉庫や港施設の跡地を有効活用する機運が高まっている。ここでは、水上農場、食品廃棄物を使ったキノコ栽培、ユニークな作品を送り出すデザイン事務所、廃材を使った宿泊施設を紹介しよう。
まずは水上に浮かぶ農場「Floating Farm」だ。2019年夏前にオープンしたこの農場では、40頭の乳牛が飼育されている。世界では増え続ける人口に地盤沈下などで縮小されていく土地問題など、食料を生産するうえでのしかかっている問題は数多い。また、生産地から消費地まで輸送することで発生する二酸化炭素の排出量も無視できないものになっている。
そこでさまざまな問題を解決するために考案されたのがこの施設だ。水上に浮かべることで土地問題を解決し、消費地に近い場所で食料を生産する。実際に訪れてみると、水上とはいえほとんど揺れもなく、牛たちは思い思いに飼料を食べ、なかではゴロリとのんびり過ごしていた。搾乳された原乳は建物内にある工場で牛乳やヨーグルトなどに加工され、販売している。一般の見学も受け入れているそうだ。新しい農業技術を次々と生み出すオランダらしいチャレンジと言える。
「Rotterzwam」はキノコを栽培する会社だ。キノコ栽培といえば、培地や原木を使ったものがポピュラーだが、こちらはなんと、コーヒーを抽出した残りカスを使って栽培している。オランダでもコーヒーはポピュラーな飲み物であり、ロッテルダム市内で廃棄されるコーヒーのカスも相当量になる。コーヒーを淹れても豆の0.2%しか使われず、残りの99.8%は廃棄物となるのは非常にもったいないとのことでこの仕組みを考えたそうだ。
ここで栽培されたキノコ(ヒラタケ)は市内のレストランなどに卸され、一部はコロッケなどの冷凍食品にも使われている。また、コーヒー消費の70%は自宅ということもあり、自宅で栽培できる簡易キットの販売も行なっている。
前述のRotterzwamからほど近くにアトリエを構えるのが「Rotganzen」。ニューヨークとロッテルダムを拠点とし、3人のデザイナーが組むデザインユニットだ。日常的なものをベースに創作されたデザインは評価も高く、ヴーヴ・クリコや日本でも数多くショップを展開するザラなどがクライアント/パートナーとなっている。
アトリエのなかにはさまざまな作品が展示されていたが、なかでも目を引いたのはバネの上に座面を置いたイス「Bouncy」。バネの上に座ると不安定では?と誰もが思うはずだが、意外や意外。しっかりとした弾力によるわずかな揺れなので、それを矯正するようにシャンと背筋が反射的に伸びてしまうという驚きを体験できた。
これまた同じエリアにある「Culture Campsite」もおもしろい施設だ。大人の遊び場として考案されたこちらには、廃材を使ったカプセル形の宿泊施設がそこかしこに並ぶ。どれもがユニークな睡眠を提供する場所として個性的なコンセプトを持っており、「南京虫」や「浮かぶレンガ」「ハニカム」といった名称が付けられている。会社の研修や仲間内のパーティなどで使われているとのことだ。
ロッテルダムの最後は、充実した施設の「Mainport Hotel」を紹介しよう。こちらの施設は2013年に5つ星ホテルとしてオープン。マース川のほとりにあり、リバーサイドの部屋からはロッテルダムの近代的な風景が楽しめる。徒歩圏内にボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館や世界博物館、ロッテルダム芸術ホールなどがあり、周辺には観光施設も多い。
客室は4層の大型ベッドに使い勝手が考慮されたデスク、デザイン性の高いソファ、エスプレッソマシンなどを備え、バスルームにはジェットバスに加え、フィンランド式のサウナまで設置されており、湯船につかれるうえにサウナでリフレッシュできるという豪華仕様だ。キレイな館内にはプールやスポーツジムなども併設されている。ロッテルダムの玄関口であるロッテルダム中央駅から地下鉄で5分という便利な立地でもあることから、これから訪れるようと考えている人にはオススメしたいホテルだ。
伝統的な街並みに世界遺産に登録された運河風景、アンネ・フランクの家やゴッホ美術館など、観光資源も豊富なことからヨーロッパでも有数の観光都市となった首都のアムステルダム。観光客数は1800万人を超え、85万人の人口に対して明らかに過剰になっているのが現状だ。
今回のプレスツアーでは、アムステルダム以外のオランダの名所を知ることができたうえ、オランダが環境に配慮し、未来に向けた施策を進めているのも感じ取ることができた。鉄道網も発達しているので、次回はゆっくりと訪れてみたい国である。