ハワイ現地発
【ハワイ現地発】ハワイ在住編集者が最も通った2024年の最新レストラン
2024年12月16日 12:00
2024年を1月から振り返ると、3桁の飲食店を取材してきたが、そのほとんどが今年オープンした店だった。なかでも印象的で「ここは本当に素晴らしい」と思った店がいくつかある。その一つを挙げるならやはりこの店だろう。
「Yohei Sushi KAHALA」。カリヒというディープな地域で30年以上にわたって地元で愛されてきた「與平寿司」。今年2月、まったく違うエリアである高級住宅街カハラのクオノマーケットプレイス内に「Yohei Sushi KAHALA」をオープンし、ローカルの間でも話題となった。
コンセプトは「敬意と恩返し」。ハワイには日本人移民の150年の歴史があり、與平寿司を創業した寿司職人の小原一人氏も広島から移住してきた日本人の一人。移民を受け入れてくれたハワイへの感謝と、歴史を築いてきた先駆者への敬意を込めて、ハワイに恩返しをしたいというのがこの店のテーマだ。
目指すのは、日本の本格寿司店ではなく、「日本の最高」をベースにハワイとの文化の融合によって、新しい食体験を地元ハワイの人に提供する店。
オープン当初、コース料理のみだったことから敷居が高い印象があったが、一度訪れるとその価値に納得して、特別な日に行きたい店として定着していった。7月、地域住民からの「もう少し日常的にアラカルトも楽しみたい」というリクエストに答えて、アラカルトメニューやランチ、テイクアウトもスタート。そしてこの秋にはハッピーアワーをはじめ、真鍮製の冷えたグラスに入ったきめ細かな泡の日本の生ビールを3.99ドルで提供し、つまみはすべて4ドルか8ドルという大胆な価格設定に。ハッピーアワーに関しては「ひっそり始めた」感があり、実はまだあまり知られていないのだが広まるのは時間の問題だと思う……。
記念日ならコース料理で記憶に刻む食体験を
「食」と「体験」を織り交ぜたサプライズもあるコース料理から紹介しよう。切子グラスに注がれたきめ細かな泡のアサヒドラフトビールで喉を潤し、おまかせのコース「KINOHI」(11品280ドル)がスタートする。コースとペアリング(70ドル)するとより一層楽しめる。最初は、「渾身の一番だし」でカツオのふくよかな旨みを堪能しよう。
そして熟練寿司職人の仲川氏による握り「マグロ&サーモン」はシャンパンとともに。粒マスタードをのせた本鮪の握りや、からりと揚げたライスペーパーに包まれた斬新なポケ、塩〆ビーツで鮮やかに色づいたサーモンの握りが、テンポよく、黒のマヨネーズで「鮪」と書かれた皿に乗せられる。
ロゼワインと一緒に提供されるのはマカダミアナッツ入りの「オーガニックサラダ」。グアバドレッシングが甘酸っぱいハワイの味だった。「カリフラワーのすり流し」は優しく胃袋が喜ぶ優しい味わいでコナ産アワビが隠されていた。
この日用意されたのは、BIHO純米吟醸、玉川純米、九平治 別誂という日本酒の飲み比べ。これらを嗜みながら味わうのは、シグネチャーである「和タパス8寸仕立て」。野菜、揚げ物、和牛、刺身、太巻き、握り、卵焼きサンドイッチが木箱に詰まっていて心が躍る逸品だった。
続く「壱の寿司 三貫」は、とびこと胡麻をトッピングしたイカ、プチッと弾けるフィンガーライムを合わせた石鯛の昆布〆、真鯛は胡麻和えの握りとなって登場。次はハワイローカルが愛してやまない「バターフィッシュ(西京焼き)またはポークスペアリブの瞬間燻製」。フタを開けると、気品高く一筋の煙が立ち上るというプレゼンテーション。ボジョレーの赤ワインとの相性も抜群だった。
「弍の寿司 五種」は、旨みと脂の甘みが押し寄せる本鮪の大トロが握られ、いくら醤油漬けとろろ仕立て、北海道産ウニはリゾットに姿を変え、まろやかなウニのコク、カラスミの塩梅、パルメザンチーズとの相性を存分に楽しめた。広島名物の穴子の握り寿司、「カウアイの宝石」とされるエビはサクッと揚げて手巻きで登場した。
「締めの一品」は一番だしを使った寿司職人のアイデアから生まれたラーメン。その後、照明が落とされ「心のデザートタイム」という目で楽しむサプライズの「時間」が贈られた。あえて詳細は書かずにいたい。そして、自家製抹茶ブラウニーなど2品のデザートによってフィナーレとなった。
コース料理は、カウンターに座った瞬間から、料理と空間のプレゼンテーションを楽しめ、五感が驚き喜ぶ体験の連続だった。コースは170ドルから350ドルまで揃っている。
アラカルト料理ならカジュアルにYoheiを楽しめる
今年の夏から、メインダイニングホールで楽しめるようになったのがアラカルトメニューだ。全34席で、仕切りのあるテーブルもあり、落ち着いた雰囲気のなかでバラエティ豊かな料理を注文できる。コース料理同様に、地元ハワイ産の新鮮な食材と、日本の市場から空輸で仕入れた旬の魚を使用した握り寿司が5.50ドルから、細巻は7ドルから、寿司ロールは26ドルからで、一品ずつ、あるいは盛り合わせで満喫できる。
オーガニック野菜と生ハムのサラダ(20ドル)は、生ハムとカリッと揚げたスイートポテトリーフがアクセントに。厚さが2cmほどの極厚とんかつ(38ドル)は低温でじっくり揚げられ、やわらかくしっとり、外はサクッとした職人技が光る一皿。ハワイ産パイナップルと南高梅の甘酸っぱいソースを付けるとさわやかな味わいになった。
コース料理の目玉であるシグネチャーの一つ、お造り8寸も単品(85ドル)でオーダーできる。上品な出汁のきいた冷やしトマト、カニのクリーム春巻き、マナガツオのグリル、日本から直送の天然のクエのお造り、KAHALA特製の海宝ロール(まさに海の宝のネタが詰まっている)、ハワイ産ビーツで鮮やかに色付けされたサーモンの握り、サザエの肝、甘みが押し寄せる北海道産ウニの大葉天ぷらのせ、低温でやさしく仕上げた手羽先の塩麹コンフィが詰め合わせとなっていた。この店の魅力を堪能するならこの一品で十分だろう。
このほか、刺身や天ぷら、茶わん蒸しなど寿司店ならではの本格的な和食、そしておむすびやキッズメニューも揃う。締めは好評のデザート、スフレチーズケーキ ミックスベリーソース(15ドル)とコーヒーを。日本のお土産文化を広める意味合いも込めて始めたお持ち帰りメニューもあるので、これを持っていけば喜ばれること間違いだろう。
アラカルトスタイルは、Yoheiならではのホスピタリティあふれるサービスのなかで、家族や友人たちとシェアしながらカジュアルに楽しむのに最適だと思う。
行かない理由が見つからない。いいことだらけのハッピーアワー
この秋に始まったハッピーアワーは衝撃のお得感でかなり驚いている。木曜から日曜の14時から17時までの限定で、Yohei Sushiの贅沢な空間と最高級レベルのサービスを受けながら、メニューに並ぶ10ドル以下の料理を楽しめるのだから。ハッピーアワーだからといって手を抜かない本気度に感服してしまった。
キンキンに冷えた生ビールが3.99ドル。日本酒3種飲み比べは12ドル。もしも通った場合は前回と違うものも用意してくれるというのがYoheiの心遣い。日本酒ソムリエが解説をしてくれるのもうれしいサービスだった(いない日もあるという)。料理は一品4ドル、または8ドルのみ。ポテトサラダやタコわさび、冷奴、稲荷寿司2つ入り、本日のおむすび2個入り、だし巻き卵など10品は4ドル。8ドルメニューには、自家製漬物盛り合わせやエビと野菜の天ぷら、揚げタコ、ほたてクリームコロッケ、メンチカツ、カマンベールチーズフライ、本日の焼き物(魚)など10品がメニューに並ぶ。
ハッピーアワーメニューのクオリティはYohei Sushiなので言わずもがな。ただ一言。行ってみてほしい。